そん)” の例文
見捨みすてたと云かどがあるゆゑ道具だうぐ衣類いるゐは云までもなく百兩の持參金ぢさんきんはとても返す氣遣きづかひなしと思ふゆゑそれそんをしてもかまはぬが何分なにぶん離縁状りえんじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此の人も色々そこなってそんをいたして居りますが、漸々よう/\金策を致しまして三千円持って仕入れに参りまして、春見屋へ来まして。
「さうなんでさ、うまいもんだからわしも到頭たうとうこめぺうそんさせられちやつて」勘次かんじはそれをいふたびさう容子ようすえるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なにしろそれにはなに一つしそんじのないように、武士ぶしの中でも一ばん弓矢ゆみやわざのたしかな、こころのおちついた人をえらばなければなりません。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こんどのことで、いちばんそんをしたのは、高価こうかじゅうをなくし、世間せけんからわるくおもわれた家主やぬしであろうと、かんがえたので、画家がかにそうはなすと
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
もし、なまけぐせをだしおって、やりそんじなどした時には、それこそ、この卜斎より石見守さまがその細首ほそくびをつけてはおくまいぞ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでいて、毎日おかみさんが売り上げの中から、まとまったお金を銀行ぎんこうへあずけにいくところをみると、お店はそんをしているはずはない。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
あたらずとも六分利付りつきそんなしといふやうなことが、可り空たのめなことながら、一めんさうの青木さんの氕持きもちつよげきした。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
春も稍深やゝふかくなれば雪も日あたりはとけあるひは焼火たきびの所雪早くとくるにいたりて、かの屋根のそんじたる処木羽こばの下たをくゞりなどして雪水もるゆゑ
いずれにしてもわたくしのような強情かたくなものは、現世げんせってはひとにくまれ、幽界ゆうかいては地獄じごくおとされ、たいへんにそんでございます。
正門の所で三四郎は具合が悪いから今日けふは学校を休むと云ひ出した。与次郎は一所にいてそんをしたと云はぬ許りに教室の方へ帰つて行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのぜにを一手に引受ひきうけ海外の市場に輸出しおおいもうけんとして香港ホンコンに送りしに、陸揚りくあげの際にぜにみたる端船たんせん覆没ふくぼつしてかえって大にそんしたることあり。
日出雄ひでをさん、あんまりやるとそんじますよ。』と氣遣きづかひがほわたくしさへ、その生臭なまくさにく口中こうちう充滿いつぱい頬張ほうばつてつたのである。
日々ひびの事業について、実業家がその職業をいとなむにつけても同じこと、おのれがそんしたからとて、みだりにその罪を他人にかぶせるようなことはない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そん五もとく七もありゃァしません。当時とうじ名代なだい孝行娘こうこうむすめ、たとい若旦那わかだんなが、百にちかよいなすっても、こればっかりは失礼しつれいながら、およばぬこい滝登たきのぼりで。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
帶の兩端はひどくそんじて居ることだらう、——そこで曲者は死骸を無住の尼寺に運び、其處で死骸の皮を剥いだ。
すなは大正十二年たいしようじゆうにねん關東大地震かんとうだいぢしんおいては十萬じゆうまん生命せいめい五十五億圓ごじゆうごおくえん財産ざいさんとをうしなひ、二年後にねんご但馬たじまくにのけちな地震ぢしんため四百しひやく人命じんめい三千萬圓さんぜんまんえん財産ざいさんとをそん
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
年齢としがちょうど博士と合うので、そんと思っても、行ってみてはどうかと臼井にすすめるつもりだったのである。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「とくなしょうではありませんよ、はじめからそんをあきらめてるから、とくのように見えるのでしょう」という。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
何時いつぞやわたしがとらそんじたときにも、やはりこのこん水干すいかんに、打出うちだしの太刀たちいてりました。唯今ただいまはそのほかにも御覽ごらんとほり、弓矢ゆみやるゐさへたずさへてります。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼君かのきみたせますかぎりのものがそもじのとなることゆゑ、嫁入よめいりしやればとて、其方そなたなんそんいのぢゃ。
今日のりきみは身をそん愚弄ぐろうまねくのなかだちたるを知り、早々にその座を切上げて不体裁ぶていさいの跡を収め、下士もまた上士に対して旧怨きゅうえんを思わず、執念しゅうねん深きは婦人の心なり
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
容姿端麗ようしたんれいとほ藤原氏時代ふぢはらしじだい木彫きぼりだとくが、ほそゆびさきまでいさゝかそんじたところがない、すらりとした立像りつざうの、法衣ほふえいろが、いまひとみうつつた萌黄もえぎなのである。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「やっぱしな、工藤の兄さんも学問をしそんじて頭を悪くしたか……」こう判断しているらしかった。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
ものにはゞかるこゝろありてよろづひかへにとをつくれば、十が七にえて三そんはあるものと桂次けいじ故郷ふるさとのおさくうへまでおもひくらべて、いよ/\おぬひがのいたましく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三人の仲間同志でやってたんだそうですが、もともと玄人くろうと同志がやってたんではたがいそんですから、やがて素人しろうとを引入れ始めたんです……つまり、休憩で退廷した時なぞに
