つくえ)” の例文
いままで、たのしかった、いえなかは、たちまちわらいがえてしまって、あには、自分じぶん本箱ほんばこや、つくえのひきだしを、かたづけはじめました。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
かんのそばに、つくえがひとつありました。その上にあかりが四つと、パンのかたまりが四つ、それにブドウしゅが四本のせてありました。
かれらはワイワイさわぎながら、つくえをかたづけたり、演壇えんだんをきずいたりしてきたあとなので、まだなんとなく気持ちがはしゃいでいた。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
藤吉とうきちが、あたふたとってしまうと、春信はるのぶ仕方しかたなしにまつろうまえいた下絵したえを、つくえうえ片着かたづけて、かるくしたうちをした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、ふとんもつくえも、よろいびつまでもここへもちこんできて、馬糞ばふんにおいのプンプンする中に、平気で毎日毎日寝起ねおきしていた。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
まるでそれは、話しかけられるのは困りますとでもいっているふうに、つくえの上の担当箱たんとうばこのかげにうつむきこんで、なにか書類を見ているのだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ずいぶんいかがわしい家庭の息子むすこつくえをならべるのですから、あるいはきみが君公ご馬前の臣節をつくすような機会が来ないともかぎりません
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かの女のあつい息の中には、ぷんとジン酒のにおいがした。わたしは後ずさりをした。かの女の頭はまた下がって、つくえの上にぐったりとなった。
コウゾの長い綱を延ばして釣をする海人あまの釣り上げた大きなすずきをさらさらと引き寄せあげて、つくえもたわむまでにりつぱなお料理を獻上致しましよう
博士はくしまどをしめ、もう一つくえのまえにすわった。一時間ほどたったとき、玄関げんかんのベルがはげしくなった。応対おうたいにでていくお手伝いの足音がした。
にわあそんでいると、大きな庭石にわいしの上にのぼってよろこんでいますし、へやの中にいると、つくえ卓子テイブルの上にすわりこんでいます。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「よごせ慶助わあい。」キッコは一生けん命のびあがって慶助の手をおろそうとしましたが慶助はそれをはなして一つうしろのつくえににげてしまいました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
糟谷はへいきで仕事をしてるようなふうをよそおうて、つくえにむかっているときにはわかりきってることをわざわざ立っていって同僚どうりょうに聞いたりしている。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
幾何学きかがくの題は至極しごく平易なのであった、光一はすらすらと解説を書いた、かれは立って先生の卓上たくじょうに答案をのせつくえと机のあいだを通って扉口ドアぐちへ歩いたとき
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
やがて、平岡はふでつくえの上へげ付ける様にして、なほした。なんだか込み入つた事を懸命に書いてゐたと見えて、耳をあかくしてゐた。も赤くしてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしはうれしくもあれば、また意外いがいでもあり、わるるままにいそいで建物たてもの内部なかはいってますと、中央ちゅうおう正面しょうめん白木しらきつくえうえにははたして日頃ひごろ信仰しんこう目標まとである
信如しんによつくえ引出ひきだしから京都きやうとみやげにもらひたる、小鍛冶こかぢ小刀こがたな取出とりだしてすれば、よくれそうだねへとのぞ長吉ちようきちかほ、あぶなし此物これ振廻ふりまわしてなることか。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
筆を持った小児こどもの手を持添えて、その小児こどもの顔を、上から俯目ふしめ覗込のぞきこむようにして、莞爾にっこりしていると、小児こどもは行儀よくつくえに向って、草紙に手習のところなんだがね。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そしてつくえをあけて、中から一さつ楽譜帖がくふちょうをとり出し、ピアノの楽譜台がくふだいにのせて、いてごらんといった。クリストフは大変困ったが、どうかこうか読みいていった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
この巻き物は特にじんの木の華足げそくつくえに置いて、仏像を安置した帳台の中に飾ってあった。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「どうだね、つくえ博士」木戸は、さいそくするように、机博士の小さく見える顔を仰いだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
役所や会社においても執務しつむ時間に、つくえの前にこしかけるだけは誰も同様であるが、実際仕事をさばくについても、ぶつぶつつぶやきながらすると、快活にやるとは仕事の分量においてちがいはなくとも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
つくえまえにマッチはあって、かれはそれをていながら、そのくせ大声おおごえげて小使こづかいんでマッチをっていなどとい、女中じょちゅうのいるまえでも平気へいき下着したぎ一つであるいている、下僕しもべや、小使こづかいつかまえては
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
つくえにふるゆき
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるときは、つくえまえったり、すわったりしました。いえうちあるいてみました。どうかして、それをおもそうとこころみました。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
牧師ぼくしは、かたくくちびるをかみしめて、つくえをかきまわすひくい音のきこえている書斎へ、ひと足ずつ近づいていった。
わたしたちがうちへ帰ったとき、母親はまだ部屋へやから出て来なかった。開け放したドアのすきからわたしはかの女がつくえの上につっぷしているのを見た。
