)” の例文
停車場ステエションうしろは、突然いきなり荒寺の裏へ入った形で、ぷんと身にみるの葉のにおい、鳥の羽ででられるように、さらさらと——袖が鳴った。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もりおくまいには、毎日まいにち木枯こがらしがいて、ちつくすと、やがてふかゆきもりをもたにをもうずめつくすようになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
がくれたような風情をもったそのあたりには、金色のスタンドをつけて、幾組かのいきな二人用小卓もしつらえられているのだった。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「われわれの申入れを承知して、数日の間に、木鹿王もくろくおうは自国の軍を率いて来ましょう。木鹿軍が来れば、蜀軍などは微塵みじんです」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ワーリカはっぱを割る。が、それに火をつけて、サモワールの下へ押してみかけたかと思うと、つぎの言いつけが聞こえてくる。——
ねむい (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
雨夜あまよの月に時鳥ほととぎす時雨しぐれに散る秋のの葉、落花の風にかすれ行く鐘の、行き暮るる山路やまじの雪、およそ果敢はかなく頼りなく望みなく
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其方そちもある夏の夕まぐれ、黄金色こがねいろに輝く空気のうちに、の一ひらひらめき落ちるのを見た時に、わしの戦ぎを感じた事があるであろう。
アラスカ丸は七千トンだから荷物船カーゴボートでは第一級の大型だったが、たとい七千噸が七万噸でもあの波に引っかかったらも同然だ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
村の方ではまだ騒いで居ると見えて、折々人声は聞えるけれど、此の四辺あたりはひつそりと沈まり返つて、そよぐ音すら聞えぬ。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
したるとおどろほどくびながくなつてて、まるでそれは、はる眼下がんかよこたはれる深緑しんりよくうみからくきのやうにえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
実がなるや否や爆裂してみじんになるためなのか、どうか、よく確かめようと思っているうちに帰京の期が迫って果たさなかった。
沓掛より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
学校がっこうで、正吉しょうきちは、とりわけ青木あおき小田おだとはなかよしでした。三にんは、ひるやす時間じかんに、運動場うんどうじょうて、かげのところではなしをしていました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かなかなかなと、高く冴えて、とほく、淡く尾をひく。「ちちよははよかなかな鳴くよ日のいりの亭きぬれにひとつ鳴き澄む」
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
雑木のにそれを眺め眺め下りて行くと時雨らしいものが晴れた空からはらはらと降って来る。最初はほんとに時雨か霰かと思った。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
かれここにその姉は、いとみにくきに因りて、見かしこみて、返し送りたまひて、ただそのおとはな佐久夜さくや賣毘を留めて、一宿ひとよみとあたはしつ。
海陸ともに交通不便の昔から年々幾千万の人間はの葉のような小さい舟に生命を托して、この絶島はなれじまに信仰の歩みを運んで来たのである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
京の円山を十倍したるやうにほのかに輸廓りんくわくの思はるる山の傾斜のがくれに建てられしやかたどもにともれる青き火、黄なる火、紫の火
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
んなのがりましたとしてせるのは、彌生式土器やよひしきどき上部じやうぶ(第五圖參照)と破片はへん澤山たくさんおよぞこである。べつ貝塚土器かひづかどき網代底あじろぞこ
三段目には蒲団が敷かれて人形の二つが並んで寝て居るのです。その前にはの葉や花の御馳走が供へられてあるのです。一人ひとり前だけです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
越しに見上げると、闇の中の巨人は、悪夢の様に空一杯に拡がって、物の怪の如く押し黙っている。夜の大仏の物凄さ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
勘次かんじ時々とき/″\んだ麁朶そだ理由わけもなくつてることをつて不快ふくわいかんいどいてはこつそりとつぶやきつゝおつぎにあたるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
多寡たくわが地主の金持と思つたのは、大變な見縊みくびりやうで、近所の旗本や、安御家人ごけにんの屋敷などは蹴落されさうな家です。
秋には地面じめんにおちたクルミやをあつめて、うろのなかにはこびこみました。クルミは冬のあいだの食べものなのです。
森林は愈深くなって、空から反射する弱い光線は、青木黒木の蔭に吸い込まれて、吐き出されたの下闇のみが宙にさ迷うているに過ぎない。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
と、四方あたりが急に微暗うすぐらくなって頭の上のがざざざと鳴りはじめた。大粒の雨のしずくが水の上へぽつりぽつりと落ちて来た。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
