)” の例文
嘘さえ言えぬ未完成な生命なのだ。教養の不足してる小さな粗暴漢そぼうかんだ。そして恥や遠慮を知る大人を無視した横暴おうぼうな存在主張者だ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
天井から、釣鐘つりがねが、ガーンと落ちて、パイと白拍子が飛込む拍子に——御矢おんや咽喉のどささった。(ずまいを直す)——ははッ、姫君。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『あんな名僧めいそう知識ちしきうたわれたかたがまだこんな薄暗うすぐら境涯ところるのかしら……。』時々ときどき意外いがいかんずるような場合ばあいもあるのでございます。
太「これ何処どこへ参ってるかな、これ照や、狼藉者が這入ったが、何処へ参ってるか、これ早く燈光あかりを持って参れ、燈光を……」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それよりむこうのくだものの木の踊りのをごらんなさい。まん中にてきゃんきゃん調子ちょうしをとるのがあれが桜桃おうとうの木ですか。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
むかしむかし大昔おおむかしいまから二千ねんまえのこと、一人ひとり金持かねもちがあって、うつくしい、気立きだてい、おかみさんをってました。
あの実の落ちてる木の下へ行ったことがありますか。あのこうばしい木の実を集めたり食べたりして遊んだことがありますか。
二人の兄弟 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
でもみずの中に少女おとめたちがどうするか、様子ようす見届みとどけて行きたいとおもって、羽衣はごろもをそっとかかえたまま、木のかげにかくれてていました。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そう言わないで何卒どうかもすこし此処ここて下さいな、もすこし……。ああ! 如何どうしてう僕は無理ばかり言うのでしょう! よったのでしょうか。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それは勿論もちろん正氣せうきひとからはちがひとえるはづ自分じぶんながらすこくるつてるとおもくらゐなれど、ちがひだとてたねなしに間違まちがものでもなく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
盗賊とうぞくどもがなくなった時、押入おしいれの中にかくれていたさるは、ようようでてきて、甚兵衛のしばられてるなわいてやりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
来て見るとの始末で、仔細わけは知らぬが七兵衛老爺じじいの箒のもとに、一人の女が殴り倒されているので、めずにはられぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは山里村やまざとむらつきの農夫、あわれみの深いじょあん孫七まごしちは、とうにこの童女の額へ、ばぷちずものおん水を注いだ上、まりやと云う名を与えていた。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こううえ空想くうそうしながら、花屋はなや店頭みせさきにあった二鉢ふたはちのアネモネは、ある大学生だいがくせいが、まえって、自分じぶんたちをつめてるのにづきました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ついては乃公おれがお前に云付いいつけてこの原書を訳させると、うことによう、そのつもりでなさいといって、ソレカラ私は緒方の食客生しょっかくせいになって
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それがこの不首尾ふしゅびとなっては、先生にあわせる顔もないしだいだが、天下のことながらにして知る先生、またきっと好いおさしずがあろうと思う
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御殿に上っておでの御息女が、お宿下りのお日に当るとかいうことで、初日、正面の桟敷さじきを、御付込みになりました
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
人に対する反抗と敵愾心てきがいしんのために絶えず弾力づけられていなければられないような彼女は、小野田の顔を見ると、いきなり勝矜かちほこったように言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
……しかし、それにしても訳のわからない事があんまり多過ぎるようで、身動きするのさえ恐ろしくなりつつ、椅子の中へヒッソリとずくまった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さすがは御商売柄ですね。その通りですよ。かもの釘から細い紐でピストルをつり下げて、如何にも人間がねらいを定めている様に見せかけたのです。
盗難 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
然し文に「妻子同共討取」とあるから、何様どうも妻子は殺されたらしく、逃還にげかへつたのは一緒にた妾であるらしい。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そして、みんながずまいを正し、恐縮きょうしゅくしているような顔を、にこにこしながら見まわしたあと、すぐ室を出た。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それに、陰嚢いんのうもその影響を受けて、にもだんだん不自由を感じて来る、医師は罨法剤あんぽうざい睾丸帯こうがんたいとを与えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
御可憐おかはいさうなは信太郎とやら云ふ御子おこどすえなー、大方をゝかた其女そのあまに毎々/\、いぢめられてやはりなはつたでしやろ、わたしうちとなりにも貴女あなた継子まゝこがありましてなー
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
羅はびっくりしてほとんど気絶しそうになったので、いたずら心もなくなって、きちんとずまいを直して坐っていると、だんだん変って来てもとの着物になった。
翩翩 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
消した。しかし全然なくなったのではない。どこかに居るのだ。僕たちの目には見えないが、あの怪物はたしかに居るのだ。君は、僕のいうことを否定するかね
