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先
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まづ
ふりがな文庫
“
先
(
まづ
)” の例文
厚
(
あつく
)
して問るべし
先
(
まづ
)
第一に天一坊の
面部
(
めんぶ
)
に
顯
(
あら
)
はれし
相
(
さう
)
は存外の事を
企
(
くはだ
)
つる相にて人を僞るの氣
慥
(
たしか
)
なり又眼中に
殺伐
(
さつばつ
)
の氣あり是は他人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
風呂場に
入
(
い
)
れば、
一箇
(
ひとり
)
の客
先
(
まづ
)
在りて、
未
(
ま
)
だ
燈点
(
ひとも
)
さぬ
微黯
(
うすくらがり
)
の
湯槽
(
ゆぶね
)
に
漬
(
ひた
)
りけるが、何様人の
来
(
きた
)
るに
駭
(
おどろ
)
けると
覚
(
おぼし
)
く、
甚
(
はなは
)
だ
忙
(
せは
)
しげに身を起しつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それは唯今詳しい事は申し上げてゐる暇もございませんが、主な話を御耳に入れますと、大体
先
(
まづ
)
かやうな次第なのでございます。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は博文館で懲り/″\してゐますから早速辯護士を頼んで掛合つて貰ひ
先
(
まづ
)
今日までのところでは別に損害は受けてゐません。
出版屋惣まくり
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
妻
(
つま
)
はお
光
(
みつ
)
と
云
(
い
)
つて、
今歳
(
ことし
)
二十になる。
何
(
なに
)
かと
云
(
い
)
ふものゝ、
綺緻
(
きりやう
)
は
先
(
まづ
)
不足
(
ふそく
)
のない
方
(
はう
)
で、
体
(
からだ
)
の
発育
(
はついく
)
も
申分
(
まをしぶん
)
なく、
胴
(
どう
)
や四
肢
(
し
)
の
釣合
(
つりあひ
)
も
幾
(
ほとん
)
ど
理想
(
りさう
)
に
近
(
ちか
)
い。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
飛衞
(
ひゑい
)
は
昔
(
いにしへ
)
の
善
(
よ
)
く
射
(
い
)
るものなり。
同
(
おな
)
じ
時
(
とき
)
紀昌
(
きしやう
)
といふもの、
飛衞
(
ひゑい
)
に
請
(
こ
)
うて
射
(
しや
)
を
學
(
まな
)
ばんとす。
教
(
をしへ
)
て
曰
(
いは
)
く、
爾
(
なんぢ
)
先
(
まづ
)
瞬
(
またゝ
)
きせざることを
學
(
まな
)
んで
然
(
しか
)
る
後
(
のち
)
に
可言射
(
しやをいふべし
)
。
術三則
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
友は
先
(
まづ
)
わが衣の
汚
(
けが
)
れたるを脱がしめ、わが旅の汗を風呂に流がさしめぬ。われはいかに喜びてその清き風呂に浴し、その厚き待遇に接したりけむ。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
先の石段を下りるや若き女は
先
(
まづ
)
僕を乘らして後、
纜
(
もやひ
)
を解いてひらりと飛び乘り、さも輕々と櫓を
操
(
あやつ
)
りだした。
少年
(
こども
)
ながらも僕は此女の
擧動
(
ふるまひ
)
に驚いた。
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
だが父樣はどうして靜夫樣と御知りなすつたのだろふ、
兼
(
かね
)
知
(
しつ
)
て居て、知ている所か私柄と、いやまて思は思を
生
(
うん
)
で心經の高ぶつて居今、
先
(
まづ
)
何事も胸にと
うづみ火
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
『ああ、朱雲からだ!』と自分は思はず声を出す。裏を返せば、『岩手県岩手郡S——村尋常高等小学校内、新田白牛様』と
先
(
まづ
)
