野原のはら)” の例文
それは、ひろい、さびしい野原のはらでありました。まちからも、むらからも、とおはなれていまして、人間にんげんのめったにゆかないところであります。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこでは、家畜かちくたちがちょうど野原のはらにいるのとおなじように、すきなように草をたべたり、遊んだり、けまわったりしています。
そのとき西にしのぎらぎらのちぢれたくものあひだから、夕陽ゆふひあかくなゝめにこけ野原のはらそゝぎ、すすきはみんなしろのやうにゆれてひかりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
玄翁和尚げんのうおしょうは一にち野原のはらあるきどおしにあるいてまだ半分はんぶんも行かないうちに、みじかあきの日はもうれかけて、るそこらがくらくなってきました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そればかりか、ばあさんはなさけようしゃもなく、かわいそうなラプンツェルを野原のはらいやってしまいました。
……つひむかふを、うです、……大牛おほうし一頭いつとう此方こなたけてのそりとく。図体づうたいやまあつして野原のはらにもはゞつたいほど、おぼろなかかげおほきい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あいちやんは野原のはら横斷よこぎつて其後そのあと追蒐おツかけてつて、丁度ちやうどそれが生垣いけがきしたおほきな兎穴うさぎあなりるのをました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
盗人ぬすびとたちは、きたからかわ沿ってやってました。はなのきむらぐちのあたりは、すかんぽやうまごやしのえたみどり野原のはらで、子供こどもうしあそんでおりました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
とうさんの田舍ゐなか信濃しなの山國やまぐにからたひら野原のはらおほ美濃みのはうおりたうげの一ばんうへのところにあつたのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やけ野原のはらを、東助とうすけとヒトミが、汗をたらしながら、さまよっていた。夏のおわりに近い日の午後のことで、台風たいふうぎみのくもり空に、雲の行き足がだんだん早くなっていく。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
實際じつさいなんのためにこの野原のはらに、かようなものがまうけられたかたしかなことはることが出來できません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
とお野原のはら妖精ようせい見物けんぶつませますと、指導役しどうやくのおじいさんは、わたくしむかってわれました。——
父母ちゝはゝをもあにをも女子をなごどもをもせつけず、りませぬ、りませぬ、わたしなにりませぬとて打泣うちなくばかり、いへうちをばひろ野原のはらかたなきなげきにひとそでをもしぼらせぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もしや野原のはら往来おうらいなどで、だおれにでもなりやせまいか、人の知らぬまに死んでいたのではないかしら、それともすこしは早くようすがわかって家のものの世話せわを受けてなくなったのか
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あを野原のはらのなかを、しろみちがながく/\つヾいた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
すみなれたはやしや、やまや、かわや、野原のはら見捨みすて、らぬ他国たこくることは、これらの小鳥ことりにとっても、冒険ぼうけんにちがいなかったからです。
ふるさと (新字新仮名) / 小川未明(著)
その足音あしおともちよく野原のはら黒土くろつちそこはうまでひゞきました。それから鹿しかどもはまはるのをやめてみんな手拭てぬぐひのこちらのはうちました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
山をりて、もりをぬけて、こんどはひろい野原のはらへ出ました。するとそらの上で、「ケン、ケン。」とこえがして、きじが一とんでました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それからまたむかふからわたつててこのはしして場末ばすゑきたなまちとほぎると、野原のはらる。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しばらく湖水こすいへりつたってるいてうちに、やまがだんだんひくくなり、やがて湖水こすいきるとともやまきて、広々ひろびろとした、すこしうねりのある、あかるい野原のはらにさしかかりました。
今日こんにち世界せかい一番いちばん名高なだかいものはイギリスのすとんへんじといふものでありまして、いま飛行場ひこうじようとなつてゐるソールスベリーのひろ野原のはらまる巨石きよせきまはした不思議ふしぎ姿すがたつてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
惠那山ゑなやまもよくえます。もつとむかふのやまえます。たかやまがいくつも/\えます。そのやまむかふには、見渡みわたすかぎり廣々ひろ/″\とした野原のはらがありますよ。なにひかつてえるかはのやうなものもありますよ。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おばさんのはなしは、奇怪きかいであります。みんなは、いているうちに、気味きみわるくなりました。野原のはらうえには、たっていたけれど。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それどころでなく、見れば見るほど、そこは小さな林や牧場ぼくじょうやらある野原のはらのように考えられてしかたなかったのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このいくさあいだのことでした。ある義家よしいえ何気なにげなく野原のはらとおって行きますと、くさふかしげった中から、けにばらばらとがんがたくさんちました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