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わからないだって? まあ、そんなばかげたことかんがえないほうがいいよ。おまえさんここにれば、あたたかい部屋へやはあるし、私達わたしたちからはいろんなことがならえるというもの。
ことに倉地の帰りのおそい晩などは、葉子は座にもたたまれなかった。倉地の居間いまになっている十畳のに行って、そこに倉地の面影おもかげを少しでも忍ぼうとした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
うらみ参らせ候 家政の事は女の本分なればよくよく心を用い候よう平生かねがね父より戒められ候事とて宅におり候ころよりなるたけそのつもりにて参らせ候えども何を
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
もきちんとしていた、みなしごという陰影など少しもないし、云いたいことたいことは臆せずにやる、爽やかなほど明るいまっすぐな性質に恵まれていた。
日本婦道記:墨丸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大正たいしやうねんの九ぐわつ十二にちからきん輸出禁止ゆしゆつきんしがしてあるから、外國ぐわいこくからものふがしかしながら日本にほんからきんすことはならぬ、したがつ日本にほん流通りうつうして通貨つうくわたからぬ。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
五時より六時の間なりしが例の如く珈琲館にてたわむたるに、衣類もむさくるしくあやしげなる男一人いちにん
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
かつて象山師に聞くことあり、いわく、交易は可なり交易は不可なり、余曰く、国力強盛にて外夷を駕馭がぎょするに余らば、居交易もまた可なり、いわんや出交易をや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
もし彼がどこかにるものとすれば、事実彼の名は教会名簿にも大冊の赤い華族名鑑にもまだ載っているのだ、だが誰にも彼れを太陽の下に見たと云うものがないのだ。
怪談のうちでも、人間が死ぬ断末魔だんまつま刹那せつなに遠く離れてる、親しい者へ、知らせるというのは、決して怪談というべきるいでは無かろうと思う、これは立派な精神的作用で
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
かすめたり、こそッと人のとここもったりするようなんは、健全な交際とは認められん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
薫物たきものが煙いほどにかれていて、この室内にする女の衣摺きぬずれの音がはなやかなものに思われた。奥ゆかしいところは欠けて、派手はでな現代型の贅沢ぜいたくさが見えるのである。
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「それがようござる。およばずながら愚老ぐろう看護かんごして以上いじょう手落ておちはいたさぬかんがえじゃ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其所そこへ彼女の癇性かんしょうが手伝った。彼女はどんなに気息苦いきぐるしくっても、いくらひとから忠告されても、どうしてもながら用を足そうといわなかった。うようにしてでもかわやまで行った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつまで饒舌しやべつてやがるのだ、井戸端ゐどばたは米をぐ所で、油を売る所ぢやねえぞと。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
無いよ、しとみの隙間からは、どんな槍の名人でも、二間半先にる人は突けない。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
歯の根も合わぬほどなるも、風雨の中を縦横奔走して、指揮監督し、る時は自らくわふるい、または自らぬいで人夫に与え、つとめて平気の顔色がんしょくを粧いたりしも、予もひとしく人間なれば
その夜はちょうど私の当直番でしたが、夜半に看護婦があわたゞしく起しに来ましたので、駈けつけて見ると、彼女はベッドの上に、のた打ちまわって、悲鳴をあげながら苦しんでました。
痴人の復讐 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
左の折詰を持った手で、かさを持ってる手の下をさぐってみたが何物もない、こいつまた何かござったなと、早速さっそく気がついたので、私はまた御陵みささぎの石段へどっかと腰を下ろして怒号ったのだ
狸問答 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
その頃フランスにビュッフォンという学者がましたが、この人も動物をいろいろ研究しているうちに、食物や気候などによってやはり種類が変ってゆくのではないかという説をとなえました。
チャールズ・ダーウィン (新字新仮名) / 石原純(著)
二十間もはなれて、その間に、大勢の人がながら、すぐ傍にいた学生を除いては、第一にかけつけて来た、ということは、その娘にずーっと注意していた、ということの証拠になると思うね。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「しなが鳥」は猪名いなにつづく枕詞で、しなが鳥即ち鳰鳥におどりが、居並いならぶのとが同音であるから、猪名の枕詞になった。猪名野は摂津、今の豊能川辺両郡にわたった、猪名川流域の平野である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あさになつてからもおしな容態ようだいがいゝので勘次かんじはほつと安心あんしんした。さうしてなゝめとほくからふゆびながら庭葢にはぶたうへむしろいてたはらみはじめた。こもつくこは兩端りやうたんあしいてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
現今いま私のうちる門弟の実見談じっけんだんだが、所は越後国西頸城郡市振村えちごのくににしくびきぐんいちふりむらというところ、その男がまだ十二三の頃だそうだ、自分のうちき近所に、勘太郎かんたろうという樵夫きこり老爺おやじが住んでいたが、せがれは漁夫で
千ヶ寺詣 (新字新仮名) / 北村四海(著)
大佐閣下たいさかつか餘程よほどまへからこのくはだてはあつたので、すでに製圖せいづまで出來できるのだが、海底戰鬪艇かいていせんとうていほういそがしいので、ちからけること出來できず、いづてい竣成しゆんせい製造せいぞう着手かゝらうとおつしやつてるのだが