たみ)” の例文
これからはいよ/\おたみどの大役たいやくなり、前門ぜんもんとら後門こうもんおほかみみぎにもひだりにもこわらしきやつおほをか、あたら美玉びぎよくきずをつけたまふは
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蛮地では人煙が稀薄であり、聚落しゅうらくの上に煙の立つのはたみかまどの賑わえる表徴である。現代都市の繁栄は空気の汚濁の程度で測られる。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
其の時院のけしきかはらせ給ひ、汝聞け、帝位は人のきはみなり。人道にんだうかみより乱すときは、天のめいに応じ、たみのぞみしたがうて是をつ。
又根気のあらん限り著書飜訳ほんやくの事をつとめて、万が一にもこのたみを文明に導くの僥倖ぎょうこうもあらんかと、便り少なくも独り身構えした事である。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
況や、たみのほねをくだける白米しらよね、人の血をしぼれるごとくなるふるさけを、ほとけ法華經ほけきやうにまいらせ給へる女人によにんの、成佛得道疑べしや。
アメリカ人は金のためにはだいぶ侵害されたるたみであるということも知っております、けれどもアメリカ人のなかに金持ちがありまして
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
隣宿妻籠つまごの本陣、青山寿平次じゅへいじの妹、おたみという娘が半蔵の未来の妻に選ばれた。このせがれの結婚には、吉左衛門も多くの望みをかけていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
哀公問いて曰く、何為いかんせば則ちたみ服せん。孔子こたえて曰く、なおきを挙げて、これをまがれる(人の上)にけば、則ち民服せん。(為政いせい、一九)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「だまれッ、番士であろうと秀吉ひでよしじしんであろうと、たみをしいたげ、神をけがするなど、天、人ともにゆるさぬところじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女皇じょおうこころは、いつしか、王位おういいもうとゆずろうときめていました。けれども、このまちたみはどうおもうかとづかわれました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
賽児さいじ蒲台府ほだいふたみ林三りんさんの妻、わかきより仏を好み経をしょうせるのみ、別に異ありしにあらず。林三死してこれを郊外にほうむる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
むかし小学校へ行く時分、浅井あさいたみさんと云う子が同級生にあったが、この浅井のおやじがやはり、こんな色つやだった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中の姉のおたみ——(これは仲之町を圧して売れた、)——小股こまたの切れた、色白なのが居て、二人で、囃子はやしを揃えて
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
休庵は信階の同出どうしゆつの姉井出氏を娶つたが、井出氏は明和七年七月三日に歿したので、水越氏たみれて継室とした。休庵は後に蘭軒の外舅しうとになるのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おせい様とは大の仲よしの藁店わらだなの瀬戸物問屋吉田屋の内儀おたみだ、いつも来て、じぶんのうちのように勝手を知っている家だ。案内も待たずに、奥へ通った。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
して藤助の處へゆくと番頭は何をして居ると尋ねらるゝに小僧こぞうアノ藤助さんのはうゆくと久兵衞さんはすぐに二かいあがりおたみさんと云ふ美麗うつくしいねえさんと何だかはなしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
殊に甚七と市五郎がかような不覚をはたらいたのを、唯そのままに致しておいては、他国ばかりでなく、御領内のたみ百姓にまであざけり笑わるる道理ではないか。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「とにかくうらやましかったな。罪なことをするやつだよ。」とテーブルの周囲に集っているおたみ、春江、定子さだこなど三、四人の女給へわざとらしく冗談に事寄せて
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こう殿様とのさまはおっしゃって、お百姓ひゃくしょうにたくさんの御褒美ごほうびくださいました。そして年寄としよりゆるすおふれをおしになりました。国中くにじゅうたみかえったようによろこびました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それから三千ねんぜん往古わうこかんがへながら、しんくと、不平ふへい煩悶はんもん何等なんら小感情せうかんじやううかぶなく、われ太古たいこたみなるなからんやとうたがはれるほどに、やすらけきゆめるのである。
たみちゃん、恐くはないから、我慢をしているのだよ」と兄は私の肩を抱きしめて云いました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
山村水廓さんそんすいかくたみ、河より海より小舟かべて城下に用を便ずるが佐伯近在の習慣ならいなれば番匠川ばんじょうがわ河岸かしにはいつも渡船おろしつどいて乗るもの下りるもの、浦人は歌い山人はののしり
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しも太古たいこたみ地震ぢしんおそれて、石造せきざう家屋かをくつくらなかつたと解釋かいしやくするならば、そのまへに、なにゆゑにかれ火災くわさいおそれて石造せきざういへつくらなかつたかを説明せつめいせねばならぬ。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
封土ほうどの分割は、自然に地方自治の傾向を生じ、世襲の制は、果木をりてまきとなし、牝鵞ひんがを殺して肉をむの現金政治を去りて、憮恤ぶじゅつ恵養、たみ富みて君主富むの政治となる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
one ewho is at home in every plac(如何いかなる場所ばしよをも我家わがいへとするひと)、a citizen of the world(世界せかいたみ)。
