なんぢ)” の例文
つけられしかば斯の如くあとへ廻されしなりればまづ再び馬鹿子息ばかむすこ五郎藏をたゞさんと思はれ越前守殿コリヤ五郎藏其方のさいは何故なんぢいへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ふん、海賊のおきまりのおどし文句だ。『止れ、我、なんぢに語るべき用事あり。』と言ふんだらう。信号簿をくつて見るまでもないや。」
怪艦ウルフ号 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
の時に疾翔大力、爾迦夷るかゐに告げていはく、あきらかに聴け諦に聴け。これを思念せよ。我今なんぢに梟鵄もろもろ悪禽あくきん離苦りく解脱げだつの道を述べんと。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
バザロフ! 勇敢なりしなんぢの一生よ。私も或る時代には汝の如く強く行ふ人でありたいと思つた。今もその空想は私を離れない。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
いやなんぢりたれば、餘人よじんにてはらず、獻立こんだて如何樣いかやうにてもし、およなんぢこゝろにてこれならばしとおもはばそれにてきなり
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんぢは地の上を逍遥さまよひ歩きぬ。されどすべて汝の知りしところのものは無なり。すべて汝の見たるもの、すべて汝の聞きたるものは無なり。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
しもなんぢがそれに署名しよめいしなかつたとすれば』とつて王樣わうさまは、『尚々なほ/\わるい、なんぢ惡戯いたづら相違さうゐない、さもなければ正直しようぢき署名しよめいしてくべきはづだ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
梅子は思はず赧然たんぜんとしてぢぬ、彼女かれの良心は私語さゝやけり、なんぢかつて其の婦人の為めに心に嫉妬しつとてふ経験をめしに非ずやと
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
犬にも非ず、猫にも非ず、なんぢに似たる者よと思ひけれど、言争いひあらそはんは愚なりと勘弁して、彼はわづかに不快の色をせしのみ。満枝は益す独りれて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
バビロンの淫婦はなんぢ七頭しちとうの毒竜は爾の馬、火と煙と硫黄いわうとはなんぢ黒檀こくたん宝座みくらの前に、不断の香煙かうえんのぼらしめん。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
我は實を記してなんぢに歸納の材を與ふ。汝が眼、汝が心はおのづからこれを歸納して、明治文學の活機を悟り、以て明治文學大歸一大調和の策を立てよ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「此の事なんぢにありしにる、またなんぢわが契約をわが爾に命じたる法憲のりを守らざりしによりて、我必ず爾より国を裂きはなして、これを爾の臣僕けらいに与ふべし。」
なんぢ此度このたび使命しめい成敗せいばいは、海底戰鬪艇かいていせんとうていが、日本帝國につぽんていこく守護まもりとして、現出げんしゆつすること出來できるか、いなかのわかであるぞ。きはめて機敏きびんに、きはめて愼重しんちようなれ。
今宵こよひなんぢの霊魂とらるべし、然らば、汝の備へたるものは、誰がものとなるべきぞ……。富岡は、祈つてゐるうちに、こんな言葉を思ひ出した。不吉な気がした。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
或人あるひとまたいつた、なんぢ所論しよろんは一理窟りくつあるが實際的じつさいてきでない。なんぢ歐文おうぶん年紀ねんきしるすとき西暦せいれきもちゐて神武紀元しんむきげんもちゐないのは何故なにゆえか、いはゆる自家撞着じかどうちやくではないかと。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
なんぢは空しき白日の呪ひに生きよ!——こんなふうの詩とも散文とも訳のわからない口述原稿を、馬糞ばふんの多い其処の郊外の路傍にたゝずんで読み返し、ふと気がつくと涙を呑んで
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
然れども二つとはなき此の生命せいめいすてても真理しんりの為めにつくさんと欲するものはかくの如き演劇的えんげきてき同盟どうめいに加はることあたはざるなり、なんぢ一致いつちせんと欲する乎、づ汝の主義しゆぎ決行けつかうせよ
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
新院から々と笑はせ給ひ、なんぢしらず、近ごろの世のみだれがなすわざなり。生きてありし日より魔道にこころざしをかたぶけて、四四平治へいぢみだれおこさしめ、死してなほ四五朝家てうかたたりをなす。
『わりや(なんぢは)飛んでもねえことを為て呉れたなあ。何も俺だつて、好んで斯様こんな処へ貴様を引張つて来た訳ぢやねえ——是といふのも自業自得じごふじとくだ——左様さう思つて絶念あきらめろよ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
兄がいはく、光る石をひろしは我がくはだてなり、なんぢは我がちからたすけしのみなり、光る石は親のゆづりにあらず、兄が物なり。家財かざいわかつならばおやのゆづりをこそわかつべけれ、あたふまじ/\。
なんぢおきなよ、そちはすこしばかりのいことをしたので、それをたすけるために片時かたときあひだひめくだして、たくさんの黄金おうごんまうけさせるようにしてやつたが、いまひめつみえたのでむかへにた。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
