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おちつ
ふりがな文庫
“
落着
(
おちつ
)” の例文
日が小豆島の
向
(
むこ
)
うに落ちたと思うと、あらぬ
方
(
かた
)
の空の獅子雲が
真赤
(
まっか
)
に日にやけているのを見る。天地が何となく沈んで
落着
(
おちつ
)
いて来る。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかし
段々
(
だんだん
)
と
落着
(
おちつ
)
くに
随
(
したが
)
って、さすがにミハイル、アウエリヤヌイチに
対
(
たい
)
しては
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で、
定
(
さだ
)
めし
恥入
(
はじい
)
っていることだろうと
思
(
おも
)
えば。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
全
(
まつた
)
く
法廷
(
ほふてい
)
は
上
(
うへ
)
を
下
(
した
)
への
大騷
(
おほさわ
)
ぎでした。
福鼠
(
ふくねずみ
)
を
逐
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
ひ、
皆
(
みん
)
なが
再
(
ふたゝ
)
び
落着
(
おちつ
)
いた
時
(
とき
)
迄
(
まで
)
に、
料理人
(
クツク
)
は
行方
(
ゆきがた
)
知
(
し
)
れずなりました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
と、そこでかれの
半信半疑
(
はんしんはんぎ
)
が、やおら、
腕
(
うで
)
ぐみとなって、まじりまじりと
落着
(
おちつ
)
かない目で、
小文治
(
こぶんじ
)
と龍太郎の顔色を読み
廻
(
まわ
)
して
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぐるツと
取卷
(
とりま
)
かれて
恥
(
はづか
)
しいので、アタフタし、
駈
(
か
)
け
出
(
だ
)
したい
位
(
くらゐ
)
急足
(
いそぎあし
)
で
踏出
(
ふみだ
)
すと、おもいもの
抱
(
だ
)
いた
上
(
うへ
)
に、
落着
(
おちつ
)
かないからなりふりを
失
(
うしな
)
つた。
迷子
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
貧
(
ひん
)
と心の惱みとに
鍛
(
きた
)
へぬかれた今(まだ
全
(
まつた
)
くはぬけ切らぬけれども)やうやくある
落着
(
おちつ
)
きが私の心に
芽
(
め
)
を出しかけました。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
綺麗
(
きれい
)
に
作
(
つく
)
つて
湯
(
ゆ
)
から
帰
(
かへ
)
ると、
妻
(
つま
)
は
不図
(
ふと
)
茶道具
(
ちやだうぐ
)
ともなかとを
私
(
わたし
)
の
傍
(
そば
)
へ
運
(
はこ
)
んで、
例
(
れい
)
の
嫻
(
しとや
)
かに、
落着
(
おちつ
)
いた
風
(
ふう
)
で、
茶
(
ちや
)
など
淹
(
い
)
れて、
四方八方
(
よもやま
)
の
話
(
はなし
)
を
始
(
はじ
)
める。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
「
怖
(
こわ
)
がるこたァねえから、
後
(
あと
)
ずさりをしねえで、
落着
(
おちつ
)
いていてくんねえ。おいらァ
何
(
なに
)
も、
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りに
会
(
あ
)
った
妹
(
いもうと
)
を、
取
(
と
)
って
食
(
く
)
おうたァいやァしねえ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
粗末
(
そまつ
)
な
布
(
きれ
)
の
下衣
(
したぎ
)
しか
着
(
き
)
てゐないで、
足
(
あし
)
には
何
(
なに
)
も
履
(
は
)
かず、
眼
(
め
)
は
落着
(
おちつ
)
いてゐて、
別
(
べつ
)
に
驚
(
おどろ
)
いた
風
(
ふう
)
も
無
(
な
)
く、こちらを
見上
(
みあ
)
げた。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
だが、結局、ミスター・Fというのは、中国人
仏天青
(
フォー・テンチン
)
の
略称
(
りゃくしょう
)
であろうと気がついたので、ようやく心は一時
落着
(
おちつ
)
いた。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
なんだか今夜は変なんだ。
些
(
ち
)
っとも
落着
(
おちつ
)
かない。後から絶えず追いかけられているような気持だ。前にもこんな気持を
海浜荘の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
淋しい、
焦々
(
いらいら
)
した日が三日、五日、十日とたち、世界は次第に夏らしくなりますが、あの
落着
(
おちつ
)
いた青磁色の乙女は、それきり影も見せてはくれません。
奇談クラブ〔戦後版〕:05 代作恋文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
