きく)” の例文
その当日は数十けんの「筋目の者」たちは十六のきくのご紋章もんしょうの附いたかみしもを着ることを許され、知事代理や郡長等の上席にくのである。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ぢやあそのきくやうとおもつて学校がくかうへおいで。はなにはね、ものをいはないからみゝこえないでも、そのかはりにはうつくしいよ。」
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つねなんともおもはぬ島田しまだがめ今日けふばかりはづかしいとゆふぐれのかゞみまへなみだくむもあるべし、きくのおりきとても惡魔あくまうまがはりにはあるまじ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
金砂のように陽の踊る庭に、こけをかぶった石燈籠いしどうろうが明るい影を投げて、今まで手入れをしていた鉢植えのきく澄明ちょうみょうな大気にかおっている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
切付たる鞍覆馬一疋供鎗ともやり三十本其餘兩掛合羽駕籠茶瓶等なりつゞいて常樂院天忠和尚四人徒士にて金十六きくの紋を附たる先箱二ツ打物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きくさんと云ふ知つた女の人と、その子のおまささん、私の従兄いとこ二人、兄、番頭、そのほかの人は忘れましたが何でも十何輌と云ふ車でした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
与右衛門はそれでも女房のことを心配していたが、それは寛文かんぶん十一年すなわちおきくが十三の八月まで生きてその月の中旬なかごろに死んだ。
累物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おじいさんは、みちばたにいている山茶花さざんかも、きくはなも、みんなこころあってなにか物語ものがたろうとしているようにられたのです。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
賊が井戸から現われて、又井戸の中へ消えたなどとは、如何いかにも信じがたいことであった。おきくの幽霊ではあるまいし。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なかでどれが一ばんきれいかとっしゃるか……さあ草花くさばなせいなかでは矢張やはきくせいが一ばん品位ひんがよく、一ばんはばをきかしているようでございました……。
戯作者げさくしゃ山東庵京伝さんとうあんきょうでんは、旧臘くれうちから筆を染め始めた黄表紙「心学早染草」の草稿が、まだ予定の半数も書けないために、扇屋から根引した新妻のおきく
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
むすめが三人あつて、名をまつきくきやうと云つた。与助の妻は酒をかうぶつて大言する癖があつて、「女が三人あるから、一人五百両と積つても千五百両がものはある」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
太郎の家で雇っているおしもばあさんのほかに、近くに住むおきく婆さんも手伝いに来てくれ、森さんのかあさんまで来てわが子の世話でもするように働いていてくれた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これこそ幽霊いうれいならめとしきりに念仏しければ、移歩あゆむともなくまへにすゝみきたり、細微ほそがれたるこゑしていふやう、わらはゝ古志郡こしこほり何村なにむら(村名はもらす)のきくと申もの也
たちま盤上ばんじやうたままろばすがごとひゞき、ピアノにかみ宿やどるかとうたがはるゝ、そのたへなる調しらべにつれてうたいだしたる一曲ひとふしは、これぞ當時たうじ巴里パリー交際かうさい境裡じやうり大流行だいりうかうの『きくくに乙女おとめ
何ぞ手許使てもとづかい勝手許かってもとを働く者がなければなりませんから、方々へ周旋を頼んで置きますと、渡邊織江の家来船上忠助ふながみちゅうすけという者の妹おきくというて、もと駒込こまごめ片町かたまちに居り
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しょうの在監中、十六歳と十八歳の二少女ありけり、年下なるはお花、年上なるはおきくと呼べり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
すると、きくの花をつけた森の精が出て来ました。それから二人でまた歌って踊りました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ロテイが「おきく夫人」「日本の秋」等の作者たることは今更辯じ立てる必要はあるまい。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「とうとうおきくさんと結婚なすったンですってね。三吉さんもなかなかすみにおけない」
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
女中や小姓は遠ざけられて、その時、きくには阿波守そのほか四人の影だけ……。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さっき台所だいどころきくやにつかまったとき、逃げようと思って手を食いついたんだ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
だが、あきふかくなると、薔薇がつた。きくれた。さうして、枯葉かれはつもつた間から、やうやさびしげな山茶花さざんくわがのぞき出すと、北にらなつた一れんくらかべが、俄然がぜんとして勢力せいりよくをもたげ出した。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
「横山町の伊豆屋勘六でございます。怪我をしたのは、嫁のきくと申します」
伝通院でんずういん縁日えんにちで、からくりの画看板えかんばんに見る皿屋敷のおきくころし、乳母が読んで居る四谷怪談よつやかいだん絵草紙えぞうしなぞに、古井戸ばかりか、丁度其のそばにある朽ちかけた柳の老木おいきが、深い自然の約束となって
