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すみ
ふりがな文庫
“
墨
(
すみ
)” の例文
櫻
(
さくら
)
の
樹
(
き
)
の
梢
(
うら
)
を、ぱつと
照
(
て
)
らして、
薄明
(
うすあか
)
るく
掛
(
かゝ
)
るか、と
思
(
おも
)
へば、
颯
(
さつ
)
と
墨
(
すみ
)
のやうに
曇
(
くも
)
つて、
月
(
つき
)
の
面
(
おもて
)
を
遮
(
さへぎ
)
るや
否
(
いな
)
や、むら/\と
亂
(
みだ
)
れて
走
(
はし
)
る……
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
二郎
(
じろう
)
は、
自分
(
じぶん
)
の
名
(
な
)
をそのきゅうりに
書
(
か
)
きました。きゅうりの
青
(
あお
)
いつやつやとした
肌
(
はだ
)
は、
二郎
(
じろう
)
の
書
(
か
)
こうとする
筆
(
ふで
)
の
先
(
さき
)
の
墨
(
すみ
)
をはじきました。
遠くで鳴る雷
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼が江戸へ入ると真っ先に、この
駿河台
(
するがだい
)
の
墨
(
すみ
)
屋敷、甲賀家の門を訪れたのは無論だったが、ひょいと見ると門札の名が変っている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とふくろうは
請
(
う
)
け
合
(
あ
)
って、さんざん
首
(
くび
)
をひねって
考
(
かんが
)
えていましたが、やがて
烏
(
からす
)
をどっぷり、
真
(
ま
)
っ
黒
(
くろ
)
な
墨
(
すみ
)
のつぼにつっ
込
(
こ
)
みました。
物のいわれ
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
紙を
濡
(
ぬ
)
らして手ずから源氏の鼻のあたまを拭いてやろうとする時に、「平中のように
墨
(
すみ
)
を塗られたら困りますよ、赤いのはまだ我慢しますが」
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
字はまるでへたで、
墨
(
すみ
)
もがさがさして指につくくらいでした。けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。
どんぐりと山猫
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それはまだいいとして、
憂鬱
(
ゆううつ
)
なことには、あたりがまっくらで、
墨
(
すみ
)
つぼの中を歩いているような感じのすることであった。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それが
膨
(
ふく
)
れると
自然
(
しぜん
)
と
達磨
(
だるま
)
の
恰好
(
かつかう
)
になつて、
好加減
(
いゝかげん
)
な
所
(
ところ
)
に
眼口
(
めくち
)
迄
(
まで
)
墨
(
すみ
)
で
書
(
か
)
いてあるのに
宗助
(
そうすけ
)
は
感心
(
かんしん
)
した。
其上
(
そのうへ
)
一度
(
いちど
)
息
(
いき
)
を
入
(
い
)
れると、
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
膨
(
ふく
)
れてゐる。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
墨
(
すみ
)
や
紅
(
べに
)
を
流
(
なが
)
して
染
(
そ
)
めた
色紙
(
いろがみ
)
、または
赤
(
あか
)
や
黄
(
き
)
や
青
(
あを
)
の
色紙
(
いろがみ
)
を
短册
(
たんざく
)
の
形
(
かたち
)
に
切
(
き
)
つて、あの
青
(
あを
)
い
竹
(
たけ
)
の
葉
(
は
)
の
間
(
あひだ
)
に
釣
(
つ
)
つたのは、
子供心
(
こどもごゝろ
)
にも
優
(
やさ
)
しく
思
(
おも
)
はれるものです。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
歎
(
なげ
)
くべきことならずと
嫣然
(
につこ
)
と
笑
(
ゑ
)
みて
靜
(
しづ
)
かに
取出
(
とりいだ
)
す
料紙
(
りやうし
)
硯
(
すゞり
)
、
墨
(
すみ
)
すり
流
(
なが
)
して
筆先
(
ふでさき
)
あらためつ、
書
(
か
)
き
流
(
な
)
がす
文
(
ふみ
)
誰
(
た
)
れ/\が
手
(
て
)
に
落
(
お
)
ちて
明日
(
あす
)
は
記念
(
かたみ
)
と
見
(
み
)
ん
名殘
(
なごり
)
の
名筆
(
めいひつ
)
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
売った覚えのない上物の
墨
(
すみ
)
が二本もなくなっていたり、一ダース仕入れた細筆が一本も姿を見せなかったりした。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
どこか雨宿りをと坂を上りつめた時分には、一天
墨
(
すみ
)
