きゅう)” の例文
やがて大きなつめでひっかくようなおとがするとおもうと、はじめくろくもおもわれていたものがきゅうおそろしいけもののかたちになって
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おかあさん、くるしい?」と、勇吉ゆうきちは、母親ははおやのまくらもとにつききりで、をもんでいましたが、なんとおもったか、きゅうがって
一粒の真珠 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大丈夫だいじょうぶ。大丈夫だ。〕おりるおりる。がりがりやって来るんだな。ただそのおしまいの一足だけがあぶないぞ。はだかの青い岩だしきゅうだ。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
全速力ぜんそくりょくで走ってる汽車をとめるのは、よういなことではありません。あまりきゅうにとめますと、脱線だっせんしてひっくりかえる心配しんぱいがあります。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そしておとこかえってるのをまどからると、きゅう悪魔あくまこころなかへはいってでもたように、おんなっている林檎りんごをひったくって
江戸の方では開国のはじめとは云いながら、幕府を始め諸藩大名の屋敷と云う者があって、西洋の新技術を求むることが広くきゅうである。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
けれど、その速度にも、楽器の音階のように、じょきゅうがあった。風が加われば急になり、地の雪を捲いて旋風つむじになると、破を起す。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よくくおまえはなしでは、千きちとやらいうにいさんは、まる三ねん行方ゆくえれずになっていたとか。——それがまた、どうしてきゅうに。——」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
たちまち、なにおそろしいことでもきゅうおもしたかのように、かれかしらかかえるなり、院長いんちょうほうへくるりとけて、寐台ねだいうえよこになった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたしは、その百姓のたがやしているのがきゅう山畑やまはたで、馬がすきをひいて歩くのにはつらい場所だということを知っていました。
ところで、この四にんの、大きい人たち、つよい人たち、元気げんきひとたちは、きゅうちどまります。地面じめんに一ぴきの生きものがんでいるのを見つけたのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
形勢けいせいきゅうなるは、幕末の時にしてらに急なるその内乱ないらん危急ききゅうの場合に際し、外国人の挙動きょどうは如何というに、はなは平気へいきにして干渉かんしょうなどの様子ようすなきのみならず
たまたまうしたふたつのちから合致がっちしたればこそ、あのような災難さいなんきゅうっていたのじゃ。当時とうじ橘姫たちばなひめにはもとよりそうしたくわしい事情じじょうわかろうはずもない。
するときゅう生徒監せいとかんはシューラにやさしくなって、あたまでたり、なぐさめたり、ふくを着るのを手伝ったりした。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
こうおもったのです。そこで、子家鴨こあひるきゅう水面すいめんり、うつくしい白鳥はくちょうほうに、およいできました。
博士が透明人間とうめいにんげんに言って、ドアをしめようとすると、きゅうにナイト・ガウンがすーっとちかづいてきて
彼らは土地より取るにきゅうにしてこれにむくゆるにかんでありましたゆえに、地は時を追うてますます瘠せ衰え、ついに四十年前の憐むべき状態ありさまに立ちいたったのであります。
「この曲は五常楽じゃが、私のためには、後生楽ごしょうらくじゃ、どれ今度は私が、往生のきゅうを弾こうか」
はちみずがあつただけでは、まん一の場合ばあいひとあやしまれるとがついて、きゅう金魚きんぎょれることにしたが、島本医院しまもといいんからは、まえからして不思議ふしぎおもい、老人ろうじん挙動きょどうながめていたものとかんがえられる。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
おまけに左膳があごを預けている本所の旗本鈴川源十郎があんまり頼みにならないために諸事意のごとく運ばず、乾雲は依然として左膳の手にあるものの、いまだに二剣ところを別して風雲ふううんきゅうを告げ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それをどうしよう、七兵衛は本当に焦眉しょうびきゅうの思いをしました。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ことわるのもめんどうとおもって、ににぎっていた財布さいふを、きゅうにむしろのしたかくして、をつぶってねむったふりをしていたのであります。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから三月みつきほどたつと、おじいさんのおかみさんがきゅうにおなかが大きくなりました。そしてもなく男のあかんぼがまれました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
きゅうに声がどこか別の世界に行ったらしく聞こえなくなってしまいました。そしていつか十力じゅうりき金剛石こんごうせきおかいっぱいに下っておりました。
