広々ひろびろ)” の例文
旧字:廣々
屋敷やしき周囲まわりには広々ひろびろとしたはたけがありました。そして、そこにはばらのはなや、けしのはなが、いまをさかりにみだれているのであります。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
前よりもまた一層広々ひろびろと、一面の日当りになった畠の上には、大根と冬菜とが、いかにも風土の恵みを喜ぶがように威勢好くその葉をのばしている。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして両側りょうがわ広々ひろびろとしたおにわには、かたちまつそのほどよくみになってり、おくはどこまであるか、ちょっと見当けんとうがつかぬくらいでございます。
広々ひろびろにわってはあるが、わずかに三かぞえるばかりの、茶室ちゃしつがかった風流ふうりゆう住居すまいは、ただ如何いかにも春信はるのぶらしいこのみにまかせて、いれがとどいているというだけのこと
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「こんな、広々ひろびろとした自然しぜんなかで、そだったのだから、もっと、明朗めいろうで、かっぱつに、うたったり、おどったりされないものかな。」
托児所のある村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しばらく湖水こすいへりつたってるいてうちに、やまがだんだんひくくなり、やがて湖水こすいきるとともやまきて、広々ひろびろとした、すこしうねりのある、あかるい野原のはらにさしかかりました。
東都名所のうちその画題を隅田川花盛はなざかりとなしたる図の如きを見よ。まず丘陵の如くに凸起とっきしたる堤を描き、広々ひろびろしたる水上より花間かかん仰見あおぎみて、わずかに群集の来往らいおうせるさまを想像せしむるに過ぎず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いいえ、おとうさん、わたしは、なにもいりません。あなたが、うみうえでおはたらきになったように、わたしはこれから広々ひろびろとしたりくうえはたらきます。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
広々ひろびろとした、田舎いなか自由じゆうそだったものからたら、この都会とかいは、せせっこましいところにちがいない。」といわれたのです。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
広々ひろびろとした、托児所たくじしょにわにだけ、わらいごえがおこったり、子供こどもたちのあそびたわむれるさけびごえがして、なんとなく、にぎやかでありました。
托児所のある村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しろくもみねがくずれたころ、このれつは、広々ひろびろとした病院びょういんもんはいって、小砂利こじゃりうえかろやかなくつおとをたてたのであります。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「すこししか、とりませんよ。」と、こたえました。子供こどもたちは、また、くさけて、はらっぱの広々ひろびろとしたところへもどると
芽は伸びる (新字新仮名) / 小川未明(著)
広々ひろびろとした、田園でんえんのぞみ、豊穣ほうじょう穀物こくもつあいだはたら男女だんじょれを想像そうぞうし、嬉々ききとして、牛車ぎゅうしゃや、うまあと子供こどもらの姿すがたえがいたのであります。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、広々ひろびろとした、野中のなかとおっている、むかしながらの道筋みちすじでありました。としとったまつみち両側りょうがわっていました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
広々ひろびろとしたはらっぱには、一かく屋敷跡やしきあとのようなところがあって、青々あおあおとした梅林ばいりんには、がたくさんっていました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
どちらをまわしても、広々ひろびろとしたはたけでありましたので、ありにとっては、おおきなくにであったにちがいありません。
三匹のあり (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、広々ひろびろとした海原うなばらと、あお松林まつばやしと、いつにかわらぬ富士山ふじさんがあるばかりでした。若者わかものは、そのながい一しょうただしく、たのしくおくることができました。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある、すずめは、この温泉おんせんに、わかれをげました。そして、やまえて、広々ひろびろとした野原のはらました。かれは、電線でんせんうえまって、しばらくやすんだのです。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
氷山ひょうざんはかなり、おおきく、とがったやまのようにするどひかったところもあれば、また、幾人いくにんって、けっこをすることができるほどの広々ひろびろとした平面へいめんもありました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ガラスをとおして、そとかぜが、くろずんだ常磐木ときわぎうごかしているのをては、はやくこのいきづまるような温室おんしつなかから、広々ひろびろとしたそとたいものだとおもっていました。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひかりは、広々ひろびろとしたにわおもてにあふれていましたから、このはなうえをもらしたのであります。はなには、みつばちがたかり、あたたかなかぜが、おだやかに接吻せっぷんしていました。
