起上おきあが)” の例文
見るなとかたせいせしは如何なるわけかとしきりに其奧の間の見まほしくてそつ起上おきあがり忍び足して彼座敷かのざしきふすま押明おしあけ見れば此はそも如何に金銀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ハヾトフは其間そのあひだ何故なにゆゑもくしたまゝ、さツさと六號室がうしつ這入はひつてつたが、ニキタはれいとほ雜具がらくたつかうへから起上おきあがつて、彼等かれられいをする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ほん商賣人しようばいにんとてくらしいもの次第しだいにおもふことおほくなれば、いよ/\かねて奧方おくがた縮緬ちりめん抱卷かいまきうちはふりて郡内ぐんない蒲團ふとんうへ起上おきあがたまひぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
怒鳴どなつて、かさはらつて、むつくりと半身はんしん起上おきあがつて、かしてると、なにらぬ。くせ四邊あたりにかくれるほどな、びたくさかげもない。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
気がいて見ると、自分の手は獣のような重太郎に握られていた。驚いて振放ふりはなして起上おきあがると、重太郎は再びその手を掴んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
筵をハネ除けて起上おきあがったのは、まだ若い乞食でした。朧の月が橋の下の浅ましい世界を夢の国のように照し出しました。
「よかろうよかろう」と、一同も起上おきあがり、着のみ着のままで寝たので身仕度の手間は入らず、顔を洗おうにも水はない。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
仰向に寝たが寝られませんから、又此方こっちを向くと、それでも寝られませんから又起上おきあがって見たりいろ/\して居ります。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あしをばた/\やつて大聲おほごゑげていて、それでらず起上おきあがつて其處そこらのいしひろひ、四方八方にけてた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それでも私が躊躇していると、彼はじれて、ベッドの上に起上おきあがり相になる。そんなことされては大変だ。身動きさえ禁じられている身体ではないか。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
女中が午飯ひるめしを知らせに来たのも知らず、午後三時近くまで眠って、ふと眼が覚めたので起上おきあがろうと、顔の上の冊子を取ろうとした時、何をみつけたか
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
とこから起上おきあがって、急いでその戸棚をガラリ開けて見ると、こは如何いかに、内には、油の染潤にじんだ枕が一つあるばかり、これは驚いて、男は暫時しばし茫然としていたが
一つ枕 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
女も眼をさまして起上おきあがると見る間に、一人は消えて一人は残り、何におどろいておきたのかときかれ、実は斯々これこれ伍什いちぶしじゅうを語るに、女不審いぶかしげにこのほども或る客と同衾どうきんせしに
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
車には黒い高い帽子をかぶって、あったかそうな黄ろい襟の附いた外套をた立派な人が乗っていたが、私がかおしかめて起上おきあがるのを尻眼に掛けて、ひげの中でニヤリと笑って
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
夜中よなか起上おきあがって、戸の下にかぎをおき、こりをかついで出ていってしまうのだった。そして幾月いくつき姿すがたを見せなかった。それからまたもどってきた。夕方ゆうがた、誰かが戸にさわるおとがする。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
かう云つた女の様子は、女中を呼びさうなけはひがあるので、男はつと起上おきあがつた。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
中根なかねみづなかで二三よろけたが、ぐに起上おきあがつた。ふかさは胸程むねほどあつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
森君は急いで這い出して来て起上おきあがると、泥を払う暇もなく
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
起上おきあがつて玄関げんくわんはうはしつて出ようとすると
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
ハバトフはそのあいだ何故なにゆえもくしたまま、さッさと六号室ごうしつ這入はいってったが、ニキタはれいとお雑具がらくたつかうえから起上おきあがって、彼等かれられいをする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「随分酷いのね。」と、お葉は落葉を掴んで起上おきあがったが、やがて畜生ちきしょうと叫んで、その葉を七兵衛の横面よこつらに叩き付けた。眼潰めつぶしを食って老爺じじいも慌てた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
千之は黙っていたが、他の三人は馴れ馴れしく、まるで手をらんばかりに起上おきあがって来る。志津子は冷やかに
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
毛布けつとねてむつくり起上おきあがつた——下宿げしゆくかれた避難者ひなんしや濱野君はまのくんが、「げるとめたら落着おちつきませう。いま樣子やうすを。」とがらりと門口かどぐち雨戸あまどけた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そっと蚊帳のうち差覗さしのぞくと、伴藏が起上おきあがり、ちゃんと坐り、両手を膝についていて、蚊帳の外にはだれか来て話をしている様子は、なんだかはっきり分りませんが
こらへて吉兵衞漸々やう/\起上おきあがり大事をかゝへし身の爰にてむなしく凍死こゞえしなんも殘念ざんねんなりと氣をはげまし四方を見廻みまはせば蔦葛つたかつらさがりてあるを見付是ぞ天のあたへなりと二しなの包みを脊負せおひまとふ葛を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なにみねたかと安兵衛やすべゑ起上おきあがれば、女房つま内職ないしよく仕立物したてもの餘念よねんなかりしをやめて、まあ/\れはめづらしいとらぬばかりによろばれ、れば六でうに一けん戸棚とだなたゞ一つ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
船長せんちやう周章あはてゝ起上おきあがつたが、怒氣どき滿面まんめん、けれど自己おの醜態しゆうたいおここと出來できず、ビールだるのやうなはらてゝ、物凄ものすごまなこ水夫すゐふどもにらけると、此時このときわたくしかたはらにはひげながい、あたま禿はげ
前後の分別もなく、脅かされた鳥のようにパッと起上おきあがって、麓の方へ——
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私は起上おきあがってブラリと廊下へ出た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
森君は犬を放して起上おきあがった。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
なんだと畜生ちくしやう!』と、此時このときイワン、デミトリチはきふにむツくりと起上おきあがる。『なん彼奴きやつさんとはふがある、我々われ/\こゝ閉込とぢこめてわけい。 ...