「ふふふふ、きん、なんできゅうおしのようにだまんじゃったんだ。はなしてかせねえな。どうせおめえのはらいたわけでもあるめえしよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そして、なお一言、しかるに何ぞ、猿公えんこう大欲たいよくきゅうなるや。欲望の急なるところ、かならず小人の野望の乗ずるところたらん。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、きゅうひと院長いんちょうだとわかったので、かれ全身ぜんしんいかりふるわして、寐床ねどこから飛上とびあがり、真赤まっかになって、激怒げきどして、病室びょうしつ真中まんなかはし突立つったった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おどろいたことには、こまかいことまで、とてもはっきりと、かんできたのです。わたしは、きゅうにはっとして、いた寝床ねどこの上に起きなおりました。
「まア、この罰当ばちあたりが!」と魔女まじょきゅうたかこえてた。「なんだって? わたしはおまえ世間せけんから引離ひきはなしていたつもりだったのに、おまえわたしだましたんだね!」
が、その瞬間しゅんかんわたくしきゅうどまってしまいました。それはいままではっきりとうつっていた良人おっと姿すがたが、きゅうにスーッとえかかったのにおどかされたからでございます。
見ていた子供たちは、はじめびっくりして、ぼんやりして、それからきゅうに手をたたいてほめました。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
これをくと、いままでぷりぷり腹をたてていたおかみさんが、きゅうにねこなで声で
また、ばたんと機械きかいがまわって、ピリッピリッとると、ゴウッとはしってきたくるまきゅうまって、まっていたくるまはしすのです。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして為朝ためとも御機嫌ごきげんをとるつもりで、きゅう新院しんいんねがって為朝ためとも蔵人くらんどというおもやくにとりてようといいました。すると為朝ためともはあざわらって
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
するとあたりの調子ちょうしがなんだかきゅうへんなぐあいになりました。雨があられにわってパラパラパラパラやってきたのです。
春信はるのぶは、こいからはなすと、きゅうおもいだしたように、縁先えんさき万年青おもと掃除そうじしている、少年しょうねん門弟もんてい藤吉とうきちんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
どうしてこんなところに、やってきたのだろう。きっと、どこかほかの町から、その子をつれてきたのだが、きゅうにかげんがわるくなったにちがいない。
なんだと畜生ちくしょう!』と、このときイワン、デミトリチはきゅうにむッくりと起上おきあがる。『なん彼奴きゃつさんとほうがある、我々われわれをここに閉込とじこめてわけい。 ...
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
マリちゃんはそのほね杜松ねず根元ねもとくさなかくと、きゅうむねかるくなって、もうなみだなくなりました。
きゅう尻尾しっぽいたようすで、あとへもどると、とつぜんけ足になってどこかへ姿すがたをかくしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかにもとおむかしのこと、ところひとも、きゅうにはむねうかびませぬ。——わたくしうまれたところは安芸あき国府こくふちち安藝淵眞佐臣あきぶちまさをみ……代々だいだいこのくにつかさうけたまわってりました。
透明人間とうめいにんげんは、その男のことを思いだしたのか、きゅうにいらいらした口ぶりになって
これらの粘土細工ねんどざいくは、おどろいたかおつきをして、きゅうに、その仕事場しごとばへはいってきた派手はで着物きものたお人形にんぎょうつめているようすでした。
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
召使めしつかいの女官じょかんたちはおおさわぎをして、あかさんの皇子おうじいて御産屋おうぶやへおれしますと、御殿ごてんの中はきゅう金色こんじきひかりでかっとあかるくなりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みんな、おしあいへしあいのありさまだ。だが、何か食べたいなあ。ほんの切れっぱしでもいいんだがなあ。おまけにゆびさきまでが、きゅうにいたくなってきた。
達二たつじは思い切って、そのまん中のをすすみました。けれどもそれも、時々れたり、牛の歩かないようなきゅうところ横様よこざまぎたりするのでした。それでも達二は
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
話しているうちに神主かんぬし長谷川右近はせがわうこんの顔が、発作的ほっさてきな病気でもおこしたように、ワナワナとくちびるをふるわせて、まったく土気色つちけいろになってしまった。——ときゅうをたって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをると、継母ままははきゅうおそろしくなって、「どうしたら、のがれられるだろう?」とおもいました。
しかし、良薬りょうやくをもらって、そのかんがえがわりました。じいさんは、にこにことして、きゅう仕事しごとをするのにいができたのでした。
手風琴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとむらいがすんでしまうと、きゅうにうちの中がひっそりして、じっとしていると、さびしさがこみげてくるようでした。むすめはたまらなくなって
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)