もち)” の例文
旧字:
ばんごと喧嘩けんくわをしてめてやるのだが隨分ずゐぶんおもしろいよとはなしながら、鐵網かなあみうへもちをのせて、おゝ熱々あつ/\指先ゆびさきいてかゝりぬ。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
爐端ろばたもちいたゞくあとへ、そろへ、あたまをならべて、幾百いくひやくれつをなしたのが、一息ひといきに、やまひとはこんだのであるとふ。洒落しやれれたもので。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うすもころがしてました。おもちにするおこめ裏口うらぐちかまどしましたから、そこへも手傳てつだひのおばあさんがたのしいきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
懐中ふところから塵紙ちりがみして四つにつて揚子箸やうじばし手探てさぐりで、うくもちはさんで塵紙ちりがみうへせてせがれ幸之助かうのすけへ渡して自分も一つ取つて、乞
二岩団三郎は神社として祭られてあり、かつ、その所住と称せらるる岩窟がんくつにはたえず参詣さんけい者があって、赤飯やもちなどを供えて置く。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
お豆腐のお味噌汁みそしる。白い御飯。おもち。おいしそうなものは何でも、私の持物を皆売って、そうしてお母さまにご馳走してあげよう。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
板橋はんきょう三娘女さんろうじょという宿屋をしている老婆があって、それが旅人に怪しい蕎麦そばもちわして、旅人をろばにして金をもうけていたところで
怪譚小説の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ウン、そういう事も考えられるね。併し、そんなことを、ここで論じ合って見たって、始まらんじゃないか。もちは餅屋に任せて置くさ」
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
き立てのもちを、金巾かなきんに包んだように、綿は綿でかたまって、表布かわとはまるで縁故がないほどの、こちこちしたものである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
斗満で食った土のものゝ内、甘藍、枝豆えだまめ玉蜀黍とうもろこし、馬鈴薯、南瓜とうなす蕎麦そば大根だいこきびもち、何れも中々味が好い。唯真桑瓜まくわうりは甘味が足らぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
弟子はおじぎを一つして、となりのへやへ入つて行つて、しばらくごとごとしてゐたが、まもなく赤い小さなもちを、さらにのつけて帰つて来た。
北守将軍と三人兄弟の医者 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
押し方が足りなければ米粒はバラバラになって最初から寿司にならぬが、しかしあまり強く押し過ぎても寿司は固まってもちになってしまう。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
と次郎がもちをさしだした。婦人は目に喜びの色を見せて、せわしくとるかと見れば口に運び、一気にのみこんでしまった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
母子草ははこぐさもこちらのは、もちに入れるほどにもふっくりと伸びず、小さなうちにもう花が咲いてしまうのは風土のためであろう。
ちょうど今ごろ五月の節句のかしわもちをつくるのにこの葉を採って来てそうしてきれいに洗い上げたのをざるにいっぱい入れ
庭の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
うとうとしている間に二三軒横の言問団子の製餅場で明日のもちき初める。しかしそれを気にして床上に輾転てんてんしているのは久野だけである。
競漕 (新字新仮名) / 久米正雄(著)
ちょうど田植たうやすみの時分じぶんで、むらでは方々ほうぼうで、にぎやかなもちつきのおとがしていました。山のおさると川のかにが、途中とちゅう出会であって相談そうだんをしました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
七兵衛がつまもかたはらにありしが、をつとにむかひ、とてもの事にもちをつきたまへとすゝむ。いかにもよからんとてにはかにそのもよほしをなしけり。
としはじめといふので有繋さすがかれいへでも相當さうたうもち饂飩うどん蕎麥そば/\のれいよつそなへられた。やはらかなもち卯平うへい齒齦はぐきには一ばん適當てきたうしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ロジオン・ロマーヌイチ、まあどうでしょう、あの人のポケットににわとりの形をしたしょうがもちがはいってたんですよ。
おしるこやはぎもちの店のことで、店さきの高いところから、長い暖簾のれんがかけてあって、紺地に大きく彩色したえびすだのほていだのがついていた。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ひるになって宮崎はもちを出して食った。そして安寿と厨子王とにも一つずつくれた。二人は餅を手に持って食べようともせず、目を見合わせて泣いた。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
草津の町の名代のうばもちに足をとめて、しきりにお砂糖を利かせた姥ヶ餅を賞翫しょうがんしているところの一行がありました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのまえには、秋の草花、紅白こうはくのおもち弄具おもちゃやよだれかけやさまざまなお供物くもつが、いっぱいになるほどあがっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菜を貰つた家ではお礼に、もちや、みかんや、芋などをくれた。お酒を茶わんに一ぱい飲ませてくれた家もあつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
