ぼく)” の例文
居室へやかへつてると、ちやんと整頓かたづいる。とき書物しよもつやら反古ほごやら亂雜らんざつきはまつてたのが、もの各々おの/\ところしづかにぼくまつる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「うん。ぼくもさう思ふね。」も一人も同意しました。私の係りのアーティストがもちろんといふやうに一寸ちょっと笑って、私に申しました。
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
それだつて、ピストルなんかでおどかすのは、へたくそのしんまいだ。ぼくは、世界中で一番上手だといふ泥坊を知つてるよ。その話を
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
ぼくたちだって、そのかわり、くりや、どんぐりを、ひろうことができないのだから、おんなじこった。」と、三郎さぶろうさんはおもいました。
おかめどんぐり (新字新仮名) / 小川未明(著)
だツて紳士程しんしほど金満家きんまんかにもせよ、じつ弁天べんてん男子だんし見立みたてたいのさ。とつてると背後うしろふすまけて。浅「ぼく弁天べんてんです、ぼく弁天べんてんさ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ぢやアぼくは帰るよ。もう………。」とふばかりで長吉ちやうきち矢張やは立止たちどまつてゐる。そのそでをおいとは軽くつかまへてたちまこびるやうに寄添よりそ
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ぼくとではない」と、ベロヴゾーロフは鸚鵡返おうむがえしに——「どうぞ御随意ごずいいに。まあいいです。とにかく馬は、手に入れて差上げますよ」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ぼく皇甫こうほせいの者で、先祖からせんにいたのですが、今度家が野火に焼けたものですから、ちょっとの間此所を借りて住んでいるのです
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ぼくはそのかおながめた時、おもわず「ずいぶんやせましたね」といった。この言葉ことばはもちろん滝田くん不快ふかいあたえたのにちがいなかった。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「だからぼく、さういつたんだ、いゝえ、あの、先生せんせい、さうではないの。ひとも、ねこも、いぬも、それからくまみんなおんなじ動物けだものだつて。」
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぼく、このあそびをおぼえてから足掛あしかけ五ねんになるが、食事しよくじ時間じかんだけはべつとしてたゝかひつづけたレコオドはやく三十時間じかんといふのが最長さいちやうだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
云うならぼくだけに話せ、随分ずいぶん妙な人も居るからなと忠告がましい事を云った。四つ角で分れたからくわしい事は聞くひまがなかった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『それはわかつてる、大方おほかたかはづむしぐらゐのものだらう』とつて家鴨あひるは『しかし、ぼくくのは大僧正だいそうじよううしたとふのだ?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ぼくは、きょうから日記をつける。このごろの自分の一日一日が、なんだか、とても重大なもののような気がして来たからである。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
成程なるほどりつぱな本屋さんだと思つて「ぼくは医科大学の先生です。本を買ひます。今、お金を持つてゐませんから、うちまでついて来て下さい」
兎さんの本屋とリスの先生 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
夜行は必ず提灯ちょうちんたずさえ、はなはだしきは月夜にもこれをたずさうる者あり。なお古風なるは、婦女子ふじょしの夜行に重大なる箱提灯はこちょうちんぼくに持たする者もあり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
じいさんは子供こどものようによろこんで、ながかおをいっそうながくして、あは、あは、とわらった。ぼくたちもいっしょにわらしてしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
玄関にづれば、うばのいくはくつを直し、ぼく茂平もへい停車場ステーションまで送るとて手かばんを左手ゆんでに、月はあれど提燈ちょうちんともして待ちたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
とんことさ。』と、ミハイル、アウエリヤヌヰチは聽入きゝいれぬ。『ワルシヤワこそきみせにやならん、ぼくが五ねん幸福かうふく生涯しやうがいおくつたところだ。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「不思議だね、ぼくはそんなものを、君にあげた覚えはありませんよ。第一僕と君とは、今はじめて会つたのではないか。」
硯箱と時計 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
オーケストラが日本一、そうして、小生しょうせいの私のはいぼくが、エヘン、日本一のいい男の一寸法師、チョンチョンチョン。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
人類學會じんるゐがくくわい會員くわいゐんとして、モールスのお墨附すみつき? をつてるのはぼくだけだらうとかんがへて、これを水谷氏みづたにしはなすと、水谷氏みづたにしへんかほをして。
何處どこへ行つていゝか、ぼくにだつて分りやしないぢやないか。』と言ひ棄てゝ、小池は小川に沿ふた道をズン/\歩いた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ごめんどうですがね、あす定期検閲な所が今度は室内の整頓せいとんなんです。ところがぼく整頓風呂敷せいとんぶろしき洗濯せんたくしておくのをすっかり忘れてしまってね。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