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほとんど途方とほうれてしまって、少年しょうねんは、あるみちすじかれたところにっていました。そこは、まちつくしてしまって、広々ひろびろとしたはたけなかになっていました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、いつまでも、こうして、ここで、広々ひろびろとした景色けしきをながめて、空想くうそうにふけっていたかった。
高い木と子供の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
不思議ふしぎなことに、小鳥ことりは、まったく元気げんきづいてしまいました。そして、もう一うみけきって広々ひろびろとした野原のはらいだして、自分じぶんらの仲間なかまがっしようと決心けっしんしました。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、こまどりのかごをひなたにしてやると、さも広々ひろびろとした大空おおぞらいろをなつかしむように、こまどりはくびをかたむけて、まりにとまって、じっとしていました。
こまどりと酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、いくつかのはやしのあいだをとおり、また広々ひろびろとした野原のはらぎました。小鳥ことりのこずえにまっていていました。おじいさんは、おりおりつえをとめてやすみました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるねえさんにつれられて、まちはずれにあった、おみや境内けいだいあそびにゆきました。そこは、広々ひろびろとして、おおきながしげっていました。子供こどもらは、たくさんきてあそんでいます。
ごみだらけの豆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、たまたま広々ひろびろとした野原のはらこうものなら、うまあしや、人間にんげんあししたまれて、はかなくってしまわなければならない。ちょうもこなければ、みつばちもやってこない。
すみれとうぐいすの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くまは、これを苦痛くつうおもうどころでなく、広々ひろびろとした世界せかいられたのをよろこびました。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに、つるは、うみうえわたって、広々ひろびろとした野原のはらうえりたのであります。
千羽鶴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨夜さくや叔父おじさんが、荷物にもつって、停車場ていしゃじょうまでおくってくれました。けると、汽車きしゃは、広々ひろびろとした平野へいやなかはしっていました。車中しゃちゅうには、ねむそうなかおをしたおとこおんなっていました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこから、広々ひろびろとしたうみわたらなければなりません。しかし、うみにはいつもおおくのふねはしっています。そのふねのほばしらや、つなうえまって、つかれをやすめてまたたびをつづけるのであります。
つばめの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつからともなく、善吉ぜんきちは、みんなからはなれて、たかのぼって、ひとり、広々ひろびろとした景色けしきたのしむことをこのむようになりました。ほかの子供こどもたちは、善吉ぜんきちをさるとあだづけたのです。
高い木と子供の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
広々ひろびろとしたはたけが、みずしずくなか宿やどっていました。しかも、無限むげんに、ふかく、ふかく、とおく、とおく、そのしずくなかひらけていたのです。そのはたけには、黄色きいろな、かぼちゃのはながいくつもいていた。
「そう、おれだって、みんなからかれないものでもない。こんなに、うつくしいとりが、おれえだにりっぱなつくったじゃないか?」と、広々ひろびろとした野原のはら見渡みわたしながら、ほこがおにいいました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、ともにうちますけれど、すぐ門前もんぜんからみぎひだりわかかれてしまいます。そして、いつもいっしょにいることはありませんでした。いもうとは、広々ひろびろとした、のよくたる野原のはらにいきました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちは、どこへやられるのかわかりません。故郷こきょうてから、ながあいだ汽車きしゃせられました。そして、いまこの広々ひろびろとしたうみうえをあてもなくただよっているのをみると心細こころぼそくなるのであります。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもらは自分じぶんむらをすこしはなれたところに学校がっこうがある。そこへあるいてゆくのでした。むらると、広々ひろびろとした野原のはらがありました。野原のはら一面めん見渡みわたすかぎりもゆきにうずまってしろえました。
雪の国と太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼女かのじょはおじょうさまのそばで、そのおとにききとれていると、まえ広々ひろびろとしたうみひらけ、緑色みどりいろなみがうねり、白馬はくばは、しまそらをめがけてんでいる、なごやかな景色けしきかんでえたのであります。
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あなたがたの仲間なかまは、広々ひろびろとした野原のはらに、自由じゆうにはびこって、いまごろは、あかあおむらさきしろというふうに、いろいろなはなほこって、あさからばんまで、ちょうや、はちがそのうえびまわって
小さな赤い花 (新字新仮名) / 小川未明(著)