与十の妻は犬に出遇った猫のような敵意と
落着
(
おちつ
)
きを
以
(
もっ
)
て彼れを見た。そして見つめたままで黙っていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
少し気が
落着
(
おちつ
)
いてくると、おそろしさと
不安
(
ふあん
)
とが、前の二
倍
(
ばい
)
になって自分の
胸
(
むね
)
におしよせてきた。
くまと車掌
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
嬢様と國との間
何
(
な
)
んとなく
落着
(
おちつ
)
かず、されば飯島様もこれを面倒な事に思いまして、
柳島辺
(
やなぎしまへん
)
に
或
(
ある
)
寮を買い、嬢様にお
米
(
よね
)
と申す女中を附けて、此の寮に別居させて置きましたが
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何ともいえぬ苦しみだ、私は
強
(
し
)
いて心を
落着
(
おちつ
)
けて、耳を
澄
(
すま
)
して考えてみると、時は既に
真夜半
(
まよなか
)
のことであるから、
四隣
(
あたり
)
はシーンとしているので、
益々
(
ますます
)
物凄い、私は
最早
(
もはや
)
苦しさと
女の膝
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
「しめたぞ!」と
大悦
(
おほよろこび
)
で、ぐツと氣を
落着
(
おちつ
)
け、眼を
瞑
(
つぶ
)
り、
片手
(
かたて
)
で
後頭部
(
こうとうぶ
)
を押へて息を
凝
(
こ
)
らして考へて見る………頭の中が何か泡立ツてゐるやうにフス/\
鳴
(
な
)
ツてゐるのが
微
(
かすか
)
に
顳顬
(
こめかみ
)
に響く。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
ロレ いや、ヹローナからは
追放
(
つゐはう
)
ぢゃが、
世界
(
せかい
)
は
廣
(
ひろ
)
い、まゝ、
落着
(
おちつ
)
いてござれ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
アンドレイ、エヒミチは
強
(
し
)
ひて
心
(
こゝろ
)
を
落着
(
おちつ
)
けて、
何
(
なん
)
の、
月
(
つき
)
も、
監獄
(
かんごく
)
も
其
(
そ
)
れが
奈何
(
どう
)
なのだ、
壯健
(
さうけん
)
な
者
(
もの
)
も
勳章
(
くんしやう
)
を
着
(
つ
)
けてゐるではないか。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「
鞄
(
かばん
)
は
汚
(
よご
)
れたのが
伊達
(
だて
)
なんですとさ。——だから
新
(
あたら
)
しいのを。
何
(
ど
)
うぞ
精々
(
せい/″\
)
傷
(
いた
)
めて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいな。」
最
(
も
)
う一つ
落着
(
おちつ
)
いたのは
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
姉
(
あね
)
は
小柄
(
こがら
)
の、
美
(
うつく
)
しい
愛
(
あい
)
らしい
体
(
からだ
)
と
顔
(
かほ
)
の
持主
(
もちぬし
)
であつた。
嫻
(
みやび
)
やかな
落着
(
おちつ
)
いた
態度
(
たいど
)
や
言語
(
げんご
)
が、
地方
(
ちはう
)
の
物持
(
ものもち
)
の
深窓
(
しんそう
)
に
人
(
ひと
)
となつた
処女
(
しよぢよ
)
らしい
感
(
かん
)
じを、
竹村
(
たけむら
)
に
与
(
あた
)
へた。
彼女の周囲
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
船長は不服そうに、「
此処
(
ここ
)
は船底だぞ、その鉄板のもう
一重
(
ひとえ
)
下は海だぞ」「そうでしょうか……」と
落着
(
おちつ
)
いた声で答えた時、伊藤青年は思わず
占
(
し
)
めた! と叫び
流血船西へ行く
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
冗談
(
じょうだん
)
じゃごわせん。そいつを
忘
(
わす
)
れちゃ、
申訳
(
もうしわけ
)
がありますめえ。——それそれ、
何
(
な
)
んでまた、
洗
(
あら
)
った
手
(
て
)
を
拭
(
ふ
)
きなさらねえ。おせんは
逃
(
に
)
げやしねえから、
落着
(
おちつ
)
いたり、
落着
(
おちつ
)
いたり
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
『
巧
(
うま
)
い
事
(
こと
)
云
(
い
)
つてら!』と
云
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
てゝ
鳩
(
はと
)
は
再
(
ふたゝ
)
び
巣
(
す
)
に
落着
(
おちつ
)
きました、
愛
(
あい
)
ちやんは
首
(
くび
)
が
枝
(
えだ
)
から
枝
(
えだ
)
に
絡
(
から
)
みさうなので、
出來
(
でき
)
るだけ
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
に
屈
(
かゞ
)
んでゐましたが、
歩
