)” の例文
さうつてお母様が、すぐニコニコして玄関に出ていらつしやると、進ちやんは帽子をとり、くつをぬぎながら、お母様にききました。
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
単にことばの上で見るならば、潤いのあるということは、客観的ない方で味いのあるということは、主観的な云い方であるとも云える。
歌の潤い (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
の一のかはをがれたために可惜をしや、おはるむすめ繼母まゝはゝのために手酷てひど折檻せつかんけて、身投みなげをしたが、それのちこと
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そうですね、面白いか面白くないかとうことでなしに僕が一番苦心したのは、やっぱりあの黄色金剛石イエローダイヤモンド頸飾くびかざり事件の時でしたね」
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうわれて見ると、私は何時いつの何日に魚津へ行ったのだと、ハッキリ証拠を示すことが出来ぬ。それではやっぱり夢であったのか。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「困ったねえ、えらい人が来るんだよ。しかられるといけないからもう帰らうか。」私がひましたら慶次郎は少し怒って答へました。
二人の役人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ところが陸軍の軍医を志願すると学資をきゅうしてもらうことができるので、それならばとうので軍医になることに方針を定めました。
ヘルムホルツ (新字新仮名) / 石原純(著)
寝室でひとこと小言をきかされるとうことは、世界中のあらゆる説教を聞いたも同然で、忍耐と辛抱の美徳を教えこまれるものだ。
だツて紳士程しんしほど金満家きんまんかにもせよ、じつ弁天べんてん男子だんし見立みたてたいのさ。とつてると背後うしろふすまけて。浅「ぼく弁天べんてんです、ぼく弁天べんてんさ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此大勢このたいせいもつ推算すゐさんすると、朝鮮てうせん臺灣等たいわんとう輸入超過ゆにふてうくわ合算がつさんしても、年末迄ねんまつまでには一おく六七千萬圓まんゑん大凡おほよそ豫想よさういたのであつた。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
番目ばんめには露國文豪ろこくぶんがうトルストイはく傑作けつさく千古せんこゆき」とふのと、バンカラ喜劇きげき小辰こたつ大一座おほいちざふのが、赤地あかぢしろいてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
戸外そとには車を待たして置いていかにもいそがしい大切な用件を身に帯びてゐるとつたふうで一時間もたつかたゝないうちに帰つてしまつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
都会の地には洋学とうものは百年も前からありながら、中津は田舎の事であるから、原書は扨置さておき、横文字を見たことがなかった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ふと、サラ/\と衣擦きぬずれの音がしたかと思うと、背後うしろドアが音もなく開かれた。信一郎が、周章あわてて立ち上がろうとした時だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
今晩こんばんやど連參つれまゐれと申されければ幸藏はおせん與惣次に向ひ願の趣きお取上に相成あひなりたれば今宵おとまり御本陣迄ごほんぢんまでまかり出よとおき乘輿のりもの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其道そのみちに志すこと深きにつけておのがわざの足らざるを恨み、ここ日本美術国に生れながら今の世に飛騨ひだ工匠たくみなしとわせん事残念なり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ふん、坊主ばうずか」とつてりよしばらかんがへたが、「かくつてるから、こゝへとほせ」とけた。そして女房にようばうおくませた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
A 馬鹿ばかつちやいかん。統計とうけい神聖しんせいだ。勝手かつて算出さんしゆつしてたまるもんか。それよりかきみおれ今度こんど年賀状ねんがじやう趣向しゆかうせてやらう。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
いつはりではけれどくすとはなにを、デハわたしからまをしませう深山みやまがくれのはなのおこゝろひさして莞爾につことすれば、アレわらふてははぬぞよ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おそかなおのれより三歳みつわか山田やまだすで竪琴草子たてごとざうしなる一篇いつぺんつゞつて、とうからあたへつ者であつたのは奈何どうです、さうふ物を書いたから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
フランス人にわせれば牡蠣かきだって形は感じのいいものではない。ただ牡蠣は水中に住み、蝸牛は地中に住んでいるだけの相違だ。
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おなしきおなもんうりふたツの類型土器るゐけいどき各地かくちからるのである。それすうからかんがへても、大仕掛おほじかけもつ土器どき製造せいざうしたとへる。
母が好きで買つてくる綺堂さんの『半七捕物帳』とつたごく通俗的な探偵物語さへ、それが探偵物であるが故に病床などで時時讀む。
探偵小説の魅力 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
