)” の例文
二日ふつか眞夜中まよなか——せめて、たゞくるばかりをと、一時ひととき千秋せんしうおもひつ——三日みつか午前三時ごぜんさんじなかばならんとするときであつた。……
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見込み「けつぱなしてだれも居ねえのか、この開帳で人の出るのに」とかます烟草入たばこいれ真鍮しんちゅう煙管きせるを出し「何だ火もねえや」といひ
雨風あめかぜの患のない、人目にかゝる惧のない、一ばんらくにねられさうな所があれば、そこでともかくも、かさうと思つたからである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こうした周囲しゅうい空気くうきは、ぼくをして、偶然ぐうぜんにもこころふかかんじたいっさいをける機会きかいをば、永久えいきゅうにうしなわしてしまったのでした。
だれにも話さなかったこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこで竿をいたわって、しかも早くらちくようにするには、竿の折れそうになる前に切れどこから糸のきれるようにして置くのです。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
うちよりけておもていだすは見違みちがへねどもむかしのこらぬ芳之助よしのすけはゝ姿すがたなりひとならでたぬひとおもひもらずたゝずむかげにおどろかされてもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一人ひとりすはつて居ると、何処どことなく肌寒はださむの感じがする。不図気が付いたら、机の前の窓がまだてずにあつた。障子をけると月夜だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なになりとたずねてもらいます。研究けんきゅうめとあれば、わしほうでもそのつもりで、差支さしつかえなきかぎなにけてはなすことにしましょう。
夜の洞海湾を、ゆるい速力で進む船列は、どの舟にも、一杯に、華麗な燈籠提灯のかりがみなぎって、波にその光をうつしている。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
所が今日はもう出勤前だから又明朝来てれ、くる朝早く行くと、人が来て居て行かないと云う。如何どうしても教えてれるひまがない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼らが山を走ることはあたかも兎の走るがごとくで私など追いかけたところで、らちく訳でもない。また追いかけようという考えもない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
凝然ぢつとしたしづかなつきいくらかくびかたむけたとおもつたらもみこずゑあひだからすこのぞいて、踊子をどりこかたちづくつての一たんをかつとかるくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのうちにけてしまったので、こんなにおおぜいあつまっているところをうっかりねこつけられては、それこそたいへんだといって
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おお、気がつきなさったかい、やれやれこれで安心しただ」老人の漁師が、ぱっちり眼をいた龍介を見て、嬉しそうに言葉をかけた。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その堀立小屋は、窓がたいへん少くて、しかもそれが二メートルも上の方に監房かんぼうの空気ぬきよろしくの形に、もうしわけばかりにいていた。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これはけぬ河内かはちへ越さうとして、身も心も疲れ果て、最早もはや一歩も進むことの出来なくなつた平八郎父子ふしと瀬田、渡辺とである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「何かこう、眼の前がパッとかうなったり、真ッ黒けになったりして、あんたの顔がこって牛の顔みたいに大きう見えたわ」
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
私はすぐってそこの廊下の雨戸を一枚けて、立って待っておると戸外おもておぼろの夜で庭のおもにはもう薄雪の一面に降っていた。
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
そのがたそらした、ひるのとりでもゆかないたかいところをするどいしものかけらがかぜながされてサラサラサラサラみなみのほうへとんでゆきました。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
小山はおもむろに席に就き「中川君、非常に面倒で大きに弱ったがやっと今日らちいたよ」とこの一語は天の福音ふくいんとしてお登和嬢の耳に響きぬ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
されど汝は我等のまことの状態ありさまのさらに汝にかされんことを願へば、我もいかでか汝にこれを否むをねがはむ 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
とりあへず隣接した三等室のドアの直ぐ傍に、たつた一ついてゐた寝台に母は運びこまれた。これが母の死の床になつた。
母たち (新字旧仮名) / 神西清(著)
初めて余のおそるおそる格子戸けて案内を乞ひし時やや暫くにして出できたられしは鼻下にひげたくわへし四十年配のまなこ大きく色浅黒き人なりき。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一体に白、水色、淡紅とき色などのかるい色のロオヴを着た女が多く、それ等を公園の木立こだちの下の人込の中で見るのは罌粟けしの花を散らした様である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ふるとしといふのは、新年しんねんたいする舊年きゆうねんであつて、むかしこよみではとしけないうちに、立春りつしゆんせつといふこよみうへ時期じきがやつてることもあつたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ばおすゝぎなさるがよいと言れてよろこ會釋ゑしやくしてやれし垣根の切戸きりどけ廣くも非ぬ庭へ進むに老人背後うしろ見返みかへりておみつ水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ええ、辛抱しんぼうしますとも、夜中よなかンなろうが、けようが、ここは滅多めったうごくンじゃないけれど、おまえがもしか門違かどちがいで、おせんのうちでもないひとの……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