いわんや金蓮の怪たんなる、明器めいきを仮りて以て矯誣きょうぶし、世をまどわしたみい、条にたがい法を犯す。きつね綏綏すいすいとしてとうたることあり。うずら奔奔ほんぽんとして良なし、悪貫あくかんすでつ。罪名ゆるさず。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
は曾てコロボックルは人肉じんにくくらひしならんとの事を云ひしが、此風習このふうしふは必しも粗暴猛惡そぼうまうあくたみの間にのみ行はるるには非ず、且つ人肉は决して彼等かれら平常へいじよう食料しよくれうには非ざりし事
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
天下のたみ寒き者多し独り温煖あたたかならんやとのたまいし。そうの太祖が大度たいどを慕い。あまねく慈善を施せしも。始め蛍の資本ひだねより。炭もやくべき大竈おおかまどと成りし始末の満尾まんび迄。御覧をねがうというよしの。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たみ信なくんば立たず、と言い、恵心僧都は、大和の神巫みこに、慈悲と正直と、止むを得ずんばいずれを棄つべきと問いしに、万止むを得ずんば慈悲を捨てよ、おのれ一人慈悲ならずとも
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
たみらしむべし、知らしむべからず、貧しい者には攘夷もなにも馬の耳に念仏であろうぞ。小判、小粒、鳥目ちょうもく、いかような世になろうと懐中が豊であらばつねにあの者共は楽しいのじゃ。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
たみは客のさかずきに酌をしながら、ふと考えるような眼つきになった。
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
スフィンクスはおほきかりけりふるたみこれをつくりて心なごみきや
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
たのしみは、かみのみくにたみとして、かみのをしへをふかくおもふとき
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
盟約不賛の諸国をば、そのたみ等をば攻め立てた。
「道州のたみッていうのを歌いましょう」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長い、幅の広いたみの群でした。
たみかうべに、柔らかう
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
たみのかまど
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
遠方ゑんほう左遷させんことまり今日けふ御風聽ごふいてうながらの御告別いとまごひなりとわけもなくいへばおたみあきれて、御串談ごじようだんをおつしやりますな
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
罪なきたみきずつけるな。——こうう者は斬るな。——和田呂宋兵衛わだるそんべえはかならず手捕てどりにせられよ。以上、おん大将ならびに軍師ぐんし厳命げんめいでござるぞ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大殿おほいどのの奧深くにばかりゐる、あの源氏といふ貴人あてびとは、どんなにか、つくろはぬたみの聲に心をひかれたことだらう。
夏の夜 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
さめ仁義じんぎをもつてたみ百姓ひやくしやうをしたがへ道におちたるをひろはず戸さゝぬ御代とせんとなりまことにしゆんといへども聖人せいじんの御代には庭上ていじやうつゞみを出しおき舜帝しゆんていみつから其罪そのつみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
備中びつちう一時あるとき越前ゑちぜん領土巡検りやうどじゆんけんやくを、主人しゆじん義景よしかげよりうけたまはり、供方ともかた二十にんばかりをれて、領分りやうぶんたみ状態じやうたいさつせんため、だゝる越前ゑちぜん大川おほかは足羽川あすはがはのほとりにかゝる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
窟の内に彫ってあった文字もんじまさしく蒙古の字で、自分等はげんたみであるが捕われてこの国にきたった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いはんやまたいへつぶすほどの大震たいしんは、一しやうに一あるかなしである。太古たいこたみなん地震ぢしんおそれることがあらう。またなんいへ耐震的たいしんてきにするなどといふかんがへがこりやう。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
子曰夫孝天之経也しのたまわくそれこうはてんのけいなり地之義也ちのぎなり民之行也たみのこうなり。——このけいは、サダマリというのだ。そして、は、ここでは道理どうりという意味いみであって、たみすなわひとこうはこれをツトメというのだ。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
東京でそんな事をすれば、すぐ電車に引き殺される。電車が殺さなければ巡査が追い立てる。都会は太平のたみ乞食こじきと間違えて、掏摸すりの親分たる探偵たんていに高い月俸を払う所である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たみ作業なりはひをたのしむあまりに、春は花のもとやすらひ、秋は錦の林をたづね、しらぬ火の筑紫路つくしぢもしらではとかぢまくらする人の、富士筑波の嶺々みねみねを心にしむるぞそぞろなるかな。
文徳実録もんとくじつろくに見える席田郡むしろだごおり妖巫ようふの、その霊転行てんこうして心をくらい、一種滋蔓じまんして、たみ毒害を被る、というのも噉心の二字が吒祇尼法の如く思えるところから考えると、なかなか古いもので
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あがんなさい、いからまアお上んなさい、ずうっと二階へ、梯子はしごが危のうがすよ、おいおたみ、粂どんに上げるんだからい茶を入れなよ、なに、何か茶うけがあるだろう、羊羹ようかんがあった筈だ
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)