-
トップ
>
-
藏々
野田で
卯平の
役目といへば
夜になつて
大きな
藏々の
間を
拍子木叩いて
歩く
丈で
老人の
體にもそれは
格別の
辛抱ではなかつた。
大きな
藏々の
建物が
空しく
成る
程一
切の
傭人が
桃畑に一
日の
愉快を
竭すやうになれば
病氣もけそりと
忘れるのが
例であつた。
卯平は
夜は
火の
番をしても
暑い
日には
庭の
草挘をしたり、
他の
藏々への
使ひに
行つたり、
幾分の
忙しさを
感じても、
使ひに
行けば
屹度茶菓子を
包まれたり、
手拭を
貰つたり