以て真面目な行書である。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
養竹啓。今日は駿河路と奉摟指候。
定而
(
さだめて
)
不二は大きからうと奉存候。
御上
(
おんかみ
)
益御きげん能奉恐悦候。大木斎兵衛歿す。木挽町
先
(
まづ
)
は居なりの由、路考半分すけ也。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
地気
上騰
(
のぼる
)
こと多ければ
天
(
てん
)
灰色
(
ねずみいろ
)
をなして雪ならんとす。
曇
(
くもり
)
たる
雲
(
くも
)
冷際
(
れいさい
)
に
到
(
いた
)
り
先
(
まづ
)
雨となる。此時冷際の寒気雨を
氷
(
こほら
)
すべき
力
(
ちから
)
たらざるゆゑ
花粉
(
くわふん
)
を
為
(
な
)
して
下
(
くだ
)
す、
是
(
これ
)
雪
(
ゆき
)
也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
拝見
(
はいけん
)
だけ
仰
(
おほ
)
せ
付
(
つ
)
けられて
下
(
くだ
)
さいましと
云
(
い
)
つて、
先
(
まづ
)
頭
(
かしら
)
から
先
(
さき
)
へ
眼
(
め
)
を
附
(
つ
)
け、それから
縁
(
ふち
)
を見て、
目貫
(
めぬき
)
から
何
(
ど
)
うも誠にお
差
(
さし
)
ごろに、
定
(
さだ
)
めし
御中身
(
おなかみ
)
は
結構
(
けつこう
)
な事でございませう
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
いかさま、
先
(
まづ
)
第一
木彫
(
きぼり
)
の人形か、其次は………イヤ
中店
(
なかみせ
)
のおもちやを一手買占も
出
(
でき
)
るだらうな。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
お
召物
(
めしもの
)
が
濡
(
ぬ
)
れますと
言
(
い
)
ふを、いゝさ
先
(
まづ
)
させて
見
(
み
)
てくれとて
氷嚢
(
こほりぶくろ
)
の
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
いて
水
(
みづ
)
を
搾
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
す
手振
(
てぶ
)
りの
無器用
(
ぶきよう
)
さ、
雪
(
ゆき
)
や
少
(
すこ
)
しはお
解
(
わか
)
りか、
兄樣
(
にいさん
)
が
頭
(
つむり
)
を
冷
(
ひや
)
して
下
(
くだ
)
さるのですよとて
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
先
(
まづ
)
気
(
き
)
を
丹田
(
たんでん
)
に落つけ、
震
(
ふる
)
ふ足を踏しめ、づか/\と青木子の面前にすゝみ出でゝ怪しき目礼すれば、大臣は眼鏡の上よりぢろりと一
瞥
(
べつ
)
、むつとしたる顔付にて答礼したまふ。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
心を留むるとにはあらざれど、何としも無く猶見てあるに、やがて月の及ばぬ闇の方に身を入れたれば定かには知れぬながら、此御堂に打向ひて一度は
先
(
まづ
)
拝み奉り、さて静〻と上り来りぬ。
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
吉之助
(
西郷隆盛
)
翁ハ、先日土佐ニ行、
老侯
(
山内容堂
)
ニ
謁
(
エツ
)
し候所、実ニ同論ニて土老侯も三月十五日までに大坂まで被
レ
出候よし、薩侯にも急〻大坂まで参り土老と一所に京方に押入、
先
(
まづ
)
日州の大本を立候との事
手紙:058 慶応三年三月二十日 三吉慎蔵あて
(新字旧仮名)
/
坂本竜馬
(著)
それで時子を杉本さんに任せて、一
先
(
まづ
)
明けといた
家
(
うち
)
に帰ることにした。
秋は淋しい
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
たとひ
潰倒
(
くわいたう
)
しても
人
(
ひと
)
の
生命
(
せいめい
)
に
危害
(
きがい
)
を
與