の如く、ガラス玉のようなのが矢を射るように落ちて来ます。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そこで
何処
(
どこ
)
かの坊さんに頼んだそうだが、坊さんは
佳
(
いい
)
墨
(
すみ
)
がなければ書けぬと云うたそうで、字を書かぬなら墨を貸してくれと村の人達が墨を借りに来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
洗ふ
水音
(
みづおと
)
滔々
(
たう/\
)
として其の夜は
殊
(
こと
)
に一
天
(
てん
)
俄
(
には
)
かに
掻曇
(
かきくも
)
り
宛然
(
さながら
)
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
すに似て
礫
(
つぶて
)
の如き
雨
(
あめ
)
はばら/\と降來る
折柄
(
をりから
)
三更
(
さんかう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
でも、源三郎様は、この植木屋とは月とすっぽん、雪と
墨
(
すみ
)
、くらべものにならない武骨な方に相違ない……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
墨
(
すみ
)
黒々
(
くろ/″\
)
と
書
(
か
)
かれた『
多田院御用
(
ただのゐんごよう
)
』の
木札
(
きふだ
)
を
立
(
た
)
てて
來
(
こ
)
られると、
船頭
(
せんどう
)
はまた
舟
(
ふね
)
を
返
(
かへ
)
さないわけに
行
(
ゆ
)
かなかつた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
一同
(
みんな
)
筆
(
ふで
)
紙
(
かみ
)
墨
(
すみ
)
の用意して
愡掛
(
そうがか
)
りだと云た所で
茲
(
ここ
)
に一つ困る事には、大切な黒田様の蔵書を
毀
(
こわ
)
すことが出来ない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
周章狼狽
(
あわてふためき
)
戸外
(
こぐわい
)
に
飛出
(
とびだ
)
して
見
(
み
)
ると、
今迄
(
いまゝで
)
は
北斗七星
(
ほくとしちせい
)
の
爛々
(
らん/\
)
と
輝
(
かゞや
)
いて
居
(
を
)
つた
空
(
そら
)
は、
一面
(
いちめん
)
に
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
せる
如
(
ごと
)
く、
限
(
かぎ
)
りなき
海洋
(
かいやう
)
の
表面
(
ひやうめん
)
は
怒濤
(
どたう
)
澎湃
(
ぼうはい
)
、
水煙
(
すいえん
)
天
(
てん
)
に
漲
(
みなぎ
)
つて
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
フフン、わかったぞ。きさま、明智の助手の小林だな。顔に
墨
(
すみ
)
などぬって、ごまかしているが、おれには、ちゃんとわかるんだ。明智のさしずで、おれのあとを
怪奇四十面相
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
目
(
め
)
をさくとは、
眦
(
めじり
)
を、
刺
(
とげ
)
のようなもので
割
(
さ
)
いて、
墨
(
すみ
)
を
入
(
い
)
れて、
黥
(
いれずみ
)
をすることをいふ、
古
(
ふる
)
い
言葉
(
ことば
)
であります。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
此の二人
忽
(
たちま
)
ち
躍
(
をど
)
りたちて、滝に飛び入ると見しが、水は
大虚
(
おほぞら
)
に
湧
(
わ
)
きあがりて見えずなるほどに、雲
摺
(
す
)
る
墨
(
すみ
)
をうちこぼしたる如く、雨
二七六
篠
(
しの
)
を乱してふり来る。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
小川の水を硯にくみ取って、一生懸命に
墨
(
すみ
)
をすりました。早くしないと、太陽が昇ってしまいます。太陽が昇ってしまえば、
影法師
(
かげぼうし
)
は小さくなってだめなんです。
影法師
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
かれ阿曇の連等は、その綿津見の神の子
宇都志日金拆
(
うつしひがなさく
)
の命の
子孫
(
のち
)
なり。その底筒の男の命、中筒の男の命、上筒の男の命三柱の神は、
墨
(
すみ
)
の
江
(
え
)
の三前の大神
一四
なり。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
千穂子は腰かけたなり、その木札の文字を何度も読みかえしていた。その
墨
(
すみ
)
の文字が、虫のように大きくなったり縮んだりして来る。
長閑
(
のどか
)
によしきりが鳴いている。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そこで、法師をはだかにして、ありがたい、はんにゃしんきょうの
経文
(
きょうもん
)
を、
頭
(
あたま
)
から
胸
(
むね
)
、
胴
(
