うかゞ)” の例文
の人の作った戯曲の面白さが分らないとすれば、つみは自分の方にある。残念ながら、自分は藝術の殿堂でんどううかゞう資格がないのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まなこはなたず睥睨へいげいしてる、猛狒ゴリラ益々ます/\たけ此方こなたうかゞつてる、この九死一生きうしいつしやうわか不意ふいに、じつ不意ふいに、何處どこともなく一發いつぱつ銃聲じうせい
よしんば力松を買收ばいしうしたところで、此處からさまで遠くない店の衆の寢息をうかゞつて、曲者を引入れるのも容易なわざではありません。
読者は、鹿太がどんな性質の人で、どんな境遇にゐて、どんな閲歴を有してゐると云ふことも、おほよそはうかゞふことが出来たであらう。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
掛内に這入はひりふしみ居し折柄をりから燒場の外面おもての方に大喧嘩おほげんくわが始りし樣子故何事かと存じそつと出てうかゞひしにくらき夜なれば一かうわからず暫時しばらく樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『おろかものの愚老ぐらうろく智慧ちゑはせませんが、どういふでござりませうか。』と、玄竹げんちくはまた但馬守たじまのかみ氣色けしきうかゞつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
さて我山中に入り場所ばしよよきを見立みたて、木のえだ藤蔓ふぢつるを以てかり小屋こやを作りこれを居所ゐどころとなし、おの/\犬をひき四方にわかれて熊をうかゞふ。
廊下へ出て様子をうかゞいますと、隣座敷の客達はみんな遊びに出て留守ですから、安心をして自分の座敷に立戻り、何程かの金子を紙に包んで
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はちはそれにとまつてしばらをつと氣配けはいうかゞつてゐるらしかつたが、それが身動みうごきもしないのをると、死骸しがいはなれてすぐちかくの地面ぢべたりた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
うつむうかゞひつゝみないひけるは、メヅーサを來らせよ、かくして彼を石となさん、我等テゼオに襲はれて怨みを報いざりしさちなさよ 五二—五四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いづれも肥えあぶらづいて、竹の串に突きさゝれてある。流石さすがに嗅ぎつけて来たと見え、一匹の小猫、下女の背後うしろに様子をうかゞふのも可笑をかしかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いと稽古けいこすきうかゞつておとよ挨拶あいさつして、「ぢや、晩ほど。どうもお邪魔じやまいたしました。」とひながらすた/\帰つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
宗助そうすけこの派出好はでずきおとうとが、其後そのごんな徑路けいろつて、發展はつてんしたかを、氣味きみわる運命うんめい意思いしうかゞ一端いつたんとして、主人しゆじんいてた。主人しゆじん卒然そつぜん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
併しその一流の境を求める自分はまだそのおもかげうかゞはれる仕事すらしてをらぬのに、孫四郎はとも角その「面白い」自家の一道を既に掴まへてゐる。
世間話を二つ三つしたが、油井は「は、は。」と謹んで挨拶して、煙草ばかり吹いて居る。妹は勿論一言も云はぬ。額越ひたひごしに兄の気色をうかゞつて見る。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
そして、上からじっと下方の闇をうかゞった時、何かしら自分の行く先が、泥水に満ちた深い谷間のように思われるので、自然と足の進みを躊躇ちゅうちょせしめた。
ラ氏の笛 (新字新仮名) / 松永延造(著)
すた/\とはひつてると、たなながめ、せきうかゞひ、大鞄おほかばんと、空気枕くうきまくらを、手際てぎはよくつてかついで、アルコールのあをを、くつ半輪はんわまはつて、くとて——
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すてんか明日あすこそはとうかゞこゝろおこたりなけれど人目ひとめ關守せきもりなんとしてひまあるべき此處こゝ七年しちねんはまだ籠中ろうちゆうとり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そしてそれ以来われ/\は、毎日ホテルの土塀にのぼつては遠くに見える客室の様子をうかゞふやうになりました。そのうちに、たうとう私は奥さんと近づきになりました。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「奧さんが仰しやつてましたわ、あの厄介者やくかいもの氣立きだての惡い子供を追拂おつぱらへるので嬉しいつて。いつでも人のすることをうかゞつてゐて、こつそり惡企わるだくみをするやうな子をね。」
我が平民界の侠客をうつして文章に録せしもの、甚だ多し、われは一々之を参照する能はず、こゝに馬琴が其「侠客伝」に序して曰ひし数句を挙げて、其意見をうかゞひ見む。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
目星をつけた家の気勢けはひを暫くうかゞつた後、格子戸を開けてみると、額の蒼白あをじろい、眉毛まゆげの濃い、目の大きい四十がらみのお神が長火鉢のところにゐて、ちよつと困惑した顔だつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
〔評〕長兵京師にやぶる。木戸公は岡部氏につてわざはいまぬかるゝことを得たり。のち丹波におもむき、姓名せいめいへ、博徒ばくとまじり、酒客しゆかくまじはり、以て時勢をうかゞへり。南洲は浪華なにはの某樓にぐうす。
勿論これは二三日の滞在に外観を一べつしたけの感じであつて、その学問芸術の方面に伯林ベルリンを圧する力を持つて居ると云ふ最近の維納ヰインの内景に到つては容易にうかゞべくも無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
