五日いつか)” の例文
「いゝえ、あに一緒いつしよですから……でも大雪おほゆきなぞは、まちからみちえますと、こゝにわたし一人ひとりきりで、五日いつか六日むいかくらしますよ。」
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とうとう、あかいそりがてから、五日いつかめになりました。みんなは、今日きょうこそかえってくるだろうと、おきほうをながめていました。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
五日いつかの朝、僕の家にきたる。いまだ孫娘のを知らずといふ。意気な平生のお師匠ししやうさんとは思はれぬほど憔悴せうすゐし居たり。
五日いつか六日むいかと日を重ねるに従って、考えるばかりでなく、約束通りあなたに手紙を上げるのが、あるいは必要かも知れないと思うようになりました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すでたふ建立けんりつをはつたので、最早もはや歸途きとむか一方いつぽうである。往復わうふく五日いつか豫定よていが、その二日目ふつかめには首尾しゆびよく歸終きろくやうになつたのは、非常ひじやう幸運こううんである。
かく五日いつか位の短い滞留の間に伯林ベルリンから受けた表面の印象はミユンヘンやヰインに比べて反対に面白くないものであることを正直に述べて置く外はない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
書き始めてから五日いつかになります。字も知らないし、こんなに長く書くのは初めてですから、なかなかはかどりません。一枚書くのに一日かかることもあります。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
こうやって三日か五日いつか声も立てずに閉じこもって、また長靴を光らしてこの別荘から出て行くと、忘れたころにぽつりぽつりと、どこかの鎮台ちんだいの将校の首が飛んで
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
五日いつかとたゝずにかぶとをぬがなければらないのであらう、そんなうそきの、ごまかしの、よくふかいおまへさんをねえさん同樣どうやうおもつてたが口惜くちをしい、もうおきやうさんおまへにははないよ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この高原地では大抵四日か五日いつか位の道を隔てて駅場が一つずつ置いてある。そのトクスン・ターサムより四日路手前で雪峰チーセに近い方向に当ってやはり一つのターサムがある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
赤さびの鉄片てっぺんや、まっ黒こげの灰土はいつちのみのぼうぼうとつづいた、がらんどうの焼けあとでは、四日よっか五日いつかのころまで、まだ火気のあるみちばたなぞに、黒こげの死体がごろごろしていました。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
こういう事があってから五日いつかとたたぬうちに、葉子の家庭すなわち早月家さつきけは砂の上の塔のようにもろくもくずれてしまった。親佐はことに冷静な底気味わるい態度で夫婦の別居を主張した。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
二日ふつか三日みっか四日よっかとたずねあるいて、どうしてもわからないので、六部ろくぶではありません。五日いつかめにはもうがっかりして、からだこころもくたびれって、とうとう山奥やまおくまよんでしまいました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
二月五日いつか、粂野のお下屋敷では午祭うまゝつり宵祭よみやで大層にぎやかでございます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「よっぽどって、そうさ五日いつか六日むいか来なかったばかりだ。」
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
死ぬ日の五日いつかまえには
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
生れて五日いつか目なる
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
五日いつか六日むいか
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかなほこれは眞直まつすぐ眞四角ましかくきつたもので、およそかゝかく材木ざいもくようといふには、そまが八にん五日いつかあまりもかゝらねばならぬとく。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あかふねは、浜辺はまべ四日よっか五日いつか、とまっていました。そして、四ほうから、毎日まいにちのようにあつまってくるつばめをっていました。
赤い船とつばめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし拘泥の苦痛は一日で済む苦痛を五日いつか七日なぬかに延長する苦痛である。いらざる苦痛である。避けなければならぬ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
待ちこがれて居た二月二十日はつか謝肉祭キヤルナヷル、その前後五日いつかわたつて面白かつた巴里パリイの無礼講の節会せちゑも済んで仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この問答のあったのは確か初日から五日いつか目の晩、——カルメンが舞台へ登った晩である。僕はカルメンにふんするはずのイイナ・ブルスカアヤに夢中になっていた。
カルメン (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
非常ひじやう困難こんなんあひだに、三日みつか※去すぎさつたが、大佐たいさからはなん音沙汰おとさたかつた、また、左樣さう容易たやすくあるべきはづもなく、四日よつかぎ、五日いつかぎ、六日むいかぎ、その七日目なぬかめまでこのおそろしき山中さんちゆう
五日いつか六日むいか