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
もううすれかけたあき夕日ゆうひの中に、白いきくはながほのかなかおりをたてていました。くずなんとなくうるんださびしい気持きもちになって、われわすれてうっかりとたましいしたようになっていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「お腰元のきくの母でござります。娘におわせ下さりませ」
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
色変はる秋のきくをば一年ひととせにふたゝびにほはなとこそ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
女房のおきくが知らせて来た。
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おお、百合なときくなと」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
やがてそこへ、おみよはしろきくはなんでかえってきますと、もう垣根かきねのそばには、乞食こじきかげえませんでした。
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
申べしと云ばおきく得心とくしんして出たりけりさて大岡殿おほをかどの利兵衞にむかひ如何に利兵衞其方そのはうくしかんざし證據しようことして與兵衞供々とも/″\吉三郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きくのおりき土方どかた手傳てつだひを情夫まぶつなどゝ考違かんちがへをされてもならない、それむかしのゆめがたりさ、なんいまわすれて仕舞しまつげんとも七ともおもされぬ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
渡鳥わたりどり小雀こがら山雀やまがら四十雀しじふから五十雀ごじふから目白めじろきくいたゞき、あとりをおほみゝにす。椋鳥むくどりすくなし。つぐみもつとおほし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
番町ばんちょう青山主膳あおやましゅぜんの家の台所では、げじょのおきくが正月二日の昼の祝いの済んだ後の膳具ぜんぐを始末していた。
皿屋敷 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
妾出獄ののち監獄より聞きし所によれば、両女ともその後再び来らず、お花は当市近在の者にて、出獄後間もなく名古屋へ娼妓しょうぎに売られたり、またおきく叔父おじの家にも来らず
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それからすみれ蒲公英たんぽぽ桔梗ききょう女郎花おみなえしきく……一年生ねんせい草花くさばなせいは、いずれもみな小供こども姿すがたをしたものばかり、形態なり小柄こがらで、のさめるようないろ模様もよう衣裳いしょうをつけてりました。
新発田しばたきく女、頸城くびき郡のそう知良、近くは三嶋郡村田村の百合ゆり女(百姓伊兵衛がむすめ)新発田しばた荒川あらかは村門左エ門(百姓丑之介がせがれ)塚原つかはら豆腐売とうふうり春松(鎌介がせがれ)蒲原郡釈迦塚しやかつか村百姓新六
菊之丞きくのじょう駕籠かごを一ちょうばかりへだてて、あたかも葬式そうしきでもおくるように悵然ちょうぜんくびれたまま、一足毎あしごとおもあゆみをつづけていたのは、市村座いちむらざ座元ざもと羽左衛門うざえもんをはじめ、坂東ばんどうひころう尾上おのえきくろうあらし三五ろう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「御城下大手前の呉服屋江島屋郷右衛門えじまやごうえもんの娘きくにござります」
「おきくがいないが、どこへ行ったのか、誰か知らないかね」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あききく
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
以て訴ゆべしとて役人は歸へけり此家の番頭はお竹が父親なりしかば大いに悲みお竹の亡骸なきがら取納とりをさめける扨利兵衞はむすめきくを呼て其方盜賊の面體めんてい恰好かつかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このいえまえとおりかかりましたが、乞食こじきは、おみよが、いま人形にんぎょうにごちそうをこしらえてやろうとして、きくはなや、山茶花さざんか花弁はなびらを、ちいさな刃物はもの
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かまれて暖簾のれんはぢれゆゑぞもとたゞせば根分ねわけのきく親子おやこなからぬといふ道理だうりはなしよしらぬにせよるにせよそれは其方そなた御勝手ごかつてなり仇敵かたき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
業平朝臣なりひらあそんの(名にしおはゞいざこととはむ)歌の心をまのあたり、鳥の姿に見たいと言ふ、花につけ、月につけ、をりからのきく紅葉もみじにつけてのおもよりには相違あるまい。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
○さるほどに源教げんけういほりにかへりて、朝日あけのひ人をたのみて旧来としごろしたしきおなじ村の紺屋こんや七兵衛をまねき、昨夜かう/\の事ありしとおきく幽霊いうれいの㕝をこまかにかたり、お菊が亡魂まうこん今夜こよひかならずきたるべし
その小供の総領になっているおそめと云うのが十四、次の男の子の権八郎ごんぱちろうと云うのが十三、三番目の鉄之助てつのすけと云うのが十一、四番目おきくと云うのが三つになった時、それは七月の十八日の夜であったが
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おきくさんが、お菊さんが——」
蒲團ふとんやの時代じだいからのみのをとこおもはなんだがあれこそは死花しにばな、ゑらさうにえたといふ、なににしろきく大損おほぞんであらう、には結搆けつこう旦那だんながついたはづ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)