(
あたふ
)
ることは
先
(
まづ
)
ないといつてもよい。
日本建築の発達と地震
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
他人に物を云ひかける時には
先
(
まづ
)
自分から名を名乗るべきだ。
祖母の教訓
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「いや、
先
(
まづ
)
ないな」
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ひそめ
彼
(
あの
)
御方の儀に付ては
一朝一夕
(
いつてういつせき
)
に
述
(
のべ
)
がたし
先
(
まづ
)
は
斯樣々々
(
かやう/\
)
の御身分の御方なりとて
終
(
つひ
)
に天一坊と赤川
大膳
(
だいぜん
)
に引合せ
則
(
すなは
)
ち御
墨付
(
すみつき
)
と御短刀を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
先
(
まづ
)
かう云ふ考でこの商売に入つたのでありますから、実を申せば、貴方の貸して遣らうと
有仰
(
おつしや
)
る資本は欲いが、人間の貴方には用が無いのです
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
先
(
まづ
)
第一に
何故
(
なぜ
)
大殿様が良秀の娘を御焼き殺しなすつたか、——これは、かなはぬ恋の恨みからなすつたのだと云ふ噂が、一番多うございました。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
思
(
おも
)
はず
飛上
(
とびあが
)
つて
総身
(
そうしん
)
を
震
(
ふる
)
ひながら
此
(
こ
)
の
大枝
(
おほえだ
)
の
下
(
した
)
を一
散
(
さん
)
にかけぬけて、
走
(
はし
)
りながら
先
(
まづ
)
心覚
(
こゝろおぼえ
)
の
奴
(
やつ
)
だけは
夢中
(
むちう
)
でもぎ
取
(
と
)
つた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
霰
(
あられ
)
の如き
間投詞
(
かんたうし
)
の互に
交
(
かは
)
されたる後、
灑
(
すゝ
)
ぎの水は汲まれ、
草鞋
(
わらじ
)
は
脱
(
ぬ
)
がれ、其儘奧の
室
(
へや
)
に案内せられたるが、我等二人は
先
(
まづ
)
何を語るべきかを知らざりき。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
親類の顔に美くしきも無ければ見たしと思ふ念もなく、裏屋の友達がもとに今宵約束も御座れば、一
先
(
まづ
)
お
暇
(
いとま
)
として
何
(
いづ
)
れ春永に
頂戴
(
ちやうだい
)
の数々は願ひまする、折からお
目出度
(
めでたき
)
矢先
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
先
(
まづ
)
展
(
のし
)
昆布を出す。浴後昼食
畢
(
をはつ
)
て、先当地之
産土神
(
うぶすながみ
)
下之御霊
(
しものごりやう
)
へ参詣、(中略)北野天満宮へ参詣、(中略)貝川橋を渡り、平野神社を拝む。境内桜花多く、遊看の
輩
(
ともがら
)
男女
雑閙
(
ざつたうす
)
。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
其
(
それ
)
とも
此様
(
こん
)
なのが
実際
(
じつさい
)
に
幸福
(
かうふく
)
なので、
私
(
わたし
)
の
考
(
かんが
)
へてゐた
事
(
こと
)
が、
分
(
ぶん
)
に
過
(
す
)
ぎたのかも
知
(
し
)
れぬ。が、これで一
生
(
しやう
)
続
(
つゞ
)
けば
先
(
まづ
)
無事
(
ぶじ
)
だ。
熱
(
あつ
)
くもなく
冷
(
つめた
)
くもなし、
此処
(
こゝ
)
らが
所謂
(
いはゆる
)
平温
(
へいおん
)
なのであらう。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
そこで
先
(
まづ
)
洋服から靴まで、日頃ほしいと思つてゐたものを買ひ揃へて身なりをつくり、毎日働きに行つた
先々
(
さき/″\
)
