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夥
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おびたゞ
ふりがな文庫
“
夥
(
おびたゞ
)” の例文
庭下駄を突つかけて外へ出ると、庭から、土藏のあたり、裏木戸の材木を漬けた堀、
夥
(
おびたゞ
)
しい材木置場から、元の庭へ歸つて來ました。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
三
方
(
ぱう
)
は、
大巌
(
おほいは
)
夥
(
おびたゞ
)
しく
累
(
かさな
)
つて、
陰惨冥々
(
いんさんめい/\
)
たる
樹立
(
こだち
)
の
茂
(
しげみ
)
は、
根
(
ね
)
を
露呈
(
あらは
)
に、
石
(
いし
)
の
天井
(
てんじやう
)
を
蜿
(
うね
)
り
装
(
よそほ
)
ふ——こゝの
椅子
(
いす
)
は、
横倒
(
よこたふ
)
れの
朽木
(
くちき
)
であつた。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
爪長
(
つめなが
)
く、
大
(
おほき
)
さは七
尺
(
しやく
)
乃至
(
ないし
)
一
丈
(
じやう
)
二三
尺
(
じやく
)
位
(
ぐら
)
いの
巨鳥
(
きよてう
)
が、
天日
(
てんじつ
)
も
暗
(
くら
)
くなる
迄
(
まで
)
夥
(
おびたゞ
)
しく
群
(
ぐん
)
をなして、
吾
(
わ
)
が
輕氣球
(
けいきゝゆう
)
を
目懸
(
めが
)
けて、
襲
(
おそ
)
つて
來
(
き
)
たのである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
それから考へても、境遇、社会などと言ふものは、人間を畸形にすること
夥
(
おびたゞ
)
しいものである。だから、脱却といふことは肝心だ。
脱却の工夫
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
夥
(
おびたゞ
)
しい庭石や
石燈籠
(
いしどうろう
)
の
類
(
るゐ
)
を積んだ大きな荷車を、
逞
(
たく
)
ましい雄牛に曳かして來るのにも逢つた。牛の口からは、だら/\と
涎
(
よだれ
)
が流れてゐた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
▼ もっと見る
譬
(
たと
)
へば、
吝嗇者
(
りんしょくもの
)
のやうに
貨
(
たから
)
は
夥
(
おびたゞ
)
しう
有
(
も
)
ってをっても、
正
(
たゞ
)
しう
用
(
もち
)
ふることを
知
(
し
)
らぬ、
姿
(
すがた
)
をも、
戀
(
こひ
)
をも、
分別
(
ふんべつ
)
をも、
其身
(
そのみ
)
の
盛飾
(
かざり
)
となるやうには。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
軈
(
やが
)
て
梅雨
(
つゆ
)
が
夥
(
おびたゞ
)
しく
且
(
か
)
つ
毒々
(
どく/\
)
しい
其
(
そ
)
の
栗
(
くり
)
の
花
(
はな
)
の
腐
(
くさ
)
るまではと
降
(
ふ
)
り
出
(
だ
)
したので
其
(
そ
)
の
女
(
をんな
)
の
穢
(
きたな
)
げな
窶
(
やつ
)
れた
姿
(
すがた
)
は
再
(
ふたゝ
)
び
見
(
み
)
られなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
中は真っ暗で、たった今人の足音がしたように思えたのに、その辺には誰もいるらしくもなく、たゞ
夥
(
おびたゞ
)
しい
空薫
(
そらだき
)
の香が局のうちに一杯に満ちていた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
君も
卒
(
には
)
かに金なくてかなはぬ時、餘所にてそを借り給はば、二割三割などいひて、
夥
(
おびたゞ
)
しき利息を取られ給ふべし。さる時あらば、必ず我許に來給へ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
添毛
(
そへげ
)
をするのに一層勝手が好いからであるらしい。前に云ふのを忘れたが、
