ちい)” の例文
「なんというおそろしいところだ。どうしてこんなところにまれてきたろう。」と、ちいさなあかはなは、自分じぶん運命うんめいをのろいました。
小さな赤い花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
庵主あんじゅさんは、よそゆきの茶色ちゃいろのけさをて、かねのまえにつと、にもっているちいさいかねをちーんとたたいて、おきょうみはじめた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
この少女があの家からいなくなることは、私にとって友を失うような、あいてがちいさく可憐なだけ寂しさも一層深いような気がした。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
母様ふくろさんに願っているのにおめえさんのような事を云われると、わっちア了簡がちいせえからすくんで仕舞って、ピクーリ/\としてなんにも云えないよ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一寸ちよつとらんなさい」と美禰子がちいさな声で云ふ。三四郎は及び腰になつて、画帖の上へかほを出した。美禰子のあたまで香水のにほひがする。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
騒ぎ立った烏組、そいつをグルグルとおっ取り巻き、切り込んで来た鷺組の群、白柄藤巻のちいサ刀、打ち振るに連れて白粉が散る。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし今の彼のさびしい腰のまわりには楊条もなかった。ちいがたなも見えなかった。彼は素足に薄いきたない藁草履わらぞうりをはいていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これを新沢という村の麹屋こうじやのことのように思っていたそうだが、実は非常に古くからあるちい子法師こぼうし、すなわち一寸法師の物語であった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
黙然と、うなずいて、彼はまだ着た儘であった大紋を脱ぎ、烏帽子えぼし、鼻紙、ちいがたな、扇子など、すべてを揃えて、田村家の家臣に渡した。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外国がいこく戦争せんそうをひきおこすようなことになり、よわくてちいさい日本にっぽんは、つよくておおきい外国がいこくに、うちまかされてしまうにちがいありません。
こういって、おかあさんはちいさなおとこってて、ばらばらにりはなして、おなべへぶちこんで、ぐつぐつてスープをこしらえました。
かまおもしをしてしまうと、こんどはまた、おにわからえだをたくさんあつめてて、ちいさくっては、おかまの下にれました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こんな看板かんばんけたうちが一けんしかないほどたうげちいさなむらでした。そこに人達ひとたちはいづれもやまうへたがやすお百姓ひやくしやうばかりでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
とっても、子供はまだちいせえと來てるんだからな。物には潮時ってものがあって、ぼろ家が燃え出したからには、どうにも消しようがねえからな。
かれくびにはちいさい腫物はれもの出来できているので、つね糊付のりつけシャツはないで、やわらかな麻布あさか、更紗さらさのシャツをているので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ここでちょっと申添もうしそえてきたいのは、わたくし修行場しゅぎょうば右手みぎてやま半腹はんぷくる、あのちいさい竜神りゅうじんやしろのことでございます。
ふと、かがみのおもてからはなしたおせんのくちびるは、ちいさくほころびた。と同時どうじに、すりるように、からだ戸棚とだなまえ近寄ちかよった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
しかし、それほど立派りっぱ一糸乱いっしみだれないなかに、一つだけいけないところがあります。エチエンヌがちいさすぎるのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
わたしかんがえますところではあれもちますにつれて、うつくしくなりたぶんからだもちいさくなることでございましょう。
こっそりあの子に会いに来るちいちゃな子もございます。それから、その子よりは大きい子で、あの子の話をきもせず聞いている子も一人ございます。
しからば北歐羅巴きたようろつぱ方面はうめんはどうかと見遣みやるに、この方面はうめんついてはわたしあまおほらぬが、えうするに幼稚えうちきはまるものであつて、規模きぼきはめてちいさいやうである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
然うさ、すべて人間といふものは然うしたものさ。ンのちいツぽけな理由からして素敵と大きな事件を惹起ひきおこすね。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「オちいサクッテイラッシャルノニ、ヤッパリオ爺チャンノコトヲ心配ナスッテイラッシャルンデゴザイマスネ」
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
貧乏びんぼうなればこそしゞみかつがせて、此寒空このさむそらちいさなあし草鞋わらじをはかせる親心おやこゝろさつしてくだされとて伯母おばなみだなり。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いくら惡人あくにんでも、親子おやこじやうはまた格別かくべつへ、正直しやうじきなる亞尼アンニーは「一寸ちよつとで。」とそのをば、其邊そのへんちいさい料理屋れうりやれてつて、自分じぶんさびしい財嚢さいふかたむけて
