からだ)” の例文
新字:
這麼老朽こんならうきうからだんでも時分じぶんだ、とさうおもふと、たちままたなんやらこゝろそここゑがする、氣遣きづかふな、こといとつてるやうな。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ちようど とほりかゝつた 物しりを よびとめて たづねて 見ると、物しりは、驢馬の からだを よく しらべてから いひました。
驢馬の びっこ (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
それからまたどく』としるしてあるびんから澤山たくさんめば、それが屹度きつとおそかれはやかれからだがいになるものだとふことをけつしてわすれませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
我は伯爵コンテオルソを見き、また自らいへるごとく犯せる罪の爲にはあらで怨みと嫉みの爲に己がからだより分たれし魂を見き 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かれとほはたけつち潜伏せんぷくしてそのにくむべき害蟲がいちうさがしてその丈夫ぢやうぶからだをひしぎつぶしてだけ餘裕よゆう身體からだにもこゝろにもつてない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ねかへさうとすれば、はゝおほきなこええたからだが、澤庵漬たくあんづけのやうに細つこいあたしの上に乘つて、ピシヤンコにつぶしてしまふ。
お灸 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
のんきなもので、敵が直ぐ頭の上に窺ツてゐるとも知らないで、ぴかり、ぴかり、からだを光らしながら、草の葉裏はうらで一生懸命に露をツてゐる。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かういふ、冬が往つたばかりの時分に一人でひよつくり來たものだから、主婦かみさんは待ち設けない事で、どこかからだでもお惡いのですかと聞いた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
マイルズ先生は、家から送つて寄越すお菓子や甘いものを、もう少し控へると、きつとからだの爲めにいゝのだがと斷言した。
ふくろ(がく)はからだ一尺いつしやくもあり、暗褐色あんかつしよく羽毛うもうあしまでかぶつてゐます。はね非常ひじようやはらかですからぶときにおとがしません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
たれもがからだをぐらつかせながら、まるで出來できわる機械人形きかいにんぎやうのやうなあしはこんでゐたのだつた。隊列たいれつ可成かなみだれてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
からだはエレベーターのやうに、地下ちか地下ちかへと降下かうかしてゆくやうな氣持きもちだつた。そしてつひ彼女かのぢよ意識いしきうしなつてしまつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「それだからね、はねよわいものやからだ壯健たつしやでないものは、みんな途中とちうで、かわいさうにうみちてんでしまふのよ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
といつて、れいくるまをさしせると、不思議ふしぎにもかたとざした格子こうし土藏どぞう自然しぜんいて、ひめからだはする/\とました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
大岡殿コレ九郎兵衞娘がからだ疵處きずしよ其外證據はなきやと云るゝに九郎兵衞は然樣で御座ると云ば大岡殿しかと左樣かとねん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
腕も頭も中空なかぞらに失せる。唯ひとり敗殘のからだの上を吹過ぎる東の風が當來たうらいに向つて、生の原子の香を送るばかりだ。
さしあげた腕 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
玉ちやんはおとう樣に抱かれてゐるのにきて來て、からだをもぢ/\させてゐたが、「あつちへ行く」と云ひ出した。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
地體、荒削の不器用に出來たからだで、酒造人とうじでなかつたら兵隊、人間に生れなければ馬にでもなつた男だ。
五本の指 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
しかももっともそのからだちかいところにあるものはそのひとにつけてあつた著物きものかざものとであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
さうしてからだを出來る丈、平にしながら、くびを出來る丈、前へ出して、おそる恐る、樓の内をのぞいて見た。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それはねこのため、兒猫こねこのため、五すんにたらぬちひさなねこぴきで、五しやくちかからだてあます。くるしい。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
六尺のからだ、何處を膽と分つべくも見えず、實に保平ほうへいの昔を其儘の六波羅武士の模型なりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
が、うツかりした、つかてた、たふれさうな自分じぶんからだは、……夢中むちうで、いろせた、天井てんじやうひくい、しわだらけな蚊帳かや片隅かたすみつかんで、くらくなつたかげに、かして蚊帳かやうちのぞいた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ある地方ちはう郡立病院ぐんりつびやうゐんに、長年ながねん看護婦長かんごふちやうをつとめてるもとめは、今日けふにち時間じかんからはなたれると、きふこゝろからだたるんでしまつたやうな氣持きもちで、れて廊下らうかしづかにあるいてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
と見た吉野は、『貴女あなた何處かまだ惡いんぢやないんですか? おからだの加減が。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「早くからださかさにして、松葉の煙でいぶすが可い。」
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
やはらかなる幼年のからだ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
