しま)” の例文
南洋なんようのあまり世界せかいひとたちにはられていないしまんでいる二人ふたり土人どじんが、難船なんせんからすくわれて、あるみなといたときでありました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
四国しこくしまわたって、うみばたのむら托鉢たくはつしてあるいているうちに、ある日いつどこでみち間違まちがえたか、山の中へまよんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
八百八しましまあひだを、自由じいう青畳あをだゝみうへのやうにぐんだとふから、しま一つ一つおもむきのかはるのも、どんなにいゝかれやしない。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのまっくらなしまのまん中に高い高いやぐらが一つ組まれて、その上に一人のゆるふくて赤い帽子ぼうしをかぶった男が立っていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もと豊後ぶんご杵築きつきの藩士で、大阪なかしまにあった藩の蔵屋敷の定詰じょうづめであったが、御一新ごいっしん後大阪府の貫属かんぞくとなって江戸ぼりに住んでいた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これが西暦せいれき千八百八十三年せんはつぴやくはちじゆうさんねん大爆裂だいばくれつをなして、しま大半たいはんばし、あとにはたかわづか八百十六米はつぴやくじゆうろくめーとる小火山島しようかざんとうのこしたのみである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
お角はその時、はじめて甚三郎の膝の上の短銃に気がついて、そうしてその可愛らしい種子たねしまであることに、驚異の眼を向けました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
青年は取りつくしまがなかった。彼はとうとう、泣き出し相になって、何か訳の分らぬ事をわめきながら、出口の方へ走って行った。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
筑前ちくぜん筑後ちくご肥前ひぜん肥後ひご豊前ぶぜん豊後ぶんご日向ひゅうが大隅おおすみ薩摩さつまの九ヵ国。それに壱岐いき対馬つしまが加わります。昔は「筑紫ちくししま」と呼びました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
置捨に致たるに相違有まじ其上そのうへしまの親住吉町吉兵衞よりの歎願書たんぐわんしよも是ありそれも序に讀聞せよと云るゝに又々目安方めやすかたの者右の書付かきつけ讀上よみあげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今日はふだんとちがつて、君が近々きんきんに伊豆の何とか云ふ港から船を出して、女護によごしまへ渡らうと云ふ、その名残りの酒宴だらう。
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから計算してみると、大垣から見た山頂の仰角は、相当に大きく、たとえば、しまから富士を見るよりは少し大きいくらいである。
伊吹山の句について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
武士ぶしをすてて竹生島ちくぶしまにかくれた時、そして、地蔵菩薩じぞうぼさつの愛のたびしまをでたとき、かならず、終生しゅうせいかたなくまいぞと心にちかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とほざかるが最期さいごもうゑんれしもおなじことりつくしまたのみもなしと、りすてられしやうななげきにおそのいよ/\心細こヽろぼそ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おとぼけなすっちゃいけません。やみのない女護にょごしま、ここから根岸ねぎしけさえすりゃァ、をつぶってもけやさァね」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あれは子ープルスのいへの三がいからへるエリノしまにそのまんまですこと此方こなたのはあたま禿げた老爺おぢいさんがさかなつてかたちによくますねえ。
肥前値賀ちかしま美々良久みみらくの崎などもまさしくその一例であるが、是とよく似た構成をもつものは、『倭名鈔わみょうしょう』以前からの諸国の郡郷名に多い。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
隣の小母さんの家と私の家の間に竹の木戸が出来てから、よく小母さんは裏づたひに柿の樹の下から桑畠を廻つておしまのところへ話しに来る。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しま養親やしないおやの口から、近いうちに自分に入婿いりむこの来るよしをほのめかされた時に、彼女の頭脳あたまには、まだ何等の分明はっきりした考えも起って来なかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「こりゃああぶないぜ、吉植君、これから上陸する時には、よほど気をつけないと、それこそ鬼界きかいしま俊寛しゅんかんものだよ。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「そんなわけにも参りませんが、どうでしょう、この男を泊めて下すっちゃ、——年は若いが、これなら女護にょごしまへ転がしておいても大丈夫で」
するとほか小猿こざるが「おれの父様ちやんはもつとえらいや、おにしま征伐せいばつにいつたんだもの」「うそだあ、ありやむかしことぢやないか」
日和ひよりおりなどにはわたくしはよく二三の腰元こしもとどもにかしずかれて、長谷はせ大仏だいぶつしま弁天べんてんなどにおまいりしたものでございます。
ソコデもって中津の有志者すなわち暗殺者は、金谷かなやう処に集会をもよおして、今夜いよ/\しまに押掛けて福澤を殺すことに議決した、その理由は
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
此の時助七は五十三歳で、女房は先年歿なくなって、跡に二十一歳になるせがれ助藏すけぞうと、十八歳のおしまという娘があります。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私はおにしまへいくような気持をもって、ここまでやって来たのであるが、あの緑の樹でおおわれた突兀とっこつと天をする恰好のいい島影を海上から望んだ刹那せつな