(
ある
)
く
時
(
とき
)
には
屡々
(
しば/\
)
足
(
あし
)
を
停
(
と
)
めて
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
と
其処
(
そこ
)
を出て暗くなって帰って来ましたが、木暮八郎の三階の八畳と六畳の座敷を借りて居る二人連れ、婦人の若い
方
(
かた
)
の女中が
癪
(
しゃく
)
が起って、お附の女中が
落着
(
おちつ
)
く様に押して
居
(
お
)
るが
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
わざと自動車に乗るのをさけて、あらかじめ日本橋のさるビルディングの七階に借りている、秘密の事務所に運び、そこへ
落着
(
おちつ
)
いた上、おもむろに
後図
(
こうと
)
の計をめぐらそうとしたのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:11 運命の釦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何方
(
どちち
)
かと謂へば、
落着
(
おちつ
)
ついた、
始終
(
しじう
)
柔
(
やはらか
)
な
波
(
なみ
)
の
漂
(
たゝよ
)
ツてゐる
内氣
(
うちき
)
らしい眼だ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
その声から
推
(
お
)
して
大分
(
だいぶ
)
落着
(
おちつ
)
いてきたようです。「では全員集まれッ」
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そう気がつくと、自分はかえって、一時
落着
(
おちつ
)
いたくらいであった。
くまと車掌
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
静のことばは
明晰
(
めいせき
)
であった。その
落着
(
おちつ
)
いた様を見すえて
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
アンドレイ、エヒミチは
強
(
し
)
いて
心
(
こころ
)
を
落着
(
おちつ
)
けて、
何
(
なん
)
の、
月
(
つき
)
も、
監獄
(
かんごく
)
もそれがどうなのだ、
壮健
(
そうけん
)
な
者
(
もの
)
も
勲章
(
くんしょう
)
を
着
(
つ
)
けているではないか。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
しまつた、
借
(
か
)
りものだ、と
冷
(
ひや
)
りとすると、ざつ、ざぶり、ばしやツ。
弱
(
よわ
)
つた。が、
落着
(
おちつ
)
いた。
緑蝶夫人
(
ろくてふふじん
)
の
貸
(
か
)
し
振
(
ぶり
)
を
思
(
おも
)
へ。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
もつと
落着
(
おちつ
)
いて防火に
努
(
つと
)
めることもできたらうし、また不断から用意して、適当な設備もできた筈ですからね。
フアイヤ・ガン
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
「おッとッとッと。そう
乗
(
のり
)
出
(
だ
)
しちゃいけない。
垣根
(
かきね
)
がやわだ。
落着
(
おちつ
)
いたり、
落着
(
おちつ
)
いたり」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
ふだんあんなに陽気で、罪のない
悪戯
(
いたずら
)
をしては家中の者を笑わせていた千代子が、恐ろしい出来事のためにすっかり
脅
(
おび
)
え、美しい
眸
(
ひとみ
)
は絶えず襲われているように
落着
(
おちつ
)
かなかった。
殺生谷の鬼火
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
えゝ命から次の大事なものでも
拠
(
よんどころ
)
ない、
斯
(
こ
)
ういう
切迫詰
(
せっぱつま
)
りになって、人の手に観音様が入ってしまうのは、親子三人
神仏
(
かみほとけ
)
にも見離されたと諦めて、お上げ申さなければ話が
落着
(
おちつ
)
かねえではないか
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
少し
落着
(
おちつ
)
いてからの話によると、北海道の生活にも飽きているところへ、札幌の会社は解散したので、とも角身一つで東京へやって来て、小杉卓二を頼りに、新しい仕事でも見付けたいというのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:03 鍵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
松川
彼処
(
かしこ
)
に
住
(
すま
)
ひてより、別に
変
(
かは
)
りしこともなく、
二月
(
ふたつき
)
余も
落着
(
おちつ
)
けるは、いと珍しきことなりと、
近隣
(
きんりん
)
の人は
噂
(
うはさ
)
せり。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
アンドレイ、エヒミチはやつと
一人
(
ひとり
)
になつて、
長椅子
(
ながいす
)
の
上
(
うへ
)
にのろ/\と
落着
(
おちつ
)
いて
横
(
よこ
)
になる。
室内
(
しつない
