せい)” の例文
鼻からおとがいまで、馬づらにだぶだぶした、口の長い、顔の大きな、せいは四尺にも足りぬ小さな神官かんぬしでござりましたそうな。ええ、夫人おくさま
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼はせいの短いがっしりした体格の男で、強固な意志が眉宇びうの間に窺われ、ニューヨークの暗黒界に於ける一大勢力であった。
変な恋 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
あねは、ずっとせいたかかった。そして、くろかみが、なが肩頭かたさきかられていました。彼女かのじょは、指先ゆびさきでそのかみをいじっていました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちひさく、はなあかく、肩幅かたはゞひろく、せいたかく、手足てあし圖※づぬけておほきい、其手そのてつかまへられやうものなら呼吸こきふまりさうな。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
代助は苦笑してだまつて仕舞つた。梅子うめこは代助の方へ向いて、椅子へ腰を卸した。せいのすらりとした、色の浅黒い、眉のい、唇の薄い女である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼等かれらみな、この曇天どんてんしすくめられたかとおもほどそろつてせいひくかつた。さうしてまたこのまちはづれの陰慘いんさんたる風物ふうぶつおなじやうないろ著物きものてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
糸織いとおり小袖こそでかさねて、縮緬ちりめん羽織はおりにお高祖頭巾こそづきんせいたかひとなれば夜風よかぜいと角袖外套かくそでぐわいとうのうつりく、ではつてますると店口みせぐち駒下駄こまげたなほさせながら、太吉たきち
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二人とも富裕な生活の人とは見えなかったが、劣らず堂々とした立派な風貌ふうぼうせいも高く、互に強く信じ合い愛し合っている満足した様子が一べつして感じられた。
睡蓮 (新字新仮名) / 横光利一(著)
若樣の吉彌は十四歳といふにしては、せいも智惠も伸び切つて、何となくたくましい感じのする少年でした。
雪江さんがったから、私もって其跟そのあといて今度は椽側へ出た。雪江さんは私よりせいが低い。ふッくりした束髪で、リボンの色は——あれは樺色というのか知ら。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
出來得るならば、自分の頭丈でも可いから、緑のなかに漂はして安らかに眠りたい位である。いつかの展覽會に青木と云ふ人が海の底に立つてゐるせいの高い女をいた。
知られざる漱石 (旧字旧仮名) / 小宮豊隆(著)
次郎はせいが低くて、しかも組の中では右側の前から十番目ぐらいのところにいたので、五年生に顔を見られる心配は比較的少かったが、それでもひとりでに頭が下っていた。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「ね? ぴったりでしょう? 私のいっていた女性像と。すこしせいは低いようだけれど」
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
緑なす黒髪に灰色の毛の二すじすじまじってはおれど、まだ若々しい婦人、身の廻りは質素だけれども、せいは高く、嫋々なよなよした花の姿、いかにも長い間の哀愁を語っている様に思われる。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
矢張り此の頃の老妓あねえで、年は二十七歳に相成りまする、お月と申しますせいはすっきりとして芸がく、お座敷でお客と話などをして居ります間に取持とりもちが上手と評判の芸者でありました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
勘定をすませ丸く肥え太りたるせい低き女に革鞄げさして停車場へ行く様、痩馬と牝豚の道行みちゆきとも見るべしと可笑おかし。この豚存外に心利きたる奴にて甲斐々々しく何かと世話しくれたり。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今の世にかくを愛する孟甞君まうしやうくんなし有らば此人や上客じやうかくの一人ならん年ごろ廿一二痩てせい低く色白く眼は小さけれど瞳流れず口早にて細き聲の男馬士まごの友と見え後先に話ながら來りしが忽ち小指を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
そしてせいが竹の子のやうに細長かつた。顔色ははつきりと青白かつた。
海棠の家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
兄弟と申しましても、十八、十七、十六という一つ違いでせいの高さも同じ位で、顔の様子や物の言いぶりまで、どれが一郎次でどれが二郎次だか、他人には見分けの付かないほどよく似ていました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
太郎たろうは、うしろをいたときに、びっくりしました。なぜなら、そこには、せいひくい、あたまのとがったおとこあおかおをしてっていたからです。
脊の低いとがった男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
立つたものは、新らしい黒の制服を着て、鼻のしたにもうひげやしてゐる。せいが頗る高い。立つには恰好のい男である。演説めいた事を始めた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三人の紅茶を一個々々ひとつひとつ硝子杯コップせんじ出した時、柳沢時一郎はそのすっきりとせいの高い、しまった制服の姿をとう椅子いすの大きなのに、無造作に落していった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
素気無そっけなかおには青筋あおすじあらわれ、ちいさく、はなあかく、肩幅かたはばひろく、せいたかく、手足てあし図抜ずぬけておおきい、そのつかまえられようものなら呼吸こきゅうまりそうな。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
するとロッビイへ出る隅に緑いろの笠をかけた、せいの高いスタンドの電燈が一つ硝子ガラス戸にあざやかに映っていた。それは何か僕の心に平和な感じを与えるものだった。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ツァラアは少し猫背ねこぜに見える。せいは低いがしっかりした身体である。声も低く目立たない。しかし、こういう表面絶えず受身形に見える人物は流れの底を知っている。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
これ此樣こんなうつくしいはなさいてあるに、えだたかくてわたしにはれぬ、のぶさんはせいたかければおとどきましよ、後生ごせうつてくだされと一むれのなかにては年長としかさなるをつけてたのめば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かあさんは、やみをすかして、のがすまいとしました。ちょうど、としごろから、せいたかさまで、そっくりおなじかったので