の闇市をあさつて、食べたいものを食べ放題、酒を飮んで見ることもあつた。
羊羹
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
先
(
まづ
)
此方
(
こちら
)
へと、
鑑定
(
めきゝ
)
をして
貰
(
もら
)
ふ
積
(
つも
)
りで、
自慢
(
じまん
)
の
掛物
(
かけもの
)
は
松花堂
(
しやうくわだう
)
の
醋吸
(
すすひ
)
三
聖
(
せい
)
を見せるだらう、
宜
(
よ
)
い
掛物
(
かけもの
)
だ、
箱書
(
はこがき
)
は
小堀
(
こぼり
)
権
(
ごん
)
十
郎
(
らう
)
で、
仕立
(
したて
)
が
慥
(
たし
)
か
宜
(
よ
)
かつたよ、
天地
(
てんち
)
が
唐物緞子
(
からものどんす
)
、
中
(
なか
)
が
白茶地
(
しらちやぢ
)
の
古金襴
(
こきんらん
)
で。
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
錢屋方へつかはさる兩人の與力は旅館に到り見るに
嚴重
(
げんぢう
)
なる有樣なれば
粗忽
(
そこつ
)
の事もならずと
先
(
まづ
)
玄關
(
げんくわん
)
に案内を
乞
(
こひ
)
重役
(
ぢうやく
)
に對面の儀を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
が、その自分も無暗に音楽会を聞いて歩いただけで、鑑賞は元より、了解する事も
頗
(
すこぶる
)
怪しかつた。
先
(
まづ
)
一番よくわかるものは、リストに止めをさしてゐた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
貫一は彼を
以
(
も
)
て女を
偸
(
ぬす
)
みて
奔
(
はし
)
る者ならずや、と
先
(
まづ
)
推
(
すい
)
しつつ、
尚
(
な
)
ほ如何にやなど、飽かず疑へる間より、
忽
(
たちま
)
ち一片の反映は
閃
(
きらめ
)
きて、
朧
(
おぼろ
)
にも彼の胸の
黯
(
くら
)
きを照せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その流るゝやうな涼しい光は
先
(
まづ
)
第一に
三峯
(
みつみね
)
の
絶巓
(
いたゞき
)
とも覚しきあたりの
樹立
(
こだち
)
の上を
掠
(
かす
)
めて、それから山の陰に
偏
(
かたよ
)
つて流るゝ尾谷の渓流には及ばずに直ちに丘の
麓
(
ふもと
)
の村を照し
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
是非お迎ひにとならば
老僕
(
おやぢ
)
が参らん、
先
(
まづ
)
待給へと止めらるゝ憎くさ、
真実
(
まこと
)
は此雪に
宜
(
よ
)
くこそと賞められたく、是非に我が身行きたければ、其方は知らぬ顔にて居よかしと言ふに
雪の日
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
次に「清右衞門樣
先
(
まづ
)
はどうやらかうやら江戸に御辛抱の御樣子故御案じ
被成間敷候
(
なさるまじくそろ
)
」
云々
(
しか/″\
)
と云ふ一節がある。此清右衞門と云ふ人の事蹟は、棠園さんの手許でも
猶
(
なほ
)
不明の
廉
(
かど
)
があるさうである。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
先
(
まづ
)
以
(
もつ
)
て、
修善寺
(
しゆぜんじ
)
へ
行
(
ゆ
)
くのに
夜汽車
(
よぎしや
)
は
可笑
(
をかし
)
い。
其處
(
そこ
)
に
仔細
(
しさい
)
がある。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
詩は何よりも
先
(
まづ
)
音楽的ならむことを。ポール、ヴヱルレーヌ
偏奇館吟草
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
但
(
ただし
)
、万一
記
(
しる
)
し洩れも有之候節は、後日
再応
(
さいおう
)
書面を以て言上仕る可く、
先
(
まづ
)
は私覚え書斯くの如くに御座候。以上
尾形了斎覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