背後うしろ野原のはらところで、肝玉きもたま宿替やどがへした。——あれ一面いちめんかすみなかけむりつゝまれて、しろ手足てあしさびいく/\ながら、ほり石垣いしがきけてつるがるやうにえたゞもの。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
んなことはなしてくれながら、おじいさんはわたくしうながしてやま修行場しゅぎょうば出掛でかけたとおもうと、そのまま一途中とちゅうして、たちまち一ぼうはるかなる、ひろひろ野原のはらしまいました。
「さあ、みんなんでごらん。あの野原のはらたかのところまで!」と、母鳥ははどりは、三子供こどもたちに自由じゆうぶことをゆるしたのでした。
平原の木と鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
するとほんとうに、そのきれいな野原のはらじゅうの青やだいだいや、いろいろかがやく三角標さんかくひょうも、てんでに息をつくように、ちらちらゆれたりふるえたりしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「もしこの人がいなかったら、わたしはこの野原のはらの上でんでしまうところでしたね。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
内心ないしんには、あによめつやことまたあきこと、さすがにことをしたとおもはないから、村近むらぢかだけにあしのうらがくすぐつたい。ために夕飯ゆふはん匇々さう/\燒鮒やきぶなしたゝめて、それから野原のはらかゝつたのが、かれこれよる十時過じふじすぎになつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このとき、子供こどもは、ふところなかから角笛つのぶえしました。そして、きた野原のはらかって、プ、プー、プ、プー、とらしたのです。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、さうさう、こけ野原のはら夕陽ゆふひなかで、わたくしはこのはなしをすきとほつたあきかぜからいたのです。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
といいつけて、そこらの野原のはらりたてますと、あんじょうたくさんの伏兵ふくへいくさの中にかくれていました。そしてみんなみつかってころされてしまいました。そのとき義家よしいえ家来けらいたちにかって
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みち一面いちめん渺々べう/\しろ野原のはらりました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いまの巡礼じゅんれいは、やまえ、かわわたり、野原のはらぎ、村々むらむらをいって、自分じぶん故郷ふるさとくには、いつのころであろうとかんがえられたのです。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
新世界交響楽しんせかいこうきょうがくはいよいよはっきり地平線ちへいせんのはてからき、そのまっ黒な野原のはらのなかを一人のインデアンが白い鳥の羽根はねを頭につけ、たくさんの石をうでむねにかざり
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
またあるとき野原のはらかりに出かけますと、こうからきつねが一ぴき出てました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
野原のはらときです。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おまえさんの大好だいすきなこめも、まめも、きびも、どこの野原のはらにもたくさんあるじゃありませんか。なぜ、それをってべないのです。
汽車の中のくまと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、このの前の、うつくしいおか野原のはらも、みな一びょうずつけずられたりくずれたりしています。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これ、これ、おまえたちがいくらにものぐるいになったところで、ねこにかなうものではない。一ぴきのこらずころされて、この野原のはらつちになってしまう。わたしはそれをるのがかわいそうだ。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
野原のはらのやうな臺所だいどころ
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし、こちらは、こうして、あたたかになったけれど、すずらんのえていた、きたくに野原のはらは、まだゆきふかかぜさむかったのです。
さまざまな生い立ち (新字新仮名) / 小川未明(著)
銀色ぎんいろのマントをきらきら波立なみだてて野原のはらを見まわったり、ホモイはうれしさに何遍なんべん
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
じつはある日野原のはらへ出てあそんでいるところを五、六にんおとこいまわされて、しかたなしにちゃがまにけてくさの中にころがっていると、またそのおとこたちがつけて、こんどはちゃがまだ、ちゃがまだ
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひろ野原のはらうえには、雲切くもぎれがして、あおかがみのようなそらえていました。えだは、それをると、無上むじょうになつかしかったのです。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
向こうの野原のはらを行く小さな荷馬車にばしゃを見ながらひく調子ちょうしはずれの歌をやりました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
三郎さぶろう野原のはらなかしました。ほかの二人ふたりももときたみちをもどりました。すると、だれやら、三郎さぶろうあとっかけてきました。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
八、ノルデは野原のはらにいくつも茶いろなトランプのカードをこしらえた。