髪結
(
かみゆひ
)
の店には白髪
交
(
まじ
)
りの
附髷
(
つけまげ
)
や
鬘
(
かつら
)
、
全
(
まつた
)
く白いのなども
夥
(
おびたゞ
)
しくあるのである。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
ひとりはジユセッポを
讒
(
しこづ
)
りし僞りの女、一はトロイアにありしギリシア
人
(
びと
)
僞りのシノンなり、彼等劇しき熱の爲に臭き烟を出すことかく
夥
(
おびたゞ
)
し 九七—九九
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
翌
(
あく
)
る日になつて三隅氏は真青な顔をして下関駅の
遺失物掛
(
ゐしつぶつがかり
)
を訪ねて来た。そして
夥
(
おびたゞ
)
しい忘れ物のなかから、自分のを捜し出して、大喜びで中を
検
(
あらた
)
めて見た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
聖母の恩赦の祭日に本堂で夜のミサが
執行
(
しゆぎやう
)
せられた。参詣人は
夥
(
おびたゞ
)
しかつた。そこで長老が儀式をした。セルギウスは自分の持場に席を占めて祈祷をしてゐた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
硝子
(
ガラス
)
戸越しにホカ/\する日光を受けた縁側へ、
夥
(
おびたゞ
)
しい書類をぶち
撒
(
ま
)
けたように敷散らして其中で、庄司利喜太郎氏は舌打をしながらセカ/\と何か探していた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
これは実際有りましたお話でございます。
彼
(
あ
)
の辺は追々と養蚕が
盛
(
さかん
)
に成りましたが、是は
日本
(
にっぽん
)
第一の
鴻益
(
こうえき
)
で、茶と生糸の
毎年
(
まいねん
)
の産額は実に
夥
(
おびたゞ
)
しい事でございます。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
蟷螂
(
かまきり
)
や、けら、
百足
(
むかで
)
、蜂、蜘蛛等が
夥
(
おびたゞ
)
しく居りました。土蜘蛛と申しまして木の根や垣根などに巣の袋をかけて置きましたが、鉱毒地には、只今一切居りませぬ。
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
三十七
年
(
ねん
)
一
月
(
げつ
)
大雪
(
おほゆき
)
の
害
(
がい
)
と、
其
(
その
)
七月
(
しちぐわつ
)
疫疾
(
えきしつ
)
の
爲
(
ため
)
に、
牛馬
(
ぎうば
)
其
(
その
)
半
(
なかば
)
を
失
(
うしな
)
ひたるの
災厄
(
さいやく
)
あり。
其他
(
そのた
)
天災
(
てんさい
)
人害
(
じんがい
)
蝟集
(
ゐしふ
)
し
來
(
きた
)
り、
損害
(
そんがい
)
を
蒙
(
かうむ
)
る
事
(
こと
)
夥
(
おびたゞ
)
しく、
余
(
よ
)
が
心
(
こゝろ
)
を
惱
(
なやま
)
したる
事
(
こと
)
實
(
じつ
)
に
尠
(
すくな
)
からざるなり。
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
私は三ノ組のびりつこから三番目で、従つて私の名が呼ばれるまでには
夥
(
おびたゞ
)
しい時間を要した。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
小生の古つゞらに
貯
(
たくは
)
ふる処は僅にスコツチの背広が一
領
(
りやう
)
、其れも九年前に
拵
(
こしら
)
へたれば窮屈なること
夥
(
おびたゞ
)
しく、
居敷
(
ゐしき
)
のあたり
雑巾
(
ざふきん
)
の如くにさゝれて、白昼には市中をあるけぬ
代物
(
しろもの
)
。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
女
(
をんな
)
ですもの
口
(
くち
)
が
早
(
はや
)
いに
依
(
よ
)
つてお
務
(
つと
)
め
向
(
む
)
きの
事
(
こと
)
などは
話
(
はな
)
してお
聞
(
き
)
かせ
下
(
くだ
)
さるわけには
行
(