あやつり裁判 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
でも、高く買ってさえもらえばそんはないわけですから、とび離れた高い値で売りつけました。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
この相場はよし当たらないでも債権者さいけんしゃのほうにそんはなかった。万一当たればそれこそ債務者さいむしゃにはひどい危険きけんであった。ところがひょうのおかげでその日はとうとう来たのだ。
ショートのチビ公もなかなかうまいし、捕手ほしゅのクラモウはロングヒットを打つ、なかなかゆだんができないよ、一たい今度の試合は敵に三分の利があり味方に三分のそんがある
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もううなつてると、るべきかねらうと最初さいしよかんがへもなくなるし、またそれがめに葉書代はがきだいつひやすのはそんだといふやうかんがへもなし、是非ぜひともなければならない日課につくわとして
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
そしてその上に、健康をいちじるしくそんじて、自分でさえかなり我儘で気むずかしくなったと思うような清逸自身が加わるのだ。自分の家に帰ると、清逸は一人の高慢な無用の長物にすぎないのだ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
○「第一、ほがらかにしなくっちゃそんじゃなくて。」
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この玉はたいへんそんじやすいという事です。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「時間割りにないものをやっちゃそんをする」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「あそこのたまごつぶが小さいでそんだよ。」
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
何かそんをせしごとく思ひて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
むかしふうのものをさがしていらっしゃるご老人ろうじんがありますので、わたしのほうは、そんがいくのですが、おえしようともうすのです……。
お母さんのかんざし (新字新仮名) / 小川未明(著)
春も稍深やゝふかくなれば雪も日あたりはとけあるひは焼火たきびの所雪早くとくるにいたりて、かの屋根のそんじたる処木羽こばの下たをくゞりなどして雪水もるゆゑ
出せといふに又一人も同じく侍士さふらひに向ひおう然樣さうだ殘らず渡したとてそんはあるまいコウ侍士さふらひ大方おほかた此女は餘所よそ箱入娘はこいりむすめそゝのかし云合せて親の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
砂糖さたうだなんて、だまつてればらねえでるもの、かれたらどうすんだ、砂糖さたうだの醤油しやうゆだのつてそんなことしたつくれえなんぼそんだかれやしねえ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けつしてそんになる氣遣きづかひ御座ございません。十ぷんすわれば、十ぷんこうがあり、二十ぷんすわれば二十ぷんとくがあるのは無論むろんです。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「へエ、今日も仕事を休んで歸らうと思ひますよ。この近所の衆があつしの顏を見て、こんなに仕事を持つて來てくれましたが、フイゴがそんじて仕事が出來ません」
「そらみろ。だからよ、食いものはみな買いたくなるんだ。花はだめだ。店をひらくだけそんだよ」
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
我欲がよく目當めあてがあきらかにえねばわらひかけたくちもとまでむすんでせる現金げんきん樣子やうすまで、度〻たび/\經驗けいけん大方おほかた會得えとくのつきて、此家このやにあらんとにはかねづかひ奇麗きれいそんをかけず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いま細君にたいする小言こごとのしりをむすばずにしまったことを、ふとおのれにちえたように思いついて、すいれんのこともわすれ、庭をそんじたことも忘れて、笑顔えがおを細君にむけた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それゆゑあまおほきくない地震ぢしんたとへばやうや器物きぶつ顛倒てんとう土壁つちかべそん粗造そぞう煉瓦れんが煙突えんとつ損傷そんしようするにとゞまる程度ていどおいても、石燈籠いしどうろう顛倒てんとうによつて兒童じどう壓死者あつししやすことがめづらしくない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「そんなに心配しんぱいしなくったっていいわよ。こっちでかってにくさらしたんだから、またいくらでもとってあげるわよ。お金さえはらやぁ、おまえさんの商売にそんはないじゃあないの。」
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
このうえよけいなぐられるのはそんだからね。なにしろこのごろいただくげんこはせんよりもずっとくからね。人間はなんでもれっこになるなんて言うが、それはお人よしの言うことだよ
一年とさだめたる奉公人ほうこうにん給金きうきんは十二箇月のあひだにも十兩、十三月のあひだにも十兩なれば、一月はたゞ奉公ほうこうするか、たゞ給金きうきんはらふか、いづれにも一ぽうそんなり。其外そのほか不都合ふつがふかぞふるにいとまあらず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
「これは、しやぼん、鰹節かつをぶし以上いじやうですな。——道中だうちうそんずること承合うけあひですぜ。」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)