見物けんぶつ)” の例文
こゝかしこにたくさんにありますから、これひととほり見物けんぶつしてあるくだけでも、ロンドンで一週間いつしゆうかんぐらゐは、大丈夫だいじようぶかゝるでせう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
とうとうとムダ口をしゃべって大人おとな見物けんぶつをけむにまいた蛾次郎がじろうは、そこでヤッと気合いをだして、右手の独楽こま虚空こくうへ高くなげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これまたシンミリしたその場面に一種異様な効果をあたえ、見物けんぶつはげらげら笑いだした。見物が笑ったから悪いというのではない。
翻訳のむずかしさ (新字新仮名) / 神西清(著)
「ほかに、見物けんぶつしているやじうまもあったろう。」と、おとうさんは、おききになりました。これにたいして、しばらく返事へんじはなかったが
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
るとそれはおもいもつかない、大きなちゃがまに手足てあしえたものでしたから、見物けんぶつはみんな「あっ。」とって目をまるくしました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
垣根かきねなかンのめったばっかりに、ゆっくり見物けんぶつ出来できるはずのおせんのはだかがちらッとしきゃのぞけなかったんだ。——面白おもしろくもねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
諭吉ゆきちは、おかあさんに、京都きょうと大阪おおさかなどを、ゆっくり見物けんぶつさせて、よろこばせてあげようとおもっていただけに、がっかりしました。
いぬはまたなめた。其舌そのした鹽梅あんばいといつたらない、いやにべろ/\してすこぶるをかしいので、見物けんぶつ一齊いつせいわらつた。巡査じゆんさ苦笑にがわらひをして
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この点ではこの若者たちも闘鶏とうけい闘犬とうけん見物けんぶつ同様、残忍でもあれば冷酷でもあった。彼等はもう猪首の若者に特別な好意を持たなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
をどり周圍しうゐにはやうや村落むら見物けんぶつあつまつた。混雜こんざつして群集ぐんしふすこはなれて村落むら俄商人にはかあきんどむしろいて駄菓子だぐわしなし甜瓜まくはうり西瓜すゐくわならべてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見物けんぶつしければハヤ五月もすぎ六月の初旬となり炎暑強き頃なれば凉風の立迄たつまで當所に逗留して秋にもならば江戸へ下り主取しゆどりせんと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
薄暗い草原の中で、人形とばかり思い込んでいた轢死女の首だけが、ニヤニヤ笑うのを見たら、大抵の見物けんぶつは腰を抜かしてしまうであろう。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
リスもテンも、キツネのいるのには気がつきませんでした。キツネはじっとして、木のあいだでおこなわれているこのりを見物けんぶつしていました。
それでそち母人ははびとは、今日きょうここついでわし本体ほんたい見物けんぶつして、それを土産みやげってかえりたいということのようであるが、これは少々しょうしょうこまった註文ちゅうもんじゃ。
そうすると、いつのまにか、いなかのおとうさんやいもうとたちの顔が、それをとりまいてめずらしそうに見物けんぶつしています。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
れから二人ふたり其處そこて、クレムリにき、大砲王たいはうわう(巨大な砲)と大鐘王たいしようわう(巨大な鐘、モスクワの二大名物)とを見物けんぶつし、ゆびさはつてたりした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これは人形にんぎやうのやうにうごかない、風呂ふろなか少年せうねんおなじくこれを見物けんぶつしてるのだといふことが自分じぶんにやつとわかつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それらの一つ一つが、半日立ちつくして見物けんぶつしていても、けっしてあかせないだけの魅力みりょくを持っていたのである。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
お銀様とお角の一行も、その見物けんぶつの群集に交って、歩きにくい道を進んで行くと、後ろがにわかに物騒がしい。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
牛込館のお客様は、西洋物の見物けんぶつだけに上品でおとなしい。矢張り大方学生のようで、近所に芸者街げいしゃまちがあるのだが、それらしい姿はあまり見かけられなかった。
牛込館:映画館めぐり(十) (新字新仮名) / 渡辺温(著)
たしかにじぶんは「骸骨の一」とか「骸骨の二」とか札のついていたものを見物けんぶつした。それは、すこぶるかんたんな立体幾何学的りったいきかがくてき模型もけいのような形をしていた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さあそれが評判ひょうばんになりまして、「甚兵衛の人形は生人形いきにんぎょう」といいはやされ、町の人たちはもちろんのこと、とおくの人まで、甚兵衛の人形小屋ごや見物けんぶつまいりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
じいさんは見物けんぶつするつもりで、若者のそばにならんで立っていました。白いひげは長くたれていました。
菊の培養法が違ふとか何とかいふ所で、三四郎はほか見物けんぶつへだてられて、一間ばかり離れた。美禰子はもう三四郎よりさきにゐる。見物は概して町家のものである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
歌舞伎年代記などに記載されているが、昔の芝居には、獄門首ごくもんくびが恨みを述べたり、親子の名乗りをしたりするのは、普通の事件で、見物けんぶつがそういうものを喜んでいた。
武州公秘話:02 跋 (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
