二日ふつか)” の例文
二日ふつか眞夜中まよなか——せめて、たゞくるばかりをと、一時ひととき千秋せんしうおもひつ——三日みつか午前三時ごぜんさんじなかばならんとするときであつた。……
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて、一枚の小切手が約束の三十日より二日ふつかも早く私の手もとへ届いた。私はそれを適当に始末してしまうまでは安心しなかった。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
羅馬ロオマ七日なぬか、ナポリとポンペイに二日ふつかと云ふ駆歩かけあしの旅をして伊太利イタリイから帰つて見ると、予が巴里パリイとゞまる時日は残りすくなくなつて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
疑問の帯は辻番所にひとまず保管されることになって、そのまま二日ふつかばかり経つと、ここにまた思いも寄らない事実が発見された。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのばん太郎たろう母親ははおやかって、二日ふつかおな時刻じこくに、きんをまわしてはしっている少年しょうねんのことをかたりました。母親ははおやしんじませんでした。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いや、そういうわけなら、すこしでもはやれておいでなさい。ここから美作国みまさかのくにまで行くのでは、たっぷり二日ふつかみちのりだから。」
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一日いちにちでも二日ふつかでも女中の居なくなつて下等な労働をさせられてはならないと思ふ心を離さなかつたからであるなどとも思ふのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
催促はしないけれども、どうかしてくれればいいがと思って、日を過ごすうちに晦日みそか近くなった。もう一日二日ふつかしか余っていない。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれ前年ぜんねんさむさがきふおそうたときたねわづか二日ふつか相違さうゐおくれたむぎ意外いぐわい收穫しうくわく減少げんせうしたにが經驗けいけんわすることが出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
またさうした博物館はくぶつかんをこしらへるには非常ひじようおほきなものる、それをまはるだけでも二日ふつか三日みつかもかゝり、かへって不便ふべんになります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ちょうど、甲府こうふ城下じょうかへはいってから、二日ふつか三日目みっかめひるである。宮内は、馬場はずれの飯屋めしやなわすだれを分けてはいった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
搖上ゆりあ搖下ゆりおろ此方こなたたゞよひ彼方へゆすれ正月四日のあさこくより翌五日のさるこくまで風は少しもやま吹通ふきとほしければ二十一人の者共は食事しよくじもせす二日ふつか二夜ふたよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もうお盆はあと二日ふつかののちに迫っていたので、おりからちょうど非番だったのをさいわい、のこぎり、かんな、のみ、かなづちなぞ大工の七つ道具を
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
うそさぶしとひしも二日ふつか三日みつか朝來あさよりもよほす薄墨色うすずみいろ空模樣そらもやう頭痛づつうもちの天氣豫報てんきよはう相違さうゐなく西北にしきたかぜゆふぐれかけて鵞毛がもう柳絮りうじよかはやちら/\とでぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
荒浪あらなみたか印度洋インドやう進航すゝみいつてからも、一日いちにち二日ふつか三日みつか四日よつか、とれ、けて、五日目いつかめまでは何事なにごともなく※去すぎさつたが、その六日目むいかめよるとはなつた。
二日ふつかめに、お妃は、つかいのものに、こんどはきんじょを、それからそれとあるかせて、いったい世間せけんでは、どんな名前をつけているものか聞かせました。
火はとうとうよく二日ふつか一ぱいもえつづき、ところによっては三日にとび火で焼けはじめた部分もあります。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ついたちと二日ふつかの、あの地獄の狂乱が、いまでは夢のように思われる。二日の朝、未明に起きて、トランクに身のまわりのものをつめ、こっそり家をけ出した。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
喧嘩事件で留めおきをくってから三日みっか目だ。堀口生は二日ふつかつづけて休んで今日きょうまた顔を出したのである。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
二日ふつかの間アラジンは泣きくらしました。そして、どうしても地の下で死んでしまわなきゃならないのだと思いました。そして、両方の手をしっかりとにぎりあわせました。
はれ、無慚むざんな! こゝに若殿わかとのころされてござる、のみならず、二日ふつかはふむられてござったヂュリエットどのが、ついいまがたなっしゃれたやうにながして、ぬくいまゝで。
ついに車の歯代はだいたまって車も挽けず、自分は姉と両人で、二日ふつかの間はかゆばかり食べて母を養い、孝行をつくし介抱いたして居りましたが、う世間へ無心にく所もありませんし
東京湾を出抜けると、黒潮に乗って、金華山きんかざん沖あたりからは航路を東北に向けて、まっしぐらに緯度をのぼって行くので、気温は二日ふつか目あたりから目立って涼しくなって行った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
今日けふ御降おさがりである。もつと歳事記さいじきしらべて見たら、二日ふつかは御降りと云はぬかも知れぬ。が蓬莱ほうらいを飾つた二階にゐれば、やはり心もちは御降りである。下では赤ん坊が泣き続けてゐる。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こうして二日ふつかばかりこの沢地たくちくらしていますと、そこに二がんがやってました。
千早振ちはやふ神無月かみなづきももはや跡二日ふつか余波なごりとなッた二十八日の午後三時頃に、神田見附かんだみつけの内より、塗渡とわたあり、散る蜘蛛くもの子とうようよぞよぞよ沸出わきいでて来るのは、いずれもおとがいを気にしたまう方々。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