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つい数年まえのことだが、津軽のくにから三人の男が、蝦夷えぞしまへ砂金採りにいった。どんなにか苦労をしたうえに、二貫匁という大量の砂金が採れた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
出雲崎いづもざきは、越後ゑちごの国の、日本海岸にある、帯のやうに細長い港町である。そこからは海の水平線の上に、佐渡さどしまがぽつかり浮かんでゐるのが毎日見える。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
奥州武士の伊達政宗だてまさむねが罪をどうしまに待つ間にさえ茶事を学んだほど、茶事は行われたのである。勿論もちろん秀吉は小田原おだわら陣にも茶道宗匠をしたがえていたほどである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この米をやけしま力米ちからごめといい、病人にかぎってかゆにしてすすらせた。火風水土の四厄しやくを凌いで育った米の精は強大で、たいていの病人は良薬ほどにも効いた。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
少し金があればはれもの出来したり、不幸が続いたりしやして、しま伯父家おじげにも、お鳥が実家さとさも、不義理がかさみやす。確かに御年貢だけは取れやした。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
万葉集に狛しまと書きたる、字面の謬あるよしは前人もすでに言はれき。ここにて軍議をこらせしことありしやに朧ろげながらいひ伝ふ。もとより上代のことならむ。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
段取りが終り、パナマ丸が、洞海湾どうかいわんの入口に横たわっている、なかしまの横を通るころには、東の空は白み、港内も、ぼうと、暁のうす光に、浮きあがりつつあった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
秋の日はかゞみの様ににごつた池のうへに落ちた。なかちいさなしまがある。しまにはたゞ二本のえてゐる。青い松とうす紅葉もみぢが具合よく枝をかはし合つて、箱庭の趣がある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あかるいまつたひるつた。處々ところ/″\しまのやうなはたけへりからかゝつて料理菊れうりぎくはな就中なかでもばんつよ日光につくわう反射はんしやしてちかいよりはとほほどこゝろよくあざやかにえてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一円で買った菓子折を大事にかかえていんしまといのように細い町並を抜けると、一月の寒く冷たい青い海が漠々と果てもなく広がっていた。何となく胸の焼ける思いなり。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ええ、そもそも羽田の浦を、扇ヶ浜おうぎがはまと申しまするで、それで、それ、此地を要島、これは見立で御座いますな。相州そうしゅうしま弁財天べんざいてんと同体にして、弘法大師こうぼうだいしの作とあります。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
天文てんもん年中種子たねしまから鉄砲が伝わった時分に、やはり和蘭おらんだ人か葡萄牙ぽるとがる人が輸入した西洋式の武具であって、あたかも桃の実のように真ん中で割れて、その割れ目が高く盛り上り
まだ下谷したや長者町ちょうじゃまちで薬を売っていた山崎の家へ、五郎作はわざわざ八百屋やおやしちのふくさというものを見せに往った。ふくさは数代まえ真志屋ましやへ嫁入したしまという女の遺物である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大串おほくしから續いた館大寶たてだいはうは、西は平沼ひらぬま(後の大寶沼だいはうぬま)東は鳥波とばうみに挾まれて、唯「しま」と呼ばれた頃らしい、黒鳥くろとりなにがしの築いた城は島の城と呼ばれたといふ口碑つたへはあるけれど
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
あさしま御門みかどにおぼほしく人音ひとおともせねばまうらがなしも 〔巻二・一八九〕 同
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「ついでに、しまをまわってくるといい。おれも、行きたくなったな。行こうかな」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
日本國は女人によにんの國といふ國で、天照大神ともふす女神によしんきいだされたしまである。
いえなかのかたづけをおわって、諭吉ゆきちは、おかあさんとめいとをつれて、東京とうきようへかえることになり、ふねにのるため、中津なかつから四キロメートルほど西にししままでいって、宿屋やどやにとまりました。
日が暮れてあたりが薄暗くなるといよいよ朔風さくふうが強く吹きつけ、眼をあいていられないくらいの猛吹雪になっても、金内は、鬼界きかいしま流人俊寛るにんしゅんかんみたいに浪打際なみうちぎわを足ずりしてうろつき廻り
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
もし、それが都であったならば、秋がけて、変りやすい晩秋の空に、北山時雨しぐれが、折々襲ってくる時であるが、薩摩潟さつまがたの沖遥かな鬼界きかいしまでは、まだ秋の初めででもあるように暖かだった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ある時夫人が、しまに遊んだ土産みやげとして、大きな法螺貝ほらがいを買って帰った。
三太夫の言葉の終わらぬうちに、二匹の伏したる黒駒は、がばと毛皮を振り落とし、スックと立ったおうなと若武者。お三婆は吹筒を持ち、五右衛門はたねしまげて、三太夫を中に取りこめた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そしてそこにらないものを預けて、しまのほうまで車を走らした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
印南野いなびぬも ぎがてにおもへれば、こゝろこほしき加古かこしま
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)