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ようよう起上おきあがって道の五六町も行くと、またおなじように、胴中どうなかを乾かして尾も首も見えぬのが、ぬたり!
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
力を入れて無理に剥そうと思い、グッと手を引張ひっぱる拍子に、梯子がガクリと揺れるに驚き、足を踏みはずし、さかとんぼうを打って畑の中へころげ落ち、起上おきあがる力もなく
取直してこゝろよくさしさゝれつのみたりしが何時しか日さへ暮果くれはてて兩人共睡眠ねむりの氣ざしひぢまくらにとろ/\とまどろむともなしに寢入ねいりしが早三かうころ靱負は不※ふと起上おきあがり其のまゝ爰を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
船長閣下せんちやうかくかたまへ、難破船なんぱせんがある! 難破船なんぱせんがある!』とさけぶと、此時このとき船長せんちやうすで寢臺ベツドうへよこたはつてつたが、『んですか。』とばかり澁々しぶ/\起上おきあがつてドーアひらいた。わたくしはツトすゝ
芳年はその小粒には目もくれず、襦袢一つの姿で泥の中に起上おきあがりました。
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
新田青年はそっと起上おきあがった。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かれ起上おきあがつて聲限こゑかぎりにさけび、さうしてこゝより拔出ぬけいでて、ニキタを眞先まつさきに、ハヾトフ、會計くわいけい代診だいしん鏖殺みなごろしにして、自分じぶんつゞいて自殺じさつしてしまはうとおもふた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其時そのとき荒坊主あらばうず岸破がば起上おきあがり、へさき突立つゝたツて、はつたとけ、「いかに龍神りうじん不禮ぶれいをすな、このふねには文覺もんがく法華ほつけ行者ぎやうじやつてるぞ!」と大音だいおんしかけたとふ。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やうやくこと起上おきあがつた水兵すいへいは、新月しんげつかすかなるひかりそのあなながめたがたちま絶叫ぜつけうした。
起上おきあがった仙太郎は、中年男の手で静かにベッドに戻されました。
と云って、起上おきあがりながらズンと金太郎の額へ突掛つっかけたから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんだと畜生ちくしょう!』と、このときイワン、デミトリチはきゅうにむッくりと起上おきあがる。『なん彼奴きゃつさんとほうがある、我々われわれをここに閉込とじこめてわけい。 ...
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
枕をおさえて起上おきあがりますと、女中の声で、御病気なんだからと、こそこそいうのが聞えました。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ起上おきあがって声限こえかぎりにさけび、そうしてここより抜出ぬけいでて、ニキタを真先まっさきに、ハバトフ、会計かいけい代診だいしん鏖殺みなごろしにして、自分じぶんつづいて自殺じさつしてしまおうとおもうた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
やうや起上おきあがつてみちの五六ちやうくとまた同一おなじやうに、胴中どうなかかはかしてくびえぬが、ぬたり!
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いけ可煩うるせ畜生ちくしやうぢやねえか、畜生ちくしやう!」と、怒鳴どなつて、かさはらつてむつくりと半身はんしん起上おきあがつて、かしてるとなにらぬ。くせ四邊あたりにかくれるほどな、びたくさかげもなかつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
死力しりよくめて、起上おきあがらうとすると、うづが、かぜで、ぐわうといて、きながらみだるゝとれば、計知はかりしられぬたかさからさつ大瀧おほだき搖落ゆりおとすやうに、泡沫あわとも、しぶきとも、こなとも、はひとも
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
微細こまかい奴は蚊帳の目をこぼれて、むらむら降懸ふりかかるものですから、当初はな一旦寝たのが、起上おきあがって、妹が働いて、線を手繰たぐって、次のへ電燈を持って行ったので、それなり一枚けてあります。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)