此度このたび)” の例文
其方儀そのほうぎ先達さきだっながいとま差遣さしつかわし候処そうろうところ以後心掛も宜しくよっ此度このたび新地しんち二百石に召し返され馬廻り役被仰付候旨おおせつけられそうろうむね被仰出候事おおせいだされそうろうこと 重 役 判
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ねがはれ何卒なにとぞわたく御役御免下ごめんくださるべしといはれしかば何故退役たいやくねがはるゝやと申さるゝに大岡殿此度このたび煙草屋たばこや喜八裁許さいきよちがとがなき者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此度このたび権現様小笠原与八郎を先手におおせ付けられそうろう。与八郎下心に挾む所ありといえども、辞退に及ばずして、姉川にて先手致し勝利を得申し候。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
此度このたび勇戦隊が編成せられるにいては、是非共其一員に加はりたいので、早速志願したが、一里正の子だと云ふかどで御採用にならなかつた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
老生此度このたび郊外にささやかなる別荘を買求めそうろうについては来る十五日別荘開きの小宴を催したく当日午後一時Sホテルまで御光来を
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
平生へいぜいよくつかへくれ、しきこととてさらし、此度このたびとりすゝめしも、おもうての眞心まごころなるを、なにとてあだにおもふべき。じつうれしくおもひしぞよ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それに致しましても此度このたびの兵乱にて、洛中洛外らくちゅうらくがいの諸家諸院の御文書御群書のたぐいの焼亡いたしましたことは、おびただしいことでございましたろう。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
生涯一度の善事をするつもりで、此度このたびの公事は取下げて、半田屋はんだや後家ごけと和解してやれ。——半田屋は、そちが若年の頃に仕えた旧主ではないか。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うかれ車座のまわりをよくする油さし商売はいやなりと、此度このたび象牙ぞうげひいらぎえて児供こどもを相手の音曲おんぎょく指南しなん、芸はもとより鍛錬をつみたり、品行みもちみだらならず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此度このたび徳川の橋詰に店出みせだし仕り候家餅いへもちと申すは、本家和歌山屋にて菊の千代と申弘もうしひろめ来り候も、此度相改め新製を加へごくあめりかに仕立したて趣向つかまつり候処
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此度このたびオフィリヤの残念なる失態にり、おいとましなければならなくなって、ポローニヤスの胸中には、さまざまの感慨が去来いたして居ります。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
わしふるくからこの瀑布たきあずかっている老人としより竜神りゅうじんじゃが、此度このたびえんあってそなた手元てもとあずかることになってはなはよろこばしい。
テ前日、府中ニ触レアッテ此度このたび双方勝負ノ贔屓ひいきヲ禁止セリ。興長主おきながのかみ武蔵ニいっいわク、明朝辰ノ上刻向島ニ於テ、岩流小次郎ト仕合致スベキ由ヲさとス。
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
此度このたびは旭川師団より渡辺大尉殿の御来臨を辱うし、農場主側よりは吉岡幾三郎氏代理として松山省一氏、小作方よりは不肖私が出席し、ここに協力一致
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
さて、此度このたび、都へと、一家そろつての旅ですが、これは或ひは一家にとつて単なる旅では無くなるかもしれません。
秋の夜がたり (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
しかるに此度このたび御物産の起りは、下拙一人の胸中より出づる事にて、御世話方の者残らず下拙の親類門人の者にて候へば、何事も皆今日は下拙に相談の上にて事を
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
おことこゝろさへかはらずば、女々めゝしい臆病心おくびゃうごゝろために、敢行してのくる勇氣ゆうきさへゆるまなんだら、此度このたび耻辱はぢのがれられうぞ。
なんぢ此度このたび使命しめい成敗せいばいは、海底戰鬪艇かいていせんとうていが、日本帝國につぽんていこく守護まもりとして、現出げんしゆつすること出來できるか、いなかのわかであるぞ。きはめて機敏きびんに、きはめて愼重しんちようなれ。
此度このたびの難産のあと、奥方は身体からだがげつそりよわつて、耳も少し遠く成り、気性までが一変して陰気に成つた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
閣下に直接知って戴いた上其の罪に服しいとの希望を以て此度このたびうして筆を取った次第であります。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
子心こごヽろにも義理ぎりかれてかなかちて胡亂胡亂うろうろするを、さとしいろ/\にたのみて此度このたびふうぶみに、あらんかぎりの言葉ことば如何いかきけん、文章ぶんしやう艶麗えんれい評判ひやうばんをとこなりしが。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あなたが決して嘘を申されたとは思いませんが、此度このたびあなたのなされた態度は無情なものです。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
されば此度このたび一條いちでう日本國中につぽんこくちう知者ちしや馬鹿者ばかものとを區別くべつする吟味ぎんみ問題もんだいといふもなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
「閣下、実は旧冬から九州へ出掛けましたので——或は新聞上で御覧になりましたことかとも愚察つかまつりまするが、此度このたび愈々いよ/\炭山坑夫の同盟罷工が始まりさうなので御座りまして——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
自分にても此度こんどとても全治すべからざるを悟りて、予に懇切に乞うて曰く、此度このたびは决する事あり、依て又一に面会して能く我等夫婦が牧塲に関する素願そがんたるの詳細を告げ示し置きたし
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
其後一年ほど過ぎて此男このおとこ部屋へや何か騒がしく、ゆるして下されと叫ぶ。人々出て見しに早くも影無し。此度このたびも半月ほど過ぎて越後えちごより帰りしが、山の上にてかの国の城下の火災を見たりと云ふ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その後三年許りの間に、老母の死によって蒙った家政上の欠陥を恢復し、女学校を出た光子の身なりをととのえ、更に此度このたびの彼女の病気に心ゆく手当を施すだけの収入は、勿論得られなかった。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
