灰色はいいろ)” の例文
かれは、懐中かいちゅうから、スケッチちょうして、前方ぜんぽう黄色きいろくなった田圃たんぼや、灰色はいいろにかすんだはやし景色けしきなどを写生しゃせいしにかかったのであります。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
書窓しょそうから眺めると、灰色はいいろをした小雨こさめが、噴霧器ふんむきく様に、ふっ——ふっと北からなかぱらの杉の森をかすめてはすいくしきりもしぶいて通る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
灰色はいいろ土塊どかいが長く幾畦いくあぜにもなっているかと思うと、急にそれが動きだしたので、よく見るとひつじの群れのが見えていたのでした。
たださいぜんから明らかに知っていて、べつに気にもめなかったのは、鳥居とりい横木よこぎにうずくまっている一灰色はいいろの鳥だった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも今夜こんや、グリンミンゲ城は灰色はいいろネズミの手におちてしまうでしょう。」と、コウノトリはため息をつきながら言いました。
このロボというのは、灰色はいいろの大きなおおかみで、カランポー狼群ろうぐんの王といわれるだけにとても知恵ちえがはたらき、毒薬にもわなにもかからない。
身長みのたけしやくちかく、灰色はいいろはりごと逆立さかだち、するどつめあらはして、スツと屹立つゝたつた有樣ありさまは、幾百十年いくひやくじふねん星霜せいさうこの深林しんりん棲暮すみくらしたものやらわからぬ。
東の灰色はいいろ山脈さんみゃくの上を、つめたい風がふっと通って、大きなにじが、明るいゆめはしのようにやさしく空にあらわれました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ムスメはつひにうつむいたまヽ、いつまでも/\わたし記臆きおく青白あをじろかげをなげ、灰色はいいろ忘却ばうきやくのうへをぎんあめりしきる。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
けれどもそれがどうでしょう、もうけっしていまはあのくすぶった灰色はいいろの、るのもいやになるようまえ姿すがたではないのです。いかにも上品じょうひんうつくしい白鳥はくちょうなのです。
ぐるりと一廻ひとまはりして、いつしよいはほえぐつたやうなとびら真黒まつくろつてはいつたとおもふと、ひとつよぢれたむかざまなる階子はしごなかほどを、灰色はいいろうねつてのぼる、うしまだらで。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
入梅つゆになッてからは毎日まいにち雨降あめふりそれやつ昨日きのふあがツて、庭柘榴ざくろの花に今朝けさめづらしくあさひ紅々あか/\したとおもツたもつか午後ごゝになると、また灰色はいいろくもそら一面いちめんひろがり
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
たけは六尺ばかり、赤髪あかきかみ裸身はだかみ通身みうち灰色はいいろにて、ぬけたるにたり、こしより下にかれ草をまとふ。此物よく人のいふことにしたがひて、のちにはよく人になれしと高田の人のかたりき。
大洋の中にいると同様に、わたしたちの日は遠い秋霧あきぎりの中に消えている地平線までとどいていた。ひたすら広漠こうばく単調たんちょうが広がっている灰色はいいろの野のほかに、なにも目をさえぎるものがなかった。
海にきてみますと、水の色はすっかりスミレ色とあい色と灰色はいいろになっていて、おまけにどろっとしていて、もうまえのようにみどり色や黄色ではありませんでした。でも、まだおだやかでした。
紅茶々碗を持つた儘、書斎へ引き取つて、椅子へこしを懸けて、茫然ぼんやりにはながめてゐると、こぶだらけの柘榴ざくろ枯枝かれえだと、灰色はいいろみき根方ねがたに、暗緑あんりよく暗紅あんかうはした様なわかい芽が、一面に吹きしてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この園にたづはしづかに遊べればかたはらに灰色はいいろたづひとつ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
灰色はいいろばむ小蒸汽こじようきるく、まぶしく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やまうえへとつづいているみちは、かすかにくさむらのなかえていました。そして、やまいただき灰色はいいろくもって、雲脚くもあしが、はやかったのです。
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
コウノトリは、こんどは急にガンたちにむかって、灰色はいいろネズミのむれがグリンミンゲじょう進軍しんぐんしているのを見ませんでしたか、とききました。
五日のお月さまは、この時雲と山のとのちょうどまん中にいました。シグナルはもうまるで顔色をえて灰色はいいろ幽霊ゆうれいみたいになって言いました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一切の人慾じんよく、一切の理想が恐ろしい火の如くうちに燃えてたたこうた先生には、灰色はいいろにぼかした生や死は問題の外なのです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたし翌朝よくちょう早くむねをおどらして北の谷へとでかけた。わなをしかけておいた場所へくると、突然とつぜん大きな灰色はいいろ姿すがたが、むくりと立ってげ出そうともがいた。
実際は灰色はいいろでも野は緑に空はあおく、世の中はもう夏のとおりでした。おばあさんはこんなふうで、魔術まじゅつでも使える気でいるとたいくつをしませんでした。そればかりではありません。
たけは六尺ばかり、赤髪あかきかみ裸身はだかみ通身みうち灰色はいいろにて、ぬけたるにたり、こしより下にかれ草をまとふ。此物よく人のいふことにしたがひて、のちにはよく人になれしと高田の人のかたりき。
大沼おほぬまみづたゞかぜにもらずあめにもらぬ、灰色はいいろくもたふれたひろ亡体なきがらのやうにえたのが、みぎはからはじめて、ひた/\と呼吸いきをしした。ひた/\とした。かすかにひた/\と鳴出なりだした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
