“巖(いは)” の例文
新字:巌
湯(ゆ)の宿(やど)と、湯(ゆ)の宿(やど)で、川底(かはそこ)の巖(いは)を抉(ゑぐ)つた形(かたち)で、緑青(ろくしやう)に雪(ゆき)を覆輪(ふくりん)した急流(きふりう)は、颯(さつ)と白雲(はくうん)の空(そら)に浮(う)いて、下屋(げや)づくりの廂(ひさし)に呑(の)まれる。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
向ひの小島へ落ちる夕日は極樂の光のやうに空を染めてゐた。漁夫(れふし)の身體(からだ)付きからして昔は巖(いは)のやうだつたり枯木のやうだつたりして面白かつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
後(あと)では波(なみ)が巖(いは)に打(う)ちつける樣(やう)に暫(しば)らく騷(さわ)いだ。若(わか)い女(をんな)は皆(みな)十分(ぶん)笑(わら)つて、又(また)痘痕(あばた)の爺(ぢい)さんを熟々(つく/″\)と見(み)ては思(おも)ひ出(だ)して袂(たもと)で口(くち)を掩(おほ)うた。到頭(たうとう)極(きま)り惡相(わるさう)にして爺(ぢい)さんも去(さ)つて畢(しま)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たちまちに海黒み來ぬ巖(いは)の上の鵜の聲風に吹消されつゝ
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
渚(なぎさ)べの慣れし巖(いは)かげに身を避(よ)けて
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
流れて巖(いは)を出づるごと
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
巖(いは)高(たか)く劍(つるぎ)を植(う)ゑて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
巖(いは)うつ音(おと)の
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
聲(こゑ)あるはひとり筧(かけひ)にして、巖(いは)を刻(きざ)み、石(いし)を削(けづ)りて、冷(つめた)き枝(えだ)の影(かげ)に光(ひか)る。誰(た)がための白(しろ)き珊瑚(さんご)ぞ。あの山(やま)越(こ)えて、谷(たに)越(こ)えて、春(はる)の來(きた)る階(きざはし)なるべし。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
流れて巖(いは)に碎(くだ)くるも
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
炎天(えんてん)の海(うみ)は鉛(なまり)を溶(と)かして、とろ/\と瞳(ひとみ)を射(い)る。風(かぜ)は、そよとも吹(ふ)かない。斷崖(だんがい)の巖(いは)は鹽(しほ)を削(けづ)つて舌(した)を刺(さ)す。山(やま)には木(き)の葉(は)の影(かげ)もない。草(くさ)いきれは幻(まぼろし)の煙(けむり)を噴(ふ)く。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
此瀧(このたき)を過(す)ぎて小一町(こいつちやう)、道(みち)のほとり、山(やま)の根(ね)の巖(いは)に清水(しみづ)滴(したゝ)り、三體(たい)の地藏尊(ぢざうそん)を安置(あんち)して、幽徑(いうけい)磽确(げうかく)たり。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
程(ほど)たつて、裏山(うらやま)の小山(こやま)を一(ひと)つ越(こ)した谷間(たにあひ)の巖(いは)の穴(あな)に、堆(うづたか)く、その餅(もち)が蓄(たくは)へてあつた。鼬(いたち)は一(ひと)つでない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
大波(おほなみ)に漂(たゞよ)ふ小舟(こぶね)は、宙天(ちうてん)に搖上(ゆすりあげ)らるゝ時(とき)は、唯(たゞ)波(なみ)ばかり、白(しろ)き黒(くろ)き雲(くも)の一片(いつぺん)をも見(み)ず、奈落(ならく)に揉落(もみおと)さるゝ時(とき)は、海底(かいてい)の巖(いは)の根(ね)なる藻(も)の、紅(あか)き碧(あを)きをさへ見(み)ると言(い)ひます。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