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あのへやは、今夜こんやだ、今夜こんやだ、と方々はう/″\病室びやうしつで、つたのを五日いつかつゞけて、附添つきそひの、親身しんみのものはいたんですつて。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五日いつか目にあつさおかして、電車へつて、平岡の社迄出掛でかけて行つて見て、平岡は二三日出社しないと云ふ事がわかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おとうとは、最初さいしょ、このやまへくるときには、ゆきうえわたって一にきましたけれど、ゆきえてからは、もりや、はやしや、かわがあって、五日いつか六日むいかあるかなければ
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分達は伯林ベルリン五日いつか滞在した。何となく支那風に重苦しい、そして田舎ゐなか者が成りあがつたやうに生生なま/\しいすべての感じは、其れ以上滞在して居られない様な気がした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
三日みつかつゞき、五日いつか七日なぬかつゞいて、ひるがへんで、まどにも欄干らんかんにも、あたゝかなゆきりかゝる風情ふぜいせたのである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三四郎は其日から四日よつかとこを離れなかつた。五日いつか目に怖々こわ/″\ながら湯にはいつて、鏡を見た。亡者の相がある。思ひ切つて床屋とこやつた。そのあくは日曜である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、五日いつかたち、七日なのかたつうちに、もとのじょうぶなからだとなったのであります。
金魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
うそおもふなら、退屈たいくつせずに四日よつか五日いつかわし小屋こや対向さしむかひにすはつてござれ、ごし/\こつ/\と打敲ぶつたゝいて、同一おなじふねを、ぬしまへこさへてせるだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
余は修善寺しゅぜんじ二月ふたつき五日いつかほど滞在しながら、どちらが東で、どちらが西か、どれが伊東へ越す山で、どれが下田へ出る街道か、まるで知らずに帰ったのである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五日いつか六日むいかというふうにおなじことがつづきますと、そのにぎやかさが、ただそうぞうしいものになり、また、毎日まいにちごちそうをべることも、これが人間にんげん幸福こうふくであるとは、おもわれなくなりました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その晩はそれぎり何の気もつかずに寝てしまった。すると明日あくるひの朝さいが来て枕元にすわるや否や、実はあなたに隠しておりましたが長与ながよさんは先月せんげつ五日いつかくなられました。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むかしは加州山中かしうさんちう温泉宿をんせんやどに、住居すまひ大圍爐裡おほゐろりに、はひなかから、かさのかこみ一尺いつしやくばかりの眞黒まつくろきのこ三本さんぼんづゝ、つゞけて五日いつかえた、とふのが、手近てぢか三州奇談さんしうきだんる。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
がつ五日いつか
ある少年の正月の日記 (新字新仮名) / 小川未明(著)
冬分ふゆぶん往々わう/\敦賀つるがからふねが、其處そこ金石かないはながら、端舟はしけ便べんがないために、五日いつか七日なぬかたゞよひつゝ、はて佐渡さどしま吹放ふきはなたれたり、思切おもひきつて、もとの敦賀つるが逆戻ぎやくもどりすることさへあつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
同人どうにん嘆息たんそくした。——いまでも金魚麩きんぎよぶはう辟易へきえきする……が、地震ぢしん四日よつか五日いつかめぐらゐまでは、金魚麩きんぎよぶさへ乾物屋かんぶつや賣切うりきれた。また「いづみ干瓢鍋かんぺうなべか。車麩くるまぶか。」とつてともだちは嘲笑てうせうする。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ね、隠れて五日いつかばかり対向さしむかひでゐるあひだに、何でもその女がれたんだ。無茶におツこちたと思ひねえ。五日目に支那の兵が退いてく時つかめえられてしよびかれた。何でもその日のこつた。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五日いつかばかり学校がくかうからかへつちやあ其足そのあし鳥屋とりやみせつてじつとつておくはうくらたななかで、コト/\とおとをさしてそのとりまで見覚みおぼえたけれど、はねへたねえさんはないのでぼんやりして
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
蒸暑むしあつで、糊澤山のりだくさん浴衣ゆかたきながら、すゞんでると、れいやなぎ葉越はごしかげす、五日いつかばかりのつき電燈でんとうけないが、二階にかい見透みとほしおもてえんに、鐵燈籠かなどうろうばかりひとつ、みねだうでもるやうに
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此の五日いつか六日むいか心持こころもちわずらはしければとて、客にもはず、二階の一室ひとまに籠りツきり、で、寝起ねおきひまには、裏庭の松のこずえ高き、城のもの見のやうな窓から、雲と水色の空とをながら、徒然つれづれにさしまねいて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五日いつか六日むいか心持こゝろもちわづらはしければとて、きやくにもはず、二階にかい一室ひとまこもりツきり、で、寢起ねおきひまには、裏庭うらにはまつこずゑたかき、しろのもののやうなまどから、くも水色みづいろそらとをながら、徒然つれ/″\にさしまねいて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……五日いつかばかりおいでがつゞいた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)