桐油合羽とういうがつぱちいさくたゝんで此奴こいつ真田紐さなだひもみぎつゝみにつけるか、小弁慶こべんけい木綿もめん蝙蝠傘かうもりがさを一ぽん、おきまりだね。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また平均へいきんよりもおほきな噴火ふんかをなしたのち休息期きゆうそくきながく、反對はんたいちいさな噴火ふんかをなしたのち休息期きゆうそくきみじかい。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
地球ちきゆうからえる火星くわせいくろいところは、だからうみといふよりもぬまか ちいさなぬまあつまったのか、かわだ。)
そこらがまだまるつきり、たけたかくさくろはやしのままだつたとき、嘉十かじふはおぢいさんたちと北上川きたかみがはひがしからうつつてきて、ちいさなはたけひらいて、あはひえをつくつてゐました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ちいさな飼主かひぬしのないねこ、まだ純眞じゆんしん態度たいどひとおそれないのみか、ひとなつかしい調子てうしつてくる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
雄が少しちいせえんだと聞きました、そんなことよりほかには、くわしいことはあんまり存じませんね
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしこっちも武士の卵、ちいさ刀に手をかけてこわごわながら近づくと、先も刀を押えて用心腰、いよいよ双方すれ違う途端、急に恐ろしくなって僕はパッと逃げ出す。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
「かしこまりました」それから懐中かいちゅうからちいさなきいろな紙で包んだ物を出して、「これは、てまえ隠居の家伝でござりまして、血の道の妙薬でござります、どうかお岩さまへ」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ちいさいくちが一せいにこたへました。母燕おやつばめはたまらなくなつて、みんな一しよにきしめながら
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
着て、金庫の後ろにかくれていたんだ。おいらみたいな、ちいちゃい子どもでなけりゃ、はいれはしないよ。だから、二十めんそうもゆだんしていたんだよ。さあ、これ、返すよ
ふしぎな人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一休いっきゅうさんは やましろのくに(いまの、きょうとふ)たまぎむら と いう ところに、しゅうおんあん と いう ちいさな いおりを たててもらって すんで いました。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
ちいさな草屋のぬれえんに立って、田圃たんぼを見渡す時、彼は本郷座ほんごうざの舞台から桟敷や土間を見渡す様な気がして、ふッとき出す事さえもあった。彼は一時片時も吾を忘れ得なかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あのおおきな身体からだひと非常ひじょうせてちいさくなってかおにかすかな赤味あかみがあるくらいでした。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ちいっぽけな旦那だんなで、黒ちりめんの羽織で、お刀がチョコンと突っぱって、その風采ようすのみっともなさってったら、あたくしが吹きだしますとね、その人が後を振りむきましたのですよ
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
難有ありがたいと、それをかばんれてると、ふるひかひつて女土方をんなどかたが、ちいさなこゑで。
容疑ようぎはぜつたいにかからないものときめていたのですが、そんなちいさな不注意ふちゅういがもとで、とうとううたがいがかかつたというのは、正直しょうじきなところ、まことに残念ざんねんでもあり、またわるいことは
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
紫色むらさきいろちいさいかたくりの花がくなんていふことをかんがへると、まつたくたまらない。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
でもこのちいちゃい黒子が、どうしてもとれやしないのよと言って笑ったんですの、そのときによく注意していたと思いますが、別に傷もおできも見えなかった、ような気がしますけれど……
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やつと灌木くわんぼくの高さしか無いひひらぎよ、ちいさい※手くびきり、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
つち空気くうきや水のいぶき、またはやみの中にうごめいてる、んだりはったりおよいだりしているちいさな生物いきものの、歌やさけびや音、または晴天せいてんや雨の前兆ぜんちょう、またはよる交響曲シンフォニーかぞえきれないほどの楽器がっきなど
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
いのちに至る路はせまく、その門はちいさし。その路を得るものまれなり」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ちいさなる女の友の足のうら指につめたく
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
まいるにもちいさき墓のなつかしく
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
まだちいさい。
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
そこで、ふたりは、かぜかれながらそらんできましたが、ちいさなこちょうは、おくれがちなので、せみはもどかしくおもいました。
二つの運命 (新字新仮名) / 小川未明(著)