不幸ふこう)” の例文
それは、いくらしあわせになっても、おとうさんや、おかあさんに、あわれないことは、なによりも不幸ふこうなことであったからであります。
三匹のあり (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんためわたしだの、そらここにいるこの不幸ふこう人達ひとたちばかりがあだか献祭けんさい山羊やぎごとくに、しゅうためにここにれられていねばならんのか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「しかも不幸ふこうなことには、わたしたちはおたがいのあいだがだんだん近づいてこようというじぶんになって、わかれなければならないのだ」
不幸ふこうな子だとおもって、大目おおめておいてやったのだが、なんとがもないかあさんや、きょうだいをのろうといては、ててはおけない。出ていけ。」
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これは關東大地震かんとうだいぢしんさい其處そこ生埋いきうづめにされた五十二名ごじゆうにめい不幸ふこうひと冥福めいふくいのるためにてられたものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ワシントン、那波翁なおう云々うんぬん中々なかなか小生はいの事にあらず、まん不幸ふこう相破あいやぶかばねを原野にさら藤原広嗣ふじわらのひろつぐとその品評ひんぴょうを同じゅうするも足利尊氏あしかがたかうじと成るを望まざるなり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
安藤はもちろん見込みこみがありさえすれば、すぐにも自分がって治療ちりょうをこころみんとの決心けっしんを語り、つづいて花前の不幸ふこうなりし十年まえの経歴けいれきかたった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
二十二でせがれの千きちみ、二十六でおせんをんだその翌年よくねん蔵前くらまえ質見世しちみせ伊勢新いせしん番頭ばんとうつとめていた亭主ていしゅ仲吉なかきちが、急病きゅうびょうくなった、こうから不幸ふこうへの逆落さかおとしに
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
地蔵経じぞうきょうしてかどへたち、行乞ぎょうこつぜにべ物は、知りえた不幸ふこうの子にわけてやる。ほんとにおやも家もない子供は、自分の宿やどへつれて帰って、奉公口ほうこうぐちまでたずねてやる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不幸ふこうにしてわたくし想像さうざうあやまらなければそれこそ大變たいへんいま本船ほんせんとかの奇怪きくわいなるふねとのあひだだ一海里かいり以上いじやうたしかへだゝつてるが、あの燈光ともしびのだん/\と明亮あかるくなる工合ぐあひても
ひと不幸ふこううまれながらに後家ごけさまのおやちて、すがる乳房ちぶさあまへながらもちヽといふ味夢あぢゆめにもしらず、ものごヽろるにつけておやといへば二人ふたりある他人ひとのさまのうらやましさに
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何故なぜならば、僕が同伴して来た三人の将校達は、多分たぶん仏蘭西語フランスごと思われる外国語で話をしつづけました。こう不幸ふこうか、仏蘭西語は僕には何のことやら薩張さっぱり意味が判りません。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
みんあたまねてしまへ!』やがて行列ぎやうれつうごしました。三にん兵士へいし不幸ふこう園丁等えんていらけいしよするためにあとのこりました。園丁等えんていら保護ほごねがひにあいちやんのもとけてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「そうしてみると、あなたがたは、ほかの羊よりもいいおらしをなさっているように思われますが、」と、アッカは言いました。「いったい、その不幸ふこうというのは、どんなことですか?」
高橋その馳走ちそうをうけ、これにて少しはらえたとて去りたりと。この高橋は洋学ようがくにも精通せいつうし、後来こうらい有望ゆうぼうの人なりけるに、不幸ふこうにして世をはやうせり。先生深く惋惜えんせきし、厚く後事こうじめぐまれたりという。
田舎を歩いて、奇麗に鍬目くわめの入った作物のよく出来た畑の中に、草が茂って作物のはばがきかぬ畑を見ることがある。昨年の秋、病災びょうさい不幸ふこうなどでつい手が廻らずに秋草をとらなかった家の畑である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「いったい、どんな不幸ふこうがおこったんですか?」
そのわたしの一貧乏びんぼうをして、わたしは、興行師こうぎょうしられましたが、自分じぶん不幸ふこうおもうにつけて、おつたがかわいそうになります。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
我々われわれまちはなし面白おもしろい、知識ちしきのある人間にんげん皆無かいむなのは、じつ遺憾いかんなことじゃありませんか。これは我々われわれっておおいなる不幸ふこうです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかし、一方から見ると、その不幸ふこうをどうにかしてさけるようにいっしょうけんめいになるので、しぜんにいいこともあった。
火災かさいさへなければ無事ぶじたすさるべきものまで燒死しようし不幸ふこうるにいたるものが多數たすうしようずるからである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あらゆる醜状しゅうじょう世間せけんにさらしたきがいなき不幸ふこうな母と思いつめると、ありし世の狂母きょうぼ惨状さんじょうやわが過去かこ悲痛ひつうやが、いちいち記憶きおくからび起こされるのである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わたくしいま春枝夫人はるえふじん波間なみましづんだといても、どうも不幸ふこうなる最後さいごげられたとはおもはれない、あるひ意外いぐわい救助すくひて、子ープルスなる良君をつともとかへつて、今頃いまごろかへつ
このむらにはなにかおまつりでもあるのかね。だいぶにぎやかなようじゃあないか。だがその中で一けん、たいそう陰気いんきしずみこんだいえがあったが、あれは親類しんるい不幸ふこうでもあったのかね。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