一番にも二番にも何より私は佐伯の鼻意気をうかゞひ、気に入るやう細心に骨折つてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
バルタ いや、ぼくきませぬ。主人しゅじんわたくしをばはやんだとのみおもうてをられます。しも此處こゝとゞまって樣子やうすなどうかゞはうならば、斬殺きりころしてのけうと、おそろしい見脈けんみゃくおどされました。
われは屏息へいそくしてこれをうかゞひ居て、我脈搏の亢進するを覺えたり。既にして三人は立ちあがりぬ。新婦は二兒をきてはしごを上り、しばらくありて靜かに傍廂かたびさしの戸を閉ぢ、獨り梯を下り來りぬ。
一句いつく二句にく景色けしきは、西行さいぎようにそのつよちからのあることがうかゞはれます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
なんともいへない無邪氣むじやきかほつきや樣子ようすをしてゐるところなど、いかにもむかしひとかざのないこゝろうかゞはれるばかりでなく、當時とうじひと風俗ふうぞくだとか服裝ふくそうなども、これによつてることが出來できますから
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
(内をうかゞひて)病人の容態は如何いかゞでござりませうか。
近松半二の死 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
巡警看守の隙をうかゞ
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
跡取がお杉になり相なので、徳松はお道をそゝのかして、權八に金を持逃げさせ、その晩庄吉の寢息をうかゞつてあんな事をしたのさ。
うかゞひ友次郎殿事お花樣の御部屋おへやへ忍び來られたり此事たしかに見屆け候故御注進ちうしん申上候と云ければ喜内はさわぎたるていもなく吾助其方とも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
代助はだまつて三千代の様子をうかゞつた。三千代は始めから、せてゐた。代助には其長い睫毛まつげふるへるさまが能く見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
然るに生憎あいにく横井は腸をいためて、久しく出勤しなかつた。邸宅の辺を徘徊はいくわいしてうかゞふに、大きい文箱ふばこを持つた太政官だじやうくわんの使がしきり往反わうへんするばかりである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
云附いいつけ置きました。さて源次郎は皆寝静まッたる様子をうかゞい、そっと跣足はだしで庭石を伝わり、雨戸の明いた所からあがり、お國の寝間に忍び寄れば
何処どこへ行くのだらう、あの男は。』斯う思ひ乍ら、丑松は其となく高柳の様子をうかゞふやうにして見ると、先方さきも同じやうに丑松を注意して見るらしい。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何をするかとうかゞっていると、彼方此方かなたこなたを蹈み分けて行って、云いようもなく腐りたゞれた死人の傍に寄って、或は眼を閉じ、或は眼を開いて祈念を凝らし
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
つにさてじようさまのこゝろくみとりたまひてかとうれしきにもこゝろぽそく立上たちあがをとこかほそとうかゞひてホロリとこぼすなみだ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
愚老ぐらうにおはなしとは、どういふでござりますか。』と、玄竹げんちくさかづきかたはらいて、但馬守たじまのかみ氣色けしきうかゞつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
鄰村となりむら空臼からうするほどのおとがすればしたで、あわたゞしくつて、兩方りやうはうそらうかゞはないではられない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それと同じやうに御厩河岸おうまやかしわたよろひわたしを始めとして市中諸所の渡場わたしばは、明治の初年架橋工事かけうこうじ竣成しゆんせいともにいづれも跡を絶ち今はたゞ浮世絵によつて当時の光景をうかゞふばかりである。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ロマンチック・アイデアリストとしての馬琴の一端は、之を以てうかゞひ知るを得んか。
梧桐ごとうが茂り、大きな葉が陰影をさし延べると、彼は前よりも大胆に枝を見透かして、下の物音を注意深くうかゞはうとした。やがて和作はその日本風ななぞを解きあかされた。紹介された。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
樣子やうすうかゞつてるとは氣付きづいたひとはありませんかつたが、いまげん海賊かいぞく仲間なかまその息子むすここのみなとことと、いまはなし樣子やうすで、おぼろながらもれとさとつた亞尼アンニー驚愕おどろきはまアどんなでしたらう。
さして立去たりあとに殘りし男はなほ内の樣子をうかゞひ居る故旅僧たびそうは見付られなば殺されもやせんといきこらへて車のかげかゞみ居る中此方の板塀いたべいの戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こんな事もあらうかと、平次の眼配せを讀んで、家中の者の樣子をうかゞつてゐた八五郎です。女の動作は八五郎が思ひも及ばないほど敏捷びんせふなものでした。
ひのき植込うえごみの所から伝わって随竜垣ずいりゅうがきの脇に身を潜めて様子をうかゞうと、なが四畳で、次は一寸ちょっと広間のようの所がありまして、此方こちらに道場が一杯に見えます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
椽側からそとうかゞうと、奇麗なそらが、高いいろうしなひかけて、となり梧桐ごとう一際ひときはく見えるうへに、うすつきてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
武裝した軍兵百人を載せた大舟と、二さうの小舟とから、此舟番は成り立つてゐる。利安等はすきうかゞつてゐたが、どうも舟番所を拔ける手段が得られなかつた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)