はや)” の例文
やまうえへとつづいているみちは、かすかにくさむらのなかえていました。そして、やまいただき灰色はいいろくもって、雲脚くもあしが、はやかったのです。
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
えゝも、乳母うばめは跛足ちんばぢゃ! こひ使者つかひには思念おもひをこそ、思念おもひのこよるかげ遠山蔭とほやまかげ追退おひのける旭光あさひはやさよりも十ばいはやいといふ。
りませんよ。おっかさんが風邪かぜいて、ひとりでててござんすから、ちっともはやかえらないと、あたしゃ心配しんぱいでなりませんのさ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ひっきりなし、川のみずはくるくるまわるようなはやさで、うずをまいて、ふくれがり、ものすごいおとててわきかえっていました。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしはおまえさんのためをおもってそうってげるんだがね。とにかく、まあ出来できるだけはやたまごことや、のどならことおぼえるようにおし。
そこで私は、私の頭腦あたまに、その返答を速く探せ、と命令した。頭腦づなうは、次第にはやく働き出した。私は、頭にも顳顬こめかみにも脈打つのを感じた。
豊雄、刀自とじにむかひて、兄の見とがめ給はずとも、みそかに姉君を一五三かたらひてんと思ひ設けつるに、一五四はやさいなまるる事よ。
こうした苦しみがいつまでも続いたら、自分は遅かれはやかれ得体えたいの知れない幽霊のために責め殺されてしまうかも知れない。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
初期微動しよきびどう主要動しゆようどう比較ひかくしてだいなるはやさをつてゐるが、しかしながら振動しんどうおほいさは、反對はんたい主要動しゆようどうほうかへつてだいである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その連中の先頭に立った間柄まがら助次郎、いつぞやの恨みもあり、今またはやまって不覚をとった不面目をそそごうとあせる。——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
金色こんじきに秋の日射の斜なし澄みとほる中、かなかなは啼きしきるなり、きて啼き刻むなり、二つ啼き、一つ啼き、また、こもごもに啼きはやむなり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なん審問しんもん?』あいちやんはあへぎ/\けました、グリフォンはたゞ『それッ!』とさけんだのみで、益々ます/\はやはしりました、かぜうたふし、——
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
目がくらくらする様な気になりながら私は一番奥に居る事だと思ったので西洋間へはやい足どりで入った。と、私は棒立ちに立ちすくんでしまった。
悲しめる心 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
じつ不思議ふしぎだ——あの船脚ふなあしはやことは——』と右手ゆんで時辰器じしんき船燈せんとうひかりてらして打眺うちながめつゝ、じつかんがへてるのは本船ほんせん一等運轉手チーフメートである。つゞいて
そんなら何がその川の水にあたるかといますと、それは真空しんくうという光をあるはやさでつたえるもので、太陽たいよう地球ちきゅうもやっぱりそのなかにかんでいるのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どんなはやさかなだって蛾次がじさんの石からそれたことはありませんよ。こんど親方にもその秘伝ひでんを教えてやろうか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
競馬ではないがとかくはやり勝ちな連中を、ランクサーム! ランクサーム! とガイドに注意されて静々と
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
櫓の音も掛声もしないのに、船の姿や人の影だけがありありと見えていて、その上、近寄りもしなければ遠ざかりもしないで、いつも同じはやさでついて来ます。
月明 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
私は人のいない船室キャビンでこれを書いている。今もなお時どきにびくりとしたり、または頭の上の甲板に死んだ人の神経的なはや跫音あしおとを聞くように思ったりして——。
こちらの世界せかいではおそあるくも、はやあるくも、すべて自分じぶん勝手かってで、そこはまことに便利べんりでございます。
アッとさけもなく、うしなつたラランは、おそろしいはやさでグングンと下界したちていつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
賃錢ちんせんによつて土地とちふかくもあさくもはやくもおそくも仕上しあげることをつてた。竹林ちくりん開墾かいこんしたときかれぢたまゝつぼおほきさをたゞつのかたまりおこしたことがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うすい金属でできた羽のようなものが、目にもとまらぬはやさでまわっているのも見えます。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
奥山おくやま真木まき板戸いたどおとはやいもがあたりのしも宿ぬ 〔巻十一・二六一六〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
エチエンヌは非常な勇気ゆうきふるい起こします。一生懸命しょうけんめい、足をはやめます。みじかあしせいいっぱいにひろげます。まだその上に、うでります。しかし、なんといっても、ちいさすぎます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
