うづ)” の例文
さて私の結婚生活せいくわつは、うづのやうにぐる/\と私どもをもてあそばうとしました、今猶多少たせうの渦はこの身邊しんぺんを取りかこみつゝあるけれども
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
一枚のドアが開いてゐるのだ、それはロチスター氏の部屋の扉であつた。そしてうづまく煙は一かたまりになつて其處から吹き出してゐるのだ。
かさ/\とかわいて、うづつて、ごと眞中まんなかあなのあいた、こゝを一寸ちよつとたばにしてゆはへてある……瓦煎餅かはらせんべいけたやうなものである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やうしたに、うづいてくるしさうなかはらいろが、幾里いくりとなくつゞ景色けしきを、たかところからながめて、これでこそ東京とうきやうだとおもことさへあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
応接室へ帰つてから、一同雑談で持切つて、室内に籠る煙草たばこけぶりは丁度白いうづのやう。茶でも出すと見えて、小使は出たり入つたりして居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
袖襟そでえりへ雪を吹入れて全身みうちこゞえいきもつきあへず、大風四面よりふきめぐらして雪をうづ巻揚まきあぐる、是を雪国にて雪吹といふ。
川の向うに見えてゐる大きな煙突からうづまきあがる煤烟ばいえん、——ふと、「あれ、あれ!」とけたゝましい声が起つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
一番若くて、一番綺麗なおつたは、颱風の眼のやうに移動する動亂のうづけて、お燗番かんばんの卯八の懷に飛込んだり、伽羅きやら大盡の貫兵衞の背後うしろに隱れたりしました。
「述懐は一種の慰藉ゐしやなりサ、人誰か愚痴なからんやダ、君とても口にこそえらいことを吐くが、雄いことを吐くだけ腹の底には不平が、うづいて居るんだらう」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
鉾杉のうづす霧に、はて知れぬ海も見わかず、ひさかたの空もえわかね、時をりは渡りの鳥のはぐれどりちりぢりと落ち、羽重はねおもの一羽鴉も飛びなづみややに来て揺る。
絶壁の下をのぞくと、川の水勢と精神とが清い油となつてうどみかかり、おほきなふちとなつて幾重にもうづを卷いてゐる。このところ深さを量り得たものがないと云ふ。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
たにおくには墓場はかばもあるだらう、人生じんせい悠久いうきうながれ此處こゝでも泡立あわだたぬまでのうづゐてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人間が見たかつたし、せつない感情が胸の中にうづを巻いて、ここまで、戻つてゐるのだつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
我が此川を見た最初さいしよの記憶は、きみが背中にぶさつて野桑のぐはを摘みに來た時、ほらこれ大川だよと指さして教へられた。小さなうづいろぽいあぶくを載せた儘すい/\と流れてゐた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
おびやかされたやうに、私は枕から顔を放して、兄の顔を視守みまもつた。二言三言眠り足らない自分を云ひ訳しようとでもする言葉が、ハツキリした形にならないまま鈍い頭の中でうづを巻いてゐた。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
そこは水も深く大石が幾つもならんでゐて、激して泡立つた流れの余勢が、石と石との間で蕩揺たうえうしたりうづを作つたりしてゐた。そしてさういふ石陰の深みの一つに赤蛙は落ち込んでゐるのだつた。
赤蛙 (新字旧仮名) / 島木健作(著)
チョイとうづを卷いて、忽ち海風に散つてゆく、浪は相不變あひかわらず、活動寫眞の舞踊ダンス歩調あしどりで、かさなり重り沖から寄せて來ては、雪の舌を銀の齒車の樣にグルグルと卷いて、ザザーッと鳴り散らして颯と退
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
又その淵には、時々四畳半位な大きな碧瑠璃へきるりうづが幾つも幾つも渦巻いたのを、彼はよく夢心地で眺め入つた。さうしてそれを夢そのもののなかでも時折見た。この頃は八つか九つででもあつたらう。
それ/″\人のうづを作つてゐるのであつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
あともなくうづまきいるる。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
時めきの、さとこそうづ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
まだ、朝早あさまだき、天守てんしゆうへからをかけてかたちくもむらがつて、処々ところ/″\物凄ものすさまじくうづまいて、あられほとばしつてさうなのは、かぜうごかすのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とうさんも、そんなおほきなかはるのははじめてでした。あをい、どろんとしたみづうづいて、おほきないはあひだながれてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
二人ふたりが表てゞならんだ時、美禰子は俯向うつむいて右の手をひたひてた。周は人がうづいてゐる。三四郎は女の耳へくちを寄せた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
袖襟そでえりへ雪を吹入れて全身みうちこゞえいきもつきあへず、大風四面よりふきめぐらして雪をうづ巻揚まきあぐる、是を雪国にて雪吹といふ。
が、御新造のお仙は何んにも言はなかつたにしても、お勝手近くなると、緊張と騷ぎのうづは次第に強大になつて、通る人達の顏も、容易ならぬものを感じさせます。