蝙蝠かうもりねこべるかしら?』なんてひました、それであいちやんは、どつちがうとも其質問そのしつもんこたへることが出來できませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたくしはこのときはじめて、ひやうのない疲勞ひらう倦怠けんたいとを、さうしてまた不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつ人生じんせいわづかわすれること出來できたのである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『おまへ亞尼アンニーとかつたねえ、なんようかね。』とわたくししづかにふた。老女らうぢよむしのやうなこゑで『賓人まれびとよ。』と暫時しばしわたくしかほながめてつたが
そこで君がしっかり摂生をして、直ってしまったところで、何も向うのはじにはならない。ただ君に警戒を加えたとえば済むのだ。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
で、あたかもそうう際でしたから、これは成る程、ダンスを習うのも悪くはなかろう。もはやナオミも三年前のナオミではない。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それでも神様かみさまうあってもわたくしねがいをおききれになってくださらないので、そのときわたくし力落ちからおとしとったらなかったものです。
ウィインですこぶる勢力のある一大銀行に、ずいてもいなくても差支さしつかえのない小役人があった。名をチルナウエルとう小男である。
八太郎はさう独語ひとりごとつて、二匹の子犬を拾ひ上げて、懐の中に入れてやりました。子犬はあたたかい懐の中で、うれしがつて鼻を鳴らしました。
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
苦吟くぎん、貧窮、流浪、ほかにお金もうけの才覚もできない無能者であるからとって、然し彼が人間通ではないと思うと当らない。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
お父さんにはれて、顔をあげて見ますと、すぐ頭の上のところに、大きな黒い岩が一つ、枯草の中から、のりだすやうにしてゐました。
八の字山 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
しかるにおうとのぞみは、ついえずたちまちにしてすべてかんがえ圧去あっしさって、こんどはおも存分ぞんぶん熱切ねっせつに、夢中むちゅう有様ありさまで、ことばほとばしる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「これはことによると——」と辻永はよどんだすえ「例の三人の青年はユダヤ結社のものにやっつけられたのじゃないかと思う」
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたし自分じぶん不安ふあん苦痛くつううつたへたが、それかひはなく、このまゝ秘密ひみつにしてくれとつま哀願あいぐわんれて、此事このことは一そのまゝにはふむることにした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
学部というものについてこれとった深い考えはなく、どんなつもりで医科を選んだものか覚えがないが、べつにこの選択を後悔しなかった。
しからば如何いかなる種類しゆるゐ食物しよくもつ適當てきたうであるかと具體的ぐたいてき實際問題じつさいもんだいになると、その解決かいけつはなは面倒めんだうになる。熱國ねつこく寒國かんこくではしよく適否てきひちがふ。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
まちは、いつまでもいつまでもたれなにはなかつたら、その青白あをしろほそ川柳かはやなぎつめてゐたかもしれない。この川柳かはやなぎ古郷こきやうおほい。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
しかしそれは怎的どうでもいゝといふなぐりではなくて、すべてがおしなたいして命令めいれいをするには勘次かんじこゝろあまはばかつてたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
古寺をのぞけば、普通の民家で古の姿をとどめているのはまず稀有けうっていいであろう。高畑の道にしても決して平城京の名残ではない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「死骸を見るとさも沢山喰ったらしくて体裁がくない、」などとい云い普通の人が一つ二つを喰うあいだに五つも六つもペロペロと平らげた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
この「人妻ゆゑに」の「ゆゑに」は「人妻だからとって」というのでなく、「人妻にって恋う」と、「恋う」の原因をあらわすのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「うん、あん時ゃぐうぐうよった。ばってんが、もうだりか醒めとろ。車輛会社もパンクしとらすか知れんくさい。たて見うたて見う。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
門徒寺もんとでらつても檀家だんかが一けんあるでい、西本願寺派にしほんぐわんじは別院並べつゐんなみで、京都の岡崎にあるから普通には岡崎御坊で通つて居る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
余一日、家童、門生の業をなげうち学を廃するを見、そのゆえを問う。皆う、今日日曜日なり、これをもってかくのごとしと。
日曜日之説 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
「ほんとに、きょうはいい、お天気だなあ」と、先生も感心したように空を見上げていました。雄二たちは小川のほとりで弁当を食べました。
誕生日 (新字新仮名) / 原民喜(著)
とにかく、この人はどこへ持って行っても大丈夫な人だ。潔癖けっぺき倫理的りんりてきな見方からしても大丈夫だいじょうぶだし、最も世俗的な意味からっても大丈夫だ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「上野とえば君、今度の展覧会の真珠塔だがね」友は扇風器を私の方へ向けながら、「何か変った事を聞かないかい」
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
と。(一五)なにもつしようせられたる。(一六)太史公たいしこういはく、箕山きざんのぼりしに、其上そのうへけだ許由きよいうつかりとふ。