眞暗まつくら)” の例文
新字:真暗
ひとへに寄縋よりすがる、薄暗うすぐらい、えさうに、ちよろ/\またゝく……あかりつてはこの一點ひとつで、二階にかい下階した臺所だいどころ内中うちぢう眞暗まつくらである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いひにける物語二枝ふたつわか不題こゝにまた忠兵衞は主命なれば詮方なくいと云難いひがたき事の由を親子の者に云傳へ其所そこをばにげも出せしが追掛おひかけらる事もやとこゝろの恐れに眞暗まつくら散方さんばう跡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私はをつけて置けばよかつたと思つた。夜は物凄いやうに眞暗まつくらで、私の魂はしつけられてしまつた。私は床の上に起き上つて、耳を澄したが、もう音は止んでゐた。
此時このときとこいた洋燈らんぷあぶらつて、みじかいしんとゞかなくなつたので、御米およねてゐるところ眞暗まつくらになつてゐた。其所そこきよにした灯火あかりかげが、ふすまあひだからんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おほきい石室せきしつ奧行おくゆきが十間近じつけんちかくもあり、室内しつない眞暗まつくらですからたいそう氣味きみわるいものでありますが、蝋燭ろうそくともしたり、懷中電燈かいちゆうでんとうたづさへてきますと、内部ないぶ模樣もようがよくわかります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
といふと日出雄少年ひでをせうねんたちま機嫌きげんうるはしく、いまわたくしはなした眞暗まつくらみちや、あぶなはしことについてきたさうかほげたが、此時このとき丁度ちやうど猛犬稻妻まうけんいなづまみゝつて、そのそばたので
廂の上はこれも眞暗まつくらなのだ。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
眞暗まつくらになりましよう。
ひとおもひですわ、眞暗まつくらだからわからないつておうたぐンなさるのは、そりや、あなたが邪慳じやけんだから、邪慳じやけんかたにやわかりません。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひく而已のみ飛石とびいしに迄の付居たるはいかなることぞととはるゝに傳吉こたへて其夜畑村はたむらへ參り河原にて物につまづきしが眞暗まつくらにて何かわかりませぬゆゑ早々立歸り翌朝よくてうすそに血がつき居たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私が見上げてゐた蒼穹あをぞらや、愉しく見下ろしてゐた、この建物たてものを中心にした、陽に輝いた、木立や草原や緑の丘の景色に比べると、屋根裏は、まるで地下室のやうに眞暗まつくらな氣がした。
眞暗まつくらになつて、あだか墜道とんねるのやうに物淋ものさびしいみちを、武村兵曹たけむらへいそう即座そくざてんじた球燈きゆうとうひかりてらして、みぎれ、ひだりてんじて、およそ百四五十ヤードもすゝむと、岩石がんぜきまへうしろはなれて、けうをなし
... ふいとますと、障子しやうじ硝子がらす一杯いつぱいほどのねこかほが、」と、ぶるひして、「かほばかりのねこが、すもゝ眞暗まつくらなかから——おほきさとつたらありません。 ...
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
半時間たぬうちに、五時が鳴つた。學校は退けて、みんなはお茶に食堂の方へ行つてしまつたので、私は思ひ切つて降りた。眞暗まつくらだつた。私は、隅の方へ引込んで、ゆかの上に坐つた。
ひとつない眞暗まつくらなかに、まち歩行あるくものとつては、まだ八時はちじふのに、ほとん二人ふたりのほかはなかつたとふ。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若旦那わかだんな勃然ぼつぜんとしておこるまいか。あと退じさりに跳返はねかへつた、中戸口なかどぐちから、眞暗まつくらつて躍込をどりこんだが、部屋へやそとふるへるくぎごとくに突立つツたつて、こぶしにぎりながら
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兩側りやうがは大藪おほやぶがあるから、ぞくくらがりざかとなへるぐらゐたけそらとざして眞暗まつくらなかから、烏瓜からすうりはな一面いちめんに、しろほしのやうなはなびらいて、東雲しのゝめいろさつす。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いてストンと貴女あなたくつうらかへしてげた、げるとるとはやこと!……卷狩まきがりゐのしゝですな、踏留ふみとまつた學生がくせい突退つきのけて、眞暗まつくら三寶さんばう眞先まつさき素飛すつとびました。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのとき横町よこちやうたて見通みとほしの眞空まぞらさら黒煙こくえん舞起まひおこつて、北東ほくとう一天いつてん一寸いつすんあまさず眞暗まつくらかはると、たちまち、どゞどゞどゞどゞどゞとふ、陰々いん/\たるりつびたおもすご
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あなのやうな眞暗まつくら場末ばすゑ裏町うらまちけて、大川おほかはけた、近道ちかみちの、ぐら/\とれる一錢橋いちもんばしふのをわたつて、土塀どべいばかりでうちまばらな、はたけいけ所々ところ/″\侍町さむらひまち幾曲いくまがり、で
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えんかどはしらに、すがりながら、ひと氣取きどつてつと、爪尖つまさきが、すぐに浴室よくしつ屋根やねとゞいて、透間すきまは、いはも、くさも、みづしたゝ眞暗まつくらがけである。あぶなつかしいが、また面白おもしろい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
所詮しよせんかうじて、眞暗まつくらがり。てのひらえいでも、歴々あり/\と、かげうつる、あかりしてもおなことで。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いつか四谷よつやだうとびらをのぞいて、眞暗まつくらなか閻王えんわうまなこかゞやくとともに、本所ほんじよ足洗屋敷あしあらひやしきおもはせる、天井てんじやうから奪衣だつえ大婆おほばゞ組違くみちがへたあしと、眞俯向まうつむけににらんだ逆白髮さかしらが恐怖おそれをなした
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あたりは眞暗まつくらところに、むしよりもちひさ身體からだで、この大木たいぼくあたか注連繩しめなはしたあたりにのこぎりつきさしてるのに心着こゝろづいて、恍惚うつとりとしてみはつたが、とほくなるやうだから、のこぎりかうとすると
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
星樣ほしさまひとえないほど、掻卷かいまき引被ひつかぶつて、眞暗まつくらつてつたんです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それもたゞ五六人ごろくにん病人びやうにんつた。あとへむらさきがついてりたのである。……どぢやう沼津ぬまづつた。あめふりだし、まだ眞暗まつくらだから遠慮ゑんりよをしたが、こゝでむらさき富士驛ふじえきひたい、——そのわかをんなりた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うそなもんか、それ眞暗まつくらとき……ちやう今夜こんやたやうなときなんだね。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
次第しだいけるにしたがつて、何時いつ眞暗まつくらすごくなつた。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もりしたるよとすれば眞暗まつくら三寶さんばう黒白あやめかず。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むかうの二階にかいで、眞暗まつくらなかふのをいた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)