長次はそれを知っていて、焚木たきぎになりそうな物があると拾って来る。、板切れ、枯枝、米俵やむしろなどまで拾って来た。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
半分道も来たと思う頃は十三夜の月が、から影をさして尾花にゆらぐ風もなく、露の置くさえ見える様な夜になった。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
椿つばきかげに清水しみずはいまもこんこんとき、みちにつかれた人々ひとびとは、のどをうるおして元気げんきをとりもどし、またみちをすすんでくのであります。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あとから、すぐ新しい音が耳をかすめて、ひるがえると共にまた北の方へ走る。碌さんは首を縮めて、えっと舌打ちをした。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
廣大無邊の旋渦おほうづの爲、朦朧として絶えず輪轉する波の上、あなを脱け飛んだ眼球や燐の光を放つの殼が浚はれて浮きつ、沈みつもがいてゐる。
さしあげた腕 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
大寺おほでらを包みてわめくの芽かなってのは、子規の句だったか。軽井沢などに住んで、半月も青葉にかこまれて暮していると、むしょうに赤い色を
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
れいなにといひかぬるを、よう似合にあふのうとわらひながら、雪灯ぼんぼりにして立出たちいでたまへば、蝋燭ろうそくいつか三ぶんの一ほどにりて、軒端のきばたかがらしのかぜ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そしてそのあひだ各地方かくちほうからそのまゝもつて農民のうみん小屋こやがあり、ふるしき教會堂きようかいどうがくれにつてゐるかとおもふと、面白おもしろ風車かざぐるまがあり
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
に横たわっておる熔岩はことごと苔蒸こけむし、羊歯しだが生え、天南星てんなんせいが大きな葉をひろげて、陰森幽邃いんしんゆうすいな別天地を形作られる。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
ベンヺ こりゃなんでも、かくれて、夜露よつゆれのまくという洒落しゃれであらう。こひめくらといふから、やみちょうどおあつらへぢゃ。
杜子春はその風に吹かれながら、暫くは唯の葉のように、空を漂って行きましたが、やがて森羅殿しんらでんというがくかかった立派な御殿の前へ出ました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「もうめしを食っとる暇はない。またしばらくせわしいでみじんだ。今夜はおそいかもしれんよ。おれたちには天長節てんちょうせつも何もあったもんじゃない」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
大野おほぬらに小雨降りしくのもとに、時々よりが思ふ人。……どうした? どうかしたのか? おい! おい! 美緒! (声が次第に高くなる)
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
たとへば秋のの葉の一葉ひとは散りまた一葉ちり、枝はそのころもを殘りなく地にをさむるにいたるがごとく 一一二—一一四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さゐかはから、くもがずっとつゞいて、この畝傍山うねびやま、そのやまが、さわいでゐる。いまかぜかうとしてゐるのだ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ころは夏なりしゆゑ客舎やどりしいへにはかげにむしろをしきて納涼すゞみ居しに、主人あるじは酒をこのむ人にて酒肴しゆかうをこゝに開き、は酒をばすかざるゆゑ茶をのみて居たりしに
宮はうつむきて唇を咬みぬ。母は聞かざるまねして、折しもけるうぐひすうかがへり。貫一はこのていを見て更に嗤笑あざわらひつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ふねのようにゆれ、たかいなみはかんぱんにおどりあがり、うっかりしていると、人間にんげんもころがされるしまつで、みんなあおかおをしていました。
飛びくくうぐいす」とあるのは動詞の例です。これを「潜る」という語を聯想して「くぐ」と読んでおりますが、これは「くく」で濁らないのです。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
「誰かいるのか」とたんに轟然ごうぜんとピストルが鳴ってチャンウーの手から懐中電気が、葉微塵ぱみじんとくだけて散った。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
秩序というものをみだうれいがあるから、貴様たちのようなを相手にするのは大人げないと知りながら、こうして折檻せっかんにあがったのだ、以後は慎め
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ひらけたる所は月光げつくわうみづの如く流れ、樹下じゆか月光げつくわうあをき雨の如くに漏りぬ。へして、木蔭をぐるに、灯火ともしびのかげれて、人の夜涼やれうかたるあり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ほとんど幾十という人間の顔が藪地ジャングルから私達の方を瞬きもせずにみつめている。それは確かに人間の顔だ。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
数はと言えば、確かに秋のの葉のようにあったので、私の背中は屈んでいるために痛くなり、指はそれを択り分けるのでずきずきしたくらいであった。
見ると、エメーリャが入って来るのです! 真っ青な顔をして、往来にでも寝たのか、髪や髭は泥だらけ、体はみたいに痩せさらばえているのです。