なん)” の例文
鼻筋はなすぢ象牙彫ざうげぼりのやうにつんとしたのがなんへば強過つよすぎる……かはりには恍惚うつとりと、なに物思ものおもてい仰向あをむいた、細面ほそおも引緊ひきしまつて
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、たちどころに、御座ぎょざをめぐる人々の間から、ここを不安とする説が出た。余りに、山奥すぎて、糧道のなんすらあるというのである。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるひは娘共むすめども仰向あふむけてゐる時分じぶんに、うへから無上むしゃう壓迫おさへつけて、つい忍耐がまんするくせけ、なんなく強者つはものにしてのくるも彼奴きゃつわざ乃至ないしは……
懸けければ此方は彌々いよ/\愕然びつくりし急に顏色がんしよく蒼醒あをざめ後の方を振返るにそれ召捕めしとれと云間も有ず數十人の捕手ふすまかげより走り出なんなく高手たかて小手になは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
随分死の苦しみをしたであろうに、家の者はぐっすり寝込ねこんでちっとも知らなかった。昨秋以来鼬のなんにかゝることこゝに五たびだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一 王を尊び民をあはれむは學問の本旨。然らば此天理を極め、人民の義務にのぞみては一向ひたすらなんに當り、一同の義を可事。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
こののこぎりなんなくれる家尻やじりを五つましたし、角兵ヱかくべえ角兵ヱかくべえでまた、足駄あしだばきでえられるへいを五つました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
いま十五少年諸君の行動をけんするに、なんしょしてくっせず、事にのぞんであわてず、われわれおとなといえども及びがたきものがすこぶる多い。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
するとるまにくるま運転うんてんまってしまいました。で、群集ぐんしゅうは、この無礼ぶれい自動車じどうしゃなんなくさえることができました。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おや、しまった」と、こんどはお手をつかみますと、そのお手の玉飾りのひももぷつりと切れたので、なんなくお手をすりいておげになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
やっと水のなんをのがれたと思ったら、またしてもこんなおそろしいめにあうなんて、なんという運の悪さでしょう。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところが「和解」丈けは、氏としては珍らしい程の長篇ちやうへんであり、亦、構圖こうづ表現へうげんの點に多少のなんがある爲めに、それに就ていろ/\の議論ぎろんを聞きました。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
いまつばかりなり。すなはなん貴下きかもとほうず、稻妻いなづまさひはひせずして、貴下きかこのしよていするをば、大佐たいさよ、はかりごとめぐらして吾等われら急難きふなんすくたまへ。
此処に於て賊軍は京都に入り、名和長年、千種忠顕等の諸将なんに死し、天皇は難を比叡山に避け給うた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
彼女ならば女学校もなんなく入れるであろうに、コトエは六年きりでやめるという。あきらめているのか、うらやましそうでもないコトエに、たずねたことがある。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
大乗の欣求ごんぐもあり得ないわけでございます、大乗はにして、小乗はなんなりと偏執へんしゅうしてはなりませぬ、難がなければ易はありませぬ、易にしては難がけませぬ
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こういうあたいなしに務めるものがあればこそ、旅行中にも雨曝あまざらしのなんまぬかれる。こういう心がけのものが多ければ多きほど、人生なる旅路たびじは真の快楽かいらく幸福を増すものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
うみならずやまならぬ人世じんせい行路かうろなんいまはじめておもあた淵瀬ふちせことなる飛鳥川あすかがは明日あすよりはなにとせん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
〔評〕十年のなん、賊の精鋭せいえい熊本城下にあつまる。而て援軍えんぐん未だ達せず。谷中將死を以て之を守り、少しも動かず。賊勢ぞくせい遂に屈し、其兵を東する能はず。昔者むかし加藤嘉明よしあき言へるあり。
気の毒なのはその婦人で私の身代りにそういうなんに陥ったようなものでございます。その後ダージリンにおいて聞くところによるとシンガポールの宿屋は非常に困ったそうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼を讚むべきもの却つて彼を十字架につけ、故なきになんじ、汚名を負はしむ 九一—九三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かくの如くなる可からざる也、と云い、晦庵かいあんの言をなんしては、朱子の寱語げいご、と云い、ただ私意をたくましくして以て仏をそしる、と云い、朱子もまた怪なり、と云い、晦庵かくの如くに心を用いば
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
財主ざいしゆいもうところしたる一條いちじようなんじて「その氣質きしつはかねてきゝたる正直質樸せうじきしつぼくのものたるに、これをも殺したるはいかにぞや………さてはのちわれにかへりて大にこれを痛み悔ゆべきに、」云々とはれたり。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
そのありがたさを吾がのちへもしめさんとてふでついでにしるせり。近年は山家の人、家を作るに此雪頽なだれさけて地をはかるゆゑそのなんまれなれども、山道やまみち往来ゆきゝする時なだれにうたれ死するものまゝある事なり。
