ほう)” の例文
かぜがなくていいな。」とゆめなかだけれどおもっていたときです。蒸気じょうきポンプのわだちが、あちらのひろとおりをよこほうがったようです。
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひるすこしまえにはもう二人ふたりにいさんが前後ぜんごして威勢いせいよくかえってた。一人ひとりにいさんのほう袖子そでこているのをるとだまっていなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
などと、いつも悪体あくたいをつくのです。母親ははおやさえ、しまいには、ああこんなならうまれないほうがよっぽどしあわせだったとおもようになりました。
そのころ良人おっとはまだわこうございました。たしか二十五さい横縦よこたてそろった、筋骨きんこつたくまましい大柄おおがら男子おとこで、いろあましろほうではありません。
当人の小半は代地は場所がらとて便利なだけ定めし近隣のうわさもうるさかるべく少し場所はわるけれど赤坂のほう望ましきやうもうしをり候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
どうぞ是非ぜひ一ついていただきたい、とうのは、じつはそうわけであるから、むしろきみ病院びょういんはいられたほう得策とくさくであろうとかんがえたのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その時負うたのが、「行けと云うなら、行かぬでもないが、その代り、そのほうはわしの帰るまで、待って居れよ」と云う呪である。
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
平衡へいこうを保つために、すわやと前に飛び出した左足さそくが、仕損しそんじのあわせをすると共に、余の腰は具合よくほう三尺ほどな岩の上にりた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たつかみなりのようなものとえた。あれをころしでもしたら、このほういのちはあるまい。おまへたちはよくたつらずにた。ういやつどもぢや」
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
これがさるほうちかいか、人間にんげんほうちかいかは、議論ぎろんがあるにしても、とにかく人間にんげんさるとの中間ちゆうかん動物どうぶつといつてつかへはありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「それはわしほうからいふ言葉ことばでさあ。こうして此處こゝうまれて此處こゝでまた俺等わしらです。一つたび土産みやげはなしでもきかせてくれませんか」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
イヤ、その正反対ですよ。別に身体が弱かった様にも聞きませんが、どっか病的なすさんだ感じで、顔なんかも青白いほうでした。それを
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「お黙りなさい! 私は役人ですぞ。そういう言葉は御自分の召使に向って仰っしゃるべきで、このほうに対してはお慎みなさい。」
しゅうあるものは主方しゅうかたへ、親あるものは親のほうへ帰参して、これから正しい道を歩いて真人間になってください、あゝどうも実に弱った
「座敷へ上がり込んじゃ興がめる。ほうも、く方も、外でこそ流しの味、金襖きんぶすまでは野暮やぼになる。そうおっしゃっておくんなさい」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ると、太陽たいやうがキラ/\とかゞやいてひがしほうの、赤裸あかはだかやまいたゞきなゝめかすめて、一個いつこ大輕氣球だいけいききゆうかぜのまに/\此方こなたむかつてんでた。
早口はやくちにやっているうちに、したがもつれて、かんしゃくばかりこってきました。そのおとうとほうはどこかへげて行ってしまいました。
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「お前が、そういう心掛こころがけで買うのなら、時々は買ってもいい。お父様とうさまは、お好きなほうなのだから。」と、おっかさんは言いました。
納豆合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「そんなことはない。」わたしわらひながら否定ひていした。するとまたS、H訂正ていせいでもするやうに、「いや、わたしほうが……。」とこたへた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「でもおつけしたことは実際なんですもの、お目にかかれてとても嬉しゅうございますわ、歯のほう、お治りになったんですか。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
では、お嬢さん、御免を蒙って、わたしどものほうのあるお得意さまの身の上話をあなたにお話申し上げることにいたしましょう。
「さうだな。」とジヨオジ陛下はにこ/\笑つて「ルウズヴエルト氏はなか/\偉いかただよ。まあ天才とでも言ふほうだらうて。」
諭吉は母の病気に付き是非ぜひ帰国とうからその意に任せてかえすが、修業勉強中の事ゆえ再遊の出来るようそのほうにて取計とりはからえと云う文句。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「おまえさんより、おんなだもの。あたしのほうが、どんなにいやだかれやしない。——むかしッから、公事くじかけあいは、みんなおとこのつとめなんだよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さうして學者がくしや文學者ぶんがくしやも、かならずしも上流社會じようりうしやかい人々ひと/″\ばかりでなく、かへってひく位置いちひとほう中心ちゆうしんうつつてるようになりました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「これ、そのほうは根ッからの長屋住まいではないナ。ただいまの其方そちの言動、曰くある者と見た。何者の変身か、その方こそ名を名乗れ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
だれもお礼をいうのをわすれるほどそれにれきっていた。彼のほうでは、贈物おくりものをすることがうれしくて、それだけでもう満足まんぞくしてるらしかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
うたってしまうと、とりはまたんできました。みぎあしにはくさりち、ひだりつめくつって、水車小舎すいしゃごやほうんできました。
御客様にそんな無仕付なほうがあるものか以後はたしなむが善かろうと極めつけられた。それから従順なるペンは決して我輩に口をきかない。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
老人ろうじんはいいわけをしてあやまりました。そして、仔牛こうしはあずかっておくことにして、下男げなん物置ものおきほうへつれていかせました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そうして下さりゃ、どっちでもお好きなほうにしてあげますぜ。宝を積み込みせえすりゃ、わっしらと一緒に船に乗んなさるか。
わたしは、おんなより金魚きんぎょほううつくしいとおもうんですよ。あなたはにわ老人ろうじん立話たちばなしをしたつていいましたね。そのとき金魚きんぎょは、どんな恰好かっこうしてました?
