みや)” の例文
外に拙者と、お腰元が一人、おまつといってこれは十八、仲働きが二十六のおみやという忠義者、下女が二人、それにてつという仲間ちゅうげんがいる。
嵯峨さが帝のお伝えで女五にょごみやが名人でおありになったそうですが、その芸の系統は取り立てて続いていると思われる人が見受けられない。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
殊勝しゆしようらしくきこえて如何いかゞですけれども、道中だうちうみややしろほこらのあるところへは、きつ持合もちあはせたくすりなかの、何種なにしゆのか、一包ひとつゝみづゝをそなへました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さぎみやのあの家は売つてしまつたよ。いまは池上に銀行家の家を買つて、教祖とうちのものと一緒に住んでゐるが、これは立派だ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
そこには、白旗しらはたみやのまえから、追いつ追われつしてきた小幡民部こばたみんぶが、穴山あなやま旗本はたもと雑兵ぞうひょうを八面にうけて、今や必死ひっしりむすんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浪打際なみうちぎわあるいたようにかんじたのはホンの一瞬間しゅんかん私達わたくしたちはいつしか電光でんこうのように途中とちゅうばして、れいのおみや社頭しゃとうっていました。
そのとき、ふと、千羽鶴ばづるつくって、おみやささげたら、自分じぶんだけはかみさまをありがたくおもっているこころざしとおるだろうとかんがえたのです。
千羽鶴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これよりみやこし驛に至る、坦々たん/\の如き大路たいろにして、木曾川は遠く開けたる左方の山の東麓を流れ、またその髣髴を得べからず。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
「なにかもみやの方の入口も、あれと同時に爆発して完全に閉じてしまったのです。化け物はふくろねずみです。もうなかなか出られやしません」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから、なるみ絞りの鳴海なるみ。一里十二丁、三十一もんの駄賃でまっしぐらにみやへ——大洲観音たいすかんのん真福寺しんぷくじを、はるかに駕籠の中から拝みつつ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
其の西応房は尾州びしゅう中島郡なかじまごおりいちみやの生れであったが、猟が非常に好きで、そのために飛騨ひだの国へ往って猟師を渡世にしていた。
女仙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
町のあかりは、やみの中をまるで海のそこのおみやのけしきのようにともり、子供こどもらの歌う声や口笛くちぶえ、きれぎれのさけび声もかすかに聞こえて来るのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
玄王の城の中に、金銀廟というみやがありまして、白い塔が建っていて、そこには、金目銀目きんめぎんめの猫がまつってあるのです。それが、城のまもり神です。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
皇后や中宮ちゅうぐうやのおそばをつとめる身分高い女房は、時にはきさいみやの妹君がつとめられたり、公卿くぎょうの娘がつとめたりする。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
みやしたで下りて少時しばらく待っているうちに、次の箱根町行が来たが、これも満員で座席がないらしいので躊躇していたら
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いちみやの渡を渡って分倍河原に来た頃は、空は真黒になって、北の方で殷々闐々ごろごろ雷が攻太鼓をうち出した。農家はせっせとほし麦を取り入れて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
奈良井ならいみやこし上松あげまつ三留野みどの、都合五か宿の木曾谷の庄屋問屋はいずれも白洲しらすへ呼び出され、吟味のかどがあるということで退役を申し付けられ
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蟠「何処どこからもしりみやも来ず、友之助は三百両持って取りに来ようという気遣いもない、わしも一と安心した」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は、その頃、少しばかり買物がございましたので、さんみやの『でぱあと』まで出むいていたのでございます。
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
ハナハダシキハコノ家ノ所在地ノ町名ガ、———左京区トイウヿマデハ分ルガ、吉田よしだうしみや町トイウ名ガ出テ来ナカッタ。僕ハ内心非常ナ不安ニ襲ワレタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かずみや御下向ごげかうの時、名を賜はつたと云ふ石燈籠も、やはり年々に拡がり勝ちな山吹の中に立つてゐた。しかしその何処かにある荒廃の感じは隠せなかつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おなじような片歌かたうたはなしが、やまとたけるのみことにもあります。このみこと東國とうごく平定へいていとき甲斐かひくに酒折さかをりみや宿やどられて、もやしてゐたおきなに、いひかけられました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
既に本年の夏やんごとなき宮様方が箱根のみやしたへ成らせられた節に乳牛を二頭東京から宮の下へ連れて行って当座の事だから狭い牛小屋へつないでありました。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
酒折さかをりみや山梨やまなしをか鹽山ゑんざん裂石さけいし、さし都人こゝびとみゝきなれぬは、小佛こぼとけさゝ難處なんじよして猿橋さるはしのながれにめくるめき、鶴瀬つるせ駒飼こまかひるほどのさともなきに
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
