ふう)” の例文
さて、屋根やねうへ千人せんにんいへのまはりの土手どてうへ千人せんにんといふふう手分てわけして、てんからりて人々ひと/″\退しりぞけるはずであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
等伯が、もっぱら、牧谿もっけいふうを慕っていたといわれる如く、武蔵画にも、どこか、牧谿にさえ、似ているところがないとはいえない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸外そとには車を待たして置いていかにもいそがしい大切な用件を身に帯びているといったふうで一時間もたつかたたないうちに帰ってしまった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたくしはだんだんそんなふうかんずるようになったのでございます。いずれ、あなたがたにも、そのあじがやがておわかりになるときまいります……。
ところが、その多分たぶん朝鮮ちようせん支那しなふうつたはつたのでありませうが、よこからはひるながいし部屋へやつかなかつくられることになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
このふうは今でも正式の饗宴きょうえんには伝わっている。決してほこりだらけの刺身さしみ蒲鉾かまぼこを、むしゃむしゃ食うばかりが肴ではなかったのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
全体我邦わがくにの家庭は主人一人の翫具や慰みのために多額の金をついやして家族一同のためには一銭二銭の買物さえ惜しがるというふうがある。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
荷物にも福澤と記さず、コソ/\して往来するその有様ありさまは、欠落者かけおちものが人目を忍び、泥坊どろぼうが逃げてわるようなふうで、誠に面白くない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ちよつとたぢろぐやうなふうで、不安さうに彼等を見たが、詰襟が両手にもつてゐるフアイヤガンを見ると、遽かに驚異の目を光らした。
フアイヤ・ガン (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかし祖父そふきたいと思ってるのは、そんなものではなかった。祖父そふは口をつぐんで、もうクリストフに取りあわないふうをした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
さだめてあの張作霖ちやうさくりんがそんなふう相好さうかうくづしてのけぞりかへつただらうとおもふと、そのむかし馬賊ばぞく荒武者あらむしやだつたといふひとのよさも想像さうざうされて
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そして御主人ごしゅじんからつよさむらいをさがしていというおおせをけて、こんなふうをして日本にほん国中くにじゅうをあちこちとあるきまわっているのでした。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
発田はへんに落着かないふうに、身体をもじもじしたり、意味なく手をうごかしたりしていた。彼を意識しているのは明かであった。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
小室 にぶいぞ。先方は先方で僕が失業したからと言って、月々二十円送るふうをする。それに対して、僕から月々お礼状が行くんだ。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
斯う言ひながら、また梨をき初めたお光の右の中指の先きが、白紙はくしはへてあるのを、小池は初めて氣がついたふうで見てゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
淡い月光の下に、草原をもぐらの大群が、突撃隊のように、ころころと、はっていくところは、なかなかふうがわりな風景であった。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かういふふうにくろうとらしいうたをおつくりになつたので、歴代れきだい皇族方こうぞくがたうちでは、文學ぶんがく才能さいのうからまをして、第一流だいゝちりゆうにおすわりになるかたです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そうおもえばますます居堪いたまらず、ってすみからすみへとあるいてる。『そうしてからどうする、ああ到底とうてい居堪いたたまらぬ、こんなふうで一しょう!』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おもつたる大形おほがた裕衣ゆかたひつかけおび黒繻子くろじゆすなにやらのまがひものひらぐけがところえてはずとれしこのあたりのあねさまふうなり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其麽そんなふうぢや不可いけない、兄弟一緒に寄越すさ。遅く入学さして置いて、卒業もしないうちから、子守をさせるの何のつて下げて了ふ。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おもむきを如何どういふふういたら、自分じぶんこゝろゆめのやうにざしてなぞくことが出來できるかと、それのみにこゝろられてあるいた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こういうふう羽翼うよくを附けてこういうように飛ばせば飛ばぬはずはないと見込がついた上でさて雛形ひながたこしらえて飛ばして見ればはたして飛ぶ。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時氣づいたことだが、彼は別にふところ手をしてゐるふうにもないのだが、左手の袖がぶらぶらし、袖の中がうつろに見えるのであつた。
(旧字旧仮名) / 島木健作(著)
かの子 ここの所一寸ちょっとそういうふうな状態ですね。繊細せんさいな感覚的な拾物ひろいもの程度のものは一部の人の中に入って来てはいるけど。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かういふふうにしてわが地球ちきゆう知識ちしきはだん/\すゝんでたけれども、其内部そのないぶ成立なりたちに立入たちいつた知識ちしき毛頭もうとうすゝんでゐないといつてよろしかつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