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
台所のわきに立派な生垣いけがきがあつて、庭の方には却つて仕切りも何にもない。只大きな萩が人のせいより高く延びて、座敷の縁側を少し隠してゐる許である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その両方のあわいの、もの蔭に小隠れて、意気人品ひとがらな黒縮緬ちりめん、三ツ紋の羽織を撫肩なでがたに、しま大島の二枚小袖、かさねて着てもすらりとした、せぎすでせいの高い。油気の無い洗髪。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目鼻だちはきりきりと利口らしけれどいかにもせいの低くければ人あざけりて仇名はつけける。
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あなたは、せいひくく、地面じめんについていますから、ここならあぶないことはありません。あのくもゆきのはやいのをごらんなさい。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
梅子うめこは代助の方へ向いて、椅子いすへ腰を卸した。せいのすらりとした、色の浅黒い、眉の濃い、唇の薄い女である。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
溜池ためいけ真中まんなかあたりを、頬冠ほおかむりした、色のあせた半被を着た、せいの低い親仁が、腰を曲げ、足を突張つッぱって、長いさおあやつって、の如く漕いで来る、筏はあたかも人を乗せて、油の上をすべるよう。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とし十六じふろくなれども不圖ふとところいちか、肩幅かたはゞせばくかほちひさく、目鼻めはなだちはきり/\と利口りこうらしけれどいかにもせいひくければひとあざけりて仇名あだなはつけゝる、御免ごめんなさい、と火鉢ひばちそばへづか/\とけば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あやしげなようすをした、せいひくうらなしゃは、おうさまのあしもとに平伏へいふくしていましたが、このとき、そのくろい二つのばかりがきらきらとするかおげました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
窓も四角である。只四隅と入口が丸い。是はやぐら片取かたどつたんだらう。御城丈に堅牢しつかりしてゐる。法文科見た様に倒れさうでない。何だかせいひくい相撲取に似て居る。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
溜池ためいけ眞中まんなかあたりを、頬冠ほゝかむりした、いろのあせた半被はつぴた、せいひく親仁おやぢが、こしげ、あし突張つツぱつて、ながさをあやつつて、ごといでる、いかだあたかひとせて、あぶらうへすべるやう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なんでもこのものの生国しょうこく西蔵チベットだということでありますが、幾歳いくさいになるかわからないような人間にんげんでありました。せいひくく、ひかりは、きらきらとひかっていました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、をんなおほいので服裝ふくさうものるとか、二週間にしうかん旅行りよかうしてかへつてくると、きふにみんなのせい一寸いつすんづゝもびてゐるので、なんだかうしろからかれるやう心持こゝろもちがするとか、もうすこしすると
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
多人数たにんずに囲まれてかよった時、庚申堂こうしんどうわきはんの木で、なかば姿をかくして、群集ぐんじゅを放れてすっくと立った、せいの高い親仁おやじがあって、じっと私どもを見ていたのが、たしかに衣服を脱がせた奴と見たけれども
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょうど、そのころ、どこからともなく城下じょうかへまわってきたうらなしゃがありました。とりのように諸国しょこくあるいて、人々ひとびと運命うんめいうらなう、せいひくい、ひかりするどおとこでした。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
せいのひよろりとしたのが、どううねらして……とほる。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのばんのことであります。太郎たろうは、とこについてから、昼間ひるま学校がっこうかえりに、あった、せいひくあおかおおとこのことをおもしました。けれど、すぐに、かれは、ねむってしまいました。
脊の低いとがった男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あ、これでやっといい気持きもちになった。もうどんなにかぜいてもさむくない。」と、ひとごとをいいながら、せいひくいおじいさんは、よちよちとこおったゆきうえあるきはじめました。
酔っぱらい星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、一ぽんせいたか常磐木ときわぎ中央ちゅうおうてかけて、それには、金紙きんがみや、銀紙ぎんがみむすびつけてあり、また、いろいろのあかや、むらさきのおもちゃや、めずらしい果物くだものなどがぶらさがっていました。
酔っぱらい星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
長吉ちょうきち学校がっこう課目かもくうちで、いちばん算術さんじゅつ成績せいせきわるかったので、この時間じかんにはよく先生せんせいからしかられました。先生せんせいというのはもう四十五、六の、あたまのはげかかったせいひくひとでありました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
からすは、ついにうしをおだてそこないました。そしてや、はたけうえんできますと、今度こんどは一ぴきのうま並木なみきにつながれていました。そのうませいたかい、まだ年若としわか赤毛あかげうまであります。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
むら石油せきゆりにくるおとこがありました。かみくろ蓬々ぼうぼうとした、せいのあまりたかくない、いろしろおとこで、石油せきゆのかんを、てんびんぼう両端りょうはしに一つずつけて、それをかついでやってくるのでした。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、十二、三になりましたが、としのわりあいにせいひくかった。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、あおかおをした、せいひくおとこはいいました。
脊の低いとがった男 (新字新仮名) / 小川未明(著)