平気へいき)” の例文
旧字:平氣
「だって、がんこなんだもの、ひとがあぶないといっても平気へいきでいるからさ。けれど、先生せんせいは、ぼくたち子供こどもだけはかわいがってくれるよ。」
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
花前は、よどみなく決然けつぜんと答えて平気へいきでいる。話のしりをむすばないことになれてる主人も、ただありませんと聞いたばかりではこまった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ところが、ペール・オーラは平気へいきなものです。前のほうの小さな舟板ふないたこしかけて、鳥の姿を見るたびに、ヤッロー、ヤッローと呼びました。
老人ろうじんは子供よりもっとうれしかったが、わざと平気へいきな声で——感動かんどうしかかってることに自分じぶんでも気づいていたから——いった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
殿とのさまご寵愛ちょうあいのおさるさま、つねからわがままいっぱいのくせがついているので、老臣の膝を脇息きょうそくのかわりにするぐらいなことは平気へいきだが、折もおり
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくらしかられても為朝ためとも平気へいきで、あいかわらず、いたずらばかりするものですから、為義ためよしこまりきって、あるとき
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
週間しゅうかんてアンドレイ、エヒミチは、病院びょういんから辞職じしょく勧告かんこくけたが、かれはそれにたいしてはいたって平気へいきであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これは、なおさら要吉ひとりきりでは解決かいけつできない問題もんだいでした。要吉は、女中の平気へいきな顔を思いだすと、ただなんとなく、腹がたってたまりませんでした。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
形勢けいせいきゅうなるは、幕末の時にしてらに急なるその内乱ないらん危急ききゅうの場合に際し、外国人の挙動きょどうは如何というに、はなは平気へいきにして干渉かんしょうなどの様子ようすなきのみならず
人の心は、思うままにならないもので、お藤がこんなに想っているのに、左膳のほうでは、平気へいき平左へいざです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
したがってわたくしとしては割合わりあい平気へいき気持きもち自分じぶん臨終りんじゅう模様もようをおはなしすることができるのでございます。
わたしつとめて平気へいきらしく、「ウムた。あんなことがあつたのか。」とこゑかすれて、ふるへてゐた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
かゝなかにも社会しやくわい大勢力だいせいりよくいうする文学者ぶんがくしやどのは平気へいき平三へいざ行詰ゆきづまりしともおもはず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
もうじき、あなたがぬからいいなどと、おそろしいことを平気へいきおもっていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「だいじょうぶだ、ぼくは三キロぐらいは平気へいきだから」とドノバンがいった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もっとも雪でも降らなければ彼らはそうひどく寒さを感じないから、外へ寝ることは一向平気へいきで何とも思わない。ラサ府の住民は大抵平生へいぜい五万三万位のところへ不意に二万五、六千の僧侶が入って来る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
とりかい、けだものかい。」ときはめて平気へいきでいらつしやる。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
身体中からだぢゆうどこもかくさないで平気へいきせることさ。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
平気へいきで、どんなところでも、鼻唄はなうたをうたってあるけるようにならんければ、一にんまえとはいえない。」と、親方おやかたは、わらいました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども義家よしいえほうはいっこう平気へいきで、むかしから使つかいなれた家来けらい同様どうよう宗任むねとうをかわいがって、どこへくにも、「宗任むねとう宗任むねとう。」とおともにつれてあるいていました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたくしはますます全身ぜんしん寒気さむけかんじ、こころうちではげてかえりたいくらいおもいましたが、それでもおじいさんが一こう平気へいきでズンズンあしはこびますので、やっとのおもいでついてまいりますと
女中は平気へいきな顔でいいました。しかし要吉はなんともいえないくやしい気がしました。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
どんな天気てんきにでも、外にいるのになれているらしく、寒いのなどは、平気へいきのように見えました。もうひとりのほうは、ふとっていて、身なりもりっぱで、何不足なにふそくないお百姓ひゃくしょうさんのようでした。
とおまさが、ことにふれての母にたいする述懐じゅっかいはいつでもきまってるが、どうかすると、はじめは平気へいきに笑いながら、気違いのうわさをいうてても、いつのまにか過敏かびんに人のことばなどを気にかけ
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
巡査じゅんさや、憲兵けんぺいいでもするとわざ平気へいきよそおうとして、微笑びしょうしてたり、口笛くちぶえいてたりする。如何いかなるばんでもかれ拘引こういんされるのをかまえていぬときとてはい。それがため終夜よっぴてねむられぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「そう!」とゴットフリートは平気へいきでいった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
