トップ
>
忍
>
しの
ふりがな文庫
“
忍
(
しの
)” の例文
あはれ
新婚
(
しんこん
)
の
式
(
しき
)
を
擧
(
あ
)
げて、
一年
(
ひとゝせ
)
の
衾
(
ふすま
)
暖
(
あたゝ
)
かならず、
戰地
(
せんち
)
に
向
(
むか
)
つて
出立
(
いでた
)
つた
折
(
をり
)
には、
忍
(
しの
)
んで
泣
(
な
)
かなかつたのも、
嬉涙
(
うれしなみだ
)
に
暮
(
く
)
れたのであつた。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
初恋に
酔
(
よ
)
う少年少女のたわいのない
睦言
(
むつごと
)
の
遣
(
や
)
り
取
(
と
)
りに過ぎないけれども、
互
(
たがい
)
に人目を
忍
(
しの
)
んでは首尾していたらしい様子合いも見え
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
其は其として、昔から家の娘を守った
邑々
(
むらむら
)
も、段々えたいの知れぬ村の風に
感染
(
かま
)
けて、
忍
(
しの
)
び
夫
(
づま
)
の手に任せ
傍題
(
ほうだい
)
にしようとしている。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
すべては靜まつてゐて、たゞアデェルの
忍
(
しの
)
び聲のお
喋
(
しや
)
べりばかりであつた(彼女は思ひ切つて、大きな聲では話せなかつたのだ)。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「わしは敵でもなければ味方でもない。そうもうすおまえがたこそ、深夜に
床下
(
ゆかした
)
から
忍
(
しの
)
びこんできて、ひとの家へなにしにきた!」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
然
(
しか
)
しそれを
誰
(
たれ
)
も
見
(
み
)
ては
居
(
ゐ
)
なかつた。それでも
彼
(
かれ
)
は
空虚
(
から
)
な
煙草入
(
たばこいれ
)
を
放
(
はな
)
すに
忍
(
しの
)
びない
心持
(
こゝろもち
)
がした。
彼
(
かれ
)
は
僅
(
わづか
)
な
小遣錢
(
こづかひせん
)
を
入
(
い
)
れて
始終
(
しじう
)
腰
(
こし
)
につけた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その
時
(
とき
)
誰
(
だれ
)
か
忍
(
しの
)
び
足
(
あし
)
に、おれの
側
(
そば
)
へ
來
(
き
)
たものがある。おれはそちらを
見
(
み
)
ようとした。が、おれのまはりには、
何時
(
いつ
)
か
薄闇
(
うすやみ
)
が
立
(
た
)
ちこめてゐる。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
待給
(
まちたま
)
へ
諸共
(
もろとも
)
にの
心
(
こヽろ
)
なりけん、
見
(
み
)
し
忍
(
しの
)
び
寐
(
ね
)
に
賜
(
たま
)
はりし
姫
(
ひめ
)
がしごきの
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
を、
最期
(
さいご
)
の
胸
(
むね
)
に
幾重
(
いくへ
)
まきて、
大川
(
おほかわ
)
の
波
(
なみ
)
かへらずぞ
成
(
な
)
りし。
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
〔譯〕
朝
(
あさ
)
にして
食
(
くら
)
はずば、
晝
(
ひる
)
にして
饑
(
う
)
う。
少
(
わか
)
うして學ばずば、壯にして
惑
(
まど
)
ふ。饑うるは猶
忍
(
しの
)
ぶ可し、
惑
(
まど
)
ふは奈何ともす可からず。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
先に述べた友人は少年ながらもこの事を知りしゆえ
擲
(
なぐ
)
らるるままに
恥
(
はじ
)
を
忍
(
しの
)
んで去った。今にしてこれを
顧
(
かえり
)
みれば気の毒だと思う。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
御米
(
およね
)
はかう
宗助
(
そうすけ
)
から
勞
(
いた
)
はられた
時
(
とき
)
、
何
(
なん
)
だか
自分
(
じぶん
)
の
身體
(
からだ
)
の
惡
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
訴
(
うつ
)
たへるに
忍
(
しの
)
びない
心持
(
こゝろもち
)
がした。
實際
(
じつさい
)
又
(
また
)
夫程
(
それほど
)
苦
(
くる
)
しくもなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
驚
(
おどろ
)
いて