あるべき筈はないという事は、なんぼ愚かな私にでも、わかっていた。けれども、来て見ないうちは、気がかりなのだ。見物けんぶつの心理とは、そんなものではなかろうか。
佐渡 (新字新仮名) / 太宰治(著)
歌舞伎年代記などに記載されているが、昔の芝居には、獄門首ごくもんくびが恨みを述べたり、親子の名乗りをしたりするのは、普通の事件で、見物けんぶつがそういうものを喜んでいた。
新吉しんきち見物けんぶつしたくてたまらないのですが、そうは出来ません。十いく頭という馬のかいばをつくらねばなりません。何十しゅという動物の食べものをつくらねばなりません。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
それより洞中どうちゆう造船所ぞうせんじよないのこくまなく見物けんぶつしたが、ふとると、洞窟どうくつ一隅いちぐうに、いわ自然しぜんえぐられて、だいなる穴倉あなぐらとなしたるところ其處そこに、嚴重げんぢうなるてつとびらまうけられて
ロミオ (從者にむかひ)おれには炬火たいまつれ。かる陽氣やうき手合てあひは、舞踏靴をどりぐつかゝと澤山たんと無感覺むかんかく燈心草とうしんぐさこそぐったがよい。おれは、祖父ぢゝい訓言通をしへどほり、蝋燭持らうそくもちをして高見たかみ見物けんぶつ
ズッと出て太い手をついてう拳を握り詰めますると、力瘤ちからこぶというのが腕一ぱいに満ちます、見物けんぶつは今角力と剣術遣との喧嘩が有るというので近村の者まで喧嘩を見に参る
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これにはクックしや桑港支社長さうかうししやちやうストークスくんやら、朝日新聞社あさひしんぶんしや桑港特派員さうかうとくはゐん清瀬規矩雄君きよせきくをくんなどが便乗びんじようしてたので、陸上りくじやう模様もやう明日あす見物けんぶつ次第しだいなどをかたつて、大方だいぶにぎやかになつてた。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
師走しはすつき世間せけんたいものせわしきなかを、ことさららみて綾羅きらをかざり、一昨日おとゝひそろひしとそれ芝居しばゐ狂言けうげんをりから面白おもしろ新物しんものの、これをのがしてはと娘共むすめどもさわぐに、見物けんぶつは十五日
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
芝居のことでいえば、どんな芝居を見せても、見物けんぶつは何ともいわずに見ている。もしあったところで、その見物人にとってはどうでもいいことなのであるから、結局なんでもないことになる。
国民性の問題 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うだ/\、全體ぜんたい杉村君すぎむらくんは、我々われ/\蠻勇ばんいうおどろいてしまつたのだ。とて太刀打たちうち出來できないから、それで見物けんぶつまはつたのだ。人間にんげん利口りこう出來できてる。我々われ/\馬鹿ばか出來できてるよ』と水谷氏みづたにしふ。
やがてきゅうに、さびしい気味きみのわるい気がしてきて、心ぼそくなったが、そのとたんに、ああ、これはまた、どうしたことだろう。黒山のように人だかりがして、みんな目をまるくして見物けんぶつしている。
たこ見物けんぶつ草臥くたびれました。もうそろ/\おろしてください。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なぞえ ほかの見物けんぶつは、そいでも笑つてたわ。
雅俗貧困譜 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
(半ば見物けんぶつに背を向けて藁椅子に腰を掛く。)
風をきって一直線ちょくせんに手をはなれた独楽は、ゆくところまでゆくとビューッとうなりをあげて見物けんぶつの頭の上へ落下らっかしてきそうなようす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから、勇蔵ゆうぞうは、ボールをげる仲間なかまはいることもできなかったので、ぼんやりってほかの子供こどもたちのげるのを見物けんぶつしていました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
或一年あるひとゝせはるすゑかた遠乗とほのりかた/″\白岩しらいはたふ見物けんぶつに、割籠わりご吸筒すゐづゝ取持とりもたせ。——で、民情視察みんじやうしさつ巡見じゆんけんでないのがうれしい。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この中へ置けば、我々のように蚊帳をまくって見る見物けんぶつなんかありやしないから、急に発見される心配はないと思ったのだ
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
でも、おかあさんに、ほんとうのことをはなしたら心配しんぱいするので、きゅうな用事ようじができたことにして、見物けんぶつをやめ、いそいで東京とうきょうにかえりました。
まはり夫より所々を見物けんぶつしける内一ぴき鹿しか追駈おつかけしが鹿のにぐるに寶澤は何地迄いづくまでもと思あとをしたひしもつひに鹿は見失ひ四方あたり見廻みめぐらせば遠近をちこちの山のさくら今を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから二人ふたりはそこをて、クレムリにき、大砲王たいほうおう(巨大な砲)と大鐘王たいしょうおう(巨大な鐘、モスクワの二大名物)とを見物けんぶつし、ゆびさわってたりした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ったことのある境地ところでございますから、道中どうちゅう見物けんぶつ一切いっさいヌキにして、私達わたくしたちおもいに、あのものすごい竜神りゅうじん湖水こすいほとりしまいました。
博物館はくぶつかん見物けんぶつも、だいぶながくなつてみなさんもつかれたでせうが、わたしはなしくたびれました。まづこれで見物けんぶつをやめて、おちやでもむことにいたしませう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
此處こゝなりれます。』と老爺ぢいさんぼくそばこしおろして煙草たばこひだした。けれど一人ひとり竿さをだけ場處ばしよだからボズさんはたゞ見物けんぶつをしてた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ちながらはかますそんで蹌踉よろけてはおどろいた容子ようすをして周圍あたりるのもあつた。ういふ作法さはふをも見物けんぶつすべては熱心ねつしんらしい態度たいど拜殿はいでんせまつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)