灰色はいいろくらき壁、見るはただ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つかれているような、また、ねむいようにえる砂漠さばくは、かぎりなく、うねうねと灰色はいいろなみえがいて、はてしもなくつづいていました。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あくる朝、ガンたちは、とある小さな島へんでいって、たべものをひろいました。そこでみんなは、二、三灰色はいいろガンに、出あいました。
灰色はいいろきりはやく速くんでいます。そして、牛が、すぐの前に、のっそりと立っていたのです。その眼は達二たつじおそれて、よこの方をいていました。達二はさけびました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ほりしてはるかな石垣いしがき只中たゞなかへもたゝきつけさうだつたいきほひせて——猶予ためらさまして……トした足許あしもとを、までくだらず、此方こなたひくほりきしの、すぐ灰色はいいろみづる、角組つのぐんだあしうへへ、引上ひきあげたか
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
陰々いんいんと、灰色はいいろ重き曇日くもりび
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
また、灰色はいいろくもったままれてゆくときもあります。またあるときは、かぜいて、うみうえがあわだってえるときもありました。
ろうそくと貝がら (新字新仮名) / 小川未明(著)
キッコはまだなみだをぼろぼろこぼしながら見ましたらその鉛筆は灰色はいいろでごそごそしておまけに心の色も黒でなくていかにもへん鉛筆えんぴつでした。キッコはそこでやっぱりしくしく泣いていました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このとき、どこからか、さっとくものような灰色はいいろかげが、眼前がんぜんをさえぎったかとおもうと、たちまちあみあたまからかかってしまいました。
すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、母親ははおやのやせた姿すがたが、西日にしびけて、屋根やね灰色はいいろながかげをひきました。のつやもなく、脾腹ひばらのあたりは骨立ほねだっていました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そんなら、いってきます。」といって、わかいうぐいすは、灰色はいいろそらをあちらへと、まちほうをさして姿すがたしてしまったのであります。
春がくる前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
灰色はいいろ着物きものあねは、べつに姿すがたえる必要ひつようもなかったので、あるほしひかりももれないくら真夜中まよなか下界げかいりてきたのです。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまにも、ってきそうな、灰色はいいろくもったそらにしながら、父親ちちおやおおまたにあゆむのを、小太郎こたろうちいさなあしいかけたのです。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はやく、はるにならないかなあ。」と、灰色はいいろに、ものかなしく、くもったふゆそらをながめて、いくたびおもったことでしょう。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
うみほうは、いつものようにくらく、おどるなみだけがしろかった。屋根やねうえには、灰色はいいろ、きつねいろ、だいだいいろ、さまざまのくもが、かさなりあっていた。
おかまの唄 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつしか、ふゆとなりました。あたりは、灰色はいいろとなって、ゆきがちらちらとって、もりや、はやしに、しろく、綿わたをちぎって、かけたようなでありました。
熊さんの笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここには、あかるい、きよらかな、そらよろこびはなく、すべてが灰色はいいろをして、ほこりがかかっているような気持きもちがしました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、氷山ひょうざんが、気味悪きみわるひかって、魔物まものきばのようにするどく、ところどころに、灰色はいいろそらをかもうとしていたからです。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
よるになったらどうなるであろう。ひめはとてもいのちたすからないとおもって、心細こころぼそさにふるえていましたとき、灰色はいいろうみうえに一そうのあかふねえました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆきりそうなさむ空合そらあいでした。さなければ、かぜかずに、灰色はいいろくもが、はやしうえにじっとしていました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからも毎日まいにちつれないかぜすりました。ゆきは、ってきてえだにかかりました。そして、けてもれても、灰色はいいろくもは、あたまうえをゆきました。
山の上の木と雲の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いもうとは、つねに桃色ももいろ着物きものをきていました。きわめて快活かいかつ性質せいしつでありますが、あね灰色はいいろ着物きものをきて、きわめてしずんだ、口数くちかずすくない性質せいしつでありました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なるほど、猟師りょうしおおきな灰色はいいろをしたわしをっていました。青年せいねんは、毎日まいにちのように大空おおぞらたかんでいったとりは、このわしであったかとおもいました。
三つのかぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「えっ、ゆきが。」と、おとうとはこうくと、すぐに戸口とぐちまでとびでました。灰色はいいろそらをあおぐと、やわらかなしろいものがおちて、つめたくかおにあたりました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)