板倉屋敷のそばまで行くと、角のもち屋の天水桶てんすいおけや一ト手持てもち辻番つじばん小屋の陰からムラムラと人影が立ちあがった。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
多少研究する必要があります。その方が理解が早いです。単に『もちつき』という字を覚えても、餅つきの光景を見ないとどういうことをするのかわかりません
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三日のもちでも祝って、立派なおくかたになってから、公然と皆のものをうらやましがらせようと云う気持なのです。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
すると「千本」の長が譲歩してどなった、「先生、銭でなくってもいいだよ、蜜柑みかんでももちでもいいだよ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
悦子の好きなえびの巻揚げ、はとの卵のスープ、幸子の好きなあひるの皮を焼いたのを味噌みそねぎと一緒にもちの皮に包んで食べる料理、等々を盛ったすずの食器を囲みながら
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
親父おやぢにも、せがれにも、風景にも、ぼくにしてを破らざること、もろこしのもちの如き味はひありと言ふべし。その手際てぎはあざやかなるは恐らくは九月小説中の第一ならん
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鉄瓶てつびんがかかってるだろう。正月の用意のもちけてあるだろう。子供がそれをねだっているであろう。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
噴火前ふんかぜんには周圍しゆうい土地とちもちかれてふくらむような状態じようたいになることは、すで了解りようかいせられたであらう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
となり地主じぬしでありまして、たくさんもちをつきました。幸作こうさくは、そのにぎやかなわらごえきますと、どうかして自分じぶん金持かねもちになりたいものだと空想くうそうしたのであります。
金銀小判 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いたづらの子供たちは前後左右から追取おつとりまいて来て、逃げまはる娘の影を思ふがまゝに踏んだ。かれらは十三夜のぼたもちを歌ひはやしながらどつと笑つて立去つた。
入れ代りに上って来たさっきの女中さんが、明日の朝御飯の代りにと奥様がいわれましたからと言って、紙包をくれた。あけてみたら真白なもちが五切れはいっていた。
I駅の一夜 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
宝泉寺では村人がもちくたびに持つて行くので、餅の食べきれないときにはそれを水飴に作つた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
朝又もちあぶりて食し、荊棘いばらひらきて山背をのぼる、昨日来もちのみをきつし未だ一滴の水だもざるを以て、一行かつする事実にはなはだし、梅干をふくむと雖も唾液つばつゐに出できたらず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
そのうち、もちの殻が各席に配られると、客らはそれを手ん手につかみあたり介意かまわず投げつけ合った。
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ある日の事、私が何気なく見物していますと、一人の出方でかたが、それはそれは見事なお菓子、今のようなもち菓子ではなく、手の入った干菓子の折に入ったのを持って来て
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
同じ階級内では、節句せっく七夕たなばたの団子などはもちろん、きまりきったお正月のもちまでもやり取りした。
あれと同じことで、味噌汁が、下へこぼれ落ちもせず、まるでやわらかいもちが宙にかかっているような恰好かっこうで、卓上テーブルの上をふわふわうごいているんだ。僕はおどろいたよ。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かみさんとお照はかきもちと甘栗をぼりぼりやりながら酌をする。兼太郎はいつになく酔払よっぱらって
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「家ではね、もちだというのを、ようようすしにすることになりました。おとよさんとこは何」
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
投げたもちはあちらの川に沈んでしまった。そぶりにざわめいたが、実は餅ははじめから無かった。——そう見て取ったようにぽかんとして、群集は次の方角に移りかけていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
もち円形まるきが普通なみなるわざと三角にひねりて客の目をかんとたくみしようなれど実はあんをつつむに手数てすうのかからぬ工夫不思議にあたりて、三角餅の名いつしかその近在に広まり
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
もちのやけるかうばしいにほひをかぐと、三郎はもう小僧のことなど忘れてしまひました。
大寒小寒 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
いわばすッてんてんののみのままでうじくのも面白おもしろかろうと、おとこやもめのあかだらけのからだはこんだのが、去年きょねんくれつまって、引摺ひきずりもちむこ鉢巻ぱちまきあるいていた
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
寝衣ねまきに着替えたまま、門のくぐりを開けに出たが、盆暮にお島が子供に着物や下駄を買ってくれたり、もちをついてやったりしていた銀さんは、どうでも今夜中に帰ってくれないと
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)