しな)” の例文
そのかわり、家来けらいたちは子ジカのしたと目を切りとって、それをむすこを殺した証拠しょうこしなとして、伯爵はくしゃくのところへもってかえりました。
「やってよけりゃあ、わたしがやるよ。……そんなことをした日にゃあ、店のしなもんが安っぽくなってしょうがないじゃあないか。」
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
若君のお刀は伝家の宝刀、ひとの手にふれさせていいしなではありませぬ。また、拙者せっしゃつえ護仏ごぶつ法杖ほうじょうおいのなかは三尊さんぞん弥陀みだです。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しな天秤てんびんおろした。おしなたけみじか天秤てんびんさきえだこしらへたちひさなかぎをぶらさげてそれで手桶てをけけてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「これは、いい時計とけいですから、だいじになさい。」と、いわれたのでした。さも、どもがつようなしなでないといわれるようでした。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
汝のことばしなたかく汝の譽また聞けるものゝ譽なるをたのみとし、祝福めぐみの座を離れてこゝに下れるわがはやさには若かじ 一一二—一一四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
これらのしな日本人につぽんじん美術びじゆつ價値かちらない時代じだい海外かいがいつてしまつたものであつて、いまでは日本につぽんもどすことも出來できないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
取り出し是は一昨日お前樣の歸りしあとおちてありししなゆゑ何心なくひろひしが不斗ふと此場の役に立つ傳吉殿讀給よみたまへと差出すを傳吉取上とりあげ讀下よみくだすに
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しなはこう切り出します。石原の利助の一人娘、二十四五の年増盛りを、「娘御用聞」と言われるのはわけのあることでしょう。
「むゝ。」とふくれ氣味のツちやまといふみえで、不承不精ふしやうぶしやう突出つきだされたしなを受取ツて、楊子やうじをふくみながら中窓のしきゐに腰を掛ける。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
余は不足ふそくしなと余分のしなとの直接交換ちよくせつこうくわんのみならず、必要以外の品と雖も後日ごじつようを考へて取り換へ置く事も有りしならんと思惟するなり
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
それでも、どうにかして赫映姫かぐやひめ自分じぶんつまにしようと覺悟かくごした五人ごにんは、それ/″\いろいろの工夫くふうをして註文ちゆうもんしなつけようとしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
へい……御存ごぞんじさまでございます、これは貴方あなた遠州所持ゑんしうしよぢでございまして、其後そののちたいしたえら宗匠そうしやうさんがもちひたといふしなでございます。主
なんだ、これは、しなものとつたのは、おまへことか。おまへことか。しなものとつたのは、はせるとふのはこれかな、えゝおあきさん。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
投げ入れし一しなれにも笑つて告げざりしが好みの明烏あけがらすさらりと唄はせて、又御贔負ごひいきをの嬌音きやうおんこれたやすくは買ひがたし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二郎しからばなんじにまいらすべき一しなありと、かねて用意せる貴嬢きみが写真のポッケットより取り出して二郎が手に渡しぬ。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その瞻視まなざしなさけありげなる、睫毛まつげの長く黒き、肢體したいしな高くすなほなる、我等をして覺えずうや/\しく帽を脱し禮を施さゞること能はざらしめたり。
翌日よくじつ新聞しんぶんには、やみなか摸摸すり何人なんにんとやらんで、何々なに/\しなぬすまれたとのことをげて、さかん会社くわいしや不行届ふゆきとどき攻撃こうげきしたのがあつた。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
そうして宗助の持って帰った銘仙めいせん縞柄しまがら地合じあいかずながめては、安い安いと云った。銘仙は全くしないものであった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
○さて口上いひ出て寺へ寄進きしんの物、あるひは役者へ贈物おくるもの、餅酒のるゐ一々人の名をあげしなよび披露ひろうし、此処忠臣蔵七段目はじまりといひてまくひらく
そして自分で出かけて行って、しなもあろう事かまっ毛布もうふを一枚買って帰って来た。葉子はとうとうを折って最終列車で東京に帰る事にした。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
だいたいに時と手数のかかっためずらしい食べ物があとのほうに多く、それゆえにまたこれをかわり物とも、しながわりともいっているところがある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ほかもののぞんだら、百りょうでもゆずれるしなじゃねえんだが、相手あいてがおせんにくびッたけの若旦那わかだんなだから、まず一りょうがとこで辛抱しんぼうしてやろうとおもってるんだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
でね、絶対に他言しないし、しなによっては相談相手になってやるからと安心させて、とうとう白状させて了ったのだ。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
