光景こうけい)” の例文
「ああ、わたしは、いつ東京とうきょうへいって、そのにぎやかな光景こうけいられるだろう?」と、びっこのむすめは、ひとりでためいきをもらしたのでした。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
過渡期かときの時代はあまり長くはなかった。糟谷かすや眼前がんぜん咫尺しせき光景こうけいにうつつをぬかしているまに、背後はいごの時代はようしゃなく推移すいいしておった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
しかしこの光景こうけいは、家人によって、あまり見っともないとて禁止きんしされた。そしてこの子は幸だとかお父さんのよい玩具だとか批判ひはんされた。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
が、内容なかみからいえば、それは現世げんせではとてもおもいもよらぬような、不思議ふしぎな、そして物凄ものすご光景こうけいなのでございました。
けれども、ニールスは、そのおそろしい光景こうけいをすっかりながめました。見ないではいられなかったのです。
なつ高原一帶こうげんいつたい高山植物こうざんしよくぶつがさきつゞいてゐたりする光景こうけいはとても、下界げかいでは想像そうぞうもつかないうつくしさです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
豆ランプが、ちろちろゆらぎながら、オルガンと、二人の年より夫婦ふうふの姿をてらしているところは、もしも女の子がこれを見たら、ふるえあがりそうな光景こうけいである。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
博士はくしは、なんにもないところに、ねこのまるいひとみがふたつ、みどり色にひかり、かなしそうに食べ物をもとめてなく声だけがきこえる光景こうけいを、ありありと思いうかべて身ぶるいした。
けれど見物人は、次のような光景こうけいを見て、びっくりしてしまいました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
これもよるしづかにむろのうちにこもつて、みゝすまし、には、そのとりいてゐる場所ばしよ光景こうけいを、あきらかにうかべてゐるのであります。こんなうたになると、赤人あかひとは、人麿ひとまろにも黒人くろひとにもけることはありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
おそろしき光景こうけい
氷河期の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女かのじょは、くともなく、そのおとみみましていていると、たくさんのひとたちが、うずいている光景こうけいうつったのでした。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
それからもなく、わたくし随分ずいぶんはげしい雷雨らいう実況じっきょうせていただいたのでございますが、外観がいかんからいえばそれは現世げんせ目撃もくげきした雷雨らいう光景こうけいとさしたる相違そういもないのでした。
はじめて見たときほどおどろかなかったが、やはりへんな光景こうけいだった。
どういうものかこの光景こうけいは見る人にあわれな思いをおこさせた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「その小さい月が、だんだん下に下りてきてよ、とうとうしまいには、海の水にたたかれるようになったのさ。わしも、それは見たがね。すごい光景こうけいだったねえ。月が近づくと、海は大あれにあれて、なみは大空へむけて、山よりも高くもちあがるのさ」
氷河期の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たちまち、うみうえ真紅まっかえました。夕日ゆうひしずむのです。この光景こうけいると、ちょうは、ふたたびばらの姿すがたおもしました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかもその当時とうじ光景こうけいまでがそっくりそのまま形態かたちつくってありありとまえうかてまいります。つまりわたくしどもの境涯きょうがいにはほとんど過去かこ現在げんざい未来みらい差別さべつはないのでございまして。
その光景こうけいは、なんともいいようのないくらい、ぶきみなものだったよ
地獄じごく光景こうけい
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、今日きょうはいつもより、紫色むらさきいろかみ小旗こばたがたくさんにちらちらとえましたので、はやわった光景こうけいをながめたいとはしっていきました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうおもった瞬間しゅんかん、いままでのあたまなかのなごやかなまぼろしはえてしまって、そこには、残忍ざんにんな、なまぐさい光景こうけいが、ありありとかびました。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このさまると、あまりのおどろきに、少年しょうねんこえをたてることもできず、おどろきのまなこをみはって、いっしょうけんめいにその光景こうけい見守みまもっていました。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、場所ばしょがら、しんにありべからざる光景こうけいるものだとおもい、いきころして、子細しさいていると、ちいさなかえるは、まだきていて、万死ばんしなかから
えきへむかうみちうえで、なにかあるらしく人々ひとびとあつまっているので、自分じぶんもいってみるになりました。それは、はじめてる、悲惨ひさん光景こうけいではなかった。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに、がほのぼのとしらんで、太陽たいようがった。このとき、はなは、どんな光景こうけいをながめたでありましょう。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただしろ荒寥こうりょうとした鉛色なまりいろひかこおり波濤はとう起伏きふくしていて昼夜ちゅうや区別くべつなく、春夏秋冬はるなつあきふゆなく、ひっきりなしに暴風ぼうふういている光景こうけいかぶのでした。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
刹那せつな、どうしたことか、かれは、この光景こうけいとは、なんら関係かんけいのない、べつな光景こうけいかんだのであります。
そして、あわれなものを、いたわるかとおもえば、また、いじめるというふうに、矛盾むじゅんした光景こうけいそらえがきながら。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
