たん)” の例文
新字:
あるときは、隣室りんしつてゐるKの夫人ふじんゆすおこされてましたが、彼女かのぢよにはそれがたんゆめとばかり、すことができなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
(い)こしより足首迄の間に一行より五六行位の横線わうせんゑがきたるもの。是等の中にはたんくぼましたるも有り亦朱にていろどりたるも有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
阿蘇あそ火山灰かざんばひはこの地方ちほうで『よな』ととなへられてゐるが、被害ひがいたん阿蘇あそのみにとゞまらずして、大分縣おほいたけんにまでもおよぶことがある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
たんあたまからした、あたかにかいたもちやう代物しろものつて、義理ぎりにも室中しつちゆうらなければならない自分じぶん空虚くうきよことぢたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うす光線くわうせん屋根板やねいた合目あはせめかられて、かすかにくすうつつたが、巨大きよだいなるこの材木ざいもくたゞたん三尺角さんじやくかくのみのものではなかつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかり、海底潜行艇かいていせんかうてい一種いつしゆには相違さうゐないが、しかわたくしたんこの軍艇ぐんていをば潜行艇せんかうていぶのみをもつては滿足まんぞくしない、なにとなれば現今げんこん歐米諸國をうべいしよこく發明家等はつめいから
『平民の娘』おふさは、たんにモデルとして彼のうつツてゐるのではい。お房は彼の眼よりもこゝろく映ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あるひ患者くわんじやたいして、たん形式以上けいしきいじやう關係くわんけいたぬやうにのぞんでも出來できぬやうに、習慣しふくわんやつがさせてしまふ、はやへば彼等かれらあだかも、にはつてひつじや、うしほふ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ふのは、たゞたんどもたちのためにとばかりではく、わたしは此等これらのはなしのなか人生じんせい社會しやくわいおよびその運命うんめい生活せいくわつくわんする諸問題しよもんだい眞摯まじめにとりあつかつてみたからであります。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
にもかかはらずこの小娘こむすめは、わざわざしめてあるまどおろさうとする、——その理由りいうわたくしにはみこめなかつた。いや、それがわたくしには、たんにこの小娘こむすめまぐれだとしかかんがへられなかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
三十錢は安いやうでまだ高いがこれはたんに觀劇料ばかりではない。食べものも含んでゐるので、最初から好むところをべると、切符は赤、青、白、などの色によつて食事券をも代用する。
むぐらの吐息 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
尊敬そんけいはどの種類しゆるゐひとにもあるが、たんおな對象たいしやう尊敬そんけいする場合ばあひ顧慮こりよしてつてると、みちもとめるひとならおくれてゐるものがすゝんでゐるものを尊敬そんけいすることになり、こゝに中間人物ちゆうかんじんぶつなら
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
これはたん旅人たびゞと面白おもしろおもはせるためにまうけられたものではなくて、だん/\文明ぶんめいすゝむにしたがひ、むかし風俗ふうぞく面白おもしろ建築物けんちくぶつ次第しだいほろんでくのを保存ほぞんするために出來できたものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
なんゆえにこの裝飾品そうしよくひんうばふはたん斬取強盜きりどりごうとう所爲しよいにしていやしくも理論りろんかまへたる大學生だいがくせいすべからざるところなるをわすれしか、是等の凡ての撞着、是等の凡ての調子はづれ、是等の凡ての錯亂
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
とにかくその日の四五時間をすごした修道院のすべては、たとへばそこに住む修道士達の生活も、たんなる建物の感じそのものも、その建物をとり卷く自然の情景も、いや、眼にれ、耳に響き
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
