紫色むらさきいろ)” の例文
そしてここにはもうはるがきていて、したには、あおくさぐみ、紫色むらさきいろのすみれのはなさえいているのが、なかはいったのです。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ガラス管が、あちこちに、とりつけられ、その管の中を、紫色むらさきいろの火花が、まるでヘビのように、ぐねぐねよじれながら、走っています。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
山嵐の鼻に至っては、紫色むらさきいろ膨張ぼうちょうして、ったら中からうみが出そうに見える。自惚うぬぼれのせいか、おれの顔よりよっぽど手ひどくられている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして二人がまたそのマントに取りつきますと紫色むらさきいろの光が一遍ぱっとひらめいて童子たちはもう自分のお宮の前に居ました。稲妻はもう見えません。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
つてれました。とうさんはうれしくて、あのくは紫色むらさきいろ可愛かあいちひさなえだからちぎつてくちれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いか按摩あんま、とばゝつて、備中守びつちうのかみゆびのしなへでウーンとつたが、一向いつかうかんじた様子やうすがない。さすがに紫色むらさきいろつた手首てくびを、按摩あんまさすらうとせず
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とおっしゃって、していた紫色むらさきいろ御袍おうわぎをぬいで、おずからこじきのからだにかけておやりになりました。そのとき
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
へえー……なにを。長「松花堂しようくわだうの三けう醋吸すすひで、風袋ふうたい文字もんじ紫印金むらさきいんきんだ、よく見ておぼえて置け。弥「へえー紫色むらさきいろのいんきんだえ、あれはかゆくつていけねえもんだ。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
すると、おっかさんは、女の子のはなが赤くなったり紫色むらさきいろになったりするまで、ゆびではじきました。
何もせぬのに夜通し痛がっていたので、乳腺炎にゅうせんえんになったのかと大学病院へ行き、歯形が紫色むらさきいろににじんでいる胸をさすがにはずかしそうにひろげててもらうと、乳癌にゅうがんだった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
結び目は嚴重な男結び、死骸の顏は紫色むらさきいろに充血して、日頃の蒼白い内儀とは大變な違ひです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
其頃そのころ着手きての無いインパネスのもう一倍いちばいそでみじかいのをて雑誌を持つてまわる、わたしまたむらさきヅボンといはれて、柳原やなぎはら仕入しいれ染返そめかへしこんヘルだから、日常ひなたに出ると紫色むらさきいろに見えるやつ穿いて
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その四かく彼女かれいてる硝子窓がらすまどからは、黄色きいろ落葉松からまつはやしや、紫色むらさきいろ藻岩山さうがんざんえて、いつもまちこしをおろしてなみだぐむときは、黄昏たそがれ夕日ゆふひのおちるとき硝子窓がらすまどあかくそまつてゐた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
うめいて、紫色むらさきいろ雑木林ざふきばやしこずゑが、湿味うるみつたあをそらにスク/\けてえ、やなぎがまだあら初東風はつこちなやまされて時分じぶんは、むやみと三きやく持出もちだして、郊外かうぐわい景色けしきあさつてあるくのであるが
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
巡査じゅんさは、くびをしめられて紫色むらさきいろになりながら、一生けんめいにさけんだ。
五〇 死助しすけの山にカッコ花あり。遠野郷にても珍しという花なり。五月閑古鳥かんこどりくころ、女や子どもこれをりに山へ行く。の中にけて置けば紫色むらさきいろになる。酸漿ほおずきのように吹きて遊ぶなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのあさは、もう病人びやうにん爪先つまさき紫色むらさきいろめて、てしまつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
狼たちも吠えてゆきます、彼方かなた紫色むらさきいろの森。
一つの紫色むらさきいろをした岩の上には
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
なかには、なのや、紫色むらさきいろがかったのや、うつくしいのもあれば、もういろのあせてしまって、からからにかわいたのもありました。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
明智探偵は、愛用のパイプをくわえると、ゆっくり紫色むらさきいろの煙をはきだしながら、若々しい顔をニッコリほころばせました。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かえってそのつやつやした緑色の葉の上に次々せわしくあらわれては又消えて行く紫色むらさきいろのあやしい文字を読みました。
若い木霊 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
くろすごなかに、紫色むらさきいろえましやう。高山かうざん何処どこもこの景色けしきです。光線くわうせん工合ぐあひです。夕立雲ゆふだちぐもではありません。」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いよいよ女神めがみいえまえまでますと、着物きものからくつから弓矢ゆみやまで、のこらず一にぱっと紫色むらさきいろふじはなして、それはにかいたようなうつくしい姿すがたになりました。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
豊隆その洋灯ランプをもっとこっちへ出せなどと云う。そのくせ寒いので鼻の頭が少し紫色むらさきいろになっている。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
廓をひかえて夜更おそくまで客があり、看板を入れる頃はもう東の空が紫色むらさきいろに変っていた。くたくたになって二階の四畳半で一刻いっときうとうとしたかと思うと、もう目覚ましがジジーと鳴った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
