小屋こや)” の例文
りたてのかべ狹苦せまくるしい小屋こや内側うちがはしめつぽくかつくらくした。かべつち段々だん/\かわくのが待遠まちどほ卯平うへい毎日まいにちゆかうへむしろすわつてたいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すると、そこに魔法まほうをかけられた小さな小屋こやがたっていました。家のなかには、だれもいませんでした。そこで、みんなはいいました。
ほしは、くろうみや、さむさのためにふるえているもりや、まどまって、ひとんでいない小屋こやなどを見下みおろしながら、うなずきました。
雪の上の舞踏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
頼光らいこうはそれをいてやっと安心あんしんしました。そしてしばらく小屋こやの中にはいって足のつかれをやすめました。そのときにんのおじいさんは
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
町の人たちは、あの馬鹿ばか甚兵衛がたいそうな看板かんばんをだしたが、どんなことをするのかしらと、面白半分おもしろはんぶん小屋こやへはいってみました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
颶風はやてぎる警告けいこくのために、一人いちにんけまはつた警官けいくわんも、外套ぐわいたうなしにほねまでぐしよれにとほつて——夜警やけい小屋こやで、あまりのこと
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
汽車が小さな小屋こやの前を通って、その前にしょんぼりひとりの子供こどもが立ってこっちを見ているときなどは思わず、ほう、とさけびました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたくし自身じしん持参じさんしたのはただはは形見かたみ守刀まもりがたなだけで、いざ出発しゅっぱつきまった瞬間しゅんかんに、いままでんで小屋こやも、器具類きぐるいもすうっと
この小屋こやは清潔で雨風を防いで呉れますし、家具も十分で便利でございます。此處にある何もも、私を落膽させずに感謝させました。
もちろんこの小屋こやけたりこわれたりして、今日こんにちまったくのこつてをりませんが、その土臺どだいくひだけがみづなかのこつてゐるのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
さて我山中に入り場所ばしよよきを見立みたて、木のえだ藤蔓ふぢつるを以てかり小屋こやを作りこれを居所ゐどころとなし、おの/\犬をひき四方にわかれて熊をうかゞふ。
鳥屋とや小鳥ことりるためにつくつてある小屋こやのことです。何方どつちいてもやまばかりのやうなところに、その小屋こやてゝあります。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
秀吉ひでよしさまは、合戦かっせんのまッただ中、町人ちょうにんのくせに、まつりなどとはもってのほか、さッ、店や小屋こやはドシドシとたたんでしまえ!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでかれ小屋こやまえすわりましたが、ると、蝶番ちょうつがいひとつなくなっていて、そのためにがきっちりしまっていません。
わたしたちはあるテント小屋こやで、たき火の上に鉄びんがかかっている所を通りぎると、曲馬団きょくばだんでマチアの友だちであったボブを見つけた。
それで小屋こやなかは、空気がかよはなくつて、烟草たばこけむつて、頭痛がして、——よく、みんな、あれで我慢が出来できるものだ
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ハヽー少し逆上ぎやくじやうしてるやうぢやから、カルメロを一りんにヤーラツパを五ふん調合てうがふしてつかはすから、小屋こやかへつて一にちに三くわい割合わりあひ服薬ふくやくいたすがよい。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「だれだじゃねえや、てえへんなことがおっぱじまったんだ。子丑寅ねうしとらもなんにもあったもんじゃねえ。あしたッから、うちの小屋こやかねえかもれねえぜ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それは、ちかくのよせ(落語らくご講談こうだんなどのかかる小屋こや)のたいこのおとで、かえりのひとがぞろぞろでてきたので、朝吹あさぶきはもうどうすることもできませんでした。
わたし大事だいじかたは、小屋こやつくつていらつしやる。がどうも、くさがないので、こまつてゐられるようだ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
狂人のように、消火に努めながらも、新之助の頭には、小屋こや裏方うらかたの顔が、次々に、浮かんで消えた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
カラスのことも、えている小屋こやのことも、動物どうぶつたちのことも、なにもかも忘れてしまったのでした。
須原峠を小屋こやいたり泊す、温泉塲をんせんば一ヶ所あり、其宿の主人は夫婦共にたま/\他業たぎやうしてらず、唯浴客数人あるのみ、浴客一行の為めにこめかししる且つ寝衣をも貸与たいよ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
その頃どこかの気紛きまぐれの外国人がジオラマの古物ふるものを横浜に持って来たのを椿岳は早速買込んで、唯我教信と相談して伝法院の庭続きの茶畑をひらき、西洋型の船になぞらえた大きな小屋こやを建て