このよるいくまん燭光しょっこう消費しょうひする都会とかいあかるいよる光景こうけいなどは、この土地とち人々ひとびとのほとんどそのはなしいても理解りかいすることのできないことであったのです。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、あかるいそらしたに、あか旗影はたかげや、しろ旗影はたかげなどがひらひらとひるがえって、人影ひとかげが、まちなか往来おうらいする光景こうけいなどを、ぼんやりとえがいたのでありました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
侍女こしもとたちがってげる金銀きんぎんかがやきと、おひめさまのあか着物きものとが、さながらくもうような、夕日ゆうひうつ光景こうけいは、やはりりく人々ひとびとられたのです。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
老工夫ろうこうふは、まだぼんやりとして、電燈でんとう中心ちゅうしんに、周囲しゅうい光景こうけいをながめていました。すべてが、じっとして、うごかない。ただ、うごいているものは、みずながればかりでした。
そのいたましかった光景こうけいが、少年時分しょうねんじぶんかれこころきざみつけられて、いまでもわすれないのであります。
野菊の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
貨店かてんにあるような、あかあおみどりつめたくきとおるさらや、コップなどを製造せいぞうするガラス工場こうじょう光景こうけいとか、忽然こつぜんそれがえると、こんどは、たか煙突えんとつからくろけむりなが
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
木立こだちは、なんという残酷ざんこくなことをするものだろうと、これをるのにしのびませんでした。が、じきに、くらく、くらくなって、すべての光景こうけいを、よるが、かくしてしまいました。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
おりも、おり、れいまごは、このこのまちとおりかかりました。そして、はなやかな、まつりの光景こうけいて、自分じぶんいえ祖父そふまでは、この東京とうきょうんでいたのだなとおもいました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、あちらにっている電燈でんとうても、おなじような光景こうけいでありました。そして、はねしろが、周囲しゅうい空間くうかんを、ひかったちりのまかれたようにっているのでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おそらく、あのあに補充兵ほじゅうへいであろうとおもうと、老兵士ろうへいしをして○○攻撃こうげきさいに、自分じぶんた一光景こうけいおもさせるのでした。険阻けんそてき陣地じんち突撃とつげきうつ暫時前しばらくまえのことです。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だれでも、こうした光景こうけいるなら、生物せいぶついのちのとうとさをるものは、かみすくいをいのったでありましょう。正吉しょうきちも、こころのうちで、どうかたまのはずれるようにとねがっていました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、ただこうしてまち光景こうけいをながめただけでありました。そして、ふたたびこのみなとからはなれてしまって、航海こうかいがつづけられたのであります。ふねは、みなみへ、みなみへとゆきました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この光景こうけいたさよは、なんとなくかなしくなりました。そしていえかえみちすがら、自分じぶんもいつかおとうさんや、おかあさんにわかれなければならぬがあるのであろうとおもいました。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かもめは、さまざまなまちのにぎやかな光景こうけいや、できごとなどを見守みまもりました。そして、こんなおもしろいところがこの世界せかいにあるということを、ほかのとりらはまだらないだろう。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、一にちはたち、やがて十ねん、二十ねんとたちます。百ねん、二百ねんとたちます。けれどそこばかりは、いつもがって、れるまで、おなじような光景こうけいがつづいていました。
ものぐさじじいの来世 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつも快活かいかつで、そして、またひとりぼっちに自分じぶんかんじた年子としこは、しばらく、やわらかな腰掛こしかけにからだをげて、うっとりと、波立なみだちかがやきつつある光景こうけいとれて、夢心地ゆめごこちでいました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
またやまでは、おいしげる木々きぎに、あらしがおそうと、はげしくえだえだをもみあい、そして、頂上ちょうじょうから落下らっかするたきが、さながらかみなりのとどろくように、あたりへこだまするものすごい光景こうけい
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
達吉たつきちは、ぴかり、ゴロゴロ、ド、ドンという電光でんこう雷鳴らいめいのものすごい光景こうけいに、ちち戦死せんししたときのことを想像そうぞうして、ついおもったことをくちして、きいたのであります。すると、准尉じゅんい
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
かもめは、きたほう故郷こきょうかえろうとこころにきめました。そして、その名残なごりにこのまちなか光景こうけいをできるだけよくておこうとおもいました。ある太陽たいようかがやく、よくれた午前ごぜんのことでありました。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
こう、まごたちが説明せつめいすると、おばあさんは、だまっていていられました。そして、ふとあたまなかに、むかし雑誌ざっし口絵くちえた、軽気球けいききゅうがっている光景こうけいが、ありありとして、うつったのであります。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、難船なんせんしたときの模様もようや、くらかったよるのものすごい光景こうけいや、すくわれてからみなといて、りくがって、それはそれはいいつくされないうつくしい、不思議ふしぎ世界せかいてきたようなことをはなしました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)