「“Know thyself”(なんぢ自身じしんれ)とは、まことに千金言きんげんだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
孫子そんしわかつて二たいし、わう寵姫ちようきにんもつ各〻おのおの隊長たいちやうし、みなげきたしむ。これれいしていはく、『なんぢなんぢ(三)むね(四)左右さいうとをるか』と。婦人ふじんいはく、『これる』と。
なんぢ今こそ好むところを歩めども、老いたらん後は手を伸べん』といふ句です。……
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
よにさちなきもの二ツあり。又幸あるものふたつあり。すなはち吾儕わなみなんぢなり。己れは国主の息女むすめなれども。義を重しとするゆゑに。畜生にともなはる。これこの身の不幸なり。しかれどもけがし犯されず。
まことや簡素は自然の徳、われ敢て強ひて衒はずとも、おのづから身に驕る宝なければ、常住水に魚鱗の苔を洗ひ、野に出で丘にのぼりて、時に鮮菜の土をはたく。閑雅、閑雅、われなんぢを慕ふ事久し。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あはれなんぢらがほこり高かる心には暴風あらしもなどか今さらに悲しからむ。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
なんぢを愛す、我汝をまねぐ、嗚呼あゝ、わが、善惡の名によりて。
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
されどなんぢらはラビのとなへを受くな。また、導師の称を受くな。
如是我聞 (新字新仮名) / 太宰治(著)
末恐ろしき美々びゞしさとおもたげのふりとを添ふるなんぢ諸金銀よ
なんぢ詩人たるべし!⦆としるした。すると我が四肢に
わが身の上の「失楽」よ、われなんぢに叫ぶ
失楽 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
しゆたるなんぢかみこゝろむべからず。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なんぢこそたくましき大馬おほうまむれなれ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「おお、薔薇さうびなんぢめり!」
なんぢ孔雀くじやくはなやかに
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
なんぢの忠誠に待つ
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
越前守殿聞だまれ憑司汝は何を申すぞ早ははう吟味ぎんみなすに爰な出過者ですぎものめ今早が口より梅が體にきずなどは御ざらぬと申立たるになんぢ夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
の時に疾翔大力しっしょうたいりき爾迦夷るかゐに告げていはく、あきらかに聴け、諦に聴け。これを思念せよ。我今なんぢに、梟鵄けうしもろもろ悪禽あくきん離苦りく解脱げだつの道を述べんと。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
なんぢおとにもきつらん、白山はくさん狩倉かりくらに、大熊おほくま撲殺うちころした黒坂備中くろさかびつちうはういま自分じぶんちからためさん、いざふれなんぢ力競ちからくらべをしてやうか。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
観音経の中の、「諸々の善男子よ、恐怖するなかれ、なんぢ等まさに一心に観世音菩薩の名号をとなふべし。菩薩ぼさつく無畏を以て衆生しゆじやうを施したまふ。」
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
なんぢ覺悟かくごをせよ』女王樣ぢよわうさま唐突いきなりこゑいからし、ひながら地韛踏ぢだんだふんで、『あたまねるが、宜いか、たついま!さァ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
さらば往きてなんぢの陥りしふちに沈まん。沈まば諸共もろともと、彼は宮がかばねを引起してうしろに負へば、そのかろきこと一片ひとひらの紙にひとし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
されど人間なるが故に、人間たる事実を軽蔑けいべつすべからず。人間たる尊厳を抛棄はうきすべからず。人肉をくらはずんば生き難しとせよ。なんぢとともに人肉をくらはん。
男はのろいもので、この瞬間女を飛切り美しいものに見るばかりでなく、自分をも非常な勇者のやうに思違おもひちがへをする。鈍間のろまなる男よ、なんぢはいつも女の前に勇者である。
奈何いかにして人は己を知ることを得べきか。省察せいさつを以てしては決して能はざらん。されど行為を以てしては或はくせむ。なんぢの義務を果さんと試みよ。やがて汝の価値を
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
われこそはおと名高なだか印度洋インドやう大海賊船だいかいぞくせんなり、なんぢ新造軍艦しんざうぐんかんうばはんとて此處こゝつこと久矣ひさしすみやか白旗はくきてゝその軍艦ぐんかん引渡ひきわたさばよし躊躇ちうちよするにおいては、われに七せき堅艦けんかんあり
兄がいはく、光る石をひろしは我がくはだてなり、なんぢは我がちからたすけしのみなり、光る石は親のゆづりにあらず、兄が物なり。家財かざいわかつならばおやのゆづりをこそわかつべけれ、あたふまじ/\。
彼女の目より涙をぬぐへ、すずしき風よ、彼女の胸よりうれひを払へ——アヽ我が梅子、なんぢの為めに祈りつゝある我が愛は、汝が心の鼓膜こまくに響かざる、——父なる神、永遠とこしなへに彼を顧み給へ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
なんぢ、我が子よ、いましもし、此の難関に処しも得ば