一時の血気にはやって、兄上の御迷惑になるとも知らず、一味に加担しましたのは、重々私の心得違いでした。では、お言葉に従って、大石殿始め同志の方々には相すみませぬが、誓約を
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「ええ、そうですよ。人もいなければ動物もいません。ただ金貨きんかだけがふわふわとかなりのはやさでんでるんですよ。わたしが近づいたとたんに、どこへともなく消えてしまったんです」
亡者もうじゃは足がはやく、一般の苦力さえも知らないような近路をして走り廻る。私はもう一度大きい声を立てて笑ったが、なんだか気違いになりそうな気がしたので、あわててその笑い声をおさえた。
棹取りに はやけむ人し わがもこ。 (歌謠番號五一)
青駒のあがきをはやみ雲居にぞ妹があたりを過ぎて來にける
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あゆみもいとゞはやまさる
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
勸めて看病かんびやう暫時しばし油斷ゆだん有ね共如何成事にや友次郎が腫物しゆもつは元の如くにて一かうくちあかいたみは少づつゆるむ樣なれども兎角に氣分きぶんよろしからずなやみ居けるぞいたましや友次郎も最早日付にしても江戸へつかるゝ處迄て居ながらなさけなき此病氣びやうきと心のみはやれども其甲斐かひなく妻のお花も夫の心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぢゃによって、おゆるしなされ、はやなびいたをば浮氣うはきゆゑとおもうてくださるな、よるやみ油斷ゆだんして、つい下心したごゝろられたゝめぢゃ。
からすは、かもめのようにそらたかく、またはやぶことはできませんでした。それでも幾日いくにちかかかって、にぎやかなみやこ到着とうちゃくいたしました。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
安心あんしんはしているけれど、ちっともはやたいのが人情にんじょうじゃないか。野暮やぼをいわずに、ちょいとでいいから、ここでおせよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
何時間なんじかんかじっとすわって様子ようすていましたが、それからあたりを丁寧ていねいにもう一ぺん見廻みまわしたのちやっとあがって、今度こんど非常ひじょうはやさでしました。
これによつて地球ちきゆう内部ないぶとほるときの地震波ぢしんぱはやさは、地球ちきゆう鋼鐵こうてつとした場合ばあひ幾倍いくばいにもあたることがわかり、また地球ちきゆう内部ないぶてつしんからつてをり
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あるむらなかに、大きな川がながれていました。その川はたいへんながれがつよくてはやくて、むかしから代々だいだいむらの人が何度なんどはしをかけても、すぐながされてしまいます。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はちすずめのめぐりはあまりはやくてただルルルルルルと鳴るぼんやりした青い光のにしか見えませんでした。
是君を先にし、臣を後にするなり。汝はやひとの国に去りて害をのがるべしといへり。此の事、一三五と宗右衛門にたぐへてはいかに。丹治只かしられてことばなし。
四邊あたり部室へやでは甲乙たれかれかたこゑかまびすしく、廊下ろうかはしひと足音あしおともたゞならずはやい、濱島はまじまむかしから沈着ちんちやくひとで、何事なにごとにも平然へいぜんかまへてるからそれとはわからぬが
それは、秩父のはやといふ若者でありました。馬術にすぐれ、ことに、足が早いので知られてゐました。
鬼カゲさま (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
總ての神經を何かにむごく使ひ過ぎたので、身體全體はすつかり暫らく休めなくてはならないと云つた。病氣はない。私の恢復は一度恢復し始めたらはやからうと云つた。
脚のはやい串崎船は、ひッきりなしに、前方の状況を、中軍のお座船へ、報告に漕ぎ返してくる。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くどくも言うようじゃが、お前のお師匠さまは遅かれはやかれ破滅の身の上じゃ。宇治の左大臣殿がいかほど贔屓ひいきせられても、理を非にまぐることは出来ない。そのまきぞえを
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
青駒あをこま足掻あがきはや雲居くもゐにぞいもがあたりをぎてにける 〔巻二・一三六〕 柿本人麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
毎日まいにちぜんならべると屹度きつとひがんだやうなかほをされるので、卯平うへいは一にちはやべつつてたいこゝろからさらつたかべためふたゝくらくなつた小屋こやあかるくるのが遲緩もどかしさにへぬのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
怪物はおそろしいはやさで、岩山の上にのぼりつきました。そして、次郎君が森の中へにげこんでいくのをみつけると、パッと四つんばいになって、そのあとをおいました。その速いこと。
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あまりにはやく冷えてこゞれば霰の玉しら玉のごともころげたりけり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あゆみもいとゞはやまさる
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)