或時あるとき)” の例文
また或時あるとき、市中より何か買物かいものをなしてかえけ、鉛筆えんぴつを借り少時しばらく計算けいさんせらるると思ううち、アヽ面倒めんどうだ面倒だとて鉛筆をなげうち去らる。
小児せうにの如くタワイなく、意気地いくぢなく、湾白わんぱくで、ダヾをこねて、あそずきで、無法むはふで、歿分暁わからずやで、或時あるときはおやま大将たいしやうとなりて空威張からゐばりをし
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
じつまをすとわたしうたがつてゐるのです。しかもつとも、わたくし或時あるときなんもののやうなかんじもするですがな。れは時時とき/″\おもことがあるです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
村の庄屋しやうやの息子に、智慧蔵ちゑざうといふ、長い間江戸へ出て、勉強して来た村一番の学者がありました。或時あるときその馬鹿ばか七の話を聞いて
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
或時あるとき土方どかたとなり、或時あるときは坑夫となって、それからそれへと際限はてしもなく迷い歩くうちに、二十年の月日は夢と過ぎた。彼の頭には白髪しらがえた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と云うのは当時大童おおわらが江戸屋敷の留守居るすいで世間の交際が広いと云うので、養子選択の事を一人で担任して居て、或時あるとき私に談じて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
時には相手が笑つてゐて、何時いつ迄も要領を得ない事がある。与次郎はこれひとあらずと号してゐる。或時あるとき便所からた教授をつらまへた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一例としては、或時あるとき麹町こうじまちの曲淵の本邸の庭にのぞんだ座敷に、甲子の友達が集っているところを、何も知らずに澤が通りかかった事があった。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
それは人間の声ともつかず獣の声ともつかず、或時あるときかすかに或時は鋭く、高く……聞いていると骨の髄から慄然ぞっとするような恐ろしい声だった。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はなしを——或時あるときとんさんと一所いつしよえたことのある志賀しがさんがいて、西洋せいやう小説せうせつに、狂氣きやうきごと鉛筆えんぴつけづ奇人きじんがあつて、をんなのとはかぎらない
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
遠路とおみち痩馬やせうまかした荷車が二輛にりょうも三輛も引続いて或時あるときは米俵或時は材木煉瓦れんがなぞ、重い荷物を坂道の頂きなる監獄署の裏門うちへと運び入れる。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
風の都合で、馬鹿に大きな音になったり、或時あるときかすかになって、露天ろてん商人の呼声に混り合って、ジンタジンタと太鼓の音ばかりが聞えたりした。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
或時あるときは松並木の間から、或時は断崖の上からそれを眺めて行く。その間湾を隔てて、いつも私達を見守っているのは、雲仙の懐かしい温容おんようである。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
ところ或時あるときの事でシヽリーのうちで、だいばん学者がくしやといふ、シロクシナスといふお精霊様しやうりやうさま茄子なすのやうな人がまゐりまして、わうにお目通めどほりを願ひますると
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
すくひしなり或時あるとき彼の四人打寄うちよつ耳語さゝやくやう又七こと是迄これまで種々しゆ/″\非道ひだうになすと雖も此家を出行いでゆく景色なし此上このうへは如何せんと相談さうだんしけるにおつねひざすゝめ是は毒藥どくやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
周三は或時あるとき偶然ぐうぜんに、「人は何のために生まれたのだらう、そして何のためにき、何うして死んで了ふのだらう。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ずゐぶんるいものですが、アイチャンキャラ侯の先祖が、これを取つてからのち、或時あるとき、外敵にせめられて、一時これを占領されたことがありました。
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
くかしらおそろしがるかしらとますに、いかにもうれしいかほをして莞爾々々にこ/\わたしせたとほりのみをせるでは御座ございませぬか、或時あるとき旦那だんなさまは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わがはちやうど蝗虫いなごのやうだ、こゝよ、かしこよと跳回はねまはる、うなつてあるく、また或時あるとき色入いろいりはねひろげて、ちひさなくびきとほつて、からところをみせもする。
この「ほとほと死にき」をば、あやうしの意にして、胸のわくわくしたと解する説もあり、私も或時あるときにはそれに従った。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
この苧纑をがせ商人、或時あるとき俳友はいいうの家に逗留とうりうはなしくだんの事をかたいだし、彼時かのとき我六百の銭ををしみ焼飯をかはずんば、雪吹ふゞきうち餓死うゑじにせんことかの農夫のうふが如くなるべし
いくらか、さうしたものゝえるのは、或時あるとき仁徳天皇にんとくてんのうが、吉備きびのくろひめといふひと訪問ほうもんせられたところが、青菜あをなんでゐたのをつくられたといふおうたであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
うした筋の通らぬような、通ったような結論を或時あるとき二人がかりでこしらえてしまった。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すると或時あるとき神様かみさまは、そちむねいだいていることぐらいは、なにもくわしくわかっているぞ、とおおせられて、わたくしいままで極秘ごくひにしてった、あるひとつの事柄ことがら……大概たいがいさっしでございましょうが