湖南こなん浄慈寺じょうじじに来てわしを尋ねるが宜い、今、わしがを云って置くから、覚えているが宜い、もとこれ妖蛇ようじゃ婦人に変ず、西湖せいこ岸上がんじょう婦身ふみを売る、なんじよく重きにって他計たけいう、なん有れば湖南こなん老僧を見よ
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
博士は、あぶないところで、なんをまぬかれた。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
子をめつゝもなん少しいふ 北枝ほくし
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
星の飛ぶ夢は、色情のなんあり。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
侵逼しんぴつなんとは之なんめり。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
現朝廷の妲己だっきである。いつかは女奏にょそうなんに会おう。そのとき、腹をたてて弓をひけば、自分もまた道誉の無節操と似た者となるしかない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あぶないともおもはずにずつとかゝる、すこしぐら/″\としたがなんなくした。むかふからまたさかぢや、今度こんどのぼりさ、御苦労ごくらう千万せんばん
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
入させ給ふべきは全く徳太郎君の御名をかた曲者くせものそれ召捕めしとれはげしき聲に與力ども心得たりと左右より組付くみつきなんなくなは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いま端艇たんていいだして、吾等われら九死一生きゆうしいつしやうなんすくつてれたのは、うたがひもない、先刻せんこく白色巡洋艦はくしよくじゆんやうかんである。
はなのきむら人々ひとびとは、むら盗人ぬすびとなんからすくってくれた、その子供こどもさがしてたのですが、けっきょくわからなくて、ついには、こういうことにきまりました、——それは
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
西洋の新聞や雑誌に、しばしば日本の実業家の品性ひんせいすなわち商業道徳なるものをなんじている。われわれとてもいかにめたくも、日本の商業道徳を西洋のそれにまさるとはいいかねる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それにしても、入り海をとりかこんだ村むらにとって、大昔から何かにつけて目じるしにされてきた名物めいぶつの老松がなんにあったのを、地元のじぶんが気づかずにいたのが恥ずかしかった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
この大將たいしやう若樣わかさまなんなくさとしとりこになりけり、令孃ひめとのなかむつましきをるより、奇貨きくわおくべしと竹馬たけうま製造せいざうはじめに、植木うゑき講譯かうしやく、いくさ物語ものがたり田舍ゐなかぢいばあ如何いかにをかしきことひて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのありがたさを吾がのちへもしめさんとてふでついでにしるせり。近年は山家の人、家を作るに此雪頽なだれさけて地をはかるゆゑそのなんまれなれども、山道やまみち往来ゆきゝする時なだれにうたれ死するものまゝある事なり。
「一なんさってまた一難か。こりゃ昌仙しょうせん、こんどこそは、かならずそちの采配さいはいにまかす。なんとか、妙策みょうさくをあんじてくれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蟹を噛るのはなんですが、優しいですから、今にも帰りますと、せめて若いものの手で扱わせようと存じまして、やっとがまんをしましたほどです。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伊勢屋いせやの男共は見付さてこそ盜人は此坊主ならんと大勢にてなんなく旅僧を捕へたり三郎兵衞べゑは家内を改め見るに金五百兩あらねば金は何所へ隱せしぞと彼の旅僧を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしごと現在げんざいそのなんのぞんで、弦月丸げんげつまる悲慘ひさんなる最後さいごぐるまで、その甲板かんぱんのこつてつたは、今更いまさらその始終しじゆう懷想くわいさうしても彌立よだほどで、とてもくわしいこと述立のべたてるにしのびぬが
○ 雪頽なだれなん
「はて。ならんと仰せなれば、ぜひもない。——しかし、いかなるなんが降ッてわいても、おさしつかえはないのだな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まことや、ひとんでけむりかべるで、……たれないとると、南向みなみむきながら、ざしもうすい。が、引越ひきこすとすればなんにはらぬ。……をりからいへさがしてた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
○ 雪頽なだれなん
絶望的ぜつぼうてきおどろきにうたれたのは、とっさ、竹童ちくどうの感じたところで、いわゆる、一なんってまた一難、もうとてものがれるすべはないものと覚悟かくごをきめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
途中とちうあつたとつて、吉井勇よしゐいさむさんが一所いつしよえた。これは、四谷よつや無事ぶじだつた。が、いへうら竹藪たけやぶ蚊帳かやつてなんけたのださうである——
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしこれを、なんずるのでも、あざけるのでもない。いはんけつしてうらやむのではない。むし勇氣ゆうきたゝふるのであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、鳥居とりいをくぐって、およそな見当けんとうのところをしきりにさがしはじめたが、さあこののほうにも一なんがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)