はなは、このくもることをいといました。しかし、そばにあったいしや、あちらのつよそうなたかくさは、平気へいきでありました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あたりまえの人なら、ただけで目をまわしてしまうところでしょうが、藤太とうだ平気へいきかおをして、大蛇おろち背中せなかの上をんであるいて行きました。しばらく行くと、うしろでだしぬけに
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
つくえまえにマッチはあって、かれはそれをていながら、そのくせ大声おおごえげて小使こづかいんでマッチをっていなどとい、女中じょちゅうのいるまえでも平気へいき下着したぎ一つであるいている、下僕しもべや、小使こづかいつかまえては
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたくし平気へいき良人おっとにぎってもました。
せきをするおじいさんは、自分じぶんのうわさが、そんなふうにひろがっているとはりませんから、平気へいきみちあるいていたのです。
うさぎと二人のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども晴明せいめいはあくまで平気へいきかおをしていました。道満どうまんになって
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みんなは、老人ろうじん海岸かいがんへひきずってきました。そして、みんなをあざむいたことをなじりました。すると、老人ろうじんは、案外あんがい平気へいきかおをしていいました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
するといつどこから出てたか、おおきなひげのえたおとこと、かわいらしい小さなぼうさんが出てて、どんどんあめのように射出いだてきの中をくぐりくぐり、平気へいきかおをしててきせいの中へあるいて行って
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして、あたまをもたげてのまわりをながめると、あちらのたかつよそうなくさは、無神経むしんけいに、いつもとわらず平気へいきかおつきをしているのでありました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのくるから、正二しょうじくんは、おかあさんにあずけてあった時計とけいげて、平気へいき学校がっこうへいくようになりました。
正二くんの時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるいている人間にんげんは、みみこえないとみえて、いっこう平気へいきで、汽車きしゃあとからくるのをづかなかったのです。しかたがないものですから汽車きしゃめました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
汽罐車きかんしゃは、それをば平気へいきおもっている。そればかりでなく、太陽たいようが、くほど、つよらしつける。日蔭ひかげにはいろうとあせっても自由じゆううごくことができない。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
脂肪しぼうのたくさんな、むくむくとあついしろくまはそこを平気へいきあるいていました。また、こおりける時分じぶんになれば、けわしいやまほうへのこのことかえってゆきました。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
いくらなみさわいでも、むかしうみおうさまといわれた、おじいさんのまごっているふね平気へいきでありました。なみうえして、もっとおきへ、おきへとこいでゆきました。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あんな、うつくしいちょうでさえ、平気へいきんでいるじゃないか。」と、一とりは、一ぽん野中のなかっているにとまったときに、ともだちをかえりみて、いいました。
ふるさと (新字新仮名) / 小川未明(著)
「この世界せかいは、おれたちの世界せかいだ。それだのに、おれたちよりもっとしろおおきなものが、あたまうえ平気へいきんでゆくとはけしからん。」といって、なみさわぎたてました。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
するどとげのあるえだ平気へいきで、おもうかってのままに、ほうぼうへそのつるをひろげていたからです。
へちまの水 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、若者わかものが、このいし値打ねうちをらないのをさいわいに、この砂漠さばくなかたびするあいだに、どうかして、自分じぶんのものとする工夫くふうはないかとおもったので、わざと平気へいきかおつきをして
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
天職てんしょく自覚じかくせず、また、それにたいする責任せきにんかんぜず、うえのものは、したのものに好悪こうお感情かんじょう露骨ろこつにあらわして平気へいきだった、いまよりは、もっとくらかった時代じだいはなしであります。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、それをありがたいともなんともおもっていないように平気へいきかおつきをしていました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ですから、さむいことも、みずむことも平気へいきです。さむくにまれた小鳥ことりは、もう子供こども時分じぶんから、さむさにれています。あなたの心配しんぱいなさるように、さむさにおどろきはしません。
ある日の先生と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よくこのにものぼったものだ。あのいちばんたかいただきまで、かけがるのも平気へいきだった。」
木の上と下の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とおい、きたさむくにまれて、またそのほうかえってゆこうとする、いすかは、さむいことには平気へいきでしたから、それによくびましたから、今夜こんやにも、うみそうとしていました。
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
最初さいしょはありのやつめ、綿わたあしをとられて、こまっていたが、そのうちに平気へいきでそれをえてしたからがっていくもの、うえから、小粒こつぶきとおる蜜液みつえきいてりてくるもの
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)