まがねふくは、てつきわけるといふもと意味いみわすれてゐて、こゝでは、たん吉備きびおこすための枕詞まくらことばにすぎません。こんな單純たんじゆんなうちに、われ/\のこゝろゆたかにする文學ぶんがくあぢはひがうたにはあるのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
大學だいがく人類學教室じんるゐがくけうしつ帝室博物館ていしつはくぶつくわん此所こゝには貴重きちやうなる標本ひやうほんすくなからずあつめめられ、またあつめられつゝあるが、しかしながら、たん石器時代せききじだい遺物ゐぶつにのみ、大學だいがくなり博物館はくぶつくわんなりが、全力ぜんりよくつくされるといふこと
もつと道路どうろあるひ堤防ていぼうさがりにつて地割ぢわれをおこすこともあるが、それはたんひらいたまゝであつて、開閉かいへい繰返くりかへすものではない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
利害りがい打算ださんからへば無論むろんことたん隣人りんじん交際かうさいとか情誼じやうぎとかてんからても、夫婦ふうふはこれよりも前進ぜんしんする勇氣ゆうきたなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其用は信仰上しんこうじやう關係を有するか、たん玩弄品ぐわんろうひんたるか未だつまびらかならずと雖も、間々製作せいさく巧妙こうめう精緻せいちなる物有るを以て見れば甲のかんがへの方實に近からんとおもはる。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
星火榴彈せいくわりうだんげ、火箭くわぜんばして難破船なんぱせん風體ふうてい摸擬よそをつたなど、船長せんちやうたん船幽靈ふないうれい仕業しわざ御坐ござるなどゝ、無※ばかことつてるが其實そのじつ、かの不思議ふしぎなる難破船なんぱせん信號しんがう
讀書どくしよいたづらに人の憂患わづらひすのみのなげきは、一世いつせい碩學せきがくにさへあることだから、たん安樂あんらくといふ意味から云ツたら其もからうけれど、僕等はとても其ぢや滿足出來ないぢやないか。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
じつところは、たんねこ死體したいふのさへ、自分じぶんたものはなかつたのである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
之等これらたん弄古的ろうこてき採集家さいしふかなるのみ、珍世界ちんせかい主人しゆじんたるのみ。
たゞ此斥候このせつこう報告書ほうこくしよともづくべきものは、たん地震波ぢしんぱ種々しゆ/″\形式けいしきのみであるから、これを書取かきと其上そのうへにそれをることを必要ひつようとする。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
宗助そうすけ佐伯さへきことをそれなりはふつて仕舞しまつた。たんなる無心むしんは、自分じぶん過去くわこたいしても、叔父をぢむかつてせるものでないと、宗助そうすけかんがへてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
じつその言葉ことばつてつたのです。この任務にんむは、たん勇氣ゆうきと、膽力たんりよくとのみでは出來できません。氣球きゝゆう降下かうかするところ無論むろん異邦ゐほう外國語ぐわいこくご其他そのた便宜上べんぎじやうきみ依頼ゐらいするよりほかかつたのです。
たん電柱でんちうばかりでない、鋼線はりがねばかりでなく、はしたもと銀杏いてふも、きしやなぎも、豆腐屋とうふやのきも、角家かどやへいも、それかぎらず、あたりにゆるものは、もんはしらも、石垣いしがきも、みなかたむいてる、かたむいて
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わがくにおい此現象このげんしようだかつて大規模だいきぼおこしたことのないのは、たん此現象このげんしようおこすに適當てきとう構造こうぞう場所ばしよ存在そんざいしないのにるものであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
また菜花煙さいかえん彼方此方かなたこなた電光でんこうひらめくのがられる。このさい雷鳴らいめい噴火ふんかおとはうむられてしまふが、これはたん噴煙上ふんえんじようにて放電ほうでんするのみで、地上ちじよう落雷らくらいしたれいがないといはれてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
たとへば粉末ふんまつとなつた鎔岩ようがんすなは火山灰かざんばひのみをときでもさうである。しかしながらたん蒸氣じようき瓦斯がすまた硫氣りゆうき噴出ふんしゆつするだけでは噴火ふんかとはいはないで、蒸氣孔じようきこうまた硫氣孔りゆうきこう状態じようたいにありといつてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)