縁(えん)の角(かど)の柱(はしら)に、縋(すが)りながら、恁(か)う一(ひと)つ氣取(きど)つて立(た)つと、爪尖(つまさき)が、すぐに浴室(よくしつ)の屋根(やね)に屆(とゞ)いて、透間(すきま)は、巖(いは)も、草(くさ)も、水(みづ)の滴(したゝ)る眞暗(まつくら)な崖(がけ)である。危(あぶな)つかしいが、また面白(おもしろ)い。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
若(わか)きものの、山(やま)深(ふか)く暑(あつさ)を避(さ)けたるが、雲(くも)の峰(みね)高(たか)き巖(いは)の根(ね)に、嘉魚(いはな)釣(つ)りて一人(ひとり)居(ゐ)たりけり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
それが次第(しだい)に激(はげ)しく成(な)つて、六(む)ツ四(よ)ツ數(かぞ)へて七(なゝ)ツ八(や)ツ、身體(からだ)の前後(ぜんご)に列(れつ)を作(つく)つて、卷(ま)いては飛(と)び、卷(ま)いては飛(と)びます。巖(いは)にも山(やま)にも碎(くだ)けないで、皆(みな)北海(ほくかい)の荒波(あらなみ)の上(うへ)へ馳(はし)るのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何故(なぜ)なら、かみ手(て)は、然(さ)うして山(やま)が迫(せま)つて、流(ながれ)も青(あを)く暗(くら)いのに、橋(はし)を境(さかひ)に下流(かりう)の一方(いつぱう)は、忽(たちま)ち豁然(くわつぜん)として磧(かはら)が展(ひら)けて、巖(いは)も石(いし)も獲(え)ものの如(ごと)くバツと飛(と)ばして凄(すご)いばかりに廣(ひろ)く成(な)る。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ぴつたり閉(し)めた襖(ふすま)一枚(まい)……臺所(だいどころ)へ續(つゞ)くだゞつ廣(ぴろ)い板敷(いたじき)との隔(へだて)に成(な)る……出入口(ではひりぐち)の扉(ひらき)があつて、むしや/\と巖(いは)の根(ね)に蘭(らん)を描(ゑが)いたが、年數(ねんすう)算(さん)するに堪(た)へず、で深山(みやま)の色(いろ)に燻(くす)ぼつた、引手(ひきて)の傍(わき)に
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
丁(ちやう)ど瞳(ひとみ)を離(はな)して、あとへ一歩(ひとあし)振向(ふりむ)いた處(ところ)が、川(かは)の瀬(せ)の曲角(まがりかど)で、やゝ高(たか)い向岸(むかうぎし)の、崖(がけ)の家(うち)の裏口(うらぐち)から、巖(いは)を削(けづ)れる状(さま)の石段(いしだん)五六段(ごろくだん)を下(お)りた汀(みぎは)に、洗濯(せんたく)ものをして居(ゐ)た娘(むすめ)が、恰(あたか)もほつれ毛(げ)を掻(か)くとて
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
現(げん)に其處(そこ)を漕(こ)いだ我(わ)が友(とも)の語(かた)れるは、水深(すゐしん)、實(じつ)に一千二百尺(いつせんにひやくしやく)といふとともに、青黒(あをぐろ)き水(みづ)は漆(うるし)と成(な)つて、梶(かぢ)は辷(すべ)り櫓(ろ)は膠(にかは)し、ねば/\と捲(ま)かるゝ心地(こゝち)して、船(ふね)は其(そ)のまゝに人(ひと)の生(は)えた巖(いは)に化(くわ)しさうで
十和田の夏霧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
一月(ひとつき)の中(うち)に身體(からだ)がきれいに成(な)りました、其(そ)の翌日(あくるひ)の事(こと)だつたんです、お仙人(せんにん)は杖(つゑ)を支(つ)いて、幾壇(いくだん)も壇(だん)を下(お)りて、館(やかた)を少(すこ)し離(はな)れました、攀上(よぢのぼ)るほどな巖(いは)の上(うへ)へ連(つ)れて行(い)きました。眞晝間(まつぴるま)の事(こと)なんです。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
煙(けむり)の波(なみ)だ。荒磯(あらいそ)の巖(いは)の炬燵(こたつ)が眞赤(まつか)だ。が此時(このとき)燃拔(もえぬ)けては居(ゐ)なかつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
續(つゞ)いて一人(ひとり)の美少年(びせうねん)、何處(いづこ)より落(お)ちたりけん、華嚴(けごん)の瀧(たき)の底(そこ)を拔(ぬ)けて、巖(いは)の缺(かけら)と藻屑(もくづ)とともに、雲(くも)より落(お)ちつと覺(おぼ)しきが、助(たす)けを呼(よ)ぶか諸手(もろて)を上(あ)げて、眞俯向(まうつむ)けに流(なが)れ來(き)しが、あはよく巖(いは)に住(とゞ)まりて
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)