紫色むらさきいろちいさいかたくりの花がくなんていふことをかんがへると、まつたくたまらない。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
そして、今日きょうはいつもより、紫色むらさきいろかみ小旗こばたがたくさんにちらちらとえましたので、はやわった光景こうけいをながめたいとはしっていきました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そう見えるだけさ、本当は火花なんかないさ。それでもその小さな子は空が紫色むらさきいろがかった白光しろびかりをしてパリパリパリパリと燃えて行くように思ったんだ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二十面相の、汗にぬれた顔は、もう、紫色むらさきいろです。目も口も、くるしさにひんまがっています。二十面相はまけたのです。明智探偵の目の光にまけたのです。
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
千代子は泣きながら返事もせずに、冷たい宵子を裸にしてき起した。その背中には紫色むらさきいろの斑点が一面に出ていた。着換が済むと御仙が小さい珠数じゅずを手にかけてやった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さんざん大荒おおあれに荒れたあとで、ふいとまたかみなりがやんで、あらしがしずまって、なつがしらしらとけかかりました。三上山みかみやまがやさしい紫色むらさきいろかげそらにうかべていました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
眞赤まつかひれへ。すごつきで、紫色むらさきいろ透通すきとほらうね。」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうちに、日数にっすうがたって、砂漠さばくとおりすぎてしまいました。ある晩方ばんがた二人ふたりは、前方ぜんぽうに、紫色むらさきいろうみたのであります。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
斬った方は肩をいからせて、三べん刀を高くふりまわし、紫色むらさきいろはげしい火花をげて、楽屋へはいって行きました。
時々は紫色むらさきいろ亀甲型きっこうがたを一面にった亀清かめせい団扇うちわなどが茶の間にほうされるようになった。それだけならまだ好いが、彼は長火鉢ながひばちの前へすわったまま、しきりに仮色こわいろつかい出した。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するとせまみちうえへ、片側かたがわちいさな店先みせさきから、紫色むらさきいろ光線こうせんがもれてきて、あるひとところだけ紫色むらさきいろつちうえいろどっていました。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「古い穴の中へ引き込まれて、出る事が出来なくなって、ぼんやりしているうちに、紫色むらさきいろのクレオパトラが眼の前にあざやかに映って来ます。げかかった錦絵にしきえのなかから、たった一人がぱっと紫に燃えて浮き出して来ます」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひめひめ、どのほしになる。きんほしか。ぎんほしか。それとも紫色むらさきいろほしか。」と、姿すがたえないけれど、おなじことをいいました。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのなかにもいちばん目立めだってうつくしいのは玉虫たまむしのおばさんでありました。紫色むらさきいろ羽織はおりをきたおばさんは、ふねろうとして
玉虫のおばさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
往来おうらいると、紫色むらさきいろうつくしい着物きものをきたみつあそんでいました。ひかりなかに、ぱっとはないたように、みちうえまでがまぶしかったのです。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やまはたけにはオレンジのがあり、ちるときにはうみ紫色むらさきいろひかって、このまちよりも、ずっときれいなまちであります。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのほか、いろいろのくさがあって、香気こうきたか紫色むらさきいろはなや、黄色きいろはなが、はるから、あきにかけてえずいています……。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに、もうろうとしてゆめのように、かげのように、どこの景色けしきともらない、やまや、野原のはらや、紫色むらさきいろ屋根やねなどがかんでえたのであります。
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのほしひかりはなんともいえないうつくしいひかりはなっていました。金色きんいろのもあれば、銀色ぎんいろのもある。また緑色みどりいろのもあれば、紫色むらさきいろのも、青色あおいろのもありました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆうちゃんは、うしろについてはいる勇気ゆうきがなく、はやしはしに、ってっていると、少年しょうねん紫色むらさきいろのあけびのをいくつも、もいできてくれたのであります。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
すきとおるようなそらいろは、ちょうどつめたいガラスのように、無限むげんにひろがっています。そして、刻々こくこく紫色むらさきいろやま姿すがたわっていくのでありました。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
いて、べたら、うまかろう。」と、父親ちちおやは、じっと、ふるえているはね紫色むらさきいろをしたとりつめました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひめひめ、どのほしになる。きんほしか。ぎんほしか。それとも紫色むらさきいろほしか。」というこえこえたのであります。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
雑草ざっそうあいだに、一りん紫色むらさきいろ野菊のぎくいていたが、そのきよらかなで、これを見守みまもっているようにおもわれました。
野菊の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)