時計とけい)” の例文
しかるに、不思議ふしぎなことには、むらに二つ時計とけいがありましたが、どうしたことか、二つの時計とけいやく三十ぷんばかり時間じかんちがっていました。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
角海老かどゑび時計とけいひゞききもそゞろあわれのつたへるやうにれば、四絶間たえまなき日暮里につぽりひかりもれがひとけぶりかとうらかなしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一「セカンド」は大抵たいていみやく一動いちどうおなじ。さて時計とけい盤面ばんめんを十二にわかち、短針たんしん一晝夜いつちうやに二づゝまはり、長針ちやうしんは二十四づゝまは仕掛しかけにせり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
それを——時計とけいはりひとつて、あとへつゞくほどの心配しんぱいもさせないで、あつとおもふと、ぐにひろつていてくだすつたのがわかつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ぼくはね、きみを時計とけいにしてるんだよ」と光一はいった。「きみに逢った時には非常に早いし、きみにあわなかったときにはおそいんだ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「だけど、時計とけいをなおしてくれるのに文句もんくをいうつもりはないよ。けっこうだよ。なおしてもらおう。きみ、さっそく、やってくれたまえ」
しかし時計とけいはどうしたろう、それからポッケットにれていた手帳てちょうも、巻莨まきたばこも、や、ニキタはもう着物きもの悉皆のこらずってった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ヂュリ 乳母うばしてやったとき時計とけいこゝのつをってゐた。半時間はんじかんかへるといふ約束やくそくしやへなんだかもれぬ。いや/\、さうではい。
非常ひじやう甘味うま菓子くわし舌皷したつゞみちつゝ、や十五ふんすぎたとおもころ時計とけい午後ごご六時ろくじほうじて、日永ひながの五ぐわつそらも、夕陽ゆふひ西山せいざんうすつくやうになつた。
時計とけいも、まだ六時前です。電車でんしゃは、黒い割引わりびきふだをぶらさげて、さわやかなベルの音をひびかせながら走っていました。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
時計とけいが、十二時十五分前をうちました。と、窓があいて、お姫さまが、長いまっ白ながいとうを着て、大きな黒いつばさをつけて、とび出しました。
あいちやんは、さも不思議ふしぎさうに自分じぶんかた左顧右盻とみかうみしてゐました。『可笑をかしな時計とけい!』つてまた、『わかつて、それでときわからないなンて!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そのうちきよ下女部屋げぢよべやけてかはやきた模樣もやうだつたが、やがてちや時計とけいてゐるらしかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ってとうさんがちゃかっている柱時計はしらどけいころは、その時計とけいはりが十していた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それからまた上には河童の使う、ちょうど時計とけいのゼンマイに似た螺旋らせん文字が一面に並べてありました。この螺旋文字を翻訳すると、だいたいこういう意味になるのです。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
室が寂然ひつそりしてゐるので、時計とけいの時をきざおとが自分の脈膊みやくはくうま拍子ひやうしを取つてハツキリ胸に通ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さわやかな秋の時計とけい盤面ばんめんには、青くかれたはがねの二本のはりが、くっきり十一時をしました。みんなは、一ぺんにおりて、車室の中はがらんとなってしまいました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
時計とけいるとや九。ゴールデンゲートから此処迄こゝまでに四時間じかんかゝつた勘定かんぢやうになる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
それから同じシャリアピンの「時計とけいの場」と「おれは最高権威者だ」が一枚(ビクターJD二二六)、「ボリスの別れ」と「ボリスの死」も一枚になっている(ビクターJD八六二)。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
違えずまはるが肝要かんえうなり今も云通り爰の處の川柳點にて「日々の時計とけいになるや小商人こあきんど」とぎんじられしと云ば長八は感心して成程よく會得わかりしとて長兵衞のはなしの通り翌日あすの朝も刻限こくげんきめて籠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
時計とけいは、十一時をうちました。するうち、おなかがへって、気がとおくなりそうなので、テーブルにあった若鶏わかどりをひときれ、おっかなびっくらたべました。ぶとう酒も四五杯のみました。
御側用人おそばようにん、お坊主附添いでまず老中ろうじゅうの用部屋まで運び入れ、用部屋から時計とけい坊主ぼうず、側用取次と順々に送られ、お待ちかねの将軍が、これをうつわに盛って、今年の雪は、ことのほか冷たいの
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そこへ正三君がおなかの時計とけいでもうお昼時と承知してノコノコ帰ってきた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
湯いづる山の月の光は隈なくて枕べにおきししろがねの時計とけいを照らす
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「かあちゃん、ぼく、時計とけいはこんなかにかくれているようっ。」
銀色のしりふり時計とけいしりふるをみつつに酒をのめばさびしも