顔を上げると、御香ごこうみやの白い塀の上に、硝煙が、噴出しては、風に散り、散っては、噴き出し、それと同時に、すさまじい音が、森に空に、家々に反響していた。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
おれは、大和やまと日代ひしろみや天下てんかを治めておいでになる、大帯日子天皇おおたらしひこてんのう皇子おうじ、名は倭童男王やまとおぐなのみこという者だ。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
男は逸早いちはやく彼の押へしシォールの片端かたはしを奪ひて、そのうちに身をれたり。みやは歩み得ぬまでに笑ひて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
御父帝がおかくれになってまだもがりみやに安置した御遺体のぬくもりがさめないうちに、もう軍旗をなびかせ弓はずをふりたてて挙兵され、帝位争奪の戦をなさるなど
たとえば薩摩薩摩郡みやじょう村大字柊野くきの、同高城たかき村字柊平くいひら、これらはその附近に久木野という無数の大字・小字がなかったならば、人はその字義を怪しんだかも知れぬが
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もっと老爺おじいさんの妻の父親が、上野輪王寺りんのうじみやに何か教えていた××安芸守あきのかみという旗本で、法親王が白河へお落ちになってから建白書のようなものを書いて死んだ人であり
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
呼近づけ申樣は此度聖護院せいごゐんみや配下はいか天一坊樣當表へ御出張に付御旅館取調とりしらべの爲に拙寺が罷越まかりこし候なり不案内の事ゆえ萬端ばんたんもとをおたのみ申なりとて手箱のうちより用意の金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
太子たいしのおまいになっていたおみや大和やまと斑鳩いかるがといって、いま法隆寺ほうりゅうじのあるところにありましたが、そこの母屋おもやのわきに、太子たいし夢殿ゆめどのというちいさいおどうをおこしらえになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
太陽は入江の水平線へしゅの一点となって没していった。不弥うみみや高殿たかどのでは、垂木たるき木舞こまいげられた鳥籠とりかごの中で、樫鳥かけすが習い覚えた卑弥呼ひみこの名を一声呼んで眠りに落ちた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そこで農事に委しい人を頼まうといふことになつて相馬さうま藩から二みやきんらう尊徳そんとく翁の、其頃五十餘の大兵だいへうな人)をび、伊豆の代官江川えがは氏の手附てづき河野鐵平かうのてつへいといふ人をもめした。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
拠無よんどころなく夕方から徒歩で大坂おおさかまで出掛でかける途中、西にしみやあまさきあいだで非常に草臥くたびれ、辻堂つじどう椽側えんがわに腰をかけて休息していると、脇の細道の方から戛々かつかつと音をさせて何か来る者がある
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
人家すべて二十を数える碓氷峠のかみみやの前の町、一点に立てば全宿を見通すことも、全宿の通行人をいちいち検分することもできる。さりとて、わが先生の大蛇おろちの鼾が聞えない。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やがてのんべえ は樹深こぶか裏山うらやまのおみやまへにあらはれました。そしてべたにひざまづいて
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
しまみやまがりのいけはなどり人目ひとめひていけかづかず 〔巻二・一七〇〕 柿本人麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
高倉たかくらみや宣旨せんじ木曾きそきたせきひがしに普ねく渡りて、源氏興復こうふくの氣運漸く迫れる頃、入道は上下萬民の望みにそむき、愈〻都を攝津の福原にうつし、天下の亂れ、國土の騷ぎをつゆ顧みざるは
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
最愛の夫人むらさきうえの死もそれである。女三にょさんみやの物のまぎれもそれである。
伏見戦争のあとで直ぐ、朝命てうめいを蒙つて征討将軍のみや随従ずゐしうし北陸道の鎮撫に出掛けたと云ふ手紙や、一時還俗げんぞくして岩手県の参事さんじを拝命したと云ふ報知しらせは、其の時々とき/″\に来たが、すこしの仕送しおくりも無いので
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
その頃修善寺には北白川きたしらかわみやがおいでになっていた。東洋城は始終しじゅうそちらの方のつとめに追われて、つい一丁ほどしか隔っていない菊屋の別館からも、容易に余の宿までは来る事ができない様子であった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくみやつきのかげせしひと夜ゆゑ恋ひつゝわびぬこの年頃を(残紅)
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
澄みわたりいよよ静けき時今をみや成らすらしみ気配けはひ聴かゆ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それは「みや運送店」というのでした。
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
よそほざるうれたさに、みやにまゐりて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
薔薇さうびみやとなづけつつ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
珊瑚さんごみやこひ
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
山城やましろ筒木つつきみや
ぎい……とふいに、白旗しらはたみや狐格子きつねごうしがなかからあいた。そして、むっくり姿をあらわしたのは、なんのこと、鞍馬山くらまやま竹童ちくどうであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)