ゆ
)
きますまい、
現
(
げん
)
に
今
(
いま
)
でも
隱
(
かく
)
していらつしやる
事
(
こと
)
は
夥
(
おびたゞ
)
しくあります、それは
承知
(
しようち
)
で
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
聖徳太子の
飛鳥
(
あすか
)
時代以来、平安初期にかけての支那文物の渡来は、
夥
(
おびたゞ
)
しいものがあり、日本の美術、工芸、文物制度は、殆んど唐に劣らない程度に達してゐたのではないかと思はれる。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
段々
(
だん/\
)
追想
(
つひさう
)
して見ると、
此
(
こ
)
の九年間の
硯友社
(
けんいうしや
)
及
(
およ
)
び
其
(
そ
)
の
社中
(
しやちう
)
の
変遷
(
へんせん
)
は
夥
(
おびたゞ
)
しいもので、書く
可
(
べ
)
き事も
沢山
(
たくさん
)
有れば書かれぬ事も
沢山
(
たくさん
)
ある、なか/\
面白
(
おもしろ
)
い事も有れば、
面白
(
おもしろ
)
くない事も有る、
成効
(
せいかう
)
あり
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
こゝに新都が阪東に出来ることになつたから、景気の好いことは
夥
(
おびたゞ
)
しい。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
惣領の彌太郎の入れられて居る座敷牢の外へ來ると、嚴重な格子の中の雨戸が締つて、窓の外、霜解けの軒の下には
夥
(
おびたゞ
)
しい足跡です。
銭形平次捕物控:208 青銭と鍵
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
令史
(
れいし
)
間
(
ま
)
の
拔
(
ぬ
)
けた
事
(
こと
)
夥
(
おびたゞ
)
し。
呆
(
あき
)
れて
夜
(
よ
)
を
明
(
あか
)
すに、
山
(
やま
)
深
(
ふか
)
うして
人
(
ひと
)
を
見
(
み
)
ず。
道
(
みち
)
を
尋
(
たづ
)
ぬれば
家
(
いへ
)
を
去
(
さ
)
ること
正
(
まさ
)
に
八百里程
(
はつぴやくりてい
)
。
三十日
(
さんじふにち
)
を
經
(
へ
)
て
辛
(
から
)
うじて
歸
(
かへ
)
る。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
弦月丸
(
げんげつまる
)
には、
珍
(
めづ
)
らしく
澤山
(
たくさん
)
の
黄金
(
わうごん
)
と
眞珠
(
しんじゆ
)
とが
搭載
(
とうさい
)
されて
居
(
ゐ
)
ます、
眞珠
(
しんじゆ
)
と
黄金
(
わうごん
)
とが
夥
(
おびたゞ
)
しく
海上
(
かいじやう
)
で
集合
(
あつまる
)
と
屹度
(
きつと
)
恐
(
おそ
)
る
可
(
べ
)
き
祟
(
たゝり
)
があります。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
夕暮になると、
夥
(
おびたゞ
)
しい蚊が軒に蚊柱を立てた。
室
(
へや
)
の中を歩いても、それがバラ/\と顔に当るほどである。かれは思つた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
汗………
夥
(
おびたゞ
)
しい人間の汗が、蒸し蒸しゝた空気の中へ絶えず発散して
其処辺
(
そこいら
)
一面に漂い、到る所の壁だの板だのにべとべととこびり着いて居るらしかった。
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
裝飾
(
さうしよく
)
といつても
夜目
(
よめ
)
に
鮮
(
あざ
)
やかな
樣
(
やう
)
に、
饅頭
(
まんぢう
)
や
其
(
そ
)
の
他
(
た
)
の
物
(
もの
)
を
包
(
つゝ
)
む
白
(
しろ
)
いへぎ
皮
(
かは
)
を
夥
(
おびたゞ
)
しく
括
(
くゝ
)
り
附
(
つ
)
けて
置
(
お
)
くのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ある男が
由緒
(
ゆいちよ