そして教室中はしばらくつくえふたをあけたりしめたり本を重ねたりする音がいっぱいでしたがまもなくみんなはきちんと立って礼をすると教室を出ました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
背高せたかく顔の長いやさしそうな老人ろうじんだ。いまおくの、一枚開いた障子しょうじのこかげに、つくえの上にそろばんをおいて、帳面ちょうめんを見ながら、パチパチとたまをはじいてる。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
一ぴきはつくえの下に、二ひきめは寝床ねどこのなかに、三ばんめは暖炉だんろのなかに、四ばんめは台所だいどころに、五ばんめは戸だなのなかに、六ばんめはせんたくだらいのなかに
瞬間しゅんかん、絶望的なものがしおのように押しよせてきたが、昔のままの教室に、昔どおりにつくえ椅子いすを窓べりにおき、外を見ているうちに、背骨せぼねはしゃんとしてきた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
つくえりふれの白木作しらきづくりに白天竺しろてんぢくをかけて、勸工塲くわんこうばものゝ筆立ふでたてに晋唐小楷しんとうしようかいの、栗鼠毛りつそもうの、ペンも洋刀ないふも一ツにれて、くびけたかめ水入みづいれに、赤墨汁あかいんきびんがおしなら
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手紙てがみ古風こふう状箱じようばこうちにあつた。その赤塗あかぬりおもてには名宛なあてなにかないで、真鍮しんちうくわんとほした観世撚かんじんよりふうくろすみを着けてあつた。代助はつくえうへ一目ひとめ見て、此手紙のぬしあによめだとすぐさとつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし押される方もはなさないし、押す方もいいかげんのところで振りはずす工夫くふうをしないから、二人ふたりしょ刺繍台ししゅうだいの上に倒れてしまった。下になった照彦様はつくえのかどで頭を打って泣きだした。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その六じょう行燈あんどんしたに、つくえうえからされたのであろう、こし付根つけねからしただけを、いくつともなくいた紙片しへんが、十まいちかくもちらばったのを、ときおりじろりじろりとにらみながら、薬罐やかん湯気ゆげ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なぜならつくえかどは、小刀こがたなかなにかで、不格好ぶかっこうけずとされてまるくされ、そして、かおには、縦横じゅうおうきずがついていたのであります。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぽつりとひとりごとをもらし、いくとおりもの新聞しんぶんをかきあつめ、つくえの上にひろげて、むさぼるように読みはじめた。
それはだれかの仕事場のつくえにともっているランプか、死にかかっている病人のまくらもとのだ。わたしたちはそこへ行って戸をたたくわけにはいかない。
そして教室じゅうはしばらくつくえふたをあけたりしめたり本をかさねたりする音がいっぱいでしたが、まもなくみんなはきちんと立ってれいをすると教室を出ました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
シギもいつしかせんだんをって、庭先にわさきくりの木、かきの木に音のするほど雨もりだした。にわかにうすぐらくなって、日もれそうである。めがねをはずしてつくえを立った老人ろうじん
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おくさまは無言むごんにびすけつとをつくえうへせて、おまへふかしをするならるやうにしてさむさのしのぎをしていたらからうに、わかしはみづつて、おつたらほたる火のやうな
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なかへはいってみれば、つくえも、いすも、こしかけも、ひっくりかえっています。せんたくだらいはめちゃめちゃにこわれていますし、かけぶとんもまくらも、寝台しんだいからずりおちています。
パチパチと拍手がおこり、つくえががたがた鳴った。男先生に相談すると、それならみんなで送ろうということになった。びっこの大石先生をとりまくようにして十二人の一年生が先頭を歩いた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
りょう一は、つくえのそばにあった、手製てせいのモーターをげてせました。電池でんちとおせばまわるまでに、なかなかの苦心くしんがいったのです。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
鳥は、ゆかやたなつくえや、うちじゅうのあらゆる場所ばしょをふさぎました。ふくろうが目玉を途方とほうもない方にけながら、しきりに「オホン、オホン」とせきばらいをします。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まあいちばんよく教えてもちったのは、休憩きゅうけいの時間で、木の根かたや、小砂利こじゃりの山の上や、または芝生しばふなり、道ばたの草の上が、みんなわたしの木ぎれをならべるつくえが代わりになった。
みかきのはこれもとりて、割據かつきよつくえうへりかゝつて、いままで洋書ようしよひもとゐたは年頃としごろ二十歳はたちあまり三とはるまじ、丸頭まるあたまの五がりにてかほながからずかくならず、眉毛まゆげくて黒目くろめがちに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ゆきだるまなどをこしらえてあそんだりして、よるになると燈火あかりしたつくえかって、くる学校がっこう課目かもく勉強べんきょうしたのであります。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
キッコのつくえはたびたびだれかにぶっつかられて暗礁あんしょうりあげた船のようにがたっとゆれました。そのたびにキッコの8の字はへん洋傘ようがさのようにかわったりしました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まれひたるうれしさにのみはこゝろも付かざりしが、むこよりの言傳ことづてとてなにこと口上こうじようもなく、無理むり笑顏ゑがほつくりながらそこしほれしところのあるはなに子細しさいのなくてはかなはず、父親てゝおやつくえうへ置時計おきどけいながめて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)