だつてぼくよわいもの。よわくてもいよ。万燈まんどう振廻ふりまわせないよ。振廻ふりまわさなくてもいよ。ぼく這入はいるとけるがいかへ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
矢張やはぼく友人いうじんだが、——今度こんどをとこだが——或奴あるやつからすこるべきかねがあるのに、どうしてもよこさない。いろ/\掛合かけあつてたがらちがあかない。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
そうすりゃあいつは、ぼくがこんなにみっともないくせして自分達じぶんたちそばるなんて失敬しっけいだってぼくころすにちがいない。だけど、そのほうがいいんだ。
すなはその(二二)ぼくくるま(二三)左駙馬さふば左驂ささんとをり、もつて三ぐんとなふ。使者ししやかへはうぜしめ、しかのちく。
ぼくどもは枯枝かれえだをひろひ石をあつめてかりかまどをなし、もたせたる食物を調てうぜんとし、あるひは水をたづねて茶をれば、上戸は酒のかんをいそぐもをかし。
きみ遺族いぞく小穴君をあなくんなどがそれをもとめるけれど、きみほんかざれるやうなことがぼくけるものか。でもぼくはこのほんのためにたつたひとつだけは手柄てがらをしたよ。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
「道江からこんな手紙が来たが、ぼくには返事のしようがない。すべては君の責任において解決してもらいたい。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
他の客たちだって?……ぼくはよく知らない。ガマーシュがいた。丸っこい男で、このうえもなく純真なやつだ。評論の筆者のクロドミールもいた。面白い奴だ。
『ラランよ、今度こんどなにをたべてるのか。すこしでいいからけてくれよ。はらつてぼくはもうまはりそうだ』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
それもどうものぞみはないらしいですがね、それよりもかねことですよ。先刻さつきぼく此處ここはひらうとすると、れいのあの牧師ぼくしあがりの會計くわいけい老爺おやぢめるのです。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「さうだよ。穴打をしたんだ。然し、君はなんだつて、ぼくのあとをつけて来たんだい。また僕の功名を横取りしようつていふのかい。だが、今度はだめだよ」
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
それだけで十一年の間たまのやうに私の思つて来た子は無名の富豪のぼくに罵られたのです。はづかしめられたのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
………ぼくハ今年カラ、今日きょうマデ日記ニ記スコトヲ躊躇ちゅうちょシテイタヨウナ事柄ヲモアエテ書キ留メルヿニシタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さてその俊秀しゆんしうなる当代たうだい小説家せうせつかが普通日用にちようの語をさへ知らぬ事は、ヒイキたるぼく笑止せうしとするよりも、残念とする所だが今ではこれが新聞記者にも及んだらしい。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
京都きょうとの画工某のいえは、清水きよみずから高台寺こうだいじく間だが、この家の召仕めしつかいぼく不埒ふらちを働き、主人の妻と幼児とを絞殺こうさつし、火を放ってその家をやいた事があるそうだ
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
フランスおよびフランス人をよく知るぼくには——もちろんフランス人にも日本人として僕が同感しねる性情も多分たぶんにありますが——それが実に明白に理解されます。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ところこまつたことにア身躰からだわるく、肺病はいびようてゐるからぼくほとんど當惑とうわくするぼくだつて心配しんぱいでならんからその心配しんぱいわすれやうとおもつて、ついむ、めばむほど心配しんぱいする。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ぼくはとてもロマンチストなんだからね、だが、君のどんなところに僕はかされたンだろう……」
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ぼくの知っているのは温和おとなしくって、口が重くって、ほっぺたがいつもほんのり赤い倉なあこだがね」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうは言いながら、かれは行くことにして、犬をれて行った。わたしもかれらのあとにつづいた。そのとき一人のぼく(下男)が出て来て、ちょうちんと毛布もうふを持って来た。
この鏡なんか、ずいぶん古くからぼくの家に伝わっている品で、何度となくみがきをかけている。
鏡地獄 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
母はいろいろなおはなしをして、ぼくたのしませてくれたが、自分じぶんではなんにも考えせないと思っていたものだから、僕の持っていた絵本えほん土台どだいにしておはなしをしてくれたものだ。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
山田やまだます/\親密しんみつになるにけて、遠方ゑんぱうから通ふのは不都合ふつがふであるから、ぼくうち寄宿きしゆくしては奈何どうです、と山田やまだつてくれるから、ねがうても無きさいわひと、すぐきふをつて、郷関きやうくわんを出た
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
久さんのおかみは亭主の久さんに沢庵たくわんで早飯食わして、ぼくかなんぞの様に仕事に追い立て、あとでゆる/\鰹節かつぶしかいてうましるをこさえて、九時頃に起き出て来る親分に吸わせた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ぼくもう火星の夢はみません こんどは機械きかいをのぞいてほんとうのことを沢山たくさん知るんです
うだね。ぼくは何んだか胸苦むなぐるしくなツてたよ。」と儚ないやうなかほをしていふ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)