また兵站へいたんを考えれば、二日ふつか以後の食糧は、どこに求むべきか当てもつかず、冬が近づくが、兵士にくつのなき者が数千人、この秋風をしのぐに毛布なき者が数万人である。しかしいくさ成敗せいはいは天にる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あすこむと告げたる姉をかどの戸にまちて二日ふつかの日も暮れにけり
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
なつかしき七月二日ふつかしみじみとメスのわがに触れしその夏
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
二日ふつか前に山の見しが
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
キヤツとく、と五六しやく眞黒まつくろをどあがつて、障子しやうじ小間こまからドンとた、もつとうたくはへたまゝで、ののち二日ふつかばかりかげせぬ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二日ふつかめで、はやこうしてとどく。とおいといっても便利べんりなかじゃ。」と、母親ははおやは、まだ汽車きしゃのなかったときのことを、かんがえていました。
母の心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小路こうじ泥濘ぬかるみは雨上りと違って一日いちんち二日ふつかでは容易に乾かなかった。外から靴をよごして帰って来る宗助そうすけが、御米およねの顔を見るたびに
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
狂言は二日ふつかがわりで、はじめの二日は盆前のために景気もあまり思わしくなかったが、二の替りからは盆やすみで木戸止めという大入りを占めた。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
早速さつそく停車場ステエシヨンから遠くない「伊太利亜イタリアホテル」へはひつて行つた。ベデカアで読んで置いた中位ちゆうぐらゐのホテルだ。二日ふつか以上なら下宿なみにすると主婦が言ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すべての老人としよりほとんきやうするばかりにさわ二日ふつかそのにち卯平うへいには不快ふくわいでさうして無意味むいみつひやされた。かれになつてから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
是非ぜひ吾助ごすけ拜見はいけんたければ、此頃このごろ姉樣ねえさまにおねがひなされ、おてをいたゞきてたまはれ、かならず、屹度きつと返事へんじ通路つうろ此處こヽにをしへ、一日いちにち二日ふつか
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はじめの一にち二日ふつかは、むすめもおかあさんのお仕事しごとをしているそばでおとなしくあそんでおりましたが、三日みっか四日よっかとなると、そろそろおとうさんがこいしくなりました。
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
私たちの家へ来るまでに二日ふつかも食わなかったというもの、そういう人たちを見るたびに私は自分の腰に巻きつけた帯の間から蝦蟇口がまぐちを取り出して金を分けることもあり
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
正月の二日ふつかといえば、上役同僚おしなべて年始に参るが儀礼じゃ、縁もゆかりもない手下の小奴こやっこがくたばったぐらいで、服喪中につき、年賀欠礼仕候と納まり返っているは
きれや板で小屋がけをして寝たり、どのうちへも大てい一ぱい避難者が来て火事場におとらずごたごたする中で、一日二日ふつかの夜は、ばく弾をもった或暴徒がおそって来るとか
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
夫婦むつまじく豊かに相暮しましたが、夫婦の間に子が出来ませんので、養子を致して、長二郎の半之助は根岸へ隠居して、弘化こうか巳年みどしの九月二日ふつかに五十三歳で死去いたしました。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其處そこで、明日あす午前ごぜん六時ろくじもつて、鐵檻車てつおりぐるま出發しゆつぱつ時刻じこくさだめませう、これから三十深山しんざんたつするに、鐵車てつしや平均速力へいきんそくりよくが一時間じかんに二はんとして、往途ゆき二日ふつか建塔けんたうめに一にち歸途きと二日ふつか
正月の二日ふつかにごきげんをうかがって四月の観桜会かんおうかいへまねかれるだけだった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
こゝにはエヂプト、ギリシヤそのほか西洋せいよう古美術こびじゆつはもとより、日本につぽん支那しなはじ東洋諸國とうようしよこくのものを非常ひじようにたくさんあつめてあつて、とうてい一日いちにち二日ふつかでは全部ぜんぶまはることは出來できないのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
子等がいふ欠くることなき望月も父我の眼には二日ふつか三日みかの月
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
主人しゅじん時計とけいちさってしまってから、わずか二日ふつかばかりのうちに、ちちは、日本製にっぽんせいあたらしいざまし時計どけいってきてくれました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
翌日あくるひ代助は平気な顔をして学校へた。あに二日ふつかあたまいたいと云つてにがつてゐた。さうして、これを年齢としちがひだと云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つたく、近頃ちかごろ天津てんしん色男いろをとこ何生なにがしふもの、二日ふつかばかりやしきけた新情人しんいろもとから、午後二時半頃こごにじはんごろばうとしてかへつてた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
地中海にはひつて初めて逆風に遇い、浪の為に一時間五マイルの速力を損失する日が二日ふつか程つづいた。ともの方の友人は大抵僕の室へ来て船暈せんうんを逃れて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)