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
「おじさん、わかった、これ時計とけいだろう」
うた時計 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
審判官しんぱんかんのフランクが、時計とけいを見ながら
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
時計とけいいまつたばかり。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
世界せかい時計とけいがなかつたら
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
うで時計とけい
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
そのうちにも、時計とけいはりはこくこくとたっていったのです。いつもかえ時間じかんより一時間じかん、二時間じかん、二時間半じかんはんぎてしまったのです。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
しか時計とけい奈何どうしたらう、れからポツケツトにれていた手帳てちやうも、卷莨まきたばこも、や、ニキタはもう着物きもの悉皆のこらずつてつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのも、一きやうきつして時計とけいた。はり相違さうゐなく十一其処そこをさして、汽車きしやせつゝあるまゝにセコンドをきざむでる。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
チビ公は茶の間へあがって時計とけいを見た、それは九時を打ったばかりであった。チビ公はあがりかまちに腰をかけて伯父と母の帰りを待っていた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
その支度したく朝湯あさゆにみがきげてとしもこほあかつき、あたゝかき寢床ねどこうちより御新造ごしんぞ灰吹はいふきをたゝきて、これ/\と、此詞これ目覺めざましの時計とけいよりむねにひゞきて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たとへば、それがあさの九であつたと假定かていして、丁度ちやうど其時そのとき稽古けいこはじめる、時々とき/″\何時なんじになつたかとおもつてる、時計とけいはりめぐつてく!一時半じはん晝食ちうじき
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
テッディさん、いいところへきてくださったわ、ちょうど、お客部屋きゃくべや時計とけいを見てもらいたいと思っていたのよ。
かれ普通ふつう場合ばあひやう病人びやうにんみやくつて、ながあひだ自分じぶん時計とけい見詰みつめてゐた。それからくろ聽診器ちやうしんき心臟しんざううへてた。それを丁寧ていねい彼方あちら此方こちらうごかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ジョバンニは、なにかたいへんさびしいようなかなしいような気がして、だまって正面しょうめん時計とけいを見ていましたら、ずうっと前の方で、硝子ガラスふえのようなものが鳴りました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ゆゑ時計とけいときしるには短針たんしんところて、ぎに長針ちやうしん居所ゐどころるべし。たとへば短針たんしんところ、九と十とのあひだにして長針ちやうしんところ、二ところなれば九ぎ十分時ぶんじなりとふことなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
此時このとき時計とけいはりすでに十一めぐつてつたので、廣漠くわうばくたる甲板かんぱんうへには、當番たうばん水夫すゐふほかは一人影ひとかげかつた、ふねいま右舷うげん左舷さげん印度洋インドやう狂瀾きやうらん怒濤どたうけて北緯ほくゐへん進航しんかうしてるのである。
まくらべに時計とけい手帳てちやう置きたるにいまだしくるあけがたの月
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
こしらへるが肝心かんじんなりそれつき彼川柳點かのせんりうてんに「日々にち/\時計とけいになるや小商人こあきんど」といふのありと申に長八は一かうわからそれなんと云心に候やと云ば是は川柳點と云て物事のあなさがしとも申すべき句なり其心は何商賣なにしやうばいにても買つけの得意場とくいば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
外国がいこくから、日本にっぽんへわたり、ひとからひとへ、てんてんとして、使用しようされてきたので、時計とけいも、だいぶとしをとっているとおもいました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あいちやんはうさぎ襯衣チヨツキ衣嚢ポケツトから時計とけい取出とりだして、面白おもしろさうにそれをいてしまうなんてことを、れまでけつしてたことがないわとこゝろ一寸ちよつとおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
時計とけいみぎかべで、ひだり袋戸棚ふくろとだなになつてゐた。その張交はりまぜ石摺いしずりだの、俳畫はいぐわだの、あふぎほねいたものなどがえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「むろん、時計とけい正確せいかくでなくてはいけないよ。だが、ぼくは、この部屋へやにいつでもひとりでしずかにいたいのだ。だれもはいってこないように気をつけてもらいたいね」
時計とけいる。アンドレイ、エヒミチは椅子いす倚掛よりかゝりげて、ぢてかんがへる。さうしていまんだ書物しよもつうち面白おもしろ影響えいきやうで、自分じぶん過去くわこと、現在げんざいとにおもひおよぼすのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「あなたのお父さんはもう帰っていますか」博士はかせかた時計とけいにぎったまま、またききました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)