)
に
自分
(
じぶん
)
唯一人
(
たゞひとり
)
、と
意識
(
いしき
)
するのは
如何
(
いか
)
に
愉快
(
ゆくわい
)
で
有
(
あ
)
つたらう。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
余
(
あま
)
り
大
(
おほ
)
きかつた
文壇的名声
(
ぶんだんてきめいせい
)
に
囚
(
とら
)
はれてゐたことも
分明
(
はつきり
)
して
来
(
き
)
た。
勿論
(
もちろん
)
学窓
(
がくそう
)
などに
落着
(
おちつ
)
いてはゐられなかつた。
彼女の周囲
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
ゆき子は車へ乗ってもそわそわと
落着
(
おちつ
)
かぬ様子で、何度も腕時計を見たり、口の内で
独言
(
ひとりごと
)
を呟いたり、自分では気づかないらしいが額へじっとりと汗さえ滲ませていた。何か異常なことが起っている。
劇団「笑う妖魔」
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
飯「まア少し
落着
(
おちつ
)
けば風が
這入
(
はい
)
って随分凉しくなります」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
此處
(
こゝ
)
で
整然
(
きちん
)
として
腰
(
こし
)
を
掛
(
か
)
けて、
外套
(
ぐわいたう
)
の
袖
(
そで
)
を
合
(
あは
)
せて、
一
(
ひと
)
つ
下腹
(
したつぱら
)
で
落着
(
おちつ
)
いた
氣
(
き
)
が、だらしもなく
續
(
つゞ
)
けざまに
噎
(
む
)
せ
返
(
かへ
)
つた。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
アンドレイ、エヒミチはやっと
一人
(
ひとり
)
になって、
長椅子
(
ながいす
)
の
上
(
うえ
)
にのろのろと
落着
(
おちつ
)
いて
横
(
よこ
)
になる。
室内
(
しつない
)
に
自分
(
じぶん
)
ただ
一人
(
ひとり
)
、と
意識
(
いしき
)
するのは
如何
(
いか
)
に
愉快
(
ゆかい
)
であったろう。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
と、
犇
(
ひし
)
と
合
(
あ
)
はせた、
兩袖
(
りやうそで
)
堅
(
かた
)
く
緊
(
しま
)
つたが、
溢
(
こぼ
)
るゝ
蹴出
(
けだ
)
し
柔
(
やはら
)
かに、
褄
(
つま
)
が
一靡
(
ひとなび
)
き
落着
(
おちつ
)
いて、
胸
(
むね
)
を
反
(
そ
)
らして、
顏
(
かほ
)
を
引
(
ひ
)
き
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
貴方
(
あなた
)
は
何
(
なに
)
か
間違
(
まちが
)
つてお
出
(
いで
)
なのでせう、
酷
(
ひど
)
く
私
(
わたし
)
を
怒
(
おこ
)
つてゐなさるやうだが、まあ
落着
(
おちつ
)
いて、
靜
(
しづ
)
かに、
而
(
さう
)
して
何
(
なに
)
を
立腹
(
りつぷく
)
してゐなさるのか、
有仰
(
おつしや
)
つたら
可
(
い
)
いでせう。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
毛布
(
けつと
)
を
撥
(
は
)
ねてむつくり
起上
(
おきあが
)
つた——
下宿
(
げしゆく
)
を
燒
(
や
)
かれた
避難者
(
ひなんしや
)
の
濱野君
(
はまのくん
)
が、「
逃
(
に
)
げると
極
(
き
)
めたら
落着
(
おちつ
)
きませう。いま
火
(
ひ
)
の
樣子
(
やうす
)
を。」とがらりと
門口
(
かどぐち
)
の
雨戸
(
あまど
)
を
開
(
あ
)
けた。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
一寸
(
ちよつと
)
……お
話
(
はな
)
しが……ありまして……」と
落着
(
おちつ
)
いたのか、
息
(
いき
)
だはしいのか、
冬
(
ふゆ
)
の
夜
(
よ
)
ふけをなまぬるい。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ぢつとしておいで、あんばいがわるいのだから、
落着
(
おちつ
)
いて、ね、気をしづめるのだよ、
可
(
い
)
いかい。」
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
遙
(
はる
)
か
川下
(
かはしも
)
の
方
(
はう
)
へ
憎
(
にく
)
らしく
落着
(
おちつ
)
いた
風
(
ふう
)
でゆつたりしてふわりと
落
(
お
)
ちるト
忽
(
たちま
)
ち
矢
(
や
)
の
如
(
ごと
)
くに
流
(
なが
)
れ
出
(
だ
)
した。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“落着”の意味
《名詞》
落着(らくちゃく)
落ち着くこと。決着、完結すること。
判決、裁決が出ること。
(出典:Wiktionary)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
着
常用漢字
小3
部首:⽬
12画
“落着”で始まる語句
落着済
落着先
落着家
落着日