人間にんげんというものは、不幸ふこうにあわなければ、人情にんじょうというものをさとるものでない。」と、かれは、いつかいた言葉ことばおもしました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところで不幸ふこうなことに、わたしたちが仕度をしているあいだ、巡査じゅんさが一人そばに立っていて、わたしたちの仕事を不快ふかいらしい顔で見ていた。
いや、非文明的ひぶんめいてきな、どううものかこのまちところものは、みなるのもむねわるいような人間にんげんばかり、不幸ふこうまちです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
つづいて花前の家にはたえまなき不幸ふこうをかさねた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
不幸ふこうにして大佐たいさことばあやまらなかつた。
若者わかものは、船長せんちょうはなしによって、ふか感動かんどうしました。そして、自分じぶんには、不幸ふこうははと、はらちがいのおとうといもうとがあることをりました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それをそう思ったのは、自分の思いごしであったが、不幸ふこうが来るという考えはちっともまちがいではなかった。
不幸ふこう湯沸ゆわかしは、あまりからだ乱暴らんぼうあつかわれすぎたせいもあって、ついにそこほうに、ちいさなあながあいたのでありました。
人間と湯沸かし (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのあくる朝バルブレンのおっかあの所へ手紙を出して、不幸ふこうのおくやみを言って、かの女のおっとくなるまえに、なにか便たよりがあったかたずねてやった。
都会とかい生活せいかつ経験けいけんのない河骨こうほねは、どうして、このむすめたちのことをましょう。むすめたちがると、河骨こうほねは、自分じぶん不幸ふこうをなげいたのでした。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そうです。そういうはずはないのですが、人はおうおう不幸ふこうにして過失かしつにおちいりやすいのです」
いったいぼくは、だれをも、おびやかしたくないんだが、ぼくが、散歩さんぽると、みんながこわがってしかたがない。なんというぼく不幸ふこうものだろう。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
義坊よしぼうは、こういいました。なぜか、おかあさんの田舎いなかへいこうというと不幸ふこう父親ちちおやは、いつでも、だまってしまうのです。
青い草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたし不幸ふこうおんなです。最初さいしょおっとをもって、かわいらしいおとこまれると、おっとは、その子供こどもれていえてしまったっきりかえってきませんでした。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
無益むえきよくが、かえって人間にんげん不幸ふこうにするのだ。そして、欲深よくふかになったものは、もう二と、まれたときのような、うつくしい気持きもちにはなれないのだ。
船でついた町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間にんげんというものは、どんな不幸ふこうあっても、日数ひかずのたつうちには、だんだんわすれてしまうものであったからです。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この不幸ふこうなからすだけは、みんなから、ややもするとおくれがちでした。けれど、殿しんがりうけたまわったからすは、このよわ仲間なかまを、後方こうほうのこすことはしなかった。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは、あなたのように、うえにしっかりとした、やすらかな生活せいかつをなさる姿すがたるとうらやましくてなりません。わたしほど不幸ふこうなものがありましょうか。
すみれとうぐいすの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このかね死後しご始末しまつをしてもらい、のこりは、どうか自分じぶんおなじような、不幸ふこう孤独こどくひとのためにつかってもらいたい。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
不幸ふこうな、この人形にんぎょうは、それからいろいろのめにあいましたが、そのとしなつすえ時分じぶんに、ほかの古道具ふるどうぐなどといっしょに、露店ろてんにさらされていました。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
太郎たろう二郎じろうは、自分じぶんのいままでんでしまってかさねておいた雑誌ざっしや、書物しょもつや、またおもちゃなどを不幸ふこう子供こどもたちにあげたいとおとうさんにもうしました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、その不幸ふこうだとはかんがえなかった。はるになると、はねのうすあかい、ちいさなちょうが、たずねてきてくれた。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間にんげんが、なんでもおもったとおりになりさえすれば、このなかに、不幸ふこうというものはないとかんがえていたのでした。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「すみれさん、それは、わたしのいうことです。わたしほど不幸ふこうのものはないとおもいます。」と、うぐいすはいいました。
すみれとうぐいすの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、途中とちゅうで、みぎひだりわかれました。哲夫てつおは、また中学ちゅうがく入学試験にゅうがくしけんにきていた不幸ふこう少年しょうねんおもしたのです。
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
孤児こじとなった達吉たつきちに、こうして、また不幸ふこうがみまったのでした。かれは、伯父おじさんがんでから、あとのこった伯母おばさんと、しばらく途方とほうれていました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)