眼
(
め
)
が
覺
(
さ
)
めたが、たしかに
猫
(
ねこ
)
の
聲
(
こゑ
)
がする、
夢
(
ゆめ
)
か
怪
(
かい
)
か、はね
起
(
お
)
きて
見
(
み
)
たら
枕
(
まくら
)
もとには
例
(
れい
)
の
兒猫
(
こねこ
)
が
座
(
すは
)
つてゐた、どこから
忍
(
しの
)
んで
來
(
き
)
たのやら。
ねこ
(旧字旧仮名)
/
北村兼子
(著)
日本が西洋臭くなり日本の文化や風俗やが、日々にますます欧米化して来ることは、ヘルンにとって
忍
(
しの
)
びがたい
悲哀
(
ひあい
)
であった。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
又
(
また
)
なんじら
我
(
わ
)
が
名
(
な
)
のために
凡
(
すべ
)
ての
人
(
ひと
)
に
憎
(
にく
)
まれん。されど
終
(
おわり
)
まで
耐
(
た
)
え
忍
(
しの
)
ぶものは
救
(
すく
)
わるべし。この
町
(
まち
)
にて、
責
(
せ
)
めらるる
時
(
とき
)
は、かの
町
(
まち
)
に
逃
(
のが
)
れよ。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それはこの
家
(
うち
)
のネコでした。ネコはそっと
忍
(
しの
)
んでいって、あかりのさしているところから
二
(
ふた
)
あしばかり
離
(
はな
)
れた
壁
(
かべ
)
のそばに立ちどまりました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
大佐
(
たいさ
)
よ、
私
(
わたくし
)
も
既
(
すで
)
に
此
(
この
)
島
(
しま
)
の
仲間
(
なかま
)
となつた
今
(
いま
)
は、
貴下等
(
あなたがた
)
の
毎日
(
まいにち
)
/\の
勞苦
(
らうく
)
をば、
徒
(
いたず
)
らに
傍觀
(
ぼうくわん
)
して
居
(
を
)
るに
忍
(
しの
)
びません、
何
(
な
)
んでもよい。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
偖
(
さて
)
又
(
また
)
憑司は其夜昌次郎を立せやり
草履
(
ざうり
)
に血の付たるを
持
(
もち
)
て傳吉宅へ
忍
(
しの
)
び
込
(
こみ
)
庭
(
には
)
の
飛石
(
とびいし
)
へ血を付置き夫より高田の役所へ
夜通
(
よどほ
)
しに往て
訴
(
うつた
)
へ
捕方
(
とりかた
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
しかし、この黄金の書に、ものを書く時間は短かく、これと殆ど同時に、ぼくには、大きな不幸が
忍
(
しの
)
びよって来ていました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
五人は部屋から飛びだして、いま博士の出てきた部屋の扉の前に
忍
(
しの
)
びよった。扉の引き手を廻すと、さいわいにこれにも鍵がかかっていない。
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「いよ/\お互の身の破滅だ。
忍
(
しの
)
び
男
(
をとこ
)
でも出来たんだな……」と思ふと、男は髪の毛が
逆立
(
さかだち
)
になるやうに思つた。そして急いで
後
(
あと
)
を読み次いだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
父は母の
歿後
(
ぼつご
)
、後妻も
貰
(
もら
)
わないで不自由を
忍
(
しの
)
んで来たのであったが、
蔭
(
かげ
)
では田舎者と
罵倒
(
ばとう
)
している貝原から
妾
(
めかけ
)
に要求され
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「まあ、いい。
手前
(
てめえ
)
の口を出すことじゃねえのだ。
汝
(
われ
)
あただ、言われたとおり、こっそりこの裏ぐちから
忍
(
しの
)
び出てナ、自身番へ駈けつけて——」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
俊寛 九州まで! いかなる手段をつくしても! 九州まで着けば身を
忍
(
しの
)
ばして都に入り、時機をうかがうことができる。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「よし、おれが、
今日
(
きょう
)
はしとめてくれるぞ。」と
力
(
りき
)
んで、
猟師
(
りょうし
)
は
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
んで、
近
(
ちか
)
よって、そのようすをうかがいました。ところがどうでしょう。
猟師と薬屋の話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「ああ
郎女
(
いらつめ