一三 この老人は数十年の間山の中にひとりにて住みし人なり。よき家柄いえがらなれど、若きころ財産を傾け失いてより、世の中に思いをち、峠の上に小屋こやを掛け、甘酒あまざけ往来おうらいの人に売りて活計とす。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
門口には巡査か門番かの小屋こやがあって、あかりがついて居る。然し誰とがむる者も無いので、突々つつと入って、本堂のえんに上った。大分西に傾いた月の光は地をうて、本堂の縁はくらかげになって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼らは自らこれを小屋こやと称しております。
己をやどしてくれたのはあの小屋こやだ。
小屋こやに一ぱいになつた見物から
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
小屋こやからてくる
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
船頭せんどうくら小屋こやをがらつとけてまたがらつとぢた。おつぎはしばらつててそれからそく/\とふねつないだあたりへりた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
このかんばしいにおいは、小屋こやまどからそとへながれでたのです。しまにすんでいたきつねは、このにおいをかいで、たまらなくなりました。
雪の上の舞踏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
タネリがゆびをくわいてはだしで小屋こやを出たときタネリのおっかさんは前の草はらでかわかしたさけかわぎ合せて上着うわぎをこさえていたのです。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それから十年というあいだ、兄弟きょうだいたちはこの小屋こやでいっしょにくらしましたが、みんなはそれほど長いとも思いませんでした。
お正月だのおぼんだの、またはいろんなおまつりのおりに、町のにぎやかな広場に小屋こやがけをして、さまざまの人形を使いました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
やまにはおほきな檜木ひのきはやしもありますから、そのあつ檜木ひのきかはいたのかはりにして、小屋こや屋根やねなぞをくこともありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あすこのかべけてあるをごらんなさい。のこつてゐた土臺どだいくひから想像そう/″\して湖上住居こじようじゆうきよ小屋こやいたものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
先刻さツき小屋こやはいつて世話せわをしましたので、ぬら/\したうま鼻息はないき体中からだぢゆうへかゝつて気味きみわるうござんす。丁度ちやうどうございますからわたしからだきませう
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
するともなく、山姥やまうばはまたぬまからがって、どんどんっかけてました。そして小屋こやの中にはいって
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
この小屋こやには、一人ひとりおんなと、一ぴき牡猫おねこと、一牝鶏めんどりとがんでいるのでした。ねこはこの女御主人おんなごしゅじんから
旅行りよこうをしたさきで、いつもあたらしく小屋こやがけをして、それに宿やどりました。さうしてかならず、その小屋こやをほめたゝへるうたんで、宴會えんかいひらきました。これを、新室にひむろうたげといひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
坂の上から見ると、坂はまがつてゐる。かたな切先きつさきの様である。幅は無論狭い。右側の二階だてが左側の高い小屋こやの前を半分遮ぎつてゐる。其うしろには又高いのぼりが何本となく立ててある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたくし先刻せんこくまでんでいた、あの白木造しらきづくりの小屋こやがいつのにかうつされてたことでした。
日暮れてつひに一歩もすすむを得ず、むなしくはるかに彼小屋こやのぞんで沼岸に露営ろえいりたり。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
まさか鞍馬の竹童が、こんな名刀を持っていようとは夢にも知らなかった蛾次郎、アッといって床下ゆかしたからころげだし、すぐむこうにあった小屋こやのなかへ、四つンばいにかくれこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この鉱山のために炭を焼きて生計とする者、これも笛の上手じょうずにて、ある日ひるあいだ小屋こやにおり、仰向あおむき寝転ねころびて笛を吹きてありしに、小屋の口なる垂菰たれごもをかかぐる者あり。驚きて見れば猿の経立ふったちなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私の家——遂に一軒の家を見出したときの——は一軒の小屋こやである。
ランプもけぬ卯平うへいせま小屋こや空氣くうきくろ悄然ひつそりとしてんだやうである。勘次かんじあししてもどつては出來できるだけしづかぢる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おじいさんは、この山中やまなかにただ一人ひとりんでいる不思議ふしぎ人間にんげんでありました。おとうとは、おじいさんの小屋こやにつれられてまいりました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、ばあさんはやせこけた手でヘンゼルをつかまえると、小さい小屋こやのなかにつれていって、格子戸こうしどをピシャンとしめてしまいました。