)” の例文
旧字:
「おかあさん、つきは、去年きょねんはるとちがって、あたりがあんなあとになったので、びっくりしたでしょうね。」と、少年しょうねんがいいました。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども、グレーテルはどんどんかけていきました。こうして、ばちあたりの魔法使まほうつかいは、むごたらしくんでしまったのです。
原口さんは無論ゐる。一番さきて、世話をいたり、愛嬌を振りいたり、仏蘭西式のひげつまんで見たり、万事いそがしさうである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とうとうおかまが上までけました。その時分じぶんには、山姥やまうばもとうにからだじゅうになって、やがてほねばかりになってしまいました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
忍剣にんけんが気のついたクロとは、そもなにものかわからないが、かれのすがたは、まもなく、変りはてた恵林寺えりんじあとへあらわれた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ねぎが四、五本にバターが少しあれば、けっこうなスープができるだろう。どらきなぞは下ろして、ねぎをなべでいためろ」
いままどの右手にえぞ富士ふじが見える。火山だ。頭がひらたい。いた枕木まくらぎでこさえた小さな家がある。熊笹くまざさしげっている。植民地しょくみんちだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
天守てんしゆしたへもあなとほつて、おしろ抜道ぬけみちぢや不思議ふしぎぬまでの、……わし祖父殿おんぢいどん手細工てざいくふねで、殿様とのさまめかけいたとつけ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またはじめに「藻汐もしおく」と置きしゆえ後に煙とも言いかねて「あまのしわざ」と主観的に置きたるところいよいよ俗にち申候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「あの連中だって、つけの理屈をならべるよりか、りんごを食ったり、歌をうたったりするほうが実はおもしろいんだよ。ふふふ。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
不束ふつつかむすめでございますが、うぞ今後こんごともよろしうおみちびきくださいますよう……。さぞなにかとお世話せわけることでございましょう……。』
坂上大嬢さかのうえのおおいらつめに贈ったのに、「夜のほどろ出でつつ来らく遍多数たびまねくなれば吾が胸く如し」(巻四・七五五)というがあり
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
水のかれた川は、細いながらも、太刀だちのように、日を反射して、絶えてはつづく葉柳はやなぎと家々との間に、かすかなせせらぎの音を立てている。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このうちには、おばあさんがいましたが、あんまり年をとっているので、パンきの手つだいをすることができません。
「なるほど、おにどもはって来たえものをこの囲炉裏いろりいて食うのだな。それじゃ一つ、このの上の天井てんじょうかくれて今夜の様子を見てやろう。」
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ヘヽーうでげせう、三しゆぐらゐにはまかりますまいか。坊「焼場やきば値切ねぎるものもないもんだ、きまつてるよ。金「ナニ本当ほんたうけないでもよろしいんで。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかしそいつが大違いで、腹からなり切れちまえばいいんだが、だから肝心な時に母婦の地金じがねが出て来るんで、なお不自然ないやな気がするんだ
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
菊枝は、うまやに投げ込む雑草を、いつもの倍も背負って帰って来た。重かった。荷縄になわは、肩にただれるような痛さで喰い込んだ。腰はひりひりと痛かった。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そして、磁力砲をうったこっちが、あべこべに真赤ながねをおしつけられたように、急に機体が熱くなって、ぶすぶすと燃えだすさわぎです。どうも変です
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
田や畑の其処そこ此処ここけ残りの黒い木のかぶが立って居るのを見ると、ひらけ行く北海道にまだ死に切れぬアイヌの悲哀かなしみが身にしみる様だ。下富良野しもふらので青い十勝岳とかちだけを仰ぐ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
りかかるはなしじゃねえ。どうせ人様ひとさまのことだとおもって、だまっていてりやしたが。——もし堺屋さかいやさんのおかみさん、つまらねえきもちは、かねえほうがようがすぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そもそも幕末の時に当りて上方かみがたの辺に出没しゅつぼつしたるいわゆる勤王有志家きんのうゆうしかの挙動を見れば、家をくものあり人をころすものあり、或は足利あしかが三代の木像もくぞうの首をりこれをきょうするなど
がけを下りて渓川の流に近づかんとしたれど、路あまりにけわしければ止みぬ。渓川の向いはすみく人の往来する山なりという。いま流を渡りて来たる人に問うに、水浅しといえり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そこに方丈ほうじょうの壇をむすび、何かの符を書いてそれをくと、たちまちに符の使い五、六人、いずれも身のけ一丈余にして、黄巾こうきんをいただき、金甲きんこうを着け、ほりのあるほこをたずさえ
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