)
のある古いお寺に
詣
(
まゐ
)
つた事があつた。そこには壁一面に
夥
(
おびたゞ
)
しい金ぴかの額が懸つて、額のなかには
各自
(
てんで
)
にぐつと気取つた人達の顔が
描
(
か
)
いてあつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
あゝ不器用長二かというように名高くなりまして、諸方から
夥
(
おびたゞ
)
しく注文がまいりますが、手伝の兼松は足の
疵
(
きず
)
で悩み、自分も此の頃の寒気のため背中の
旧疵
(
ふるきず
)
が
疼
(
いた
)
み
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
貞を
上海
(
シャンハイ
)
に売飛ばしたと答えたが、それからそれへと追求急で、署長の手から石子、渡辺両刑事の手に渡される時分には、彼の答弁はしどろもどろで、辻棲の合わぬ事
夥
(
おびたゞ
)
しく
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
これでは今まで
夥
(
おびたゞ
)
しく流された勤皇志士の犠牲の血は、全く無駄ではなからうか。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
其都度
(
そのつど
)
紛失物
(
ふんしつもの
)
が
出來
(
でき
)
ますやら
品物
(
しなもの
)
の
破損
(
はそん
)
などは
夥
(
おびたゞ
)
しい
事
(
こと
)
で、
何
(
ど
)
うすれば
此樣
(
こん
)
なに
不人情
(
ふにんじやう
)
の
者
(
もの
)
ばかり
寄合
(
よりあ
)
ふのか、
世間一體
(
せけんいつたい
)
が
此樣
(
このやう
)
に
不人情
(
ふにんじやう
)
なものか、それとも
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
を
歎
(
なげ
)
かせやうといふので
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あゝ、
夥
(
おびたゞ
)
しいは
草
(
くさ
)
や
木
(
き
)
や
金石
(
きんせき
)
どもの
其
(
その
)
本質
(
ほんしつ
)
に
籠
(
こも
)
れる
奇特
(
きどく
)
ぢゃ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
半日の馬上に足腰
夥
(
おびたゞ
)
しく痛めば、見物を廃して休養す。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
一歩退いて見ると、路地の方には、穴から一尺ほど離れた下水へかけて、
夥
(
おびたゞ
)
しい血潮が、昨夜の殺しの凄慘さを物語つてをります。
銭形平次捕物控:238 恋患ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
聊
(
いさゝか
)
も
其
(
そ
)
の
平常
(
ふだん
)
の
化粧
(
けしやう
)
と
違
(
たが
)
ふことなかりしとぞ。
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
の
庇髮
(
ひさしがみ
)
、あの
夥
(
おびたゞ
)
しく
顏
(
かほ
)
に
亂
(
みだ
)
れたる
鬢
(
びん
)
のほつれは
如何
(
いかに
)
、
果
(
はた
)
してこれ
何
(
なん
)
の
兆
(
てう
)
をなすものぞ。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その折
夥
(
おびたゞ
)
しい歓迎人の中から、生粋の米国婦人と思はれる一
人
(
にん
)
の貴夫人がづかづかと一行の前に出て来た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
中程から
夥
(
おびたゞ
)
しく荒れて、赤灘の瀬戸あたりに行つた時には、島の
徙崖
(
しがい
)
がすぐ眼のまへに見えて居りながら、容易にその中に入ることが出来なかつたことを思ひ起す。
隠岐がよひの船
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
河内介は、誰か続く味方はないかとその
辺
(
あたり
)
を見廻したけれども、眼に入るものは
夥
(
