はれ)” の例文
彼かれらを見、氣色けしきはれやかに答ふらく。彼等の歩履あゆみおそければいざ我等かしこに行かん、好兒よきこよ、望みをかたうせよ。 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
はれやかに成つて、差寄さしよせる盆に折敷おりしいた白紙しらかみの上に乗つたのは、たとへば親指のさきばかり、名も知れぬ鳥の卵かと思ふもの……
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今日けふはれにと裝飾よそほひて綺羅星きらほしの如くつらなりたる有樣、燦然さんぜんとしてまばゆばかり、さしも善美を盡せる虹梁鴛瓦こうりやうゑんぐわいしだゝみ影薄かげうすげにぞ見えし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
我国わがくににては地中の水気すゐき雪のために発動うごかざるにや、雪中には雨まれ也、春はことさら也。それゆゑくだんのごとく日にさらすはれのつゞく事あり。
それが家々の補食の一種となり、また飲食店の商品ともなったのは、器械の進歩であると同時に、はれの食事の混乱でもあったのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
おくられ今日の第一番客なりさてゆふ申刻なゝつ頃よりして立代たちかはり入代り語りそめをなす淨瑠璃じやうるり數々かず/\門弟は今日をはれと見臺に向ひて大汗おほあせ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
前夜ぜんやあめはれそら薄雲うすぐも隙間あひまから日影ひかげもれてはるものゝ梅雨つゆどきあらそはれず、天際てんさいおも雨雲あまぐもおほママかさなつてた。汽車きしや御丁寧ごていねい各驛かくえきひろつてゆく。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「とはいえ、いかに何でも、平侍のするようないやしい役目を、しかも御家人たちの打揃っているはれの中で、わざわざ骨肉のあなた様へお命じなさらなくても」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一仕切ひとしきりつと、発作ほつさは次第におさまつた。あといつもの通りしづかな、しとやかな、奥行おくゆきのある、うつくしい女になつた。眉のあたりが殊にはれ/″\しく見えた。其時代助は
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
箪笥の上の抽出ひきだしからは保雄のにもはれにも一着しか無い脊広が引出された。去年の暮、保雄が郷里の講習会にへいせられて行つた時、十二年ぶりに初めて新調したものだ。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
はれさくごと到着たうちやくしてると、新聞連しんぶんれん今日けふすくない。坪井博士つぼゐはかせ歸京ききやう準備じゆんびをしてられる。博物館はくぶつくわんからは、和田氏わだし一人ひとりだけだ。しかし、高等野次馬かうとうやじうま非常ひじやうおほい。
そらあをかつた。それはきつ風雪ふうせつれた翌朝よくてうがいつもさうであるやうに、なにぬぐはれてきよあをかつた。混沌こんとんとしてくるつたゆきのあとのはれ空位そらぐらひまたなくうるはしいものはない。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
はれた日には、附近の連峰が、湖面にさかしまの影を投げて、その上を、小さな帆かけ船がすべって行く風情、雨の日には山々の頂を隠して、間近に迫った雲間から、銀色の糸が乱れ
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ちっとは胸のはれる事もござえますかね、お嬢さんも心配しておいでなさいますから、くお考えなせえまし、しかしまもとが旧で、あゝいう生活くらしをなすった方が、急に此様こんな片田舎へ来て
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
京都のひとは、「はれがましい」という言葉ことばを使う、すなわち東京のいわゆる、「きまりが悪い」の意で、目立つ所に立ち、多数の環視かんしのもとに出ることをはれがましいといって引込ひっこむが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
都でははれの春着もとうに箪笥の中に入って、歌留多会の手疵てきずあとになり、お座敷ざしきつゞきのあとに大妓だいぎ小妓のぐったりとして欠伸あくびむ一月末が、村の師走しわす煤掃すすはき、つゞいて餅搗もちつきだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
不意に私達の暮しの背後から、又は横合からでも、思ひがけない処から思ひがけない物が、飛び出してくると、必ず私達の生活がはれ々と、あかるくなるに違ひないことを私は確信した。
泥鰌 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
んだおしなはおつぎがうまれたばかりにすぐかまどべつにして、不見目みじめ生計くらしをしたので當時たうじはれ衣物きものであつた單衣ひとへつゝんで機會きくわいもなくむなしくしまつたまゝになつてたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
天にもはれにも掛換のない一枚看板の鼠いろの長上衣スヰートカより他には持ちあはせがなく、それも、気のきいた猶太人の衣嚢かくしの中にある金貨の数よりも多く穴があいてゐるといつた代物であつた。
十四日の午後、御船みふね附近の戦争で、父親は胸に弾丸たまを受けて、死屍しゝとなつて野によこたはつたのである。十四日はれ——と書いて、あとが何も書いてないといふことが少なからず人々をかなしませた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
高野槙たかみ立つ冬のはれ君が御山にのぼり来にける (日瞻上人に)
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いたしませぬ勘藏かんざう乳母ばあやながあひだこゝろづかひさぞかしとどくわたしこゝろいまもいふとほはれてみればまよひは雲霧くもきりこれまでのすこしもなしかならかなら心配しんぱいしてくださるなよと流石さすがこゝろよわればにや後悔こうくわいなみだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はれの日になると、勲章を光らせるのが世間並です。