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
初期微動しよきびどう主要動しゆようどう比較ひかくしてだいなるはやさをつてゐるが、しかしながら振動しんどうおほいさは、反對はんたい主要動しゆようどうほうかへつてだいである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
話をしてくれた人の友達に某甲なにがしという男があった。その男は極めて普通人がたの出来の好いほうで、晩学ではあったが大学も二年生まで漕ぎ付けた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この町は、子爵ししゃくほう前田家まえだけの旧城下町であって、その頃の小学校は旧藩主のもとの屋敷をそのまま使ったものであった。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「なに貴女あなたそれほどでも有りますまいで……なんでもいたほどではないものどす……そー御心配しやはると御子をこはんより貴女あなたほうが御よはりどすえ」
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
「いや、しかし恋歌こいかでないといたして見ますると、その死んだ人のほうが、これは迷いであったかも知れんでございます。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さては香潮さんが最早来ているのかと思いまして、急いでその方へ足を向けますと、向うでも気が付いたと見えて、このほうへ急いで来る様子です。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「はあ、お庇様かげさま大分だいぶほうで……。何、大丈夫だとお医者も云って居ますが……。何しろ、一時はきもを潰しましたよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
無論、この位ならけると思われるかたもあるだろう。が、随分大食と言われる人でも、うんざりだ、と言って降参するほうが多いんじゃなかろうか。
富士屋ホテル (新字新仮名) / 古川緑波(著)
三四どうもなかつたから大丈夫だいぢやうぶだとはおもつてても、凝然ぢつとしてるととほくのほう滅入めいつてしまやう心持こゝろもちがして
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いきほひ自然しぜんと言つては堅過かたすぎるが、成程なるほど江戸時代えどじだいからかんがへて見ても、湯屋ゆや与太郎よたらうとは横町よこちやうほう語呂ごろがいゝ。(十八日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「ドブーン!」水音の響いたのは、とりかたかそれともとられるほうか、ともかく誰か河の中へ、飛び込んだに相違ない。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほう何町とも知れぬ広大な屋敷内、大きな泉水があって、船がうかんで、その船の中に、結構な女が五六人、一人は歌い、一人は踊り、三人は鳴物を受持ち
それからあのハムステッド公園の方へ行らしったようですが、まもなく一人のほうが引き返して来て『わしは紙包を忘れて行ったと思うが』と言うのです。
「あの赤酒は、孝平の兄の忠平が持薬にしていたものだ。前からロッジに置いてあって封蝋に日本薬局ほうの刻印がついていた……栓を抜いたのは誰だ?」
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
祖母が目をかけてやっていた、母子おやこ二人世帯じょたいの者が、祖母のうち塀外へいそとに住んでいた、その息子のほうのことです。
人魂火 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
可愛想かわいそうなことをとすこなみだくんでおさくをかばふに、それは貴孃あなた當人たうにんぬゆゑ可愛想かわいさうともおもふからねど、おさくよりはれのほうあはれんでくれてはづ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「そういうほうの気分も多少は出ていないことはないが」と、主人は答えてくれた、「そこをばかり主とした作ではないから、これはこれでいいのでしょう」
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
富士ふじのぼるには、普通ふつう吉田口よしだぐち御殿場口ごてんばぐち大宮口おほみやぐちみつつの登山道とざんみちがありますが、森林帶しんりんたいながらのぼるには吉田口よしだぐちか、大宮口おほみやぐちえらんだほうがいゝとおもひます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)