其女そのをんなさいはたらき、勉強べんきやう出来できすぐれて悧巧りこうたちであつたが、或時あるとき脊負揚しよいあげのなかゝら脱落ぬけおちたをとこふみで、其保護者そのほごしや親類しんるゐ細君さいくんかんづかれ、一学校がくかうめられて、うち禁足きんそくされてゐたが
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
太郎たらうは、エソップのなかの、或時あるときライオンが一疋いつぴきねづみつたら
B それで其女そのをんなはね。或時あるとき或男あるをとこ結婚けつこん申込まをしこんだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
或時あるときぼく仕舞しまつてからカテリーナ
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
或時あるときは江口の月のさしわたり
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
じつもうすとわたしうたがっているのです。しかしもっとも、わたくし或時あるときなんもののようなかんじもするですがな。それは時時ときどきこうおもうことがあるです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と、また或時あるときその女中ぢよちうが、おなじやうに、「れいしゆ。」とつた。またわからない。「おはやねがひます。」とまた女中ぢよちうつた。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
喜怒色に顕わさず或時あるとき私が何か漢書を読む中に、喜怨いろあらわさずと云う一句をよんで、その時にハット思うておおいに自分で安心決定あんしんけつじょうしたことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
或時あるとき此室このへや手拭てぬぐい幾筋いくすじ掛けてあるかと問へば、彼は廊下を四つ打つた。けれども、手拭は三筋より無い。さらに聞直しても矢はり四つだと答へる。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
或時あるときはあまりに世話を焼かれすぎるのに腹を立てゝ、注意される襟巻えりまきをわざときすてゝ風邪かぜを引いてやつた事もあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
或時あるとき宗助そうすけがぽかんとして、下宿げしゆくつくゑりかゝつたまゝめづらしく時間じかん使つかかたこまつてゐると、ふと御米およねつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
或時あるとき是真翁ぜしんをうところくと、是真翁ぜしんをうが「おまへ此頃このごろ大層たいそう怪談くわいだん種子たねを探しておいでださうだ。」「どうか怪談くわいだん種子たねを百種買出いろかひだして見たいと思ひます。 ...
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかるに澤の井は其後漸くつきかさなり今はつゝむに包まれず或時あるとき母に向ひはづかしながら徳太郎ぎみ御胤おんたね宿やどしまゐらせ御内意ごないい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この苧纑をがせ商人、或時あるとき俳友はいいうの家に逗留とうりうはなしくだんの事をかたいだし、彼時かのとき我六百の銭ををしみ焼飯をかはずんば、雪吹ふゞきうち餓死うゑじにせんことかの農夫のうふが如くなるべし
もっとも命がけの決闘ではないけれど、或時あるときは、当番に当った会員が、犯罪めいたことをやって、例えば人を殺したなんて、まことしやかにおどかすことなんかやる。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
或時あるときはデレリ茫然ばうぜんとしておいもえたも御存ごぞんじなきお目出めでたき者は当世たうせう文学者ぶんがくしやいてぞや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
されどもれぞのあともなく、たゞうか/\とものおもふらしく或時あるときはしみ/″\といて、お前樣まへさまいつまでれだけの月給げつきうつてお出遊いであそばすおこゝろぞ、おむかやしき旦那だんなさまは
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幾日たつても子鶉は、そのとほり物を喰べず、謡ひもせず、だん/\と眼がくぼんで、せてきますので、王様は大変不思議に思召おぼしめして、或時あるとき籠に近く寄つて、かうお尋ねになりました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
中天竺ちゆうてんぢくマカダ国、浄飯王じやうばんわうのお子様で、カビラ城にゐなすつたのだが、或時あるとき城の外を通る老人を見て、人間はなぜあんなに、年をとつて、病気になつて、そして死ぬのかといふ事を考へたのです。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
どやすと言えば、かの女が或時あるとき息子に言った。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
或時あるときは谷深く折る夏花げばなかな
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
さての伴藏は今年三十八歳、女房おみねは三十五歳、たがいに貧乏世帯じょたいを張るも萩原新三郎のおかげにて、或時あるときは畑をうない、庭や表のはき掃除などをし
或時あるとき宗助そうすけれいごと安井やすゐたづねたら、安井やすゐ留守るすで、御米およねばかりさみしいあきなかのこされたやう一人ひとりすわつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
或時あるときがつすえ、ドクトル、ハバトフは、院長いんちょう用事ようじがあって、そのへやったところ、おらぬのでにわへとさがしにた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
熊の解剖それから又或時あるときにはう事があった。道修町どしょうまち薬種屋やくしゅやに丹波か丹後から熊が来たと云う触込ふれこみ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
或時あるとき、大奮発じゃ、と言うて、停車場ていしゃば前の床屋へ、顔をりにかれました。その時だったと申す事で。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)