先
(
まづ
)
最初に小さい
風情
(
ふぜい
)
ある渓橋、その
畔
(
ほとり
)
に終日動いて居る水車、
婆様
(
ばあさん
)
の
繰車
(
いとぐるま
)
を回しながら片手間に商売をして居る駄菓子屋、
養蚕
(
やうさん
)
の板籠を山のごとく積み重ねた間口の広い家
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
いゝさ
先
(
まづ
)
させて見てくれろとて氷袋の口を開いて水を搾り出す手振りの無器用さ、雪や少しはお解りか、兄樣が
頭
(
つむり
)
を冷して下さるのですよとて、母の親心付れども何の事とも聞分ぬと覺しく
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
(中略)三八は身ごしらへして、娘うちつれ出でにける。名にしおふ
難波
(
なには
)
の
大湊
(
おほみなと
)
、
先
(
まづ
)
此所
(
ここ
)
へと心ざし、少しのしるべをたずね、それより茶屋奉公にいだしける。
案頭の書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分の眼には
先
(
まづ
)
烟
(
けむり
)
の
籠
(
こも
)
つた、
厭
(
いや
)
に
蒸熱
(
むしあつ
)
い空気を
透
(
とほ
)
して、薄暗い古風な
大洋燈
(
おほランプ
)
の下に、一場の
凄
(
すさま
)
じい光景が
幻影
(
まぼろし
)
の如く映つたので、中央の柱の傍に座を占めて居る一人の
中老漢
(
ちゆうおやぢ
)
に
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
いいさ
先
(
まづ
)
させて見てくれろとて氷袋の口を開いて水を
搾
(
しぼ
)
り出す手振りの無器用さ、雪や少しはお解りか、
兄様
(
にいさん
)
が
頭
(
つむり
)
を冷して下さるのですよとて、母の親心
付
(
づけ
)
れども何の事とも
聞分
(
ききわけ
)
ぬと覚しく
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
その障子の方を枕にして、
寂然
(
じやくねん
)
と横はつた芭蕉のまはりには、
先
(
まづ
)
、医者の
木節
(
もくせつ
)
が、夜具の下から手を入れて、間遠い脈を
守
(
も
)
りながら、浮かない眉をひそめてゐた。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わが友はこの福島町なる
奇應丸
(
きおうぐわん
)
の
本舖
(
ほんぽ
)
高瀬なにがしの家に
滯
(
とゞま
)
れりと聞くに、町に
入
(
い
)
るや
否
(
いな
)
、とある家に就きて
先
(
まづ
)
その家の所在を尋ねしに、
朴訥
(
ぼくとつ
)
なる一人の
老爺
(
らうや
)
わざ/\奧より店先まで出で來りて
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
何
(
なん
)
とせん
扨
(
さて
)
も
人妻
(
ひとづま
)
となりての
心得
(
こゝろえ
)
は
娘
(
むすめ
)
の
時
(
とき
)
とは
異
(
こと
)
なる
物
(
もの
)
とか
御氣
(
おき
)
に
入
(
い
)
らば
宜
(
よ
)
けれど
若
(
も
)
し
飽
(
あ
)
かれなば
悲
(
かな
)
しき
事
(
こと
)
よ
先
(
まづ
)
それよりも
覺束
(
おぼつか
)
なきは
彼
(
あ
)
の
文
(
ふみ
)
の
御返事
(
おへんじ
)
なり
御覽
(
ごらん
)
にはなりたり
共
(
とも
)
其
(
その
)
まゝ
押
(
おし
)
まろめ
給
(
たま
)
ひしやら
却
(
かへ
)
りて
御機嫌
(
ごきげん
)
を
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
先
(
まづ
)
Durtal と田山花袋氏との滑稽な対照を思ひ出させて、
徒
(
いたづら
)
に我々の冷笑を買ふばかりだつた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
先
常用漢字
小1
部首:⼉
6画
“先”を含む語句
先生
先方
先刻
先達
先日
最先
先頭
先駆
水先案内
真先
先祖
先立
先々
一先
爪先
先登
行先
先月
先驅
切先
...