へえゝの見えないうちかへつておどろきませんでした、うでも勝手にしねえとりましたから、いたらなんだかこはくツてちつとも歩けません。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
日本語で歌わせられたの……そうして三分ばかりして歌が済んじゃったら監督みたいな汚ない菜葉なっぱ服の人が穴のいたシャッポを脱いでモウ結構です。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
寺の本堂ははなされて、如来様にょらいさまの前に供えられた裸蝋燭はだかろうそくの夜風にチラチラするのが遠くから見えた。やがて棺はかつき上げられて、読経どきょうが始まった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
荒浪あらなみたか印度洋インドやう進航すゝみいつてからも、一日いちにち二日ふつか三日みつか四日よつか、とれ、けて、五日目いつかめまでは何事なにごともなく※去すぎさつたが、その六日目むいかめよるとはなつた。
カピ長 南無三なむさん、やりをるわい。おもしろい下司野郎げすやらうめ! なんぢゃ、まきぢゃ? 乃公おれゃまた薪目まきめくらかとおもうた。……はれやれ、けたわ。
松や楓の植込から、どす黝い池の水に架つた土橋、それから子供の病室をもれるかりに青々してみえる芝生、それを蹈んで、彼は窓の下へ寄つて行つた。
老苦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その習慣が幾代も続いて来たので、眼の働きが甚だ弱いものになってしまって、火のような強い光線に出逢うと、眼をいては居られないようになったのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
不思議ふしぎ沈黙ちんもくつづいた。とうさんでさえそれをかすことが出来できなかった。ただただとうさんはだまって、袖子そでこている部屋へやそと廊下ろうかったりたりした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「證據は山ほどある。夜露に濡れた辨次郎の袷には、一と晩かした柳原土手の葉が附いて居るばかりではない。たもと飛沫しぶいた返り血を洗ひ落した跡まである」
けて見れば、馬屋の土台どだいの下を掘り穿うがちて中に入り、馬の七頭ありしをことごとく食い殺していたり。この家はそのころより産やや傾きたりとのことなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
或日瀧口、閼伽あかみづまんとて、まだけやらぬ空に往生院を出でて、近き泉の方に行きしに、みやこ六波羅わたりと覺しき方に、一道の火焔くわえんてんこがして立上たちのぼれり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
やはり流行にかかわると笑った人もあったが、笑う者に説明する必要はないけれども、僕の真情しんじょうかしていうと、僕の息子むすこにだけは時勢に遅れさせたくない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
学生の理想として仰望ぎょうぼうした大学生というものに、いよいよなって登校するのは愉快な気がする。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そしてそのなみだが、王子おうじはいると、たちま両方りょうほういて、まえとおり、よくえるようになりました。
気嚢きのうに穴がいていたのです。もっともその穴は、一月程前に一度修繕した事のある穴ですが——」
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
一口に西洋といつても色々国がある事だし、夫人の指すのはの国なのだらうかと、それとなく聞いたものがあつた。すると夫人は穴のく程相手の顔を見つめて
彼は死亡室の小さな建物に、とうの昔に死んでいる何十人何百人の人間を住まわせ、その地下室から庭の片隅に面していている小窓に、じっと眼を凝らすのだった。
両方の肩に腫れられては、明日あすは何で担ごうやら。夢の中にも肩が痛い。また水汲みかと思うと、くるのが恨めしい。妻が見かねて小さな肩蒲団を作ってくれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
麻布のあの洋館がいているだろうか、明いていたら幸福だが、という意味の手紙がきました……いま、お話したように、シュラーなる人物は、課税報告番号によると
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
くれば郷里の有志者および新聞記者諸氏の発起ほっきにかかる慰労会あり、魚久うおきゅうという料理店に招かれて、朝鮮鶴の料理あり、妾らの関係せしかの事件にちなめるなりとかや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
全級一度に教授することによって教員の手がく。先生方はそうして得らるる時間の余裕を利用して色々な教材の映画シナリオの共同編纂に従事することになるであろう。
教育映画について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
勿論もちろんなんこともなくうたがひだけでんだのだが、一おもはぬところかしてしまつた誰彼たれかれ、あまり寢覺ねざめがよかつたはずいが、なんでも物事ものごと先驅者せんくしや受難じゆなん一卷ひとまきとすれば
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
先方さきでも何言なにごとも云わずにまた後方うしろって、何処どこともなく出て行ってしまった、何分なにぶん時刻が時刻だし、第一昨夜私は寝る前に確かに閉めたドアが外からけられる道理がない
闥の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)