こま/\した幾つかの小さな畑に区劃くくわくされ、豆やら大根やらきびやらうりやら——様々なものがごつちやに、ふうざまもなく無闇むやみに仕付けられた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
さう言ひ乍ら、主人峰右衞門が、袂の中から取出したのは、半紙一枚を細く疊んだ、結びぶみふうの手紙で、押し開くと消し炭で
以上いじようはなししたのは、つゞめていふとあつ𤍠帶ねつたいからだんおんかんといふふうにその各地方かくちほうてきしてよくそだ森林しんりん區域くいきと、そのたい特徴とくちようとでした。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
と聞いてうなずくのを見て、年紀上としうえだけに心得顔こころえがおで、あぶなっかしそうに仰向あおむいて吃驚びっくりしたふうでいる幼い方の、獅子頭ししがしら背後うしろへ引いて
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちっとも昔の武士らしいふうはありやせん、みんな金のためにかかってる。何、僕だって軍人は必ず貧乏しなけりゃならんというのじゃない。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
父祖は、ずっと東方のバクトリヤ辺から来たものらしく、いつまでたっても都のふうになじまぬすこぶる陰鬱いんうつ田舎者いなかものである。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
男と女とあまいふう付きで並んで行くもの、電車の中でツンとしているもの、大声でシャベルもの、矢鱈に他人に親切なもの
ただし今戸橋をわたってすぐの右側には、土蔵をもったり、土塀をめぐらしたりした「寮」といったふうの建物がしばらくそこに立並んでいた。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
着ているものは、汗によごれ、わかめのようにぼろの下がった松坂木綿の素袷すあわせだが、豪快のふうあたりをはらって、とうてい凡庸ぼんようの相ではない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
中世以来学問道徳の権威としてこの国に臨んで来た漢学からまなふうの因習からも、仏の道で教えるような物の見方からも離れよということであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
僧三 なにしろ今時の若いお弟子でしたちとは心がけが違っていましたからね。このように懈怠けたいふうの起こるのは実に嘆かわしいことと思います。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ふう一寸ちょっと垢脱あかぬけのした処が有ったかも知れぬが、それとても浮気男の眼をぐらいの価値で大した女ではなかったのに、私は非常に感服して了った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これについて奇態きたいなことは、高きより落ちる夢を見て、けっして下まで落ちきった夢は見ない。いつも夢の浮き橋で中絶するというふうである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
股引と上着とに各二種づつの別有るは地方のふうことなるを示すものが階級かいきうの上下を示すものか是亦うたがひ無き能はざれど、其二種に限られしが如きと
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
わか血潮ちしほみなぎりに、私は微醺びくんでもびた時のやうにノンビリした心地こゝちになツた。友はそんなことは氣がかぬといふふう
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
つて来た風呂敷包を背負せおつて、古びた蝙蝠傘かうもりがさを持つて、すり減した朴歯ほほばの下駄を穿いて、しよぼたれたふうをして、隣の老人はいとまを告て行つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
執着の強い笠井もたたなければならなくなった。その場を取りつくろう世辞をいって怒ったふうも見せずに坂を下りて行った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「無論知らない人よ。こう髪を長く、おかっぱみたいにして、黒い服を着た、昔の美術家みたいなふうをしていましたわ」
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
粗末そまつきれ下衣したぎしかてゐないで、あしにはなにかず、落着おちついてゐて、べつおどろいたふうく、こちらを見上みあげた。
そうして、今度ひとりで旅に出ると宿屋の食膳しょくぜんのおかずの食い方がわからないといったようなふうがあるのではないか。
さるかに合戦と桃太郎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ふね停泊とゞまつてふねその船々ふね/″\甲板かんぱん模樣もやうや、檣上しやうじやうひるがへ旗章はたじるしや、また彼方かなた波止塲はとばから此方こなたへかけて奇妙きめうふう商舘しやうくわん屋根やねなどをながまわしつゝ
うちの殿様がお里にってるのだからいけませんよ、そうすると、彼奴あいつが此のうちの息子のふうをしましょう、草履取でさえ随分ツンケンした奴だから
これは漁村がその師大田錦城おおたきんじょうふうを慕って栽えさせたのである。当時漁村は六十二歳で、躋寿館せいじゅかんの講師となっていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
こんなふうはなしをしてゐたら、おしまひには喧嘩けんくわになつてしまひませう。ところが喧嘩けんくわにならないまへに、一ぴきかへるみづなかからぴよんとしてました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
「何に、つい二、三日前にね、山の中で林務官を殺して逃げた奴があるでね、其奴そいつが何でも坊様のふうをして逃げたって事だで、其奴を探すんずらい。」
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)