されどまことは我一たびこゝに降れることあり、こは魂等を呼びてそのからだにかへらしめしむごきエリトンの妖術によれり 二二—二四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
野田のだ卯平うへい役目やくめといへばよるになつておほきな藏々くら/″\あひだ拍子木ひやうしぎたゝいてあるだけ老人としよりからだにもそれは格別かくべつ辛抱しんぼうではなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
相變らずぴかり、ぴかりからだを光らしてゐる。それからまたふうわ、ふうわ飛んで來るのをくらな中に待伏まちぶせしてゐて笹の葉か何んかで叩き落す。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
頭が熱したやうに茫うとなつて、熱が浮いたやうにからだがもや/\する。もう忘れなければならぬ。忘れなければ物苦しい。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
さうして書き出しの四五枚をやうやくまとめ得たかと思ふ内に、いつか十月にはひつたが、努力の疲れとともに私の恐れてゐたものがからだに迫つて來た。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
『さァ、わたしにはそれをおまへにやつてせられない』と海龜うみがめつて、『からだあま岩疊がんじようだから。それでグリフォンもけつしてそれをならひませんでした』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
年の割合に、からだが大きく、ふとつちよで、うす黒い、不健康な皮膚をして、伸び擴がつた顏に、ぼうつとした目鼻をつけ、不活溌な手足の先がふくれてゐた。
だれもおいてはきません。ひとりのこらずくのです。でもね、いいですか、それまでにおほきくそして立派りつぱそだつことですよ。壯健たつしやからだつよはね! わかつて
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
はづして小脇こわき抱込かひこみお島にむかひサア汝言はぬかどうぢや言ぬと此槍が其の美しきからだに御見舞申すぞ是でも言はぬか/\と既につくべき勢ひゆゑ安間平左衞門は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此處ここはどこなのかしら——彼女かのぢよあがらうと意識いしきなかでは藻掻もがいたが、からだ自由じいうにならなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
こんなあかはげやまは、やまとしてはけつして立派りつぱなものとはいへません。人間にんげんでいへばからだばかりおほきくてとく智慧ちえもないとすれば、ひととしててんで品位ひんいがないのとおなじです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
しかかれをして露西亞ロシヤすまはしめたならば、かれかならず十二ぐわつどころではない、三ぐわつ陽氣やうきつても、へやうちこもつてゐたがるでせう。寒氣かんきためからだなに屈曲まがつてしまふでせう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なほ玉類たまるいのほかにからだへつけた裝飾品そうしよくひんには、金鐶きんかんといふどうにめっきをしたかんがありまして、これはたいてい一對いつゝひづゝるので、多分たぶん耳飾みゝかざりなどに使つかつたものとおもはれます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
顧みれば瀧口、性質こゝろにもあらで形容邊幅けいようへんぷくに心をなやめたりしも戀の爲なりき。仁王にわうともくまんず六尺の丈夫ますらをからだのみか心さへ衰へて、めゝしき哀れに弓矢の恥を忘れしも戀の爲なりき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
動詞の streben は素とからだで無理な運動をするやうな心持の語であつたさうだ。それからもがくやうな心持の語になつた。今では總て抗抵を排して前進する義になつてゐる。
当流比較言語学 (旧字旧仮名) / 森鴎外森林太郎(著)
猿は又水干すゐかんの袖にかじりついて、私のからだから辷り落ちまいとする、——その拍子に、私はわれ知らず二足三足よろめいて、その遣り戸へ後ざまに、したゝか私の體を打ちつけました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
凝乎じいつと、ふゆなかよこたへられたわたしからだなかで、やはらかなあたゝかさにつゝまれながら、なんといふものさびしいこゑをたてゝわたしのこゝろのうたことだらう!一寸ちよつとでも身動みうごきをしたらそのこゑはすぐにえよう
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ふね大丈夫だいぢやうぶしんじたらつてる、うへでは甚麽どんな颶風はやてようが、ふねしづまうが、からだおぼれようが、なに、大丈夫だいぢやうぶだとおもつてござれば、ちつともおどろくことはない。こりやよしんでも生返いきかへる。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おのれはかゝる水槽みづぶねの中におつ、さればわが後方うしろに冬を送る魂もおもふにいまなほそのからだを上の世にあらはすなるべし 一三三—一三五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
仕舞しまひには、そのどつちがほんとの自分じぶん區別くべつ出來できなくなつた。そして、時時ときどき我知わたしらずぐらぐらとひよろけ自分じぶんからだをどうすることも出來できなかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
からだも大分疲れて來たから、ふと氣がいて其處そこらを見廻すと、夜も大分けてゐた。村の方を見ても、ともしの光も見えなければ、仲間の者が螢を呼ぶ聲も聞えない。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
きしうへあつまつた一たいは、それこそ滑稽こつけい觀物みものでした——とり諸羽もろは泥塗どろまみれに、動物けもの毛皮もうひ毛皮もうひ膠着くツつかんばかりに全濡びしよぬれになり、しづくがたら/\ちるのでからだよこひねつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
翌日の晝には、私は、起きて、着物を着て、ショールにくるまつて、子供部屋の圍爐裏ゐろりの傍に坐つてゐた。私は自分のからだが弱り、打ちのめされたやうになつてゐるのを感じた。