それは何も一向いっこういいことではないはずなのだけれど、いうことを聞かぬいたずらもの腕白わんぱくどもに、老教師ろうきょうしはもうほとほと手をいているので、まるで探偵たんていみたいなかおつきをしながら
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
ワーフルという菓子かしき居たりしを先生見て、これは至極しごく面白おもしろし、予もこの器械きかい借用しゃくようして一ツやってたしとのことにつき、翌日これを老僕ろうぼくたせつかわしければ、先生おおいに喜び
鄙劣ひれつ千万な、計略をめぐらして母の病気とまでうそわせる、ソンナ奴があるものか、モウけだ、大議論をしてろうかとおもったが、イヤ/\左様そうでない、今アノ家老と喧嘩をした所が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
せっかく島根に漂い着いたが、おそろしげなじまで、草木のアヤもみえない。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
みんな女偊じょう氏の弟子での、ものの形を超えて不生不死ふしょうふしきょうに入ったれば、水にもれず火にもけず、寝て夢見ず、覚めてうれいなきものじゃ。この間も、四人で笑うて話したことがある。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
四四ふところのたまをうばはれ、挿頭かざしの花を四五嵐にさそはれしおもひ、泣くに涙なく、叫ぶに声なく、あまりに嘆かせたまふままに、火にき、土にはうむる事をもせで、四六かほに臉をもたせ
こぶしむねっていのるかとおもえば、すぐゆびあな穿ったりしている。これは猶太人ジウのモイセイカともので、二十ねんばかりまえ自分じぶん所有しょゆう帽子製造場ぼうしせいぞうばけたときに、発狂はっきょうしたのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それからしたはうへかけて、カリフォルニヤがい坂道さかみちを、断間たえまなく鋼索鉄道ケーブルカー往来わうらいするのがえる。地震ぢしんときけたのが彼処あすこ近頃ちかごろてかけた市庁しちやうあれと、甲板かんぱんうへ評定ひやうぢやうとり/″\すこぶやかましい。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
はじめ、足をかけたいたが下へしのったとき、左膳はギョッとしたのだったが、もうおそかった。板が割れると同時に、左膳のからだは直立の姿勢のまま、一直線に地の底へ落ちたのである。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ごてを当てて上へ黒いがした模様を附けてお客の前へ出します。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
けどにしては、治癒ちゆのあとが違うし、生れつきのあざでもない。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さらに気をまわせば、吉弥は僕のことについていい加減のうそを並べ、うすのろだとか二本棒だとか、もちやきだとかいう嬉しがらせを言って、青木の機嫌を取っているのではないかとも思われた。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
はやく、おきゃくがくればいいのになあ、と海蔵かいぞうさんはをほそめてあかるいみちほうていました。しかしおきゃくよりさきに、茶店ちゃみせのおかみさんが、きたてのほかほかの大餡巻おおあんまきをつくってあらわれました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
一つのお皿には刺身、一つのお皿にはざかな
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ぼくが 君のリボン いたからもらつたんだよ
ふるさとの胡桃くるみくるにほひす
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
えてにも
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「ただいま。叔母おばさんのいえからだいぶはなれていましたから、いきませんでした。三けんばかりけて、やっといましがたえました。」
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうすれば、グレーテルはなかでころされてしまいます。そこで、ばあさんはグレーテルをも、ぺろりと食べてしまうはらだったのです。
そうすると、火にわれてげてくるものはとります。をおそれてげてくものは火にてられていのちうしないます。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
段々だん/\むら遠退とほのいて、お天守てんしゆさびしくると、可怪あやし可恐おそろしこと間々まゝるで、あのふねものがいでくと、いま前様めえさまうたがはつせえたとほり……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大坂おおさかはまだ三ごうとも、城下じょうかというほどな町を形成けいせいしていないが、急ごしらえの仮小屋かりごやが、まるでけあとのようにできている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宿題しゅくだいもみんなましたし、かにることも木炭すみあそびも、もうみんなきていました。達二は、家の前のひのきによりかかって、考えました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かの女は絶望ぜつぼう表情ひょうじょうで、自分のうちのけ落ちるのを目の前に見ている人のように、ひょうのるのをながめていた。
ところで、農家のうかの女たちは、おまつりのしたくで、てんてこまいをしていました。ちょうどリスがつかまえられた日は、パンをくことになっていたのです。
三千代は手拭をねえさんかぶりにして、友禅の長繻絆をさらりと出して、たすきがけで荷物の世話をいてゐた。旅宿で世話をして呉れたと云ふ下女もてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)