)
よ。ひどく
泣
(
な
)
くと人が聞いて
笑
(
わら
)
いそしる。
羽狹
(
はさ
)
の山のやまばとのように、こっそりと
忍
(
しの
)
び泣きに泣くがよい」
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
この心なる宮はこの一月十七日に会ひて、この一月十七日の雪に会ひて、いとどしく貫一が事の
忍
(
しの
)
ばるるに
就
(
つ
)
けて
転
(
うた
)
た悪人の夫を厭ふこと
甚
(
はなはだし
)
かり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
一体
(
いったい
)
の
出来
(
でき
)
が面白い都会で、
巴里
(
パリー
)
に遊んでその
古
(
いにし
)
えを
忍
(
しの
)
ぶとき、今も
猶
(
な
)
お
悵恨
(
ちょうこん
)
の
腸
(
はらわた
)
を傷めずにはいられぬものあるが
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
うしろから
忍
(
しの
)
ぶようにして
付
(
つ
)
いて
来
(
き
)
た
男
(
おとこ
)
は、そういいながら
徐
(
おもむ
)
ろに
頬冠
(
ほおかぶ
)
りをとったが、それは
春信
(
はるのぶ
)
の
弟子
(
でし
)
の
内
(
うち
)
でも、
変
(
かわ
)
り
者
(
もの
)
で
通
(
とお
)
っている
春重
(
はるしげ
)
だった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
怪人二十面相は、はたして、真珠のゾウを盗みだすために、恩田家へ
忍
(
しの
)
び込んできました。やっぱり、目に見えない透明人間としてやってきたのです。
おれは二十面相だ
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
人知
(
ひとし
)
れず
忍
(
しの
)
んできた同じような
苦
(
くる
)
しみとお
互
(
たがい
)
の
憐
(
あわ
)
れみの
気持
(
きもち
)
とが、悲しいやさしみをもって二人を
結
(
むす
)
びつけていた。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
これ実に仏陀及び祖師に対し我々が
黙視
(
もくし
)
するに
忍
(
しの
)
びないことである。どうかインドの国へ仏教を
布
(
し
)
きたいものである
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
事の実際をいえば
弱宋
(
じゃくそう
)
の大事すでに去り、百戦
必敗
(
ひっぱい
)
は
固
(
もと
)
より疑うべきにあらず、むしろ
恥
(
はじ
)
を
忍
(
しの
)
んで一日も
趙
(
ちょう
)
氏の
祀
(
まつり
)
を
存
(
そん
)
したるこそ利益なるに似たれども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
忍
(
しの
)
んでいられるようでもあるし、さっぱりとあきらめていられるようでもあるし、ちょっと見当がつきませんね。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
四晩に一度は
屹度
(
きつと
)
忍
(
しの
)
んで寢に來る丑之助——兼大工の弟子で、男振りもよく、年こそまだ二十三だが、若者中で一番幅の利く——の事も、無論考へられた。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
かれらはいいつけられて
為朝
(
ためとも
)
を
討
(
う
)
ちに
来
(
き
)
たというだけで、もとよりおれにはあだも
恨
(
うら
)
みもない
者
(
もの
)
どもだ。そんなものの
命
(
いのち
)
をこの上むだにとるには
忍
(
しの
)
びない。
鎮西八郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「
誰
(
た
)
そ我が國に來て、
忍
(
しの
)
び忍びかく物言ふ。然らば力競べせむ。かれ
我
(
あれ
)
まづその御手を取らむ
一二
」といひき。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
シャクが弟の屍体の傍に茫然と立っていた時、
秘
(
ひそ
)
かにデックの
魂
(
たましい
)
が兄の中に
忍
(
しの
)
び入ったのだと人々は考えた。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
内に深く残忍の想を
潜
(
ひそ
)
め、外又恐るべく悲しむべき
夜叉相
(
やしゃそう
)
を浮べ、
密
(
ひそ
)
やかに
忍
(
しの
)
んで参ると斯う云うことじゃ。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
フィリーモンは彼をお
忍
(
しの
)
びの殿様とか何とかいったような人と思ったわけではなく、寧ろどこかの非常な賢人で、お金やそのほか世間的な慾をすっかり捨てて