北の方、千住せんじゅ、亀戸、深川、それから芝の金杉方面にも居るには居るが、これは江戸ッ子としては少ししなが落ちる。
疊半分以上の、そのころのものではよいしながあつたので、それに息をかけて拭きながら種々いろ/\の表情をやりました。
鏡二題 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
娘のような顔をして、娘のようなしなを作って、娘のようなお化粧をして、お前の用事ならどんなことでも聞くが、俺の用事ならどんなことでも聞かない。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「駄目ツて」と、細君があまえるやうにしなをして、「稽古おしなさいよ——あたし大分富本が進みました、わ。」
い毛になると二百円位のもあると聞いた。もつとも三四十円のもあるのであらうがかくも高価なしなとされて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かく神様かみさまんなききわけのないわたくし処置しょちにはほとほとおかれたらしく、いろいろとをかえ、しなをかえて御指導ごしどうろうってくださいましたが
そこでしな岩というのが眼界にそびえて来る。文字どおりのかくの巨岩が相対し重積じゅうせきして、懸崖けんがいの頂きにあるのだ。ただ私にはそうした奇趣に興味を持たぬ。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
地上ちじゃうそんするものたるかぎり、如何いかしいしな何等なにらかのえききょうせざるはく、また如何いかいものも用法ようはふたゞしからざればそのせいもとり、はからざるへいしゃうずるならひ。
古人こじんいわく「言者身之文也げんはみのぶんなり」と。日本のことわざにも「言葉は立居たちいをあらわす」というが、これはただしなや育ちを現すとの意でない、心持ちを知らすの意である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼は暗い灰色のしなのよい上品な服を着て、褐色の中折帽なかおれぼうを手に持っていた。実際はそれより二三年は年をとっていたのだが、私は卅歳さんじっさいぐらいと見当をつけた。
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
如何様の事にても、仮令たとい臙脂屋を灰と致しましても苦しゅうござりませぬ、何卒かのしな御かえし下されまするよう折入って願い上げまする。真実まことの通り……
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
第九 食物しよくもつ衣服いふくごと分限ぶんげんによるは勿論もちろんなれど、肉食にくしよくあざらけくあたらしきしな野菜やさいわかやわらかなるしなえらぶべし。よく烹熟にたきして、五穀ごこくまじくらふをよしとすること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
絵かきの方は、昔から相場附けがほぼきまっているから、これはわりあいに手なずけやすいが、文書ぶんかきの方はトカク店が新しいだけに、しながややこしくていけねえ。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
藤太とうだ龍王りゅうおうからもらったしなは、どれもこれも不思議ふしぎなものばかりでした。米俵こめだわらはいくらおこめしてもあとからあとからふえて、からになることがありませんでした。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
したがって改造や普選の運動家はこれを徽章きしょうに旗標に用いてしかるべき鶏の足も、所変わればしな変わるで、西洋では至って不祥な悪魔の表識とされ居るので面黒い。
自分たちより脆くできてはいるが、しなが高そうだ。そして何という美しい声を持ってることだろう。
学生と生活:――恋愛―― (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そのつたみせといふのが、新はし博品館はくひんくわんとなりの今はぼうになつてゐる雜貨店ざつくわてんで、狹い銀座通ぎんざとほりにはまだ鐡道てつどう車が通ひ、新はししなかんでん車になつたばかりのころだつた。
もらったばかりのほうは、古くてもなかなかりっぱなしなだったが、かれの足にはすこし大きすぎた。
お百姓の思うには、「柿右衛門さんの挨拶は、ていねいで、よろしい。」柿右衛門は、お百姓のとおったことすら覚えていない。ただ、「よいしなができあがるように。」
しな峯吉みねきちは、こうした荒々しい闇の世界が生んだ出来たての夫婦であった。どの採炭場キリハでもそうであるように、二人は組になって男は採炭夫さやまを、女は運搬夫あとむきを受持った。
坑鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
棚の上には小さき、の長き和蘭陀オランダパイプをななめに一列に置きあり。その外小さき彫刻品、人形、浮彫のしなとうあり。寝椅子のすえの処に一枚戸の戸口あり。これより寝間ねまる。
つむぎのほかに長井は、そのほうきでも名を成してよいでありましょう。手帚も長柄ながえのも共に作りますが、形に特色がある上に、紺糸で綺麗に草を編むので、ひんのあるしなであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
今度開店した小間物屋は安売だけれどしなが悪いの、お湯屋ゆうやのお神さんのお腹がまた大きくなって来月が臨月だの、八百屋の猫が児を五疋生んで二疋喰べて了ったそうだのと
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
くだくだしくこだはらせなくては承知しない馬鹿々々しい素人脅しとはしなが違ふ。
しなの良いものは金剛石より尊まれて居る。その代りよい石になりますと小指の頭程の大きさのものでも一千二百円もするです。チベットへは金剛石のごくよいものはあまり来て居らん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
メレジユウコウスキイが「先覚者」ダンヌンツイオが「ジヨリオの娘」或は遙にしなさがれどクロオフオオドが Witch of Prague など、顔たまの如きウイツチをゑがきしもの