拙者わし此度このたび九国への遍歴を思い立ち、もとより絵かきの気楽な境涯もはや親兄への暇乞いとまごいも済まし、其方と今宵語り明して、明朝直ちに発足ほっそくなそうと、御覧ぜられえ、此の通り旅の姿をいたして居る。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
生れてより神仏かみほとけを頼み候事さふらふこととては一度も無御座候ござなくさふらへども、此度このたびばかりはつくづく一心に祈念致し、吾命わがいのちを縮め候代さふらふかはりに、必ず此文は御目おんめに触れ候やうにと、それをば力に病中ながら筆取りまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それに致しましても此度このたびの兵乱にて、洛中洛外らくちゅうらくがいの諸家諸院の御文書御群書のたぐひの焼亡いたしましたことは、おびただしいことでございましたらう。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
此度このたび 英照皇太后陛下えいせうくわうたいごうへいか御大喪ごたいさうきましては、日本国中にほんこくぢう人民じんみん何社なにしやでも、総代そうだいとして一めいづゝ御拝観ごはいかんめに京都きやうとへ出す事に相成あひなりました。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ともなひ奉つれり依て御生長ごせいちやうの土地は美濃國にて候此度このたび受戒じゆかい得道とくだうなし奉つり常樂院の後住ごぢうにもなほし申べくと存じ候得どもまさしく當將軍の御落胤ごらくいんたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御用ごようおもむきにあらず、其方達そのはうたちかねぞんずるごと豆州づしう御勝手許おかつてもと不如意ふによいにつき、此度このたび御改革ごかいかく相成あひな奉行ぶぎやう我等われら相談さうだんうへにて、もくなんぢ申付まをしつくるぞ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『何。——土屋殿は、いつ高家衆になられた。お許は、土屋殿のお指図をもって、此度このたびの饗応を勤めらるる御所存か』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此度このたび小生において、買占め置きそうろう貴下に対する債権について、御懇談ごこんだんいたしたきこと有之これありつ先日杉野子爵ししゃくを介して、申上げたる件に付きても、重々の行違ゆきちがい有之これあり
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
此度このたびくはだて残賊ざんぞくちゆうして禍害くわがいつと云ふ事と、私蓄しちくあばいて陥溺かんできを救ふと云ふ事との二つをこゝろざした者である。しかるにかれまつたく敗れ、これは成るになん/\としてくじけた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いまから三四時間じかんのちには、目的もくてきのコロンボ附近ふきん降下かうかして、櫻木大佐さくらぎたいさより委任いにんされたる、此度このたび大役たいやくをも首尾しゆびよくはたこと出來できるであらうと、たがひ喜悦きえつまゆひらときしも
さりとて無情つれなくなげかへしもせねど、らきてみしやいなじんすけこたへぶりの果敢はかなさに、此度このたびこそとかきたるは、ながひろにあまりおもふでにあふれて、れながらくまでもまよものかと
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此度このたび改暦かいれきにても其譯そのわけらずして十二月の三日が正月の元日ぐわんじつになるとばかりいふて、夢中むちうにこれを夢中むちうにこれをつたへなばじつおどろくべきことなれども、平生へいぜいよりひとむべき書物しよもつ
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
此度このたびの事件については、見す見す間違った推断によってつみせられんとする我学界の長者を救うものは、偶然にもその現場に居合いあわして、一寸した証拠物件を手に入れた、この私の外にないと信ずるが故に
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此度このたび備前びぜん摺鉢すりばち底抜けて、池田宰相味噌をつけたり
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
炎燄ほむらをりから、將軍しやうぐん此度このたび桃太もゝた
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
御免ごめんなさい。「ハイ。「さて誠にどうもモウ此度このたび御苦労様ごくらうさまのことでございます、じつうもひやうのない貴方あなた冥加至極みやうがしごくのおうへでげすな。 ...
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
以て大坂へ申こせば然ば急々上京すべし尤とも此度このたびは大坂表へ繰込くりこみせつより一際ひときは目立樣にすべしと伊賀亮いがのすけは萬端に心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かわらき土を塗り固めたお倉でございますので、まあ此度このたび大事だいじはあるまいと、太閤たいこうさまもこれには一さい手をお触れにならず、わざわざこのわたくしを召出されて
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
宿将飯富おぶ兵部等、「先年以来未だ一度も手詰の御合戦なし。此度このたび是非とも、御一戦しかるべし」
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
仏壇にいたのは、全く偶然だと申しておりました。ところが、翌朝よくちょうになって仏壇を見ますると、蛇はちゃんと帰っているのでございます。わたくしも此度このたびは前より一層驚きました。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
(——此一大事、成就仕らず候わば、此度このたび退散の大臆病者と同然に相成る可く候事)
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みぎ次第しだいにて此度このたび大陰暦たいゝんれきあらためて大陽暦たいやうれきにはかに二十七日のおこしたれどもすこしもあやしむにらず。事實じゞつそんにもあらず、とくにもあらず、千萬歳ののちいたるまで便利べんりしたるなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
町子まちこにはかにもののおそろしく、たちあがつて二あしあし母屋おもやかたかへらんとたりしが、引止ひきとめられるやうに立止たちどまつて、此度このたび狛犬こまいぬ臺石だいいしよりかゝり、もれ坐敷ざしきわさぎをはるかにいて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)