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
で、
身體
(
からだ
)
が
甚
(
ひど
)
く
凍
(
こゞ
)
えて
了
(
しま
)
つたので、
詮方
(
せんかた
)
なく、
夕方
(
ゆふがた
)
になるのを
待
(
ま
)
つて、こツそりと
自分
(
じぶん
)
の
室
(
へや
)
には
忍
(
しの
)
び
出
(
で
)
て
來
(
き
)
たものゝ、
夜明
(
よあけ
)
まで
身動
(
みうごき
)
もせず、
室
(
へや
)
の
眞中
(
まんなか
)
に
立
(
た
)
つてゐた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
これを
争
(
あらそ
)
う者あるべからず、
明
(
あきらか
)
に
認
(
みと
)
むるところなれども、日本の
武士道
(
ぶしどう
)
を以てすれば
如何
(
いか
)
にしても
忍
(
しの
)
ぶべからざるの場合を忍んで、あえてその
奇功
(
きこう
)
を
収
(
おさ
)
めたる以上は
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
此に於て
熬米
(
いりごめ
)
を
噛
(
か
)
み以て一時の
飢
(
うへ
)
を
忍
(
しの
)
び、一
気
(
き
)
走駆
(
さうく
)
して
直
(
ただ
)
ちに沿岸に
至
(
いた
)
り飯を
煑
(
に
)
んと
决
(
けつ
)
す、此に於て山を
降
(
くだ
)
り方向を
定
(
さだ
)
めて沼辺に
至
(
いた
)
らんとし、山を
下
(
くだ
)
れば前方の山又山
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
若
(
も
)
しミツシヨンより金を
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
が
精神上
(
せいしんじやう
)
彼
(
かれ
)
と
彼
(
かれ
)
の
教会
(
けうくわい
)
の上に
害
(
がい
)
ありと
信
(
しん
)
ずれば
直
(
たゞち
)
に之を
絶
(
た
)
つにあり、我れ
饑
(
う
)
ゆるとも可なり、我の
妻子
(
さいし
)
にして
路頭
(
ろとう
)
に
迷
(
まよ
)
ふに至るも我は
忍
(
しの
)
ばん
問答二三
(新字旧仮名)
/
内村鑑三
(著)
都鳥に似たる「ごめ」という
水禽
(
みずとり
)
のみ、黒み行く浪の上に
暮
(
く
)
れ残りて白く見ゆるに、都鳥も
忍
(
しの
)
ばしく、父母すみたもう方、ふりすてて来し方もさすがに思わざるにはあらず。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
余はかかる暗黒時代の恐怖と悲哀と疲労とを暗示せらるる点において、あたかも娼婦が
啜
(
すす
)
り泣きする
忍
(
しの
)
び
音
(
ね
)
を聞く如き、この
裏悲
(
うらがな
)
しく頼りなき色調を忘るる事
能
(
あた
)
はざるなり。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
わたしは、もう
我慢
(
がまん
)
がならなかった。わたしは彼女に最後のいとまも言わずに、このまま別れてしまうに
忍
(
しの
)
びなかった。わたしは折りをうかがって、傍屋へ出かけて行った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
階下
(
した
)
では皆な寝たらしい。
不図
(
ふと
)
、何か斯う
忍
(
しの
)
び
音
(
ね
)
に泣くやうな若い人の声が細々と耳に入る。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
晩秋の
黄昏
(
たそがれ
)
がはや
忍
(
しの
)
び寄ったような
翳
(
かげ
)
の中を
焦躁
(
しょうそう
)
の色を帯びた殺気がふと行き交っていた。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
また一種の大
才略
(
さいりゃく
)
ある人
辱
(
はじ
)
を
忍
(
しの
)
びて事を為す、妙(明徐楷が楊継成を助けざるが如し)。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
荒神様へ
詣
(
まい
)
るもよい。
序
(
ついで
)
にここを通ったらば、
霎時
(
しばらく
)
この海岸に立って、諸君が祖先の労苦を
忍
(
しの
)
んでもらいたい。しかし電車で
帰宅
(
かえり
)
を急ぐ諸君は、暗い海上などを振向いても見まい。
一日一筆
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
忍
常用漢字
中学
部首:⼼
7画
“忍”を含む語句
堪忍
忍耐
忍冬
忍返
耐忍
忍坂
不忍池
忍術
忍入
忍川
忍笑
忍耐力
陰忍
忍路
不忍
忍辱
残忍
勘忍
忍込
忍草
...