品川で降りると、省線のホームの前に、ダンスホールの裏窓が見えて、暗い燈火の下で、幾組かがうづをなして踊つてゐる頭がみえた。光つて降る糠雨ぬかあめのなかに、物哀しいジャズが流れてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
その場所ばしよまつたくぼくつたのである、後背うしろがけからは雜木ざふきえだかさかさねておほひかゝり、まへかなひろよどみしづかうづまいながれてる。足場あしばはわざ/\つくつたやうおもはれるほど具合ぐあひい。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うづまく黄金色わうごんしよくの光ばかりが響きまはる。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うづぞ卷く
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
かさなるくもひとところうづいて、次第しだいに地面のうへへ押しせるかと怪しまれた。其時あめひかくるまもんからうちへ引き込んだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ざつ/\と、あのつゞいたうづが、ひとツづゝ數萬すうまんむらがつたやうな、一人ひとりひとかたちになつて、縱隊一列じうたいいちれつはひつてました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
兩國廣小路の人混みの中にうづを卷いた喧嘩の輪が、雪崩なだれを打つて柳橋の方へくだけて來たのでした。
四杯目の酒を富岡は口に持つて行つてゐる。ゆき子は鍋を降ろした。うづを巻いたコンロの火が寒々とした部屋に、にぎやかだつた。ゆき子は、いまごろになつておせいが憎くてたまらなかつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
くろなやみ旋律せんりつうづき起る。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
辿たどりかゝつたのたら/\あがりのながさかの、したからちやう中央なかばおもところで、もやのむら/\と、うごかないうづなかを、がくれに、いつしづみつするてい
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それから親分に頼まれた、あの晩の人の動きを、事細かに訊き出しましたが、何しろ祝言の後の酒盛りで、まるで人間がうづを卷いたやうで、訊き出しやうもありませんよ。
彼等のかたからへかけて、肉塊にくくわい肉塊にくくわいが落ち合つて、其間にうづの様なたにつくつてゐる模様を見て、其所そこにしばらく肉のちからの快感を認めたが、やがて、画帖をけた儘、はなしてみゝてた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かんがへ、かんがへつゝ、雨戸あまどつて、裏窓うらまどをあけると、裏手うらて某邸ぼうていひろ地尻ぢじりから、ドスぐろいけむりがうづいて、もう/\とちのぼる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かさの色が、又代助のあたまに飛び込んで、くる/\とうづいた。四つかどに、大きい真赤な風船玉を売つてるものがあつた。電車が急にかどまがるとき、風船玉は追懸おつかけて、代助のあたまに飛びいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あと、ものの一町いつちやうばかりは、眞白まつしろ一條いちでうみちひらけました。——ゆきうづヲばかりぐる/\とつゞいてく。……
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もしくは詩的感興がある。尤も恐るべきはあなさきうづである。うづると、大変にしかられる。与次郎の云ふ事だから、三四郎は無論あてにはしない。然し此際だから気をけてけむりの形状かたちを眺めてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
女中ぢよちう一荷ひとに背負しよつてくれようとするところを、其處そこ急所きふしよだと消口けしぐちつたところから、ふたゝ猛然まうぜんとしてすゝのやうなけむり黒焦くろこげに舞上まひあがつた。うづおほきい。はゞひろい。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんだか此池このいけ仕切しきつた屋根やねのあたりでしきりつぶてつやうなおとがしたが、ぐる/\うづいちやあ屋根やねうへ何十なんじふともないつぶてがひよい/\けて歩行あるやうだつた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
長雨ながあめのあとで、水勢すゐせいどう/\として、うづまいながれ、蛇籠じやかごうごく、とある。備中びつちううまてゝ
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、大犬おほいぬいきほひおとろへません。——勿論もちろんくあとに/\みちひらけます。うづつゞいてく……
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なかひつゝ、うづかさねて、燃上もえあがつてるのは、われらの借家しやくやせつゝあるほのほであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ると、……むら/\と一巻ひとまきうづくやうにつて、湯気ゆげが、なべなかから、もうつ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うづがこんなにくやうにりましてはへられません。うづ湧立わきたところは、あとあなつて、其處そこからゆきはしらゆきひと雪女ゆきをんな雪坊主ゆきばうずあやしいかたちがぼツとちます。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
またあとより枝一枝えだひとえだかつらしげりたるが、あゐみどりひるがへし、うづいてぞながる。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)