はれよろひたるかな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
をはりはれの勝負せむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
山がはれれば
のきばすずめ (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
はれの食物の調製が簡便になったことは、是と常の日の食事との境が、不明になってきた大なる原因では有るが、原因は勿論もちろん是だけではなかった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
願ふ所にてうらみもはれたれば一ト通りの歎願たんぐわんにてはとても助命覺束おぼつかなく思ひ六右衞門の申立たる棄子に事寄吉兵衞が差當りての作意さくいにてかゝることを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はれくもりまたつきとなり、かぜとなり——ゆきには途絶とだえる——往來わうらいのなかを、がた/\ぐるまも、車上しやじやうにして、悠暢いうちやうと、はなとりきつゝとほる。……
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きやくのもてなしもしつくしてほとんど倦果うみはてつひには役者仲間なかまいひあはせ、川のこほりくだきて水をあび千垢離せんごりしてはれいのるもをかし。
武蔵は、こんなはれがましい人気を負ってその場へ臨もうなどとは露だにも予期していなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋のはじめの空は一片の雲もなくはれて、景色けしきである。青年わかもの二人は日光の直射を松の大木の蔭によけて、山芝の上に寝転んで、一人は遠く相模灘を眺め、一人は読書している。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ひかりいま頑固かたくなあさこゝろいて、そのはれやかな笑顏ゑがほのうちに何物なにものをもきずりまないではかないやうに、こゝをけよとばかりぢられた障子しやうじそとかゞやきをもつてつてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
不意に私達の暮しの背後から、又は横合からでも、思ひがけない処から思ひがけない物が、飛び出してくると、必ず私達の生活がはれ々と、あかるくなるに違ひないことを私は確信した。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
賊軍少々抵抗したれど、たちまちにして退散す。気候暖かし。はれ
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
はれけふを暗きかもやとうちなげきひたとり居りわが太刀靖光やすみつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
をはりはれの勝負せむ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
つぶすばかりにて誰云となく大評判だいひやうばんとなり紅屋は不審ふしんはれかくもと大和屋三郎兵衞方へいたり前の段を物語り後難こうなんおそろしければ何に致せ表札と幕を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なにかくさう、唯今たゞいま雲行くもゆきに、雷鳴らいめいをともなひはしなからうかと、氣遣きづかつたところだから、土地とち天氣豫報てんきよはうの、かぜはれ、に感謝かんしやへうしたのであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
食物の変遷、我々日本人の食事が前代と比べて見て、いかに改まっているかを知るには、最初にまずはれとの差別を明らかにしてかかる必要がある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きやくのもてなしもしつくしてほとんど倦果うみはてつひには役者仲間なかまいひあはせ、川のこほりくだきて水をあび千垢離せんごりしてはれいのるもをかし。
山陰さんいんはれの試合場では、終生の恨みをのんで別れた敵ながら、今ここで、親しくその人物に直面してみると、謙譲にして威容、しかも武士道的な襟度、ゆかしむべき真の大剣客であった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
積藁に南天の実のかげ揺れて子ら騒ぎ出づる日の暮のはれ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
十三日はれ
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
朝夕あさゆう存じながら、さても、しんしんと森は深い。(樹立こだちを仰いで)いずれもれよう、すぐにまたはれ役者衆やくしゃしゅうじゃ。と休まっしゃれ。御酒みきのお流れを一つ進じよう。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時は十二月のはじめなりしが数日の雪も此日はれたれば、両人かたをならべてこゝろのどかにはなしながらすでつかの山といふ小嶺ちひさきたふげにさしかゝりし時、雪国のつねとして晴天せいてんにはか凍雲とううんしき
働く人々のはれの食料にてるべく、ねて用意して年神の祭壇を豊かにし、且つは祭に仕える者の心を楽しくしようとしたなども、いずれも新制の正月を採用するに際して
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
(これ見よ)と見返したようなはれがましさであり誇りであった。しかし、範宴は
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蒲の穂にひとひら白き冬の蝶ふと舞ひあがる夕空のはれ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くも脚下あしもとおこるかとみれば、たちまちはれ日光ひのひかりる、身は天外に在が如し。この絶頂はめぐり一里といふ。莽々まう/\たる平蕪へいぶ高低たかひくの所を不見みず、山の名によぶ苗場なへばといふ所こゝかしこにあり。