おびたゞ
)
しい土煙と、その煙の向うに
怒濤
(
どとう
)
の如く寄せては崩れる集団の影ばかりであった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
白
(
しろ
)
い
毛
(
け
)
が
拔
(
ぬ
)
けて
其處
(
そこ
)
ら
中
(
ぢう
)
に
夥
(
おびたゞ
)
しく
散亂
(
さんらん
)
した。
煙管
(
きせる
)
は
鷄
(
とり
)
から
更
(
さら
)
に
強
(
つよ
)
く
戸口
(
とぐち
)
の
閾
(
しきゐ
)
を
打
(
う
)
つて
庭
(
には
)
の
土
(
つち
)
に
止
(
とま
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
其後
(
そのご
)
幾年月
(
いくねんげつ
)
の
間
(
あひだ
)
、
苦心
(
くしん
)
に
苦心
(
くしん
)
を
重
(
かさ
)
ねた
結果
(
けつくわ
)
、
一昨年
(
いつさくねん
)
の十一
月
(
ぐわつ
)
三十
日
(
にち
)
、
私
(
わたくし
)
が
一艘
(
いつそう
)
の
大帆走船
(
だいほまへせん
)
に、
夥
(
おびたゞ
)
しき
材料
(
ざいれう
)
と、卅七
名
(
めい
)
の
腹心
(
ふくしん
)
の
部下
(
ぶか
)
とを
搭載
(
のせ
)
て、はる/″\
日本
(
につぽん
)
を
去
(
さ
)
り
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
節々
(
ふし/″\
)
の痛みが
夥
(
おびたゞ
)
しく毛穴が
弥立
(
よだ
)
って、五臓六腑
悩乱
(
のうらん
)
致し、ウーンと立上るから女房は驚いて居ると、喜助は苦しみながら台所へ這い出してガーと血の塊を吐いて身を震わして居る。
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
敷居に流し込んだ
夥
(
おびたゞ
)
しい水が、二月初旬の珍らしい寒さに凍つて、雨戸はまさに地獄の門のやうに嚴重に閉されて居るのでした。
銭形平次捕物控:215 妾の貞操
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
其
(
その
)
道筋
(
みちすぢ
)
に、
夥
(
おびたゞ
)
しく
沈
(
しづ
)
めたる
材木
(
ざいもく
)
は、
恰
(
あたか
)
も
手
(
て
)
を
以
(
も
)
て
掻
(
か
)
き
退
(
の
)
ける
如
(
ごと
)
くに、
算
(
さん
)
を
亂
(
みだ
)
して
颯
(
さつ
)
と
左右
(
さいう
)
に
分
(
わか
)
れたのである。
三尺角拾遺:(木精)
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
小橋氏は口のなかで讃美歌を
謡
(
うた
)
ひながら、
大跨
(
おほまた
)
に町を歩いた。町には
夥
(
おびたゞ
)
しい人が出てゐたが、皆他人らしい顔つきをして南京鼠のやうに忙しさうに走り廻つてゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
人足等の総数は二十五萬人に達し、
醍醐
(
だいご
)
、
山科
(
やましな
)
、比叡山
雲母坂
(
きらゝざか
)
より大石を引き出すこと
夥
(
おびたゞ
)
しく、堀普請などは、幾つにも区分けをして奉行衆が代る/″\人夫を督励し
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
絽
(
ろ
)
の紋付の羽織にちやんと
袴
(
はかま
)
を着けたハイカラの若い綺麗な紳士が、銀の
環
(
わ
)
の光つたステッキをつきながら、村長につれられて
夥
(
おびたゞ
)
しく荒廃したその無住の寺の山門へと入つて来た。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
お久は其の上へ転んで、ズブリ膝の下へ鎌の先が這入ったから、
夥
(
おびたゞ
)
しく血が流れる。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夥
漢検1級
部首:⼣
14画
“夥”を含む語句
夥多
夥間
夥伴
夥兵
化夥間
同夥
夥中
夥多敷
夥度
夥敷
引手夥多
御夥間
江戸兒夥間
竜夥
露夥