どう
)
から
背
(
せ
)
、
手
(
て
)
から
足
(
あし
)
、はては、
足
(
あし
)
のうらまで一
面
(
めん
)
に
墨
(
すみ
)
くろぐろと
書
(
か
)
きつけました。
壇ノ浦の鬼火
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
と、ただ一色の
墨
(
すみ
)
にぬりつぶされたような下界が切れて、ぽっかり一面に白いものがひろがった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
帳面の房吉の字が、紙を立てゝ透き寫しにされた爲、
墨
(
すみ
)
がにじんで、ひどく汚れてゐるのです。
銭形平次捕物控:247 女御用聞き
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
京都所司代の番士のお長屋の、茶色の
土塀
(
どべい
)
へ
墨
(
すみ
)
黒々と、楽書きをしている女があった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
薄板
(
うすいた
)
を
組合
(
くみあは
)
せて名
刺
(
し
)
形
(
かた
)
の
暗箱
(
あんはこ
)
をこしらへる。内
部
(
ぶ
)
を
墨
(
すみ
)
で
塗
(
ぬ
)
る。
眼
(
め
)
鏡
屋
(
や
)
から十五錢ばかりで
然
(
しか
)
るべき
焦點距離
(
せうてんきより
)
を持つ虫
眼
(
め
)
鏡を
買
(
か
)
つて來て竹
筒
(
つゝ
)
にはめ
込
(
こ
)
んだのを、一方の
面
(
めん
)
にとりつける。
写真と思ひ出:――私の写真修行――
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
その足に
墨
(
すみ
)
を印しておけば、必ずそのつぎに生まるる子の足に同じ印を持している。
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
三月
(
みつき
)
越しの母の看病で、月も五月の末やら六月の始めに入ったのやらまるで夢中で過しました。けれども兎に角、夏の始めの闇の夜空です。
墨
(
すみ
)
の中に
艶
(
つや
)
やかな紺が溶かし込まれています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
各色の音楽的調和によりて
企
(
くわだ
)
てずして
自
(
おのず
)
から画面に空気の感情を起さしむるといへども、肉筆画にありては、
朱
(
しゅ
)
、
胡粉
(
ごふん
)
、
墨
(
すみ
)
等の顔料は皆そのままに独立して生硬なる色彩の乱雑を生ずるのみ。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大食の
習慣
(
しふかん
)
今日に
至
(
いた
)
りても未だ全く
旧
(
きう
)
に
復
(
ふく
)
せざるなり、食事
了
(
おは
)
れば
例
(
れい
)
により鹽原巡査の
落語
(
らくご
)
あり、衆拍手して之を
聞
(
き
)
く、為めに
労
(
らう
)
を
慰
(
なぐさ
)
めて
横臥
(
わうぐわ
)
すれば一天
墨
(
すみ
)
の如く、
雨滴
(
うてき
)
点々
(
てん/\
)
木葉を
乱打
(
らんだ
)
し来る
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
僕の顔に何か
墨
(
すみ
)
でもついているのであろうか。失敬な女性である。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
まとへる ぞ みな
墨
(
すみ
)
ごろも——
御霊うぶや
(新字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
墨
(
すみ
)
を
磨
(
す
)
るかな。
悲しき玩具
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
やがて、とことはの
闇
(
やみ
)
となり、
雲
(
くも
)
は
墨
(
すみ
)
の
上
(
うへ
)
に
漆
(
うるし
)
を
重
(
かさ
)
ね、
月
(
つき
)
も
星
(
ほし
)
も
包
(
つゝ
)
み
果
(
は
)
てて、
時々
(
とき/″\
)
風
(
かぜ
)
が
荒
(
あ
)
れ
立
(
た
)
つても、
其
(
そ
)
の
一片
(
いつぺん
)
の
動
(
うご
)
くとも
見
(
み
)
えず。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして自分の犯しかけた——思い出したくない古傷に——ふと、心の灯を吹かれて、
墨
(
すみ
)
のような黒い
煤
(
すす
)
の回顧に落ちてしまった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なぜなら、その
湯沸
(
ゆわ
)
かしは、
黒
(
くろ
)
くすすけて、まるでいたずらっ
子
(
こ
)
の
顔
(
かお
)
を
見
(
み
)
るように、
墨
(
すみ
)
を
塗
(
ぬ
)
ったかと
思
(
おも
)
われたほどだからです。
人間と湯沸かし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
こう
考
(
かんが
)
えて、
弁慶
(
べんけい
)
は
黒糸
(
くろいと
)
おどしの
鎧
(
よろい
)
の上に
墨
(
すみ
)
ぞめの
衣
(
ころも
)
を
着
(
き
)
て、
白
(
しろ
)
い
頭巾
(
ずきん
)
をかぶり、なぎなたを
杖
(
つえ
)
について、
毎晩
(
まいばん
)
五条
(
ごじょう
)
の
橋
(
はし
)
のたもとに
立
(
た
)
っていました。
牛若と弁慶
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
安積
(
あさか
)
の
爺
(
じい
)
、そち大急ぎで、林念寺前の上屋敷へこの旨を伝えに行ってくれぬか。それから、大八、
硯
(
すずり
)
と
墨
(
すみ
)
を持ってまいれ。もう一度、峰丹波に笹の便りをやるのだ
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
評
(
ひやう
)
に曰く證文の文字の
消失
(
きえうせ
)
しは長庵が計略により
烏賊
(
いか
)
の
墨
(
すみ
)
にて認めし
故
(
ゆゑ
)
成
(
なら
)
んか古今に
其例
(
そのため
)
し有りとかや
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
しかし私のもっとも痛切に感じたのは、最後に
墨
(
すみ
)
の余りで書き添えたらしく見える、もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろうという意味の文句でした。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ヘッドライトのガラスに
墨
(
すみ
)
で書かれたものだ。それが恐ろしく拡大されて塀に写ったのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ところが、その一郎が、近頃、なにに感じたものか、毎朝起きると机に向って
墨
(
すみ
)
をする。
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すでに和するの敵に向うは男子の
恥
(
はず
)
るところ、
執念
(
しゅうねん
)
深きに過ぎて
進退
(
しんたい
)
窮
(
きゅう
)
するの
愚
(
ぐ
)
たるを
悟
(
さと
)
り、
興
(
きょう
)
に乗じて深入りの無益たるを知り、双方共にさらりと前世界の
古証文
(
ふるしょうもん
)
に
墨
(
すみ
)
を引き
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
龍華寺
(
りうげじ
)
の
坊
(
ぼう
)
さまにいぢめられんは
心外
(
しんぐわい
)
と、これより
學校
(
がくかう
)
へ
通
(
かよ
)
ふ
事
(
こと
)
おもしろからず、
我
(
わが
)
まゝの
本性
(
ほんせう
)
あなどられしが
口惜
(
くや
)
しさに、
石筆
(
せきひつ
)
を
折
(
を
)
り
墨
(
すみ
)
をすて、
書物
(
ほん
)
も
十露盤
(
そろばん
)
も
入
(
い
)
らぬ
物
(
もの
)
にして
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そう言って長者の子供は、白い
塀
(
へい
)
の前につっ立ちました。その姿通りの影が、
白塀
(
しろべい
)
の上にはっきりうつりました。それを他の子供たちが、
墨
(
すみ
)
をいっぱいふくました筆で写し取りました。
影法師
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
各色の音楽的調和によりて企てずして
自
(
おのず
)
から画面に空気の感情を起さしむるといへども、肉筆画にありては、
朱
(
しゅ
)
、
胡粉
(
ごふん
)
、
墨
(
すみ
)
等の
顔料
(
がんりょう
)
は皆そのままに独立して生硬なる色彩の乱雑を生ずるのみ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
にほやかにさくら
描
(
か
)
かむと
春陽
(
はるひ
)
のもとぬばたまの
墨
(
すみ
)
をすり流したり
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
“墨”の意味
《名詞》
(すみ)書画を書くのに用いる黒色の液体。
(すみ)語義1の液体を得るために、油煙や松煙などから採取した煤を膠で練り固めたもの。
(出典:Wiktionary)
“墨”の解説
墨(すみ)とは、煤(すす)、膠(にかわ)、香料を主原料とする書画材料。煤や膠に少量の香料などを加えて練和し木型に入れて乾燥させたものは摺墨ともいう。このような硯で水とともに磨って用いる固形墨(こけいぼく)のほか、手軽に使えるよう液状に製造した液体墨(えきたいぼく)もある。固形墨を摺った液や液体墨は墨汁(ぼくじゅう)または墨液(ぼくえき)とも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
墨
常用漢字
中学
部首:⼟
14画
“墨”を含む語句
墨汁
白墨
墨痕
墨縄
薄墨
墨色
淡墨
墨堤
唐墨
墨書
墨染
墨絵
筆墨